次の日、俺は早起きして支度を済ませた。

「おはようございます!」

 屋敷の入り口で待ち合わせていたサラが挨拶してくる。

「いい天気だな」

 雲一つない青空だ。

「はい! 絶好の祭り日和です!」

「それじゃあ広場に向かおう」

 正午から勇者の剣を受け取る儀式を行う予定になっている。

「そうですね、行きましょう」

 ジャスティン様とルナさんは先に、『魔女のつえ』の人たちは後から行くということだったので、俺とサラの二人で教会へと向かった。

「すごい人だな」

「本当に村じゅうの人が来ていますね」

 広場にはあふれかえるほどの人が集まっていた。

 この一ヶ月で大体の村人と会ってきたけど、一度にこんなに会うのは初めてだ。

 みんな儀式を楽しみにしているみたいだね。

「あそこにお姉ちゃんがいますね」

 サラが指差す。ルナさんを見つけたようだ。

「そっちに行こうか」

 サラに連れられてルナさんのところへと向かった。

「お姉ちゃん、大丈夫?」

 サラがルナさんに話しかける。少し顔色が悪そうだ。

「大丈夫、ちょっと緊張してるだけ。こんなに緊張するの、この村に初めて来たとき以来よ」

 相当緊張してるみたいだな。

 横にいるジャスティン様の顔も少し硬くなっている。

「あれ、まだレイはいないのかな?」

 もう来てると思ったんだけど。

「レイ様は後から来ることになっています」

 ルナさんが教えてくれた。それなら大丈夫か。


 そしてついに日が一番高いところまでやってきた。

 いよいよ雨竜うりゅうさいの開始だ。

 ジャスティン様が広場の中央に設置したステージに上がった。

「村のみんな、今日は集まってくれてありがとう」

 手元に拡声器のようなものを持っていて、しゃべった声が大きくなって聞こえる。

 多分だけど、魔道具の一種かな。

 ジャスティン様の声で村の人々から歓声があがった。

「先月、この村は水害に襲われた。けれども、助けに来てくれた魔女のやサート商会の人々のおかげで村は元に戻ってきた」

 ここで、ジャスティン様が一呼吸置く。村の人たちは静かになって領主の言葉を待つ。

「加えて、この水害で巡り合えたお方もいる。そのお方が我らが村に素晴らしいものを与えてくださることになった。改めてご紹介したい。レインドラゴンのレイ様だ!」

 ジャスティン様が左手を天に掲げた。

 みんなが息をのんでその光景を見守る。

 おかげで、物音一つ聞こえない。

 数秒沈黙が続いたそのとき、森のほうから大きなドラゴンのほうこうが聞こえてきた。

 それと同時にレイがドラゴンの姿でステージの上空に現れた。

 相変わらずれいな青色だ。

 そして、いつものように空中で人の姿に変身して……

「あれ!? なんかいつもと違わないか?」

 俺は違和感を覚えて隣にいたサラに聞いてみる。

「確かに……大きいですよね?」

 まだ上空にいて分かりにくいが、いつもよりレイが大きい気がする。

 そして、レイがゆっくりとジャスティン様とその横に並んでいるルナさんの目の前に舞い降りた。

 そこにいた人全員がレイに目を奪われる。

 いつもの幼女の姿と違い、今回は二十代の女の人の姿になっていた。

 立派すぎるほどれんに成長したレイというのが正しいかな。

 青い髪の毛も地面に届きそうなくらい長くまっすぐに伸びていた。

 着ている服ももちろんサイズアップしているし、何より人間サイズに縮小されたドラゴンの翼が映えている。

 そして、自分の頭の上には小さな水球を五つ、王冠のように浮遊させいる。しかも一つ一つが虹色に輝いているから見ていてとても綺麗だ。

「マイマイ村の者どもよ、わらわがレインドラゴンである」

 集まっていた人々に向かってレイが挨拶をする。

 今までのレイの声よりもずっと、威厳のあるキリッとした声だ。

 レイの声を聞いてザワザワしていた村の人たちが静かになった。

「妾がシュッツガルの森にみ始めたことで、村の者どもに大きな迷惑をかけた。本当にすまぬことをした。改めて謝罪する」

 レイが深々と頭を下げる。

「もう二度とこのようなことは起こさぬから安心してほしい。そして、今後も棲んでいくうえで良き隣人となるために、今回は友好のあかしを村に授けたい」

 そう言うと、レイがマジックボックスから日本刀を取り出した。

 そして、さやから引き抜いて天に掲げる。

「勇者の剣じゃ!」

 みんなが歓声をあげる。

 村の人たちにはこれがお披露目だからな。

「スゲー! かっこいい!」

 村の子供たちもキラキラとした目で見ている。

 憧れるよな。

 みんながしっかりと見た後、レイは剣を鞘に戻した。

「領主ジャスティンよ、この剣を受け取ってくれるか?」

 レイが右手で剣を持って刀を前に差し出す。

 ジャスティン様はレイの目の前に立ち、ひざまずいた。

「ありがたく頂戴いたします。今後このマイマイ村にご加護を賜りたく存じます」

 そう言ってジャスティン様は両手で勇者の剣を受け取った。

 その瞬間、人々から歓声があがった。

 みんなレイのことを受け入れてくれたみたいだ。

「受け取ってくれたことをありがたく思う。そして、いかなる災難からもこの村を守ることを誓おう」

 レイははっきりと宣言をした。多分、レイがいるだけで、他のどんな場所よりも安全になる気がするよ。

「そして、今日は友好を願って祭りの場を用意させてもらった」

 ここでレイがいつもの幼女の姿に戻った。

「皆の者! 共に楽しむのじゃ!!

 その声で、広場はこの日一番の盛り上がりを見せた。

「サラ、ここからが俺たちの番だ」

 この光景を見ていた俺は静かにやる気を出す。

「はい、サート商会の底力をマイマイ村の人たちに見せつけましょう!」

 いよいよ縁日の始まりだ。


 俺たちの準備した縁日はレイの合図で始まった。

 事前に打ち合わせた通り、最初のシフトの人がそれぞれ持ち場につく。

 俺もサラと一緒に最初のチーズ焼きの担当に入った。

「お、リュウじゃないか!」

 村の一人のおじさんが俺の屋台に来てくれた。

「ナットさん、こんにちは。食べていきますか?」

「よし、食べていこう! 今日は無料と聞いているからな、いろんなところを食べ歩くつもりだ」

 ナットさんが元気よく答えてくれる。

「ありがとうございます! 少し待っててくださいね」

 さっそくこの日最初のチーズ焼きづくりを始めた。

 いつものように生地を混ぜて、丸い型に流し込んでいく。

「ほぉ、こりゃ見たことのない形の料理だな」

 ナットさんが興味深そうにのぞき込んでくる。

 注目されてると緊張するな。

 生地を追加して、ひっくり返すことに成功したらあとは完成を待つだけだ。

 完成したチーズ焼きの上にサラがマヨネーズとソースをかけていく。

「お待たせしました!」

 サラが笑顔でナットさんにチーズ焼きを手渡した。

「サラちゃんもありがとうな! それじゃあいただくよ」

「熱いので気をつけてくださいね」

 ナットさんが息を吹きかけてチーズ焼きを冷ましてから、パクッと口の中に放り込む。

「熱っ! ……こりゃあうめぇな!」

 ナットさんが口をハフハフさせる。やっぱり熱いよね。

「チーズと上にかかってるものの相性が最高だよ! こりゃあ酒が飲みたくなるね!」

「あっちにお酒も準備してますよ」

「なに! 本当か!?

 ナットさんがめちゃくちゃ食いついてきた。

 今回は祭りということでお酒も準備することになったのだ。

 サート商会としてはお酒を販売するのは今回が初めてだ。

 ビールとワインを氷水の中に入れて、欲しい人に配る形をとることにする。

 ちなみに氷はレイに用意してもらった。水の温度を調節すれば氷は作れるんだってさ。

「こうしちゃおれん! 取りに行ってくる! ごちそうさん!」

 ナットさんがチーズ焼きを持ったまま酒のほうに走っていった。

 やっぱり酒の力はすごいね。

「この調子で続けていこう」

 こうして俺たちはどんどんチーズ焼きを作って配っていった。

 みんな喜んでくれるから、こっちとしても頑張ったかいがあるよ。


 祭りが始まって二時間ほど経過した。

「少し見回りに行ってくる」

「了解です! 行ってらっしゃい」

 サラに店を任せて俺は見回りに出かけた。

 見ている感じ、他の屋台も繁盛してるみたいだ。

 今回、俺たちの用意した屋台はチーズ焼き、お好み焼き、射的、スーパーボールすくい、酒だ。

 ただ、それ以外にも村の人たちが自らやりたいと言っていたものがあったので、食材を提供する形でやってもらっている。

 出されているのはこの村の郷土料理だ。このような祭りの場ではよく食べられているらしい。

 シフトが終わったら食べに行こう。

 ちなみにだが、レイはカレーを出したいと言い出していたので、今は一人でカレーの屋台をやっている。

 気になったのでレイの屋台に向かってみることにした。

「レイ、これはどういうことだ?」

「ん? どうしたのじゃ?」

 見回りに行ったら、レイのカレーを食べた村の人たちが屋台の前でもだえていた。

「お前、何か変なもの入れてないよな?」

 俺が教えたレシピじゃこうはならないはずだ。

「そんなもの入れるわけなかろう。少しばかり辛くしただけじゃ」

 なるほど、辛くしたのか。

「お主も味見してみるか?」

 レイが少しだけルーをよそってくれた。

 スプーンで一口食べてみる。

「かっっっら!!

 あまりの辛さにせき込みそうになった。辛いものはそこそこ得意だが、それを上回る味だ。

「こんなんじゃ食べられないだろ!」

 俺がレイに怒ると、

「何を言っておる。周りをよく見るのじゃ」

 そう言われて見てみると、

「辛い、辛い、辛い!! でもやめられない!!

「ぐあぁ水! 水! そして回復したらもう一口! ぐあぁぁ」

 村の屈強な男たちが叫びながらも食べるのをやめない。

 あー、辛さに取りかれてるんだな。

 一定数の需要はあるってことだろう。

「それならまあいいか。そのかわり、子供たちには絶対に食べさせるなよ」

「分かっておるわ」

 これは子供たちにはあげちゃいけない辛さだからね。

「それと、夜の例の件、頼んだぞ」

「それも分かっておる。任せるのじゃ。それと夕方、時間があったらサラと一緒にステージを見に来るがよい。面白いものが見られるぞ」

「面白いものってなんだ?」

「ふふ、それは来てからのお楽しみじゃ」

 それ以上質問しても詳しくは教えてもらえなかった。気になるな。


 次に魔女のの人たちがやっているお好み焼き屋へと向かった。

「すっごい人だな」

 他の屋台よりも客の数が多い。

 特に若い人が多いな。

「きゃー! 料理してるダミアン様かわいい!!

「ロンド様もかっこいい!」

 二人の作業している姿を見て黄色い声をあげている。

「ユフィ様が神々しすぎる。あんな方からお好み焼きを受け取れるなんて!!

「アミルちゃんも明るくてかわいいな!」

 女性陣二人も人気なようだ。

 ……いいなぁ。俺もあんな風にちやほやされたいよ。

 俺だけじゃなくて、近くにある別の屋台担当の人たちもねたましそうに見ている。

 客を取られてご機嫌ななめなようだ。ちなみにバイト代は時給制にしてるから、売り上げは関係ない。

 となると、単純に悔しいんだろうな。

(おい! リュウ! 僕たちの屋台、やたら忙しくないか? なんとかしてくれ!)

 ダミアンさんが俺を見つけてそんな風に目で訴えてくる。

 俺は頑張ってくださいとジェスチャーをしたあと、そのまま立ち去った。

 一度シフトに戻った後、午後五時過ぎから再びまとまった空き時間が出来た。

 ここからは自分たちも縁日を楽しもう。

「サラ、準備は出来たか?」

「もう少し待っててください!」

 サラが一度屋敷に戻って準備をしたいということだったので、俺はサラの部屋の前で待つ。

「お待たせしました!」

 サラが部屋から出てきた。

「その格好は?」

 昼間の仕事中は動きやすいような服装をしていたが、今は綺麗な服を着ている。

 着物に近くてゆったりとした服装なのだが、腰にはベルトが巻いてあるので洋風な感じも強い。

「姉さんから借りたんです。似合ってますか?」

「ああ、とっても似合ってるぞ」

 髪も後ろで結んであって、いつもと雰囲気も違うからちょっとドキッとするな。

「そうですか! ありがとうございます」

 サラも嬉しそうだ。

「よし、縁日に行こう」

「はい!」

 広場に戻ると、ちょうど日が沈む頃になって空がオレンジ色になってきた。

「そういえば、レイが夕方にステージに来てほしいって言ってたんだよな」

 儀式を行った中央のステージは、村の人が自由に使えるようにしていた。そのため、音楽が好きな人たちが演奏したりしている。

 俺たちが覗きに行くと、結構な人たちが集まっていた。これから何かが始まるみたいだぞ。

「集まってくれてありがとうございます」

 中央のステージに出てきたのはルナさんだった。

「祭りの話が決まったとき、村の子供たちが自分たちも何かやりたいということで今回は劇を発表することになりました。演目はかの有名な『勇者物語』。レイ様のサポートのもと、精一杯練習してきたのでぜひご覧ください!」

 そう言うと、ルナさんは舞台の下手のほうへとはけていった。

「勇者物語って」

 俺はサラのほうを向く。

「はい、この前、子供たちの前で話した勇者のお話です」

 そして、女の子が一人ステージに上がってきた。

「これからゆうしゃのおはなしをはじめます。むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんがすんでいました。おじいさんはやまへしばかりに、おばあさんはかわへせんたくにいきました」

 ナレーターの女の子が舞台から降りると、なんとステージ上で本当に水が流れ始めた。

 お客さんから驚きの声があがった。というか俺もびっくりだ。

「きょうもせんたくものを洗うわよー」

 おばあちゃん役の子が実際に作り出された川の上で布をゴシゴシとする。

 その作業をしているところに魔法で作られた大きなオレンジが流れてくる。

 それを家に持ち帰ったところで場面が転換していった。

 その後は、立派に成長した勇者が無事に冒険に出るところまで話が進む。

 勇者役はクレアみたいだ。

「この辺りにレインドラゴンがいるはずだけど」

 パーティーの仲間役のカーセという男の子が辺りを見渡してセリフを言う。

 すると、レイがステージにのるミニサイズのドラゴンに変身して上空から舞い降りてきた。

 これってようは本人出演か? ある意味ぜいたくなキャスティングだ。

「貴様が勇者を名乗る男か」

 ミニレインドラゴンが喋りだす。

「レインドラゴン、いっしょにまおうをたおさないか?」

「断る。どうせ魔王には勝てぬ」

「そんなことはない。いっしょにたたかえばたおせる」

「ふっ、ならばお前らの力を見せてみろ」

 レイがバレーボールサイズの水の球を四つ作り出すと、それを勇者のパーティー四人に向かって放った。

 危ない! と叫ぼうとした瞬間、勇者は剣で、それ以外の人たちもおのおのの武器で攻撃を受け止める。

 そして、各々が魔法を繰り出しながら、レイに迫っていく。え、子供たちこんな魔法を使えたの?

「くっ、参った」

 見ごたえのある戦闘シーンを終えてセリフのシーンに入った。

「本当にお前たちなら魔王を倒せるかもしれぬな。よし、仲間になってやろう」

 こうして、レインドラゴンも勇者の仲間になった。

 そして、ついに魔王の元へとたどり着く。

 しもから登場したクレア勇者の前に、かみ側から現れた魔王役のルナさんと部下が立ちはだかる。

「ハーッハッハッハー! よーく、来たな!」

 ルナさんが高笑いをする。衣装と相まって冷酷な感じがすごい出ている。

 多分、相当練習したんだろうな。

「お前たち! 俺様の部下たちを随分と倒してくれたそうじゃないか。それにそこにいるのはレインドラゴンか? お前までそんなやつの味方をするとはな」

「おれたちは、おまえたちにたくさんくるしめられてきた」

「ふん、貴様らが弱いのが悪いのだ。強い俺様が正義。ただそれだけだ」

「そんなことはない、よわくてもちからをあわせるからつよいんだ」

「それならば証明してみるがいい。お前らの強さを!!

 ルナ魔王のセリフを皮切りに戦いが始まった。

 クライマックスなこともあってだいぶ派手な戦闘だった。

 その後、

「これでとどめだ!」

 最後は勇者の剣の一撃で魔王が倒れた。

「おのれ勇者め!! 貴様のことは絶対に忘れぬぞ!!

 そのセリフを最後にルナさんは地面に倒れ動かなくなった。

「こうして、このせかいにへいわがおとずれました。めでたしめでたし」

 子供たちの勇者物語はスタンディングオベーションで幕を閉じた。



 劇の発表を終えた後、俺とサラは舞台袖にいる子供たちのところへと向かった。

 俺たちの姿を見ると、子供たちが満足げな笑みを浮かべて近寄ってきた。

「みんなすごいよかったよ!」

「とてもカッコよかったです!」

 俺とサラがそう言うと、

「おれたちすげーがんばったんだぜ!」

「レイちゃんといっしょにリュウおじちゃんとサラおねえちゃんをおどろかせようってなったの」

 勇者役を熱演したクレアが教えてくれた。

「そうだったのか。とっても驚いたよ。それにあの魔法や剣術は? いつの間に……」

「それは妾の魔法じゃ」

 横からレイが現れた。元の幼女フォルムに戻っている。

「あの場で飛び交っていた魔法はすべて妾の自作自演なのじゃ」

 なるほど、そしてその動きに合わせて子供たちが動くことで、あたかも魔法を使いこなせているように見せることができたんだな。

 それでもかなりの練習を積む必要があったはずだ。完成度も高かったし。

「それに、これも魔法じゃぞ」

 そう言ってレイが俺に人差し指を向け、くるっと回した。すると、

「え!?

 俺の服がいつの間にか勇者の格好になっていた。どういうことだ。

「これは水を利用して作った服の幻じゃ。みなにこれをまとわせていたのじゃ」

 どうりで、着ている服が凝っているなって思ったんだよな。服を製作する時間もなかったはずだし。

「でも、大変だったんじゃないか?」

 一人で魔法を飛び交わせながら、なおかつ服の魔法まで使うなんて。

「なに、これぐらいのこと造作もないわ」

 さすがレインドラゴンといったところか。まあそのドヤ顔で偉大さが半減しているけど。

(そういえば、一つ気になったんだけど)

 こっそりレイに念話で話しかける。

(なんじゃ? いきなり念話で)

(あの物語の序盤の、川から流れてきたっていうのは……)

(ああ、あれは勇者スカイの作り話じゃ)

 異世界からやってきたとするわけにはいかないから、桃太郎になぞらえて説明したらしい。まあ、それはそれで突拍子もない物語だとは思うけどね。

 いずれにせよ偶然じゃなかったわけだな。

「ルナさんもお疲れさまでした」

 魔王役をしていたルナさんにも声をかける。

「村の子供たちのためですから」

 そう笑顔で言った。こういう行いだから村で慕われているんだろうな。

「レイちゃんまたあそぼうね」

 クレアが笑顔でレイに抱きついた。

「うむ、たまにはこういうことも面白いからの」

 うん、レイが子供たちと仲良くなってよかったよ。

 こうして、レイが参加した子供劇は大盛況に終わった。



「おお、綺麗だな!」

 暗くなってきたのでいたるところで松明たいまつが燃やされる。

 おがけでより縁日感が強くなってきた。

 やっぱり縁日って夜だよな。

「どこから行く?」

「そうですね、まずは何か食べましょうか」

 食いしん坊なサラの提案で食べることになった。

「せっかくだから郷土料理の屋台に行くか」

「そうしましょう」

 俺は村の人が出した屋台へと向かう。

「あ、リュウさんとサラさんじゃない。二人で回ってるの?」

 屋台をやっていたおばさんに声をかけられた。

「はい、時間が出来たので二人で回っています」

「そうかい。はいよ! 二人にスープ。熱いから気をつけてね!」

「ありがとうございます」

「冷めないうちに食べよう」

 もらったスープはすいとんに近い料理だった。

 メインの具材は森でとれたキノコ。これに小麦粉を練ったものが入れられていた。

「あっさりしていていいですね!」

 サラが美味おいしそうにほおる。

 キノコや野菜のダシが出ていて、一気飲みしたくなるような美味しさだ。

 俺もサラもあっという間に平らげてしまった。

「次はボールすくいでも行こうか」

 お腹も少し満たされたので今度は娯楽の屋台へと向かう。

「まずは私からやってみますね」

 サラがポイを一つもらうと服の袖をまくる。

 真剣な表情で品定めをして、紫色の小さなボールに狙いを定めた。

「えい!」

 サラは素早くボールをすくい上げると、手元のおわんにボールを移し替えることに成功した。

「やりました!!

 サラが子供のようにはしゃぐ。

「うまくいったな!」

「はい!」

 サラは勢いそのままに二つ目のボールを狙う。

「あー破けちゃいました」

 一個目でポイにダメージがたまってたんだろうな。

「次はリュウさんの番ですね」

「任せて。こう見えても昔はボールすくいの天才と呼ばれていた男だ」

 小学生の頃、俺はスーパーボールすくいで無双していた。

 袋いっぱいのスーパーボールを両手に持って神社を歩くことで、他の子からせんぼうの眼差しを集めたものだ。

「まあ、見ててよ。スゴ技を見せるから」

「そうですか……」

 俺は右肩を回して集中力を高める。

 さあ、ここから俺のショーの始まりだ!!

 ……。

「はい、リュウさん残念賞のボール一個ね」

「一つも取れなかった……」

 結果は惨敗だった。どうやら十年以上の月日が流れて腕がなまってしまったようだ。

 恥ずかしいから自慢するのはもうやめよう。というか、事前に練習しておけばよかった……。

 失意のボールすくいを終えた後は、ベタベタすくい、射的と遊び系の屋台を満喫した。

「そんな落ち込まないでください」

 屋台を回り終わった後、サラが俺のことを慰めてくる。

「いや、そんなに落ち込んでないし」

 すべての屋台で失敗したことなんか全然気にしてないよ、俺は。子供の頃は、もう少しできたはずなんだけどなぁ。ということは裏を返せばそれだけ大人になったということか?

 謎な理論ではあるがポジティブシンキングでいこう。

「他にリュウさんにはいいところいっぱいありますから」

 そう言ってもらえるのはありがたいんだけど、そんなことを言われている時点でショックなことに変わりはない。

 失意の中とぼとぼと歩いていると、

「リュウおじちゃん!」

「おじちゃん!」

 クレアとカーセが歩いてきた。二人の手には、べっこうあめが握られている。

「二人とも射的で取れたんだな」

「うん、おとうさんにね、だっこしてもらいながらとったんだ!」

 クレアが嬉しそうに言う。

 俺も小さい頃はそんな風に射的をやってたっけな。

「二人とも祭りは楽しんでる?」

「うん! いままでやったことないあそびができてたのしいよ!」

「おれもたのしいぞ!」

 二人とも飛び跳ねるようにして言う。楽しんでくれているようだ。

 みんなにとっていい思い出になってくれるといいな。

「おれたちな、これからボールすくいにいこうとおもってるんだ」

 カーセが次の予定を教えてくれる。

「おじちゃんもいっしょにくる?」

「うーん……やめておこうかな」

 クレアに誘われたけどやめておいた。さっきの悲惨な結果が心に傷を残してるからね。

 またあの屋台には戻りたくないかな。

「わかった! おじちゃんもサラおねえちゃんもたのしんでね!」

 そう言い残すと二人はダッシュで屋台へと向かっていった。

 元気な子たちだよ。

 子供たちと別れて歩いていくと、何やら人だかりができていた。

「何かあったんでしょうか」

 サラが心配そうな顔をする。トラブルでもあったら困るからな。

 慌てて駆け寄ると、人だかりの中心にはレイと魔女のの人たちがいた。

「ご、五大竜の一体レインドラゴン!! このアミルと勝負だ!!

 アミルさんがレイに宣戦布告をする。顔が真っ赤だし、れつも回っていない。べろべろだな。

「ちょっと何言ってるんですの!」

 ユフィさんが慌てて止める。

 最近はメッキもはがれてきてはいるが、レイはケンカをしていいような相手ではないと思う。

「ふっ、よかろう。アミルといったかの。そなたの気概、気に入ったぞ。勝負を受けてやる!」

 マズい、レイも乗り気だ。これは周りに被害が及ぶぞ!!

 慌てて俺が間に入ろうとしたそのとき、二人が同時に叫んだ。

「「チーズ焼き早食い勝負じゃ(だよ)!!」」

 ……え?


「さあ! いよいよ世紀の一戦が行われます。司会は僕、ダミアンが行います。解説はサラさんに来てもらいました。本日はよろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願いいたします」

 なぜか、二人の早食い対決がパフォーマンス化されることになった。

 中央のステージに移動して机が並べられる。

 おまけに実況席まで設けられることとなり、解説にサラまで呼ばれることになった。

 魔道具があるから声は観客にばっちり届いている。

 祭りって盛り上がればなんでもいいってところあるよね。

「さあ、選手紹介を行いましょう。一人目はレイ選手。レインドラゴンとして世界にその名をとどろかせております。当然食欲も世界レベルなことでしょう」

 ダミアンさん、思ったより適当な解説だ。

「対するは、我らがアミル。しょっちゅう僕に迷惑をかける残念なやつですが、腐ってもSランクパーティーの冒険者。それに大食いと料理だけは得意です。負けられないところでしょう」

 身内なこともあって容赦がない。というか前半ただの悪口だし。

「解説のサラさん、どういうところがポイントとなるでしょうか?」

「そうですね、チーズ焼きは中がとても熱いことが特徴です。それをどう克服するかがカギになるんじゃないでしょうか!」

 サラもノリノリだ。それにサラも大食いだからな。妙に説得力がある。

「それでは、勝負を開始します。お二人とも準備はよろしいでしょうか?」

 ステージ上のレイとアミルさんは臨戦態勢を整えたうえでうなずく。二人とも真剣なようだ。

「時間は十分間。よーい……始め!!

 ダミアンさんの合図で二人が一斉にチーズ焼きを口の中に入れた。

「「あっっっっっっつい(のじゃ)!!」」

 二人ともんだ瞬間に叫ぶ。いやいや、食べる前に息吹きかけるとかしろよ。全然学習してないな。

「お──っと! 二人とも手こずっているようです」

 ダミアンさんの実況にも熱が入る。

 その後はそれぞれ口の中でハフハフさせたり、食べる前に割って冷ますなど工夫をしながら食べていく。

「おかわりください!」

「妾もおかわりじゃ!」

 一皿六個なので、皿が空き次第、次の皿を頼んでいく。

 二人とも譲らぬ一進一退の攻防だ。

「レイ様! 頑張ってくださーい!」

「アミルちゃん負けるな!!

 二人が真剣に食べている姿を見て、観客の応援にも熱がこもる。

 そして、

「三、二、一……終了です!」

 審査員としてダミアンさんが皿の数を数え始める。

 その様子をレイとアミルさんが祈るように見守る。

「結果が分かりました。レイさんが三十六個。アミルが……三十八個! 勝者アミル!!

うそなのじゃ────!!

「やった─────!!

 レイが膝から崩れ落ち、アミルさんはステージ上で飛び跳ねて喜んでいた。

 どんな勝負であれ、レイに勝つなんてアミルさんもすごいな。

「妾を負かすなんて大した獣人じゃ。アミルといったな。覚えておこう」

「いえ! またやりましょう」

 そう言って二人は固く握手をする。

「二人ともすごかったぞー!!

「また見た───い!!

 観客が大歓声でその姿をたたえていた。

 こうして、チーズ焼き早食い大会は幕を閉じた。

 ……いや、何これ?


 謎の早食い大会を見届けた後、俺たちはレイや魔女のの人たちのところを離れていた。

「アミルさん完全に酔っぱらってましたね」

 サラが苦笑いする。

「あとから大変なことにならなければいいけどね」

 あれだけ飲んで、限界まで食べたら悲惨な未来が想像できる。

 まあ、祈っておこう。

 次に見かけたのはジャスティン様とルナさんだった。

 ベンチに座って楽しそうに喋っている。

「そっとしておきましょうか」

「うん、そうだね」

 俺たちは二人に気づかれる前に離れた。邪魔するのも悪い感じだったからね。

 二人っきりで警備は大丈夫なのか? とも思ったが、ジャスティン様は元聖騎士だし、この村で一番強いみたいだから問題ないか。


「はい、お酒とチーズ焼き」

 俺は瓶ビールとチーズ焼きを二人前もらって広場の隅っこのほうのベンチへと向かった。

「ありがとうございます」

 サラが俺からコップとチーズ焼きを受け取る。

「それじゃ、お疲れさま」

「お疲れさまです」

 注いだビールで乾杯する。

「くーっ、うまい!」

 仕事終わりのビールは最高だ。

 普段はあまり酒を飲まないんだが、一仕事終えた後は飲みたくなるんだよな。

「このビールは本当に美味しいですよね!」

 サラも満足げに頷く。初めて出したときはサラも相当驚いてたもんな。

「サラ、口に泡ついてるぞ」

「あ、すいません」

 慌ててサラが口を拭いた。

「縁日もうまくいったみたいですね」

「うん、一安心だよ」

 広場を見ながらつぶやく。

 大人も子供もみんな食べたりしながらはしゃいでいる。

 ゴームの実で遊んでいる子もいるな。レイもその中に交ざって一緒に遊んでいる。

 この光景を見るために頑張ってきたわけだから、努力が報われてよかったよ。


「さて、そろそろフィナーレといこうか」

 一休みした後、俺は立ち上がった。

「まだやることがあるんですか? 予定ではこの後はジャスティン様の挨拶だけのはずですけど」

「あとで分かるよ」

 俺はサラを連れて中央のステージへと向かった。

 ジャスティン様から声を大きくする魔道具を貸してもらって、ステージの上からアナウンスを始める。

「皆さん、まもなく終了の時間となります。最後に終わりの挨拶をしたいので、ステージのほうに集まってもらえますでしょうか」

 俺のアナウンスを聞いて、少しずつ人が集まってきた。

 十分後にはほとんどの人がステージに集合してくれた。

「本日は、皆さんありがとうございました」

 俺とサラがお辞儀をする。

「この日のために協力してくれたすべての人に感謝したいと思います。さて、最後になりますが、私から皆さんにお見せしたいものがございます。皆さん、反対側を向いてもらってもいいでしょうか?」

 俺の指示でみんなステージとは反対方向を向いてくれた。

(レイ、準備はいいか?)

(いつでもいいぞ)

 レイからもゴーサインが出た。

「では、皆さん。最後に花火を楽しんでください!」


 ドーン!!


 俺の言葉を合図として、広場の奥のほうから花火が打ち上げられた。

 広場からざわめきの声があがる。

 みんな音の大きさと、花火の大きさに圧倒されているようだ。

「なんですかこれは!?

 サラも開いた口がふさがっていない。

「これは打ち上げ花火といって、俺の故郷では祭りのときに打ち上げるものなんだ」

 日本のお祭りの定番の一つだ。

 俺も祖父母の家の近くでやっていた花火大会なんかは子供の頃よく行ってたよ。

「で、でもこんなものどうやって?」

「これも俺のスキルにあったんだ」


 時は少しさかのぼる。

 ある日、縁日の準備中ステータスを見る機会があった。

「このフォルムチェンジにある大砲ってどんな性能なんだろう」

 ふとそんな疑問を抱く。

 ソルーンにいる間は使う機会がなくて、放置していたからね。

「試すのなら協力するぞ」

 レイと二人でいたときにそんな提案を受けた。

「じゃあ、やってみるか」

 せっかくだからということで、レイの目の前でフォルムチェンジしてみる。

 万が一のとき、レイならどうにかしてくれると考えたからね。

 フォルムチェンジをしてみると、現れたのは黒塗りされた大砲だった。

 俺が意識を向けると角度とかは自在に操れるみたいだね。

 そのときに見たステータスがこれだ。


 スキル 『屋台』 フォルム 大砲

 創造魔法 砲丸、花火(赤、青、黄、緑)

 収納魔法 創作収納 収容量36

 屋台魔法 透明化、フォルムチェンジ(キッチン、テント、大砲、射的、すくい、たこ焼き、精米機、馬車)、屋台召喚、屋台増殖


「花火か」

 これは祭りで使えるんじゃないかと考えた。

 そこでレイに頼んで、村から離れた場所に移動させてもらい、試しに打つことにした。

 大砲の発射口を地面に垂直になるように設置する。

 初めて使うスキルだけど、今までの経験上イメージすることが大切だ。

 大砲から花火が打ち上がる様子を想像する。

 ド──ン!

 見事に花火が打ち上がった。

 MPを10消費して一玉打ち上げることができるみたいだな。

 それに色は赤、青、黄、緑だったが自分でイメージすれば形も色もその四色の範囲内なら思うように変更することが可能だった。

 これなら花火の種類の幅も広がるぞ。


「それから、何回か練習を繰り返した後に祭りの最後でサプライズの計画を立てることを思いついたってわけ」

「なるほど、そんな経緯があったんですね」

「ちなみにレイ様はどこへ?」

「レイには安全のために大砲の下で待機してもらっている」

 万が一、火の粉などが地面に落ちたときに備えてのことだ。

 レイは真下から花火が見られると喜んでくれていたし、助かったよ。

「ちなみにジャスティン様にも許可は取ってるよ」

 さすがに誰にも言わずにやるのはまずいからね。

「どう? 驚いた?」

「本当にびっくりしました! とっても綺麗ですね」

「黙っていたがあったよ」

 たまにはサラも驚く側に回ってほしかったからね。

「でも、今度からは言ってくださいね! 心臓に悪いですから」

「分かった分かった。これからは言うことにするよ」


「これがリュウさんが地元で見てきた景色なんですか?」

 一緒に花火を眺めていると、サラがふとつぶやいた。

「違う部分もあるけど、大体一緒かな」

 ただ、懐かしさがあることに変わりはない。

 景品として手に入れたお菓子を片手に花火を見たこともふと思い出した。

 小学生の頃の話だからもう二十年近く前のことだけど。

「サラの村だとどんなことやってたんだ?」

「収穫祭とかはやってましたよ。ただ、リュウさんの作るような料理はないです。騒がしさだけは負けてませんけどね」

「それも楽しそうだな。俺も行ってみたいよ」

「喜んでお連れします。それに私もリュウさんの故郷に行ってみたいです」

「連れていけるのなら連れていきたいんだけどな」

「それってどういうことですか?」

 サラが不思議そうな顔をする。話すときが来たみたいだな。

「実は俺、他の世界から来たんだ」

 俺はサラに異世界から来たことを話した。

 ある日突然、ソルーンの街のはずれにやってきたこと。元の世界にはステータスというものがなく、まったく違う生活を送ってきたこと。この世界に来てからスキルを手に入れたこと。手探りの状態でパンを売り始めてそこでサラと出会ったこと。とにかくすべてを話した。

 一通り話し終えると、サラが少しうつむいて考え事を始めた。沈黙の時間が流れる。やっぱり話さないほうがよかったかな。そう思っていると、

「……やっぱりそうだったんですね」

 サラが納得したように顔を上げた。

「え、信じてくれるのか?」

 俺としてはそんな返事は想定してなかったんだけど。

「はい。リュウさんの話は聞いたことがないものばかりでしたから。それにスキルもとんでもないものですし」

 なんでも、サラは俺の作る料理とかを自分でも調べていたらしい。それでも分からないことが多くてずっと不思議だったみたいだ。でも俺の口から話してくれるまでは余計なせんさくはしないでいてくれたらしい。

「気を使わせていたみたいで申し訳ない」

「いえ。気にしないでください。それで、元の世界には戻れないんですか?」

「レイの話によると無理みたいだ」

 魔王討伐まで成し遂げた勇者が戻れなかったのなら、俺にその可能性はないと思う。

「そしたら、これからもずっとこの世界にいるってことですか?」

「ああ、そのつもりだ」

「そうなんですか……」

 少し気まずい時間が流れた。

「なんかこんな話して悪いな」

 せっかく楽しい縁日だったのに雰囲気を悪くしてしまった。

「いえ! なんというか……リュウさんには悪いですけど、少し嬉しいです」

「嬉しい?」

「はい。リュウさんが私に話してくれたってことは信用してくれているのかなと思って」

「もちろんサラのことは信用してるさ」

 他のみんなのことも信用しているが、やっぱりサラが一番だと思う。この世界に来てからいつも一緒だからな。

「それに、私にとってリュウさんはサート商会会長のリュウさんなんです。元の世界のことは分かりませんが、私は今のリュウさんとこうして仕事ができればそれで十分です!」

「ありがとう。俺もサラと出会えてよかったよ」

 正直に話してどんな反応が返ってくるか不安でしょうがなかったから、今まで喋ることができなかった。

 でも、気にせずにいてくれるのなら俺としては感謝しかない。

「そんな真顔で言わないでくださいよ! 照れるじゃないですか」

 サラが顔を真っ赤にする。

「悪い悪い」

 でも、おかげで心が随分軽くなった。なんとなくだけど、この先もサラと、そして商会メンバーと楽しくやっていけそうな気がする。

 そんなことをぼんやりと考えながら、打ち上がる花火を見続けた。


 二十分ほど花火を打ち上げた後、

「皆さん、これで本日の予定はすべて終了です。本当にありがとうございました」

「ありがとー!」

「最後のすごかった!!

 俺とサラが壇上で挨拶すると、みんなから再び歓声があがる。

「私たち以外にもジャスティン様をはじめ、レイや魔女のの人たち、そして村の皆さんのおかげです。最後に皆さんにも拍手をお願いいたします」

 拍手を終えた後、

「それでは皆さん、広場を閉場いたします。足元に気をつけてお帰りください」

 俺の指示で村の人たちはみんな自分の家へと帰っていった。

 こうして、俺たちの準備した縁日は大盛況で終わった。