次の日の午前、レイがやってくるのを村の入り口付近でのんびりと待っていると、

「おい! リュウ!!

 突然大きな声で呼ばれた。

 びっくりして周囲を見渡すと、ロンドさんたち『魔女のつえ』のメンバーが猛スピードで俺のところにやってきた。

「村は、村の人たちは無事なのか!?

 ロンドさんが俺の目の前に来ると息を切らしながら問いかける。

「村の方向にレインドラゴンが飛んでいったはずだよ! 通り過ぎたのかな?」

 ダミアンさんも疲れ切った顔で聞いてくる。

「レインドラゴンは来ましたけど、問題はなかったですよ」

 俺はとりあえずそう答える。

「レインドラゴンが来て無事なはずがありませんの。どういうことですの?」

 ユフィさんが食い下がる。

「詳しいことは中で説明します」

 俺は四人を屋敷の中へと招き入れた。


 椅子に座ってもらうと、とりあえず昨日あったことを全部説明した。

 カレーづくりをしていたら突然レインドラゴンが現れたこと。

 レインドラゴンがカレーを食べて気に入ったこと。

 村の問題が解決したこと。

 なぜか竜の契約を結ぶことになったこと。

 大体一通りのことを説明したところで、アミルさんが大きく深呼吸した。

「ごめん、全然言っていることが分からないんだけど」

 ……かれこれ二十分ぐらいかけて説明したはずなのに。

「じゃあもう一回説明しますね。まず、広場でカレー……」

「いやいや、そういう意味じゃないって」

 もう一度説明を始めようとしたら止められた。

「内容は分かったけど、内容が信じられないってこと」

 アミルさんが頭を抱える。

「全部ツッコんでるととキリがないから一つだけツッコむけど、なんで竜の契約を結んでるの?」

「いや、それは俺が聞きたいです」

 本当に意味が分からないと思う。

「子供の頃、皆が一度は憧れるものだ。竜の契約は勇者のあかしでもあるからな」

 ロンドさんが補足する。

「ってことは……リュウが勇者?」

 ダミアンさんが変な目で見てくる。

「いやいやいや、それはないですって」

 戦闘経験ゼロで一般人の俺がそんな勇者なんかなわけがない。


「リュウは想像以上の大物みたいだね。これまで名前が知られていないのが不思議なぐらいだよ」

 ダミアンさんがそう言った。褒められるとむずがゆいな。こっちとしては、カレーをあげただけだし。

「それにしても村が無事でよかった」

 ロンドさんがほっとしたようにつぶやく。

 話を聞いたところロンドさんたち、レイと戦ってからほぼ寝ずにここまで帰ってきたらしい。

 とりあえず寝たいということだったので魔女のの人たちと別れようとしたそのとき、五感とは違う直感でレイがここにもうすぐ着くことが分かった。

 前にはこんなのなかったから、多分竜の契約を結んだ影響だろう。

「レインドラゴンが来た!」

 俺が気づくのと同時にアミルさんが叫んだ。

 それを聞いた三人が慌てて屋敷の外へと飛び出した。


 俺も慌てて外に出ると、上空にはレイがドラゴンの姿でいた。

 それに対して魔女のの人たちは地上で警戒態勢を整えている。

 ロンドさんは全身が岩になっているし、ダミアンさんは巨大な水球を作っていた。

 アミルさんも剣を抜いて警戒している。

 このまま戦闘になったらどうしようと思っていると、

(リュウ、そこの四人に大丈夫じゃと伝えてくれぬか?)

 頭の中にレイの声が響いた。そういえば遠くにいても会話できるって言ってたな。

(でないと安心して降りられぬからな)

 確かにそうしたほうがよさそうだ。

「皆さんやめてください!」

 俺は四人に声をかけた。

「さっき話を聞いたけど、やめるわけにはいかないよ。あいつ俺たちを攻撃してきたんだから」

 ダミアンさんがレイを見つめながら返事をする。

「レイは攻撃しないと言っているので大丈夫です」

「レイってレインドラゴンのこと?」

 アミルさんが俺のほうを見ながら聞いてきた。

「はい、その通りです。だからやめてください」

 今度はもっと強めに訴えた。

「信じていいんだな?」

 ロンドさんが俺に確認してきた。

「はい、信じてください」

 真剣に俺も返事をする。

「分かった」

 ロンドさんはそう言うと全身岩だった姿を元に戻した。

 それを見て他のメンバーも警戒態勢を解いた。

(助かったのじゃ)

 レイのそんな声が頭に響く。

 それと同時に上空でドラゴンの姿だったレイが変身して幼女の姿になる。

 そしてゆっくりと地上に降り立った。

わらわがレインドラゴンのレイじゃ。よろしくのう」

 魔女のの人たちに向かって挨拶をした。

 みんな口を開けたまま驚いていた。

 うん、やっぱり最初はそうなるよね。

「お主たちに言いたいことはあるのじゃが、まずはやらなければならぬことがある」

 真面目な雰囲気でレイがつぶやく。

「やらなければならないことって?」

 一体なんだろう?

「決まっておるじゃろ! 今日のカレーを食べることじゃ!」

 レイがよだれを垂らしそうになりながらそう言い切った。

 カレーかよ!


「カレー! カレー!」

 レイがスキップしながら屋敷に入る。

「今準備するからちょっと待ってて」

 レイを昨日契約を結んだ部屋に連れていく。ジャスティン様にもそのことは報告しておいた。

 まだ用意をしたいことがあるからそれまでは任せると言われたので、俺と魔女のの人たちで応対することになる。

 ちなみにサラは食料を配りに行っていて屋敷にはいない。

 ちょっと心細いけどしょうがないね。

 俺は屋台魔法でカレーの入った鍋とご飯の入った鍋を取り出す。

 そしてそれらを皿によそうとレイの前に出した。

「うまい! やはりカレーはうまいのじゃ! 毎日食べても飽きぬ味じゃのう!」

 さっそくレイがカレーをがっつき始める。

 昨日レイが帰ってから、今後のためにと思ってカレーのストックを作っておいたけど正解だったみたいだ。

 それにしても、昨日の夜あれだけ食べて今日の昼前にもまたカレーを食べるってすごいな。

 俺だったらさすがに飽きる。

 小学校のころ一度だけ夕飯がカレーで次の日の給食もカレー、トドメに夕食が二日目のカレーのときがあったけど絶望でしかなかった記憶がある。美味おいしかったけどね。

 魔女ののメンバーはその食事風景を複雑な表情で見ていた。

 一応カレー食べますかって聞いてみたんだけど、今はいらないと言われた。

 確かにろうこんぱいでカレーは遠慮したいかも。


「今日もたくさん食べたぞ!」

 レイが飲み込むようにしてカレーを五杯平らげたところで満足してくれた。

「えーっと次はなんじゃったっけ? そうじゃ、お主たちじゃな」

 レイが魔女のの四人を見る。

「お主たち、妾の張っていた結界に勝手に入ったであろう?」

 レイによると、この森に移りんだとき自分のすみを湖に変えた後、周囲に認識阻害の結界を張ったらしい。

 これのおかげで、森に棲んでいる魔物には気づかれずに済んでいたようだ。

「そうか、それで村に魔物が襲いに来なかったのか」

 ダミアンさんが納得したようにうなずく。

 話を聞くと、強力な魔物がよそからやってくると通常は居場所を追いやられた生物が森の外に出て村を襲う出来事があったりするらしい。

 今回はその結界のおかげで影響がなかったみたいだ。

「派手に暴れたところで意味はないからの」

 レイが素っ気なく言った。

 やっぱりレイって結構平和主義だよね。

「それならなんで魔女のの人たちと戦闘になったの?」

 レイに質問する。

 性格的にそういうことはしないはずなんだけどな。

「それはな、こやつらが結界の中に入ってきたうえに戦おうとしていたからじゃ」

 そもそもレイの結界は相当な実力がないと突破できないらしく、おまけに武器まで抜いていたらそりゃ身を守るためには仕方がないかもな。

「ですが、私たちに向けてきた攻撃は威嚇なんて威力ではなかったですの」

 ユフィさんが強めに文句を言う。

「お主たちのような強力な冒険者どもに生半可な攻撃を仕掛けても意味はなかろう」

 確かにSランク冒険者相手だと攻撃もそれなりに強くなるよね。

「それに、お主たちが死ぬような攻撃はしておらぬ。ちゃんと調節したからの」

 レイもそこら辺は考えていたようだ。

「つまり……手加減していたと」

 ロンドさんが肩を落とす。プライドが傷ついたみたいだ。

「安心せい、ここ百年で会った人族の中ではお主らが最も強かったぞ。妾の攻撃をあれだけ受けてなお反撃してくる者はそうそうおらんからな」

 レイからお褒めの言葉があった。

「いや、それほどでも」

 アミルさんが照れる。百年に一度のパーティーと言われたらうれしくなるわな。

 話を聞いて納得したのか、魔女のの人たちも警戒心を解いてくれた。

 ここで戦いにならなくて本当によかったよ。


「ふぁぁ……僕たち寝てないから少し寝るよ」

 ダミアンさんが欠伸あくびをする。

「分かりました。ゆっくり休んでください」

 お疲れだった魔女のの人たちと一度別れた。

 俺とレイの二人きりになる。

「あの、聞きたいことがあるんだけど」

「ん? なんじゃ」

「竜の契約を結んだのがなぜ俺なんだ?」

 勇者以来の契約者が俺っていうのがどうもに落ちない。

 何かきっと他に理由があるんじゃないかなと昨日から思ってたんだよね。

 ちょうど二人きりだし、聞くのなら今しかない。

 俺がこの話を切り出すと、さっきまでおちゃらけモードだったレイが少し真面目になった。

「よかろう。お主、この食べ物をカレーと言ったな。これはどこの食べ物なのじゃ?」

 レイが逆に質問してくる。前に聞かれて答えられなかった質問だ。

「それともこの料理はリュウのオリジナルなのか?」

「いや、故郷の料理だけど」

 うそはつきたくないからこう答える。

「ほう、故郷の料理か。不思議じゃな。妾は長いこと生きておるからの。この世界のことはおおよそ知っておるがカレーは知らぬのじゃ」

 まずい、レイが痛いところをついてくる。

「それは……」

 俺が答えに詰まっていると、

「言えないのじゃな。やはりそうか……先に謝っておくと、妾は嘘をついておった」

「え、嘘?」

 特に気づかなかったぞ。

「実はな、妾はカレーを知っているのじゃ」

「カレーを知ってる?」

 おかしい、この世界にカレーはなかったはずだ。

「前に一度だけ食べたことがあるのじゃ。リュウ……お主、他の世界から来たな?」

 レイがとんでもない質問をしてきた。

「え、え。なんでそう思ったの? はは、そんなことあ……あるわけないだろ」

「……お主まさかそれで妾をだませたと思っておるのか? いくらなんでも嘘が下手すぎるぞ」

 レイがあきれたように言う。

 やっぱりバレたか。俺、昔から嘘が下手なんだよな。

「ああ、他の世界からやってきたんだ」

 もう言い逃れはできないので正直に言う。

「やはりそうじゃったか。ちなみに元の世界の名前はなんじゃ?」

「地球。その中でも日本という国から来た」

 言っても分からないと思うけどね。

「地球、日本。これは偶然とは思えぬのう」

 レイがうなる。


「実はの、昔、妾と一緒に戦った勇者が自らを異世界人だと言っておったのじゃ」

「え、それは本当なのか!?

 俺以外にもこの世界に来た人がいたってことだ。

「ああ。勇者としての名前はスカイと名乗っていたが、本当の名前は『そら』と言っておったな」

「多分同郷の人だ」

 スカイ、そら。確実に日本人だと思う。

「そいつは妾の知らぬ知識をたくさん持っておってな、その中にカレーというものもあったのじゃ」

 香辛料を使った食べ物で印象に残っているそうだ。

「ただ、リュウの作るカレーにはまったく及ばなかったぞ」

「ということはおそらく、自力で作ったからじゃないかな」

 この世界にある香辛料で試行錯誤したんだろうけど、再現しきれなかったんだと思う。

「その言いぶりだと、お主は自力で作ってないみたいに聞こえるのう」

 やっぱりレイは鋭いな。

 俺は創造魔法について話した。異世界人であることを知っているのに隠してもしょうがないからね。

「なるほどのう、それならば確かにリュウのほうが料理はうまいはずじゃ」

 レイが納得する。

「ちなみにその勇者は元の世界に帰ったのか?」

 俺にとって一番気になるのはそこだ。

 これが帰る手段を探す今のところ唯一の手掛かりだからな。

「いや、勇者はこの世界で死んだぞ」

 レイによると勇者も帰り方を探したみたいだけど、見つけられなかったらしい。

「ということは、俺も帰れない可能性が高いか」

 これまでも、もしかしたら帰れないんじゃないかとは心の片隅で考えていた。ただ、それと同時にいつかは帰れるんじゃないかとたかくくっている部分もあった。

 だから、いざ面と向かってその事実を突きつけられると少し心にくるものがあるな。

 俺が無言でいると、

「そう悲観することはないはずじゃ。スカイもこの世界での人生を受け入れ、魔王を倒した後は楽しく暮らしておったぞ」

 とレイが慰めてくれた。

 スカイはこの世界でしっかり人生を楽しんだみたいだ。

 そうだな、くよくよしててもしょうがない。

 この世界に来てたくさんの縁もできたんだ、これからの人生を楽しもう。

「初めの質問に戻ると、契約を結んだ理由はお主が異世界人だからじゃ。スカイのやつと同郷ならきっと面白いことをやると思ったからのう」

 レイが笑顔で言う。

 スカイはいわゆるチート無双系のスキルだったことと、魔王を倒したあとは人里離れたところでスローライフを送っていたため、地球の文化はほぼ広まらなかったそうだ。

 例外として武器とか戦術の知識はある程度普及したらしい。

 まあ、勇者の伝説を聞く限り魔王が統治する混乱の世だもんな、娯楽とか食とかそんな余裕はないか。

「そう考えると、文化を広めることが俺の役目なのかもしれないな」

 俺はスカイとは違った役割があるのかも。

「その手伝いをしてやるぞ、カレーを対価にもらうがの」

 レイがニヤリと笑う。まだ食い意地張ってるのかよ。

「ああ、これからよろしく頼む」

 こうして俺は新たな決意を固めた。

 この世界の人々を俺のスキルで笑顔にしよう。

 まあそんな使命感に駆られて行動するわけではないけど、目標の一つにしていきたいと思う。

 あくまで気ままにやりたいからね。

「ちなみにこのことは……」

「分かっておる。秘密にするぞ。お主にはなにかと都合が悪くなるかもしれないからの」

 レイが約束してくれた。理解が早くて助かるよ。


 その後、俺、サラ、レイ、ジャスティン様、ルナさんの五人で話し合うことになった。

 昨日約束したレイのおびについてだ。

「今回はこれを持ってきたぞ! 売るなり好きにしてくれ」

 レイが机の上に置いたのは一本の剣だった。

 ただ、両刃の剣ではなく片刃。そして少し湾曲している。

 日本刀だ。

「あの、この剣は?」

 ジャスティン様が不思議そうな顔をする。

「これは勇者が最初の頃に使っていた剣じゃ。別に妾は使わぬし、他の者の役に立つほうが勇者も喜ぶじゃろう」

 レイがそう答えた。

「ゆ、勇者の剣!?

 ジャスティン様が大声をあげて飛び上がった。

「これ本物ですか!?

 サラがレイに質問する。

「本物じゃぞ、妾が直接もらったからの」

「もしそうなら値段がつけられないんじゃ……」

 サラが頭を抱える。

 この世界で伝説になっている人物の剣なんて、値段がつけられるわけがないよな。

「ん? いらぬか?」

「いえ! ぜひ賜りたく存じます」

 ジャスティン様が返事をした。

 すごい貴重な剣だと思うけど、この剣だけじゃ困るよな。

「レイ、これじゃ村にお金入らないよ。何か別のものあったりしないかな」

 これは多分現金化できないからね。賠償としては使いにくい。

「そうじゃのう、そしたらこれなんかどうじゃ?」

 レイは自身のアイテムボックスから小石を取り出した。

 最初ガラクタかなって思ったけど、よく見ると透明なうえに光り輝いている。

「……ダイヤモンドの原石ですね」

 サラが唾を飲む。

 このサイズの宝石っていくらぐらいするんだろう。

「少なくとも七千万クローネはくだらないかと」

 七千万……十分すぎる金額だ。

「ちなみにこれってどこで手に入れたんだ?」

 普通の人が手に入れられるものではないからね。

「ん? 昔、空を飛んでおったら地上にキラキラしたものを見つけての。それがこれだったんじゃ」

 ……レイってエピソードまで異次元だな。

「こんなに貴重なものを二つもいただいて、感謝しかありません」

 ジャスティン様が頭を下げる。

「いいのじゃ、いいのじゃ。妾が迷惑をかけたからの」

「せっかくこのようなものをいただいたので、村にある教会のほうで飾らせていただきたいと思います」

 ジャスティン様は教会の中央に特製の台を作ると約束した。

「つきましてはレイ様にお願いが」

「ん? なんじゃ?」

「この勇者の剣をレイ様から受け取る儀式をやりたいなと考えています」

 ジャスティン様は教会で盛大に執り行うことを考えているみたいだ。

 そのときにレイから直接受け取る形にして、権威付けをしたいのだろう。

 確かにそうしたほうがはくがつくからね。

「いいぞ、やろうではないか」

 レイも承諾してくれる。

「ありがとうございます!」

 ジャスティン様も嬉しそうだ。

「儀式と一緒に村の人々も楽しめるようなことができればいいのですが……」

 ジャスティン様がそうつぶやく。

 楽しめるようなこと……そうなるとあれをやりたいな。

「あの、提案なんですが」

 俺はこの場にいる全員に向かって問いかけた。

 一斉にみんながこっちを向く。

「儀式をするとき、広場で縁日を開きませんか?」

 ジャスティン様に提案をする。

「縁日? 具体的にどのようなものですか?」

 確かにこれだけじゃ伝わらないよね。

 俺は日本の縁日のイメージをその場にいた全員に伝えた。

 たこ焼きとかいろいろ食べ物の屋台が並んでいたり、射的などの遊べる屋台も並べるあのイメージだ。

 頭にタオルを巻いたおっちゃんが作るお好み焼きが美味しかったりしたんだよな。

 小さい頃は軍資金が決まっていたから、全部の屋台を回ってからどの屋台でお金を使うか必死に計算したもんだ。

 だから子供の頃は近所の神社でやる年一回の縁日をすごく楽しみにしていたし、お祭りの雰囲気は大人になった今でも好きだ。

 もう日本の風景は見ることができないだろうし、ここで再現をしてみたい。

 縁日で使えそうなフォルムチェンジがあるわけだし、これを機会に試してみよう。

「それは面白そうだ!」

 ジャスティン様も乗り気になってくれた。

「楽しそうですし、ぜひやってみたいです。ただ準備が大変すぎませんか?」

 サラが聞いてくる。

 まず、屋台の設営や料理を作る手配。それに娯楽系の屋台を作るならその景品も必要じゃないかということだ。

「屋台そのものと食材についてはどうにかなるんだけど、景品のことを忘れてたな……」

 俺のスキルじゃ景品が作れないからな。

 どうしよう、食べ物系屋台だけだと祭りの魅力が半減する。

「ふふふ、そこは妾に任せるのじゃ!」

 話を聞いていたレイが急に立ち上がった。

「その景品とやらは妾が用意してやろう。ようは子供が遊べそうなものだったらよいのであろう?」

 レイは勇者の剣みたいな貴重なものから、誰も使わないようなどうでもいいものまでいろいろ収集する癖があるそうだ。だから祭りの景品に使えそうなものも持っているだろうということだ。

「たくさんありすぎてすぐには選べぬから、また後日持ってくるぞ」

 レイが嬉しい提案をしてくれた。

「ありがとう、助かるよ」

 これで景品問題は解決しそうだ。

「あと大事なのは費用の面ですね」

 サラが口元に手を当てながら考え始める。

 確かに縁日をボランティアでやることはできないからな。しっかり考慮しないと。

「リュウさんから聞く限り、縁日には二つの形態が考えられます。一つ目は各店舗ごとに代金をもらうやり方です」

 俺たちがハンバーガーの屋台を開いたように、商品を売ってその代金をもらうというやり方だ。

 まあ、普通だ。

「ただ、このやり方には少し問題があります」

 サラが説明を加える。

 このやり方だと各人の出費を伴う形になるので、水害の被害にあった今やるのは難しいのではないかということだ。

「そのため、もう一つの形態のほうがいいのではないかと私は考えています」

 サラが提案する形はジャスティン様が一括して屋台の費用を出すことで、村の人たちには無料で提供するというやり方だ。

 これなら村人全員が気軽に参加できる形になる。

「もちろんジャスティン様に負担がかかる形になりますが」

「費用についてはレイ様からいただいたダイヤモンドのお金から出したいと思います。すぐには換金できませんが、立て替える形で。それでよろしいですか?」

 ジャスティン様がレイに確認を取る。

「構わぬぞ、妾としてはこれは村の者にびを伝える良い機会じゃ。それに妾も楽しみたいからのう」

 レイも許可を出してくれる。

「ありがとうございます。リュウさんサラさんよろしくお願いします」

 よし、これでスタートラインには立てたな。

 もちろん、まだ細かなプランだったり、予算は組めていない。

 だからそれらの企画書についてジャスティン様からOKが出たら正式に開催できる。

「はい、こちらも頑張らせてもらいます」

 ちゃんと開催できるようにしっかり準備しよう。

「私もサポートさせてもらいます」

 サラもやる気になってくれた。

 それにしても、俺の思いつきをすぐに形にしてくれるサラには感謝しかない。

「サラ……あんた大きくなったのね」

 ルナさんが感動して涙を流す。妹の成長を喜んでいるみたいだ。

「あたしにいつもべったりで、夜中一人で寝られないからって私のベッドに忍び込んできたサラとは違うのね」

 サラそんなことしてたんだ、意外だな。

「ちょっとお姉ちゃん! 昔の話しないでよ!」

 サラが顔を真っ赤にしながら言い返す。

 うん、身内からの突然の暴露って恐ろしいよね。



 縁日を開くことが決まったのでさっそくスキルのチェックを開始する。

 ついてきたのはサラと、

「面白そうじゃから妾も交ぜるのじゃ」

 ということでレイも参戦する。

 ひとつずつ見ていこう。

「最初は食べ物系のほうから調べようか」

 フォルムチェンジを使って屋台をたこ焼き仕様に変化させた。

「うおっ! あぶな!!

 屋台のサイズが突然大きくなり始めたので慌てて飛びのく。

 最終的に元の中華ラーメン屋台から、縁日で見かけるたこ焼き屋の屋台になった。

 たこ焼き用の黒い鉄板が設置されていて、かなりの数を作れそうだ。

 屋台を覆う屋根兼看板の部分には何も書かれていない。

 これはまあ、あとで自分たちでデザインすれば問題ないな。

「これはどんな料理を作るんですか?」

 サラがたこ焼き板をのぞき込む。

「これはたこや……」

 いや待て、確か俺の創造魔法の中には魚介類は一切なかったはずだ。

 ということはたこ焼きではなくなるな。

「チーズ焼きというものを作ろうかなと思ってるんだ」

 中身はチーズにすることにした。

 意外とチーズのコッテリ感とソースの甘さの相性がいいんだよな。

 それを食べたときのことを思い出しながら作業を開始する。

 俺は収納魔法の中から薄力粉、卵、青ねぎを取り出して、水、牛乳を入れて混ぜる。

 本当はダシとかも入れるけど、ないからそのままチーズ焼きの生地が完成だ。

 偉大なるソース&マヨネーズ様のお力で味はカバーしよう。

 チーズ焼きの中に入れるチーズをカットしたら下準備は完了だ。

「それじゃあ今から作っていくから二人は見てて」

 側面にあったつまみをひねると、すぐに調理に適した温度へと上がった。

 最初だから油は多めにひいていく。

 やり方の実演だからフル稼働ではなく十個の穴に生地を流し込んだ。

 生地が大体固まってきたら具材を入れて新たに生地を入れる。

 流し込んだ後、最初の生地を木串で少しずらしておくのがポイントだ。

 そうすると後で丸めやすくなる。

 あとは追加の生地を焼き固めながら少しずつ木串で回転させて球形に整えていく。

「よし、これで完成」

 完成したチーズ焼きを皿に移し、マヨネーズとソースをかければ出来上がりだ。

 とりあえず四個ずつサラとレイに取り分けた。

「いただくのじゃ!!

「熱いから気を……」

 俺の忠告を聞く前に、レイはフォークでチーズ焼きを突き刺し、一口で食べた。

「うまっ……熱いのじゃぁぁぁぁぁあああ」

 レイが口を開けたまま走り回る。だから忠告しようと思ったのに。

「これほどソースと相性のいい食べ物があるんですね」

 レイを反面教師にして、サラは先にチーズ焼きを割って中を冷ましてから食べ進めていく。

「あとは二人の番だな」

 メニューの合格はもらったから二人にもやり方を覚えてもらう。

「難しいのじゃ……」

 レイはうまく生地が回せず、ぐちゃっとした形になっていた。多分生地を回すのが早すぎたんだな。

「コツをつかめました」

 サラは一発で成功させていた。チーズ焼きづくりの才能があるみたいだ。

「……負けぬ、負けぬぞ」

 レイもサラに対する謎の対抗意識のおかげで形になってきた。

 これで最初の屋台はクリアだ。


「次はこれだな」

 たこ焼き板はイメージを変えると普通の鉄板に変わった。

 これでやれることの幅が広がる。

「鉄板といったらあれだろう」

 たこ焼きと並んで人気のあるお好み焼きだ。

 ちなみに俺は縁日グルメランキング、ナンバーワンだと思っている。

 俺の場合、お好み焼きはよく夕飯でも作っていた。

 具材を混ぜてフライパンで焼くと大きさも腹持ちもちょうどいいからな。

 薄力粉や卵に水を入れながらダマにならないように混ぜていく。そこに細切りにしたキャベツ、小口切りの青ねぎを入れていく。

 これで生地は完成だ。

 あとは豚バラ肉を鉄板で焼くのと並行して、生地を形を整えながら焼いていく。

 あとはソースとマヨネーズをかけたら、

「よし、これでお好み焼きの完成と」

 作ってて思うのは、どれだけ日本の食卓に魚介類が多く入っているのかということだ。

 お好み焼きにかける青のり、かつおぶしは海産物だ。

 なくてもできるけど、ないと少し物足りなさを感じる。

 早く魚介類を手に入れたいな。久しぶりに寿司とか食べたいし。

「これもうまいのじゃ───!!

「私はチーズ焼きよりこっちのほうが好きかもです」

 喜んでもらえてるみたいだし、今回はこのままいこう。

 いつかリベンジだ。


「次は娯楽系の屋台にいこう」

 まずは「すくい」と書いてあったフォルムチェンジをする。

 先ほどのたこ焼きの屋台にあった屋根部分と、金魚などを浮かべるための水槽が出来上がった。

 いろいろ試してみたところ、意識すれば勝手に水がたまることも発見した。

 MPポイントは消費するみたいだけど。

「これは何をするものなんですか?」

 サラが興味深そうに質問してきた。

「これは水の中にいろいろなものを浮かべてすくい取って遊ぶものなんだ」

 あ、そういえばポイがない。

 ポイを自分で作らなきゃいけないとなるとかなり手間になるな。

 そんな風に考えていたそのとき、

 ピコン!

 久しぶりに頭の中で音がした。

 こういうときはステータスを見るとヒントがあったりするんだよな。

 改めてステータス表示を見てみると、


 名前 リュウ

 種族 人間

 年齢 29

 レベル 50

 HP 9950/9950

 MP 46860/113900

 スキル 『屋台』 フォルム すくい

 創造魔法 ポイ

 収納魔法 創作収納 収容量36

 屋台魔法 透明化、フォルムチェンジ(キッチン、テント、大砲、射的、すくい、たこ焼き、精米機、馬車)、屋台召喚、屋台増殖


 創造魔法の欄にあったものがごっそりなくなっていた。

 フォルムチェンジをすると創造魔法で作れるものが変化することもあるのか。

 これは今まで知らなかったな。

 今まで使っていたキッチンとかだと創造魔法の欄が変わらなかったから気づかなかったんだろう。

 試しにポイをイメージしてみると、水槽の横に一つのポイが現れた。

 日本の祭りで見ていたポイはプラスチック製のものが多かったけど、今回創造魔法によってできたものは木製のポイだった。

 そして薄い紙が木の枠に張り付いている。

 実験としてポイを水の中につけ、動かしてみた。

 動かした向きに対してポイを水平にしたときは紙は破けなかったし、反対に流れに垂直にしたときにはすぐに紙が破けた。

 紙が破けて五秒くらいすると勝手にポイは消滅する。

 ゴミが増えないという意味ではありがたいな。

 ちなみにこのポイの消費MPは3だ。

 普通の創造魔法よりも作る難易度が高いってことなんだろう。

「今から見せるように、このポイという道具を使って景品を取るんだ」

 新たなポイを作り出したあと、サラとレイの前でもう一度実演した。

「結構難易度が高そうですね」

 サラの言う通り最初は難しいだろう。

 昔やったときは全然うまくいかなかったな。

 金魚なんて、追いかけているうちにポイが破れたりしたものだ。

 あとは景品の準備だ。

「レイ。この中に入れられる水中の生き物か、浮かべられる景品を探してきてもらってもいいかな」

 いろいろなものを持っているって言ってたし、何かいいものがあるかもしれない。

「分かったぞ、見つけてきてやろう」

 レイが了承してくれた。

 とりあえず、すくい系に関してはそれぐらいかな。

「最後は射的だ」

 フォルムチェンジさせて出てきたのは、これもまた縁日で見ていた射的の屋台だ。

 腰の高さから目線の高さぐらいまでの三段の棚とそこから一メートル弱の場所に台があって、その上に鉄砲が三つ置いてあった。鉄砲の横には皿も設置されてある。

 鉄砲は持ち運びができないように台とひもで固定されていた。

「これを使って棚に置いてある景品を撃ち落として獲得する遊びなんだ」

 ここでまた問題が発生する。

 弾がない。ということはこれも創造魔法かな?

 ステータス欄を確認してみると、


 創造魔法 コルク ラムネ


 とあった。予想通りだ。

 コルクの弾をイメージしてみると、弾が六発出てくる。

 試しに一つ鉄砲に弾を込めて、棚のほうに向かって撃ってみた。

 パン! という小気味よい破裂音と共に弾が前に飛んでいく。

「なるほど、これで景品に当てるんですね! 子供のおもちゃで似たような仕組みのものを見たことがあります!」

 サラも納得してくれたみたいだ。

 さっきのポイと違って弾は消えないのかなと思っていろいろ試してみた。

 結果として六発すべて撃つと弾は消えるらしい。

 ちなみにラムネは軽い木の筒に入った状態で棚の上に出現する仕組みになっていた。

 これで一種類確保することができたな。

 他の射的の景品についてもレイに依頼する。

 景品についてはほぼレイ頼みになりそうだけど、良さそうなものが見つかることを祈るばかりだ。


「それじゃあ、一度帰るぞ」

 レイが使えそうなものを整理しに行くと言い出した。

 数日中に戻ってくるとのことだ。

「何かあったら妾に呼びかけろ、念話ができるからな」

 そういえばそうだった。それなら安心だ。

 そう言い残すとレイは飛んで帰っていった。

「レイが探している間に俺たちでできることをやろう」

「そうですね」

 フォルムチェンジついては大体調べられたので俺たちは屋敷に戻った。


 屋敷の中へ戻ると一眠りし終わった魔女のの人たちとばったり会った。

「レインドラゴンはどこに行った? 魔力の反応もなくなったみたいだが」

 ロンドさんが聞いてきた。

「レイなら帰りましたよ」

 魔女のの人たちが眠っていた間のことを説明する。

「勇者の剣をくれただって!?

 剣の話になったところで、アミルさんが大きな声を出した。

「勇者はね、成長していく過程で剣を変えていったから何本かあるんだよ」

 言い伝えによると九本の剣を使ったらしい。

 そのうちの一本をこの村にくれたということだ。

「ちなみに現在確認されている別の一本はエルランド王家の宝物庫にあるんだよ」

 もちろん国宝中の国宝で一般の人はおろか、王家の人すら滅多に見ることができない。

 なぜ王家が持っているのかというと、勇者のパーティーが魔王を倒した後、そのメンバーの一人が建てた国がこのエルランド国だからだ。

 せんべつとして勇者からもらった剣を大事に受け継いでいるんだってさ。

 他の剣のうち、二本は別のところにあって、残る五本は所在が分からないみたいだ。

「アミルさんって詳しいんですね」

「当たり前だよ、剣士をやってる人なら誰だって憧れるよ!」

 アミルさん、熱心に説明してくれるのはありがたいんだけど、ちょっと顔が近いかな。

「おっほん!」

 サラが大きめのせきをした。

「あ、ごめん」

 正気に戻ったのかアミルさんが離れてくれた。

「せっかく近くにあるのですから見てきたらどうですか」

「うん、見てくるよ!」

 サラの提案を聞いて、アミルさんがジャスティン様のところへ駆け出していった。

「まったく、あいつはすぐに勝手に行動するからなぁ」

 ダミアンさんがぼやいていた。

 何か気になることを見つけるとお構いなく突っ走るらしい。

「話を戻しますと、ジャスティン様はその剣をもらう儀式をやるみたいです」

 それに伴って縁日を計画することも伝えた。

「いいね! それは面白そうだ」

 ダミアンさんも興味を示してくれた。

「ちなみに、ロンドさんたちはいつまでここにいるんですか?」

 今回のクエストの目的は達成できてるはずだからね。

「レインドラゴンの対処については解決したけど、俺たちには村の復興を手伝うという依頼も残されているからな」

 だから祭りが終わるくらいまではこの場に残ることができるみたいだ。

「ただ、一度ギルドに報告しに行く必要がありますの」

 確かにソルーンに何も伝えないってわけにはいかないからね。

「問題は誰が行くかだけど……」

 この村からソルーンまで行って戻ってくるのはなかなかの手間だよな。

「それなら手紙を出しましょう」

 一緒に話を聞いていたサラが提案してきた。

「手紙? でもそれって結局自分たちで運ばなきゃいけないじゃないか」

 本来なら馬車などで郵送がなされるみたいだけど、まだマイマイ村では馬車が復旧していないからね。結局自分たちの足で行かなければならない。

「大丈夫です。ですよね? リュウさん」

「俺? あ、そうか」

 今、カインたちと収納魔法を使って定期的に手紙のやり取りをしている。これなら時間もかからずに報告することができるだろう。

 俺のほうから魔女のの皆さんに説明すると、

「そんな遠距離に送れる空間魔法が存在するのか?」

「屋台さえあれば誰でも利用可能?」

「信じられませんの」

「使い方によっては世界がひっくり返るよ」

 魔女のの四人がかなり驚いていた。

 ただ、まあ驚かれることには慣れてきたな。

 最終的に、ロンドさんが手紙を書いてそれを送ることになった。で、それをハンナ経由で商人ギルドに届けてもらうことにした。そうすれば、冒険者ギルドのほうにも伝わるだろう。

「おかげでソルーンに戻る手間が省けた。感謝する」

「いえいえ、おそらく縁日のほうで手伝ってもらうことが増えると思いますが、よろしくお願いします」

「もちろん、僕たちにできることがあったら何でも言ってね」

「はい、ありがとうございます」

 魔女のの皆さんに手伝ってもらえるのなら百人力だ。



 次の日。

「これから第二回サート商会臨時会議を始めたいと思います」

「よろしくお願いします」

 ジャスティン様の屋敷の一室で俺とサラだけの会議が始まった。

「これ、会議って言う必要あるんですか? 普通に相談でいいような」

「……それは言わないお約束だ」

 なんとなく真面目な雰囲気を出したかっただけで、特に意味はない。

 気にしないことが大切だ。

「縁日について、今後どんな風に進めたらいいかな」

 さっそく本題に入って率直な意見をサラに聞く。

「そうですね、縁日を成功させるにはいくつかの工程を同時に進めていく必要があると思います」

 サラが説明を始める。

「まずは人手の確保ですね」

 俺とサラだけでは運営は回らないから、一緒にやってくれる人を探す必要がある。

 レイは手伝ってくれると言っていたし、戦力としてカウントしても問題ないだろう。

 伝説になっているドラゴンを祭りの戦力と考えるようになってきた時点で、俺も異世界に染まってきたなと思った。

 それも戦力の中身が戦闘力じゃなくて労働力だからな。

 元の世界にいたころは想像すらしたことないよ。

「魔女のの人たちにも協力してもらうとして、あと村の人たちにも手伝ってもらおうか」

 本来なら収穫の時期だが、今回の件で畑がダメになってしまったから手が空いている人たちも多い。

「はい。そして村の人たちに賃金を支払えば、復興に貢献できますから一石二鳥です」

 サラがノートにメモを取る。今回もサラが筆記係だ。

「あとは屋台を実際に営業する人も必要になります」

 最低でも屋台一つにつき二人。

 チーズ焼き、お好み焼き、すくい、射的を五台ずつ作るとしたら計二十台。

 少なくとも四十人、まあ余裕をもって六十人は屋台を営業してもらわないといけない。

「この六十人の方にはそれぞれの業務を覚えてもらったうえで営業してもらうことになります」

 つまり、当日だけでなく、研修期間も賃金を支払う必要があるということだ。

「具体的な賃金の内訳については私が計算しておきますね」

 サラがメモを書きながらそう言った。本当に助かります。

「人件費についてはこれぐらいにして、あとは物の費用かな」

「はい、そうなりますね」

 具体的には食材費と景品の費用だ。

「食材の費用については材料費ではなく、完成した料理の価格を基準にしましょう」


「いくらぐらいがいいと思う?」

 とりあえずチーズ焼きは六個。お好み焼きは一枚を一人前としたうえで値段を決める。

「ここでは少し安めに設定したほうがいいです。そうですね……四百クローネぐらいでしょうか」

「分かった、そうしよう」

 ここはサラのアドバイスを参考にする。今後この場所以外で屋台をすることになったらここでの話し合いを基準に考えていこう。

「今回はジャスティン様から一括注文が入っていると考えていいので、さらに安めに設定するのがいいと思います」

 というわけで最終的に一人前三百五十クローネで落ち着いた。この価格を基準にジャスティン様に費用を請求する予定だ。こうすることで、村の人たちが代金を支払う必要はなくなる。復興のためのものだからね。

「問題は、景品だな」

「はい……レイ様が何を持ってくるか分かりませんから」

 景品の費用は形式的にレイから買い取りという扱いになる。

 確かにレイは常識が通用しないからなぁ。石ころ感覚でダイヤモンド見つけるし。

 買い取れるものを持ってくることを期待しよう。

 その後も細かい相談をして、今回の話し合いは終了となった。

 あとはここでの話し合いをもっと具体的にしていこう。

「これで第二回サート商会臨時会議を終わります」

「「ありがとうございました」」


「あ、そうだ。リュウさんにお手紙が」

 会議が終わって立ち上がろうとしたらサラに呼び止められた。

「手紙?」

「はい、カイン君からです」

 この村に到着してからはサラに屋台を一台渡している。

 サラによると、向こうからは毎日一通定時報告としてハンナから手紙が届いているらしい。

 で、こっちの出来事はサラが話をまとめて報告しているみたいだ。

「今回は珍しくカイン君からリュウさん宛にということなので渡しますね」

 そう言ってサラが手紙を俺に渡してきた。



 師匠へ

 お久しぶりっす! カインっす!

 こっちは無事にやってるんで安心してほしいっす!

 気になるのがサラ先輩からの手紙っす。

 最初の頃は村の手伝いをしたとか普通に書いてあったんすけど、ここ数日の内容がおかしいっす。

 レインドラゴンが師匠のカレーを食べに来たとか、師匠と竜の契約を結んだとか、ありえないことばかりっす!

 昨日の手紙なんかレインドラゴンが村に勇者の剣をくれたとか書いてあったっすよ!

 もちろんサラ先輩のことは信じていますけど、師匠のほうからも説明を聞きたいっす!


 カイン

 追伸 新メニューを考えたっす! 帰ったら食べてみてほしいっす!



 まあ、新メニュー開発も含めて順調そうで何よりだ。

 ただ、どんな返信をしても信じてもらえないだろうなあ……。



 カインへ

 元気そうで何よりだ。

 くれぐれも無理はしないように。

 その調子で店を頼んだぞ。

 あと言っておくが、サラの書いていたことはすべて事実だ。

 帰ったら詳しく説明する。

 カインもレインドラゴンに会ったらいろいろな意味で驚くと思うぞ。

 期待していてくれ。



 リュウ

 追伸 新メニューも楽しみにしている。



 手紙ではこんな感じかな。

 元の世界で紙媒体でのやり取りなんてそれこそ年賀状ぐらいしかやってなかったし、最近に至っては年賀状すら出さないことも増えたからな。

 こんな風に書くのは新鮮だ。

 まあ、カインの手紙はいつも通りな感じだったし仕事向けの書き方はサラに習うとして、今回はこれで出そう。

 俺は封をした後、屋台召喚をして収納魔法の中に手紙を入れた。

 これで今日中にはカインに届くはずだ。

「よし、返事も書いたことだし動くか」

「はい、まずは魔女のの方たちのところへ行きましょう」

 手伝いの依頼をしに魔女のの人たちのところへ向かった。


「リュウか。どうした?」

 魔女のの人たちのいる部屋を訪れた。ロンドさんが部屋の扉を開けて聞いてくる。

「実は昨日お話しした縁日の件で皆さんにお願いがあるのですが」

「分かった。中で話を聞こう」

 ロンドさんに招き入れられて中に入った。

「では私のほうから説明させてもらいますね」

 サラがその具体的な内容について説明を始める。

「一つ目が屋台の設置について」

 広場に屋台をそのまま置いても味気ないので、ユフィさんの植物やロンドさんのスキルで装飾をしてもらいたいなと考えている。

「二つ目が屋台の運営ですね」

 これは実際に料理や遊び方を覚えてもらって、店員役をやってもらうつもりだ。

「他にもお願いすることはあると思いますが、大まかにはこのようなことをお願いしたいです。もちろん、その分の報酬はお支払いしたいと思います。引き受けてくださいませんか?」

 話を聞いた後、魔女のの三人は数分相談した後、俺たちのほうを向いた。

「分かった。ぜひ引き受けよう」

 ロンドさんが快諾してくれた。

 よかった、強力な助っ人をゲットすることができた。

「ただ、報酬のことなんだけど」

 ダミアンさんが言葉を付け足す。

「お金はもらえないかな」

 予想外の言葉が返ってきた。

「お金をもらえないってどういうことですか?」

 こっちとしても働いてもらうからには正当な対価を渡したい。

「いや、僕たちクエストでこの村に来てるでしょ? リュウのする縁日は広い意味ではこの村の行事の代行だ。だから、『村の復興』の手伝いとしてクエストの一部になると思うんだ」

 ダミアンさんたちの感覚だと、報酬の二重取りになっていると感じるそうだ。

「まあ、お金は受け取らないだけで手伝うので安心してほしいですの」

 そういう誠実な態度で、魔女のの人たちは今の地位を築いてきたんだろうな。

 こういう人たちと一緒に仕事をできるのはありがたいことだよ。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 こっちとしてはありがたい話だから素直に受けることにしよう。

 なるべく安い値段でジャスティン様には提案したいからね。

 ちなみに、商人側のクエストと縁日の兼ね合いについてはサラのほうで調整してもらっている。こういう面でも本当にサラは頼りになるな。

 細かい話をしたあと、俺たちは部屋を出た。

「あとはレイが来てからかな。あとどれぐらいで来るんだろう」

「気になるならレイ様と連絡を取ってみたらいいんじゃないですか?」

 サラにそんな提案をされた。

 確かにその通りだ。さっそく聞いてみるか。

「どうやって呼べばいいのかな? おーい! レイ!!

 とりあえず大きな声を出してみた。

 ……。

 反応はないな。なんか一人で誰もいないところで叫んでいる変な人って思われそう。

 よし、やり方を切り替えよう。

(おーい! レイ!)

 今度は心の中でレイのことを呼んでみた。

(ん? なんじゃリュウか。どうした?)

 レイの声が聞こえてきた。成功したようだ。

(景品は見つかりそうか?)

(安心せい、しっかり選んできたぞ! これから村に向かうところじゃ)

 レイが嬉しいお知らせをしてくれる。

(それならよかった。助かる)

(なに、礼には及ばぬ。その代わり……)

(はいはい、今日もカレーね)

 なんとなく言いたいことがピンときた。

(な、なんで分かったのじゃ!? ひょっとしてお主、心が読めるのか!?

 レイがうろたえる。

(いや、俺じゃなくても誰でも分かると思うぞ)

 レイから俺に対して何か頼むときは99%カレーだからな。

(お主よりはるかに長く生きておる妾がもてあそばれるとは……)

 なんか一人で勝手に悔しがっている。

 それにしても、レイって見かけ通りに性格も子供っぽいんだよな。

 まあ親しみやすくていいけどね。

(分かった分かった。作っておくから)

(本当じゃな! 楽しみにしておるぞ!)

 もう機嫌が直ったみたいだ。

 うん、やっぱり子供だな。

(お主今何か言ったか……?)

(いや、何も)


 レイはきっかり十分後にやってきて、いつも通りカレーをひと鍋からにしたところで本題に入った。

「レイも来たことだし、景品を決めていこうか」

 今回の祭りに必要なものは、射的用の景品と、すくい用の景品だ。

「まずは、俺のほうから。射的用のお菓子の提案だ」

「お菓子ですか」

 ここまでお菓子はラムネだけだからね。もうひと種類は欲しい。

「それでなんの料理を作るんですか?」

「べっこうあめだ」

 水と砂糖を使ったシンプルなお菓子だが、これなら俺でも簡単に大量に作れる。

 それに創造魔法で作るのなら材料費はかからない。

 おまけに軽くてバランスも悪いから、撃ち落とすのも簡単だ。

「妾も食べてみたいのじゃ、早く作るのじゃ!」

 レイもノリノリだ。

 さっそく作っていこう。

 収納魔法から水と砂糖を取り出して、フォルムチェンジを使ってキッチンを作る。

 そして水に三倍から四倍くらいの砂糖を入れてひと煮立ちさせる。

 あとは型の上に置いた細い木の棒に、出来た煮汁をかけて冷ます。

 きれいにがせばべっこう飴の完成だ。

 最初に味見をしてみる。

「なるほど、こんな味なのか」

 実は人生で一回、調理実習でべっこう飴を作ったことがある。

 ただ、班の誰かが砂糖と塩のスプーンを間違えるという致命的なミスを犯したせいで、恐ろしく甘じょっぱい別の物体が完成したんだよな。

 それ以後べっこう飴は食べたことなかったけど、これなら今後も作っていいかも。

 どこか懐かしい味だ。

「はいどうぞ」

 俺はサラとレイに一つずつ渡す。

「うむ、シンプルじゃが甘くてうまいのう!」

「これならいくらでもなめられそうです!」

 うん、二人とも気に入ってくれたみたいだし、これでOKだ。

「ひとまずこれは決定でいいかな?」

「うむ、よいと思うぞ!」

「私も賛成です!」

 うん、二人からも賛同を得られてよかった。

「今度は妾の番じゃな。射的の景品はこれじゃ!」

 そう言ってレイが収納魔法から手のひらにのるサイズのものを取り出した。

「これは……フィギュアか?」

 木材を削り出来たドラゴンのフィギュアだった。

 若干粗削りなところもあるけど、子供が遊ぶおもちゃとしては十分な完成度だ。

「これはどこで拾ったんだ?」

「違うぞ、これは妾が作ったのじゃ!」

 レイが怒りながら訂正する。

「え! 作ったの?」

 だとしたらかなりすごいと思う。

「そうじゃろ、そうじゃろ! 暇だったときに作っていたのじゃ!」

 レイはそう言いながら十五センチ四方ほどの木片を取り出す。

「見ておれ、今から作ってみるぞ」

 レイは左手に木材をのっけると右手でなぞりだした。

 すると、レイがなぞった部分に切れ込みが入った。

「これはの、指先から細くて強い水流を当てておるのじゃ」

 なるほど、ウォータージェットの仕組みか。

 五分もしないうちに右手に剣を掲げた男の人が完成した。

「これは、もしかして勇者ですか?」

「そうじゃ、勇者が魔王に勝ったときのポーズじゃ」

 サラが子供の頃に読んだ絵本と同じ格好らしい。

「これはカッコいいですね」

 勇者を射的で撃ち落とすのはどうかと思うけど、置物だったり、ごっこ遊びには最適だな。

「ちなみにこれは一体いくらでいただけますか?」

「そうじゃのう。三百クローネでどうかの?」

「三百!? でもレイ様が作っている時点でもっと付加価値が……」

 確かにサラの言う通り、それだけでプレミアがつきそうだな。

「構わぬ。木材はどこにでもあるものじゃし、妾からすれば加工もそこまで手間ではないからのう」

 ということで、フィギュアの仕入れ値は一つ三百クローネということで話が決まった。

 これは射的の中でも当たりのモノだからね。少し高めだ。

「次はこれじゃ!」

 レイが袋の中に手を入れ、直径三センチほどの球を取り出す。

「これはなんですか?」

 サラから球を受け取りながら聞いてみる。

「これはゴームの実じゃ、この球はな、地面に落とすと跳ねるのじゃ!」

 レイが自慢げに言う。

「本当ですね! 自分の手元まで戻ってきます!」

 サラが楽しそうにゴームの実を弾ませて遊ぶ。

「そうじゃろ! そうじゃろ!」

 レイも一緒になってやり始める。

「そうか、スーパーボールか」

 今までこの世界でゴムを見かけなかったから諦めてたけど、あるんだな。

「なんじゃ、リュウは反応が薄いのう」

 レイがジト目で見てくる。

「いやいや、そんなことない。これはすごく使えるよ」

 スーパーボールすくいは屋台でも定番だから、つい反応が薄くなってしまった。

「もしやリュウ。これと似たものが元いた……フガ!」

 慌ててレイの口元を押さえた。

 危ない。サラにバレるところだった。

 サラにはいつか話そうと思っているんだけど、まだ踏ん切りがつかない。

 気持ちの整理がついたら話そうかなと思う。

(その話はしないって言っただろ)

 念話でレイに注意する。

(そうだったのじゃ、すまぬ)

(次から気をつけてな)

 まあレイも謝ったことだし今回は大目に見よう。

 レイの口元から手を放す。

 サラが不思議そうに見てたけどどうにかスルーした。

「……ちなみにこれがいくつあるんですか?」

 気を取り直したサラが質問する。

「そのことなんじゃがの、まだ数はそれほど多くはないのじゃ」

 レイのコレクションは数十個ほどらしい。すくいの景品としては少ないな。

「まあ、グラスランの森に普通に生えているから取りに行けば問題ないぞ」

「グラスランの森!?

 サラがぎょっとした声を出す。

「どうした?」

「リュウさんに説明すると、グラスランの森は伝説の陸の孤島です」

 エルランド国の国境付近に存在する六千メートン級の山々に囲まれた地域らしい。

 森そのものは穏やかな気候で、危険な魔物などはいないらしいが、それを取り囲む山々が険しすぎたり、危険な魔物が多すぎたりすることでまだほんの一部の人しか足を踏み入れたことがないそうだ。

「まあ、妾なら飛べばすぐだからの」

 レイが当然とばかりに言い放つ。やっぱり規格外だな。

「それと、その場所にもう一つ景品として勧めたいものがいるのじゃ」

 アイテムボックスの中にレイが手を入れると、中から宙に浮いた水球が出てきた。

 ダミアンさんが持っていたものに近い。

 その中に一匹魚が入っていた。

 全体的に黒いのだが、尾ひれは赤色や青色が混じっていてとても美しい。

「ベタベタという名前の生き物じゃ。これも同じ森にんでおるぞ」

 ただ、こっちの魚はグラスラン以外の場所にも生息しているみたいだ。

 そういえば熱帯魚にベタって名前の魚いたよな。

「リュウの言うすくいにちょうどいいサイズじゃないかの?」

 確かに金魚すくいならぬベタベタすくいにはもってこいだな。

「でも、一緒のスペースにいてケンカしたりしないか?」

 ベタはオス同士にそういう習性があった気がする。だから闘魚とか呼ばれてたはずだし。

「いや、そういうことはせぬぞ」

 異世界ベタはそういうことしないのか。それなら問題ないだろう。

「あの、リュウさんに質問があるのですが」

 サラが聞いてきた。

「このベタベタをポイを使って捕まえるのは確かに面白そうなのですが、捕まえたベタベタはどうするのでしょうか?」

「捕まえた魚は持って帰ってもらおうと思ってるよ」

 ただ、実際問題として飼えるのかな。

「レイ、ちなみにこのベタベタは何を食べるんだ?」

「雑食だからなんでも食べるぞ」

 それならばということで実験として、屋台を召喚し、収納魔法の中からドーム状のパンを取り出した。

 そしてレイが浮かべている水球の中に小さくちぎったパンを入れる。

 するとベタベタは餌と認識してパクッと食べてしまった。

 これならエサに困ることはないだろう。

 でも、すくいの装置にあったエアレーションが普及しているわけではないし家で飼うのは難しいかな。

「ちなみにじゃが、この魚は口からも呼吸できるぞ」

「え、そうなの?」

 それなら極端な話コップの中で飼うこともできるわけか。ここら辺も地球のベタとよく似ている。

 飼うハードルが一気に下がったな。

「これだけれいで飼いやすいのならば観賞用としていいですね」

 サラが頷く。

 レイによると実際にこのベタベタは生息している地域ではペットとして飼われているらしい。

「それなら、予定通り取った魚は持って帰っていいことにしよう」

 もちろん責任を持って飼うことができる人に限定するつもりだし、各自の判断で返してもらうことも可能にする。

 ここら辺は普通の金魚すくいと一緒かな。

「これもグラスランの森に取りに行く必要があるの。そうじゃ、せっかくならお主らも来るか?」

 森そのものは穏やかなところだから、いい息抜きになるそうだ。レイいわく一泊二日で戻ってこられるらしい。

 確かに、一応マイマイ村の復興そのものは落ち着いてきたし、休息を兼ねて行くのはありかもな。

「じゃあ、ついていこうかな」

「私も参加したいです! こんな機会またとありませんから」

 サラも乗り気だ。

「でも、どうやって行くんだ?」

 普通の人間が到達できるような場所じゃないってさっき言ってたし。

「それについては安心せい。妾がなんとかするからの」

「分かった。よろしく頼む」

 ということで、明日から二日間でグラスランの森に行くことが決定した。


 その日の夜、ジャスティン様とルナさんにそのことを報告する。

「グラスランの森、これまたすごいところに……」

 話を聞いたジャスティン様が驚いている。ジャスティン様も実力者だし、その場所へ行くことの大変さが分かっているのだろうな。

「でも、安全なんですか?」

 ルナさんが心配そうにレイに質問する。確かに妹を送り出すには不安だよな。

「安心せい。この妾がついておるのじゃ、万が一にも危険なことは起こらん」

 レイがキリッとした表情で返事をする。もっとも口元にカレーがついていて全然威厳はないが。

「気になるならお主もついてくるか?」

 レイが急にそんな提案をしてきた。

「え!?

 あまりの唐突な提案にルナさんがむせてしまった。

「連れていく人間をもう一人増やすことなど造作もないぞ」

「で、でも……」

 ルナさんが口ごもる。

「行ってきたらどうだ?」

 横からジャスティン様が勧めてきた。

「おかげさまで復興も大方進んできたし、少しは息抜きも必要だろう。今まで領主の妻として頑張ってもらっていたからな。それに、妹のサラと姉妹水いらずで話したいこともあるはずだ」

「私も姉と一緒に行きたいです」

 サラもその案に乗り気みたいだ。

「分かりました。そういうことならお願いします」

「やった!!

 サラが喜ぶ。

 こうして、四人でグラスランの森に行くことが決まった。

 マイマイ村に向かう時点でテントとかは準備していたし、新たに備えるものはないかな。