「げぇっ!? セレネ!?」
「……あぃ?」
シンニは思わず大声を上げた。自分は固い地面ではなく、羽毛で作られた簡易ベッドのような物に寝かされているらしいが、そんな事より、淡い月の光を溶かしこんだような、純白の長髪を見て心底驚いた。
間違いなく、意識を失う前に見た少女──セレネ本人だった。
セレネはシンニに抱きつき、一緒に眠っていた。まるで抱き枕に掴まるように、シンニの胸元に顔を埋めている。シンニが半身を起こすと、セレネも薄く目を開ける。
「あんたが……セレネ=アークイラ?」
「うん」
セレネはまだ半分寝ているらしく、目を擦りながら答えた。お優しい月光姫様が自分を助けてくれようとしていた所までは覚えていたが、まさか、抱きついているとは想像だにしていなかった。
というか、何故、セレネは自分に抱きついているのだろうかと、シンニは困惑した。
(まさか……温めてくれていたのかしら?)
確かに、シンニはろくに食事を取っておらず、体は冷え切っている。その凍りつきそうな体に、少女の体温は心地よかった。だとしても、見ず知らずの薄汚れた女に、自らの身を差し出すなどなかなか出来る事ではない。
(噂に違わず、自己犠牲の精神を持っているのね)
無論、そんなはずはない。あったらすごい。とりあえずシンニにベッドを貸したはいいが、よく考えたら自分が寝る場所がなくなった事に後から気付いたセレネは、「だったら一緒に寝ればいいじゃん! ヒャッホー!」という発想に至っただけだった。
そして、女の子と添い寝するなら、やはり胸に顔を埋めるのが人道だろうと考えるのは、セレネにとって自然な事だった。人道とは一体……。
とにかく、まだ殆ど膨らんでいないシンニの胸だが、その奥に眠るほんの僅かな隆起を、セレネは見逃さない。セレネのおっぱいソナーから逃れられる乳はないのだ。
「め、さめた?」
「え、ええ、お陰さまで」
そんな事とは露知らず、シンニは未だ警戒していた。だが、まだろくに動ける状態ではない。ここは体力の回復を計り、それからセレネを殺す。それまでは、せいぜい従順な振りをし、お優しい月光姫を騙そう。そう決めた。
「じゃあ、いこう」
「行くって……どこへ?」
「おふろ」
セレネは、間髪入れずそう答えた。