月光姫と呪われし魔女
白森。暖かな日差しが降り注ぐ新緑の季節でも、魔力の影響で草木が雪を被ったように純白に染まる、美しくも不思議な樹海。その中で、何か黒い染みのような物が地面にへばりついている。
よくよく見れば、それは染みではない。倒れ伏し、今にも息絶える寸前の一人の少女だった。人どころかエルフすら殆ど入らない白森の最奥部。暖かな日の光と、穢れなき白を拒絶するような真っ黒なローブに身を包んだ少女は、憔悴し、指一本動かせないようだ。
『お、おい! シンニ! くたばるんじゃねぇ! お前が死んだら誰が俺の世話するんだよ!?』
その横で、一羽のカラスがシンニと呼ばれた少女に対し、自分勝手な応援をしている。普通の人間にはガアガア鳴いているようにしか聞こえないが、シンニには、カラスの言葉がはっきりと理解出来ていた。
「ちくしょう……」