皆さんは私と同じような経験をしたことはありますでしょうか。
例えば学校から家に帰っている最中のこと。
「そういえば
私の学友たるサヤさんは口をとがらせながら「まったくもー。
家族間における日常的な出来事のお話。
どこにでもありふれている
「お
そして語られる話題はそれから妹であるミナさんの家での
「そうなんですか」
そんなお話を伺いながらも、しかし私はこのときまったく別のことを考えておりました。
先ほどのサヤさんの言葉を繰り返しましょう。
『そういえば昨日、冷凍庫に入れておいたアイスを妹にとられちゃったんですよー』
皆さんは例えばまったく関係のない話題の中で突然、「あ、そういえばコンビニで買ったプリンが
このときの私がまさにその状態でした。
(プリン……!)
ふいに
思い出した
家に帰ったら食べましょう。そうしましょう。甘い喜びがじわじわと私の頭を満たしていき、自然と表情が
というわけで私はサヤさんのお話に
「──話は変わりますけど、お風呂上がりで
「ふふふ……」
「え、何でちょっと
プリンに想像を
皆さんはこんな経験、ありますか?
「おかえりなさい、イレイナ」
そしてサヤさんと別れて一人になったあとはこっそりスキップをしながら夜道をたどり、家の
一日の
「今日はやけに上機嫌じゃない」
「ふふふ」と笑いを返しながら私は冷蔵庫へと直行しました。
ただ忘れられていたプリン一つを思い出すだけでこれほどまでに幸せになれるのに
「あれ?」
ぴたり。
開けたまま私はそのままフリーズしました。
顔に当たる冷たい空気。視線の先にあるのは
ではあるのですが、決定的なものが一つ、欠けていたのです。
──プリン。
「お母さん、冷蔵庫に、あったプリンは、一体どこに、あるんですか」
カタカタと
我が母は「?」と
それから何でもないことのようにさらりと言うのです。
「もうないけど?」
だから世界から戦争がなくならないんですね。よくわかりました。私は開けっぱなしだった冷蔵庫を静かに閉めつつ今日で一番大きなため息をつきました。
冷蔵庫で眠っているプリンに期待して帰ってきたのに、
皆さんには、こんな経験、ありますか──?
○
今日プリンが食べられることを心から楽しみにしていたのに。なぜ食べてしまったのか。一言くらい断ってくれてもよかったのでは?
元々はお母さんから頂いたお
しかしそんな私に対して、お母さんは悪びれることもなく、それどころか平然とした表情を浮かべながら言うのです。
「え? 食べたのはあなたでしょう?」
はい?
「今そういう冗談はどうかと思います」ふん、と顔を
ひょっとして、とぼけてやり過ごすおつもりですか?
「いやそうじゃなくて」
あからさまに機嫌を損ね始めた私に対して、しかしお母さんはいっそう不思議そうな顔を強めつつ、語りました。「あなたがさっき自分で部屋に持っていったんじゃない。晩ごはん前だからやめておきなさいって私が言っても聞かずに」
「はい?」
さっき、とはいつのことでしょう。「私、今帰ってきたところなんですけど」
「でもさっき確かにあなたが持っていったけど……?」
うーん? と
その様子からはおおよそうそや
互いの認識に何らかの行き違いがあるのでしょうか。それから詳しく事情を
それは今から十分ほど前。
お母さんがキッチンでお料理をしている最中のことでした。
「こんにちは」
たんたんたん、と
「あらおかえり。もう少しでごはんできるから待っててちょうだい」
お母さんも当然ながら私が帰ってきたのだと認識しました。ちょうど
直後に冷蔵庫が開けられました。
「まあ! いけません。プリンが食べてほしそうにこちらを見つめています」
「晩ごはん前だからほどほどにしておきなさいね?」
「さあプリンさん。こちらへ」
母の制止を聞くことなく、私と似た声の誰かはそのまま冷蔵庫からプリンを取り出しました。そこそこ楽しみにしていたのでしょう。彼女は上機嫌な様子で鼻歌を歌いながらスプーンを手に取り、それから背を向け、歩き出しました。
向かう先は廊下。
「……?」
自分の部屋で食べるつもりかしら。などと思いながらお母さんはチラリと視線を向けます。
視界の
何だかいつもと様子が違うような……? と引っかかりはしたものの、結局お母さんは深く考えるようなことはせずお料理に戻ってしまいました。
私が帰宅したのはそれからほどなくのこと。
「──というわけでてっきりあなたが食べたものだと思ってたんだけど」
「そんなばかな」
とてもとても困惑しながら答える私。
やれやれ
「もう少しましなうそをついたらいかがですか」
「うそじゃないもん」
「女の子みたいに拗ねてもダメです」
「本当にあなたみたいな子がさっきいたのよ」
いたのよと
「もしも仮にお母さんの話が本当だったのならば、私とよく似たよくわからない人が家に
「まあそうね」
「そんなことが本当にあると思いますか?」
「私もにわかには信じがたいわ。でもあったのだから
何故だかえへんと胸を張る我が母。
開き直るおつもりですか?
このとき私は話半分で聞いていたサヤさんの愚痴を思い出していました。
いいですか、サヤさん。冷蔵庫に置いてあったものを家族に勝手に取られたときの対処法を私がここで教示して差し上げましょう。
「わかりました。あくまで今の話を事実とするならば私にも考えがあります」
むん、と腰に手を当て、『
そこにいるんですよね? 私によく似たどなたかが。
事実ならばそれはそれは大変なことです。
実際に見てみようではありませんか。
つまり物的証拠をぶつけることで、相手のうそを
「しかしお母さん、もしも私の部屋に行っても誰もいなかった場合──つまりさっきの話がうそだった場合、その時はどうなるか、わかりますよね?」
「どうなるの?」
「代わりのプリンを買ってきてください」
「はいはい」
「あとお小遣いの
「さりげなく関係ない要求も追加してきたわね」
ま、いいけど。とお母さんは
あるはずもない可能性の話を論じていても仕方ありませんけれども、一応答えて差し上げましょう。
「その時は謝罪します」
「謝罪だけじゃ足りないわね」
「ならどうしろと」
「ちょっと高めのケーキでも買ってきてもらおうかしら」
「ふむ」
「あと
「ふむふむ」
色々と要求が多めですけれども──私はこくりと頷きます。
「ま、いいでしょう」どうせ私によく似た変な人などいるはずもないのですから。「何なら『私は母親に対してあらぬ
私は鼻を鳴らしながら
リビングに人が入ってきたのはそのときでした。
「ごちそうさまでしたー」
「え」
と間の抜けた声をあげる私。
「あ」
と口を半開きにする彼女。
身にまとっている服は黒色のローブ。
髪は桃色、少しだけ
「…………」
「…………」
つまるところ私と
より
ですから私はお母さんの方を向き直ったのち。
抗議しました。
「何でいるんですか」
「だから事実だって言ったじゃない」
○
お母さんの話が事実だったということは、すなわち私たちの家はいつの間にやら不法侵入されていたということに他なりません。
「これは大変なことですよお母さん」
私は一仕事終えたみたいな顔で息をつきながら語りました。見下ろす先には少女が一人。両手足を
ひとまず犯罪者である彼女が逃げられないように
「まさか本当に不法侵入されていたなんて……。しかも私の顔と声を
以前、テレビで見たことがあります。
とある民家に住む一人の男性が不思議な
そしてその後、撮れた映像を彼はチェックします。
原因は怪奇現象ではありませんでした。
──そこには
多分目の前の彼女も同じような類いでしょう。私たちの目に届かない範囲でこっそりと生活していたに違いありません。
「もごご、もごご」
何か訴えていますがそれはさておき。
「何やら
屋根裏を
「うん」頷く我が母。「ところでイレイナ」
「はい」
「ケーキは?」
「…………」
私は目を
過去の
「ねえねえ。ケーキは?」
「あ、今それどころじゃないのでやめてください」
「あと写真撮影もまだなの?」
「しっ! お母さん。今は大事な場面なのでそういうのはやめてください」
「謝罪もまだされてないわよ」
「間違えた? はて、何のことでしょう」
そんな最中にも私たちの下で縛られている彼女が「もごご」と呻きました。まあ大変。何と苦しそうなのでしょう。
今は言い合いをしている場合ですか? 違いますよね?
「ひとまず私の格好を真似ている彼女のガムテープを外してあげましょう。一体誰ですか? 年頃の少女の口にこんな物を貼ったのは」
そう、私です。
ぺりぺりぺりと即座にテープを剝がして差し上げました。
「あなたのお名前は?」
何とお呼びすればいいですか?
母との会話を中断しながら尋ねる私。
彼女はそれからゆっくりと口を開き、一言。
「わたくしの名前は──」
そして語られたのは、人名にしては少々
物の名前でした。
どこにでもあるような、何の変哲もない、物の名前でした。
「……え、どういうことです?」そういう変わった名前の方ですか?
対して彼女は「いえ」と首を振りつつ、
「物と同じ名前というか、わたくしは物でございます。イレイナ様」
などと言葉を並べるのです。
物そのもの? イレイナ様?
「より具体的に言うのであればイレイナ様の
「????????」
どういうことですか?
言葉を交わせば少しは何かわかるかと思っていたのですが、私の頭上に大量の『?』が浮かぶ結果となってしまいました。もはや何が何だかさっぱりわかりません。
助けてくださいお母様。
「イレイナ」
私を見つめ返すお母さんの表情は既に
「私も一つ聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら」
「はい」
頷く私。
そして彼女は私の肩に手を置いたのち。
言いました。
「写真撮影、いつするの?」
「いやめちゃくちゃしつこいですね」
○
「? どした、フラン」
スマートフォンに通知がきたのは
仕事の連絡でしょうか?
首を傾げるシーラをよそに私はスマートフォンを確認します。
「…………」
直後に私は
「どした」
再び尋ねるシーラ。
答えるよりも見せた方が早いですね。
「何だかイレイナからよくわからない画像が送られてきたのですけど」
掲げる私。
画面に映し出されているのは、いかにも不本意そうな表情を浮かべながら『私は母親に対してあらぬ疑いをかけてしまいました』などと書かれたかんばんを首から下げたイレイナと、その
「何やってんだあいつ」
「さあ……?」
意図がよくわからなかったので私はとりあえず『楽しそうでいいですね』と返信を送っておきました。
『楽しくないんですけど?????』
だそうです。
「何でキレてるんだこいつ」呆れるシーラ。
「さあ……?」
何だかよくわかりませんが大変そうですね……。
○
いえ、というより今はそんなことをしている場合ではないのです。
「すみません、もう一度お名前を言っていただけますか」
目の前で縛られている彼女に私は尋ねます。
私とよく似た顔立ちの彼女はやけに
「ほうきです」
などと。
…………。
何度聞いても
「つまりあなたは、物のほうき、ということですか?」
「左様でございます」
「にわかには信じがたいのですけれども……」
「ちなみにただのほうきではなくイレイナ様の所有物のほうきでございます」
「本当ににわかには信じがたいのですけれども……!」
一体何がどうなっているんですか。
「イレイナ様、小さい頃に家に置いてあったほうきを使って空を飛ぶ魔女の
彼女が投げかけてきたその言葉で私の
それは近所の
そう、私です。
「お母さん! 私ね、大きくなったら魔女になるの」
空など飛べもしないのに私は何度も試みました。
「ふふっ。なれたらいいわね」などと笑う母のそばで、何度も試みました。
現実世界で魔法使いになどなれるはずもないのに、どういうわけか私は将来、本気で魔女になれると信じていました。
だから昼間はほうきを持っておでかけして、せっかく空を飛ぶならとほうきにおしゃれな布を巻いてみて、夜になったらほうきをそばに置いて寝る。
幼い頃は確かにまあ、そんなようなことをしたこともありますけれども……。
「まさか……あの時私が大事にしていたほうきが人になった姿、とでも言うつもりですか……?」私はふむと一人考えました。
いやいや、そんなわけがありませんよね?
「いいえ、そのまさかです。イレイナ様。わたくしはイレイナ様が大事にしていたほうきそのものです」
「ええー」うそくさ……。
「信じておられないようですね」
「なんかその証拠とか出せるんですか」
「お言葉ですが、イレイナ様」得意げな表情のまま、自称ほうきさんは語ります。「イレイナ様が幼い頃に魔女の真似事をしていたことを知っている──わたくしがほうきである証拠などそれだけで十分ではありませんか?」
はい証明終了、と言わんばかりのほうきさん。
「いやイレイナが小さかった頃は魔女が主人公のアニメが
そして横からあっさり
「だそうですけど、ほうきさん」
「…………」
ほうきさんは無言で頰を膨らませていました。
ふてくされてる……。
「ちなみに他には何か証拠とかあるんですか」
尋ねる私。
息を吐き出して頰が元通りになったあとで、「もちろんございます」と頷いてから、彼女は表情を少々
「ただし今から説明することは
などと。
「いえいえ
「……本当ですか?」
「もちろんですとも。ねえお母さん」
ちらりと視線を向ける私。
「そうねえ」
頷く我が母。
(物を自称している時点で既に荒唐無稽ですし)
などと私がそのとき思ったことはさておき、それからほうきさんは「では……」と息を漏らしたあとで、語りました。
「──わたくしは物ですので、物が語る言葉を読み取ることができます」
「へえー」
私とお母さんはそろって頷きました。
ちなみにこのときの私たちの心情は以下のようになっています。
(
(イレイナの周りってどうして変わった子が多いのかしら)
「その様子、信じておられないようですね」
私たち二人を頰を膨らませながら見つめるほうきさん。おやおや人の気持ちすら読み取ることができるのでしょうか。すごいですね。
「なんか証明とかできるんですか?」
「もちろんでございます」
「ほほーう。じゃあやってみてください」
さあさあどうぞ、と私はそれからテーブルの上に置いてあったマグカップを指差しました。「試しにこれがいつどこで買われたものなのか当ててみてくださいよ」
「構いませんが、もしも当てたらどうします? イレイナ様」
「ふっ……、私の全財産あげますよ」
どうせ無理でしょうけど!
「こちらのマグカップはイレイナ様が小さい頃にテーマパークに行った際にお母様にねだりつづけて仕方なく買ってもらった
「すみませんでした」
謝罪しました。
「あら、当たってるわ」感心するお母さん。
「ちなみにこちらのマグカップは未だにイレイナ様のお気に入りであり、洗う時もとても
「あらまあ」
すみませんでしたってば。
彼女がほうきであるかどうかはさておき、ひとまずただ単に私に似ているだけの女の子、というわけではないのでしょう。
ほうきさんと私を見比べながら、私の母も「ふむ……」と気難しい表情を浮かべていました。
「あなたいつの間に物とお友達になったの?」
いえいえ。
「まったくもって記憶にないです……」
ゆえにほうきさんから昔からの親友かのような表情を向けられても私は少々困ってしまうのです。何せ初対面なのですから。
「そんな……!」
きっぱりと語ったところ、ほうきさんはたいそうショックを受けておいででした。「ううっ……わたくしとの美しい思い出の数々を忘れてしまったのですね、イレイナ様……」
しくしくと涙をこぼすほうきさん。
「そうですよね。わたくしは
「言い方がちょっといかがわしいですね」
「イレイナ様にとってわたくしなんて用事が済んだらポイ捨てされるだけの行きずりの関係に過ぎなかったのですね……!」
「言い方がだいぶんいかがわしいですね」
わざと
「イレイナ、あなた……」結果お母さんに引かれました。
「いや言葉の
ため息で返す私。
少なくとも私は今までの生活において、私と髪の色以外の見かけがよく似ているローブ姿の私というものを見たことがありません。
私の記憶が正しければ、初対面であることは間違いないはず。
「ふむ……」
けれど私の隣で、お母さんは頰に手を添えながら眉根を寄せていました。「確かに初対面なのだろうけど……何だかこの子、初めて会ったような気がしないのよね……」
初めて会った気がしない。
と言われましても。
「私と似たような姿なのですから当然ではないですか」
「ええ。まあ、見た目はね? でも、思い返してみれば何となく、日常生活の中でこの子が存在していたような気がするのよ」
「? どういう意味です?」
「この前見たテレビ番組のこと覚えてる?」
首を傾げるお母さん。
基本的に私とお母さんはいつも並んでテレビを見ていますから、彼女が頭の中に思い描いているものはすぐに私の脳裏にも映し出されました。
「屋根裏でこっそり生活していた不法滞在者の話ですか」
「そう。それ」
振り返ってみれば不思議な出来事がよくあったそうです。
例えば私が学校へと出かけた直後のこと。弁当を忘れていることに気づき、お母さんがメッセージを送ったところ、私から『バッグに入ってましたよ』と返信がきたそうです。
テーブルに置いてあったはずの
例えばリビングでうたた寝をしていたところ、誰かから
人の記憶はそこそこ適当なもので、例えば
弁当箱の例でいえばお母さんは「見間違いかしら?」と自己完結し、毛布の話でいえば「イレイナがかけてくれたのね」と考えて、それ以上疑問を抱くこともなかったのです。
屋根裏でこっそり生活をしていた不法滞在者の話も、そもそも住民がその存在を疑い始めたのは、住みつかれてから半年以上
人は存外、視界の外の出来事には
「要は普段は裏で行動をして、どうしても私の前に出なければならないときはイレイナのフリをして活動していた──大体そんな感じかしら?」
お母さんはほうきさんの行動をそのようにまとめました。
「……さすがはお母様です」
参りました、と言わんばかりに笑みを浮かべるほうきさん。
彼女はそれから観念した様子で語り始めます。
「そうですね。わたくし、実は少し前からイレイナ様の生活をこっそりサポートさせていただいているのです」
「他にも色々してるのね?」
「左様でございます」
「具体的にはどんなことを?」首を傾げるお母さん。
「例えば本日でいえば冷蔵庫に忘れ去られていたプリンをイレイナ様の代わりに食べたりしました」
プリン!
途端に私の中に眠っていた怒りが再び頭をもたげました。忘れていました。私は彼女にプリンを横取りされているのです。これのどこがサポートだというのでしょう。
「あれ今日帰ったら食べようと思っていたものなんですよ、ほうきさん」
「イレイナ様」
「何ですか」
「賞味期限、切れてます」
「何ですって……?」
見れば確かに、ほうきさんの傍に置いてあるプリンに
「わたくしはイレイナ様がお腹を壊さぬようにお守りしたのです……」
「あなたは何ともないのね」首を傾げるお母さん。
「わたくしは物ですゆえ……」
「よくわからない
苦笑するお母さん。
ちなみに興味本位で尋ねますが、
「他にはどんなことをしてくれていたんですか?」
先ほど挙がった例やプリンの話はあくまで私やお母さんが認知できた部分の話。彼女の口ぶりから察するに、裏ではより多くの補助をしてくれているのでしょう。
しかし不思議な話ですね。
「補助を受けたような記憶があまりないのですけれども……」
普通に生活を送っていても私は彼女の気配を感じたことがほとんどないのです。私が鈍感なのでしょうか?
それから彼女は「ふむ」と考えたのち、
「色々やっていますね」と口を開きます。
「色々って何です?」
「言ってしまってもよいのですか?」
おやおや
ひょっとして実は自身の利益になることも色々やっているのでは……?
プリンの件も実際のところ賞味期限が一日過ぎているくらいであれば問題なく食べることは可能です。つまり私を守るという名目で自身のプリン食べたい欲を満たした可能性も
ゆえに私は毅然とした態度で言いました。
「ほうきさん。全部はっきり言ってください」
「……よいのですか?」
「もちろんです」
むん、と頷く私。
あなたが私のよき友人なのか、それとも私と同じく
「わかりました。では……」
そしてほうきさんは息を吸い。
これまでに行ってきたサポートの数々を、語るのです。
──それは例えばある春の日のこと。
「
一人一個限定のパンを何度も購入できる
「……イレイナ?」
「なんでもありません」冷たい笑みを浮かべている我が母に愛想笑いで返す私。「ほうきさん。別のお話にしてもらえますか」
「かしこまりました」
