いっけなーい。
などと言いながら通学路を歩く少女が一人おりました。
「いやーやばいですねー」
しかしながら遅刻寸前というのに特に気にせずのんびり歩いている彼女は一体誰でしょう?
そう、私です。
ここから学校までの
が、私は
やはり無類のパン好きを
「…………」
私は相変わらずもぐもぐと食べながら、のんびり道をゆきました。
いつもより少しだけ遅めの朝のことでした。
○
みなさんこんにちは、サヤです。
え? ご存じでない?
──曲がり角でぶつかるアレ。
1、まず遅刻寸前の生徒二人を用意してください。
2、遅刻寸前であるため当然ながら二人とも学校へと急ぎます。
3、曲がり角でぶつかります。
4、フォーリンラブ。
はい。
大体こんな感じです。古今東西のラブコメディにおいてこのような展開は何度も使いまわされ
そして
……恋に落ちる!
大事なことなのでもう一度言いました。
ぼくがここ最近読んだ
更に言えばここでぼくとイレイナさんがぶつかれば多分結ばれることになるということでしょう。
イマジン。想像してみてください。
「いっけなーい! 遅刻遅刻ー!」
走るぼく。
曲がり角に差し掛かります。
直後、死角から現れた灰色の髪の美少女と
「きゃーっ!」
彼女ともつれ合うようにしてぼくたちは倒れます。
「いたた……」顔を上げる彼女。至近距離でぼくと目が合います。
「い、イレイナさん……」
どきりと
あれれ? イレイナさんってこんなに美人でしたっけ……。
「……さ、サヤさん」
きっとイレイナさんもぼくと同じなのでしょう。彼女の
ぼくは曲がり角の少し後ろからクラウチングスタートの姿勢をとって待機しながら勝利を確信しました。
イメトレは完璧です。もはやぼくの
「おりゃっ!」
それからぼくは駆け出しました。
ぼくの計算が正しければイレイナさんは今からおおよそ十秒後には曲がり角に差し掛かる頃合いであり、大体ぼくと衝突することは明白でありその後どうなるかは推し量るまでもないでしょう。
わーい、と両手を上げつつぼくは曲がり角に向かって突進。
そして道が開けたとき、予想通り、視界の端からこちらに向かってくる人影を一つ、ぼくは
○
「アヴィリア、急いで!」
息を乱しながらお姉ちゃんはわたしの少し先を走っていました。
体力がぽんこつなわたしはお姉ちゃんの
始業前。遅刻寸前。わたしたちは前日に
「早く早く、急がないと間に合わないよー!」
こちらに手を振るお姉ちゃん。
ところで話は変わりますけれど、
「お姉ちゃん、そんなに、急がなくても……、
息を乱しながらわたしは言いました。「こ、ここまで来れば、あとは歩いても大丈夫なのです……!」
お
学校が見える程度の距離までたどり着いています。あとは歩いても平気ではありませんか?
しかし、しっかり者のお姉ちゃんはわたしのちょっと先で頰を
「ダメだよ、アヴィリア。何が起こるかわからないんだから。急いでおいて
「で、でもぉ……お
きゅるるるる、と
朝ごはんを抜いてきた上にひたすら今に至るまで走り続けたせいでいよいよわたしのお腹も『はぁー、とっととごはんが食べたいのです』とグレ始めてきてしまいました。
「大変そうですねえ」
もしくはわたしたちのやりとりをすぐそばで
「おいしそう……」
ふらふらとイレイナさんへと吸い寄せられるわたし。パンの
「
などと遠くの方でお姉ちゃんが言ってる気がしますが、
「何ですか? 私のパンが欲しいんですか? ほらほら」などとイレイナさんが誘惑してくるせいでお姉ちゃんの声が距離よりも割り増しで遠くに感じます。
「ぱ、パン……」
「そうですよー。焼きたてあったかなパンですよー」
わたしの前でパンを
しかしわたしが朝食を頂くことは結局できませんでした。
「もー、イレイナさん。うちの妹を誘惑しないの」
ぐい、とわたしを引っ張るお姉ちゃん。その様子はまさしく迷う子猫を捕まえる親猫の如し。
誘惑してきたイレイナさんに対して頰を膨らませながらも、お姉ちゃんは「イレイナさんも急がないと遅刻するわよ」と
そしてその上で、
「よかったら
と提案すらしていました。
「いえ私は大丈夫です」
この外道!
なぜ一緒に行かないのですか、とわたしが睨むと、イレイナさんは、
「私って汗かくと溶けて死んじゃう体質なんですよねぇ」と意味不明なことを言っていました。
「いみわかんねえのです」
毎年夏に死んでるんですか?
そして聖母ことマイシスターことお姉ちゃんはそんなイレイナさんの意味不明な言動を華麗にスルーしながら、
「でもイレイナさんもなるべく急がないとダメだよ? 何が起こるかわからないんだから」と普通に心配してあげていました。
「
手を振るイレイナさんでした。
それからお姉ちゃんはわたしに振り返って
直後にお姉ちゃんが
「お、お姉ちゃあああああああああああああああああん!」
それは曲がり角にお姉ちゃんが差し掛かった
一体どれだけ急いでいたのかよくわかりませんが、その勢いは
「わあ……」
パンをもぐもぐしながら引いてるイレイナさんをよそにサヤさんは起き上がります。
「あ、アムネシアさん……!」
そのお顔は
