「何の用ですの? こんな場所に呼び出して」
「今日、君をここに呼び出したのは
名はロベルタ。
そんなあだ名からも簡単に
「あること……って何ですの?」
そして、だからこそ
人気者の彼が自身を呼び出した理由。彼女はそれがまったくわからなかったのです。
「…………」
こちらを見つめるショコラに対して、ロベルタはとっさに視線を落とします。他の女子生徒たちからの注目を浴びても、
だから彼は
自らの両手にはバスケットボールが一つ、
ショコラを呼び出した理由。
今日、この場所で彼女に伝えるべきこと。
それはとてもシンプルで、
やがて彼は意を決したように、再び顔を上げます。
「このシュートが決まったら、僕と付き合ってくれ」
「……!」
それはどこからどう見ても愛の
二人はそして、
今、この瞬間。
体育館は、二人だけの舞台へと姿を変えたのです──。
「…………」
「…………」
ちなみに体育倉庫にはそんな二人の姿を見守る二人の教師の姿がありました。
体育教師のシーラ。
そして国語教師もとい私──もとい、フランです。
私たちは顔を見合わせて語ります。
「何ですかこの
「あたしにもわからん」
一体なぜこのような状況になったのでしょう?
私はいったん、
それは一時間ほど前。私が職員室で普通に仕事をしていた時のことです。
『ちょっと体育館に来てくんない?』
シーラからそのようなメッセージが飛んできたのです。
私と彼女はいわゆる
ということで私は
『告白ですか? すみません。私、職場内恋愛はちょっと』
放課後の体育館ってそういう場所ですよね? 私知ってますよ。
『いや告白じゃねえよ!』すぐに返信がきました。
『それと
『だから告白じゃねえっつってんだろ!!』
まあ
『で、何のご用ですか?』
返信しながらも私は彼女が連絡をとってきた理由をこの時点で何となく察していました。学生時代からの仲ですからね。
『ちょっと体育倉庫の備品整理を手伝ってくれよ』
きっとこのような用だろうと思っていましたよ。
『はいはい』
私は簡単に返信を送ったのちに立ち上がります。
こうして私たちは体育倉庫にて二人で作業をしていたのですけれども。
一通り作業が終わった直後のことです。
まったく意味不明なことに私たちは体育倉庫から出られなくなっていたのです。
「──僕がこれからシュートする。それを見ていてくれ」
まさか本当に告白が行われるとは思いもしませんでした。
ほんの少し開けた
だむだむ、とボールが
「シーラ」
「なに」
「あのボールをだむだむするやつって何と言うんですか」
「ドリブル」
「どりぶる」
ロベルタ君はひたすらドリブルを繰り返していました。いつシュートするのでしょう? 少なくとも告白が無事に終わるまでは私たちはここを出るべきではないでしょう。
なぜならとっても
「どうでもいいけどとっとと出ようぜ。告白中だろうと関係ねえだろ」
私は天を
何とロマンのない同僚なのでしょう。私は
「待ちなさい、シーラ」
「何だよ」
「今、このタイミングで出ていくのは非常に危険です」
「危険……、って何で?」
私たちは教師である以上に学生たちの日々を見守る
というわけで私は扉に手をかけるシーラを押さえました。
「考えてみてください。今この瞬間に私たちが出たら、どんなことが起こると思いますか──?」
扉の向こうで
がらがらがら。
シュートのためにボールを構えるロベルタ君の前に現れる私たち。
「こらお前ら!」
教師らしく
「こんにちはー」
横から
「えっ、先生!?」
きっとロベルタ君はひどく驚くことでしょう。告白をしようとしていたら急に訳のわからない場所から教師が二人も現れたのですから。
「まったく……こんなところで何をやっているんだ?」
教師らしく
しかしそんな彼女に対して、ロベルタ君は首を
「……先生たちこそ、体育倉庫で何してたんですか?」
「えっ?」きょとんとするシーラ。
「二人でそこから出てきたってことは……僕たちが体育館に来る前から二人で中にいたっていうこと、ですよね……? 何してたんですか?」
「え、いや……別に何も──」
「なんかやましいことしてたんじゃないんですか……?」
「…………」
意表をついた指摘にシーラは
そしてこの場における
「もしかして二人って……、そういう関係……!?」
きゃー、と両手でお口を押さえて驚くショコラさん。
「いや、違う! あたしたちは断じてそういう関係じゃねえ!」
「
もはや一度されたら
「──こうして私たちは夜な夜な体育倉庫で密会している怪しい二人として学校中に認知されることとなるのです……」
「いやそうはならねえだろ!!」
しかし今、この状況において私たちが割って入るほど
「ともかく、私たちが今から出ていくのはおすすめできないという話です」ダメですよー? と
「じゃあどうすればいいんだよ」
「やはりここは告白が終わるまで待ってあげるべきではないでしょうか」
「でもあたし今日はとっとと帰って一杯やりてえ気分なんだよな……備品整理で
私は彼女の肩に手を置き
「まあまあ。気長に待ってあげましょう?」
そもそも告白シーンなんてそうそう長く続くようなものではありません。「こうして私たちが会話しているあいだにもシュートを決めてカップル成立しているかもしれませんよ?」
ほら、ご
私はシーラを扉の前まで
そこには二人の姿が──。
「ちょっと待て。一体誰の了承を得てショコラに告白をしているんだ?」
…………。
──三人に増えてる。
私とシーラは目を
体育館の出入り口。
そこにいたのは
「ロザミアか……」
ちっ、と
「ショコラに告白をする時は同じタイミングですると以前から話していただろう!
二人の間で以前からそのような取り決めがなされていたのかもしれません。
「私抜きで告白するなんて何様のつもりだ!」と
そんな彼女に対してロベルタ君は
「悪いね。恋は早い者勝ちなんだ」
何を言っているんですか彼は。
「早い者勝ち、か……」
彼女も彼女で意味不明でした。似た者同士ですね。
「あのう、二人とも……?」
おかしな様子の二人に
彼女の疑問はもっともと言えましょう。
「そもそも私、前からロザミアのことが好きで──」
「しっ──ショコラ。それ以上は言わなくていい」
「ロザミア……」
言葉を
そしてロザミアさんは彼女の気持ちすべてを
キメ顔で言いました。
「ここは
「あなた騎士じゃないじゃん……」
ちょっと
結局それから私たちが物陰から見つめる中で二人は互いにバスケットボールを手にします。
何ということでしょう。ただの告白シーンかと思いきや少々ややこしい流れになってしまったのです。
だむだむだむ──体育館の
「まさにダブルドリブルだな……」
「それはちょっと意味がわからないですけど」
あなたまで様子がおかしくなったんですか?
「しかし
あたし早く帰りたいんだけど、と繰り返すシーラ。直前に放ったよくわからないセリフは彼女の中では既になかったことになっているようです。
「ひとまずここは私たちの方で、何か
私は辺りを見渡します。
「……!」
そして直後に脱出のための
指差す私。
「は?」きょとんとした表情のシーラ。
振り返る彼女が目にしたもの。私が指し示す先にあるもの──。
それは着ぐるみ!
「あれを着て出てみましょう」
「誰が?」
「シーラが」
「何で?」
「いいですか? 私の作戦はこうです」
それではここで私の
「やあ(
着ぐるみを着て出ていくシーラ。
「きゃーっ! 着ぐるみですわ!」
「ははっ(裏声)」
シーラがそうして三人の相手をしている間に私がこっそりと現場から抜け出し、なんやかんやでうまい具合にシーラも逃げ出す……。
以上。
「
「どこがだよ!!」
「とりあえずやってみましょう、シーラ」
「失敗する未来しか見えないんだけど」
「
「失敗する未来しか見えないんだけど!?」
それはさておき。
「やあ(裏声)」
やってみました。
がらがらがら、と体育倉庫から三人の前へと飛び出す着ぐるみ装備のシーラ。
「きゃあああああああああっ!! バケモンですわ!!」
「
そして視界に収めるなりバスケットボールを投げつけてくる
「ぐああああああああああああああああああああっ!!」
シーラは体育倉庫の中に戻ってきました。というか吹っ飛んできました。
ふむ……。
「一体何がいけなかったのでしょう……?」
「全部だろ!!」
着ぐるみの頭部分を
「ひょっとしたら顔が見えなかったから化け物
「問題もっと他にあるだろ!!」
「今度は着ぐるみ抜きで裏声だけやってもらってもいいですか?」
「やだよ。絶対やらないからな」
「お願いします」
「あたし絶対やらないからな!!」
それはさておき。
「ははっ(裏声)」
やってもらいました。
がらがらがら、と普通に出ていって裏声で自らの存在をアピールするシーラ。
「え? なんかいきなり裏声で存在アピールしてきてきもいですわ……」
普通に無理……と青ざめるショコラさん。
「邪魔をするな裏声!」
そして声を聞くなり普通にバスケットボールを投げつけてくる殺意むきだしの二人。
「ぐああああああああああああああああああああっ!!」
シーラは体育倉庫の中に戻ってきました。というか吹っ飛んできました。
ふむ……。
「何がいけなかったというのですか……?」
「だから全部だろ!!」
その場で大いに声を
どうやら目立つ言動はすべてバスケットボールをぶつける対象になりかねないようです。
「ここは別の策を
私は考えました。
それではこれより私発案の華麗な脱出案の数々をご覧に入れましょう。
まず一つ目。
「とりあえず
体育倉庫の高い位置に小さな窓が一つついています。そこから出れば、体育館にいる三人と
「お前にしてはまともな提案じゃねえか」
頷くシーラ。
直後です。
「挟まったんだが」
挟まりました。
お
「あ、そのままじっとしていてください」
