週が明けた月曜日。
街の通りに美少女がおりました。
さらりと伸ばした
身にまとうのは
ところで話は変わりますが皆さんは『
きっと性格もお
「ふむ……」
やがて彼女は道の
目の前にはパン屋さん。朝から営業しておられる人気店で、彼女のもとにも焼きたてのパンの甘い
視線の先にはショーウィンドウ。ありとあらゆるパンがきらきらと輝きながら整列し、『イレイナちゃん、私を食べて!』と
でもそういうところもお
「ふふっ……」
やがて彼女は一人、くすりと笑みをこぼします。
きっとお店に並んでいるパンが彼女に対して
「やはり私は今日も可愛い──」
違いました。
ショーウィンドウに映る自分の顔を見ていただけでした。
完全無欠の彼女はパンに目がない女子高生でしたがそれよりも自分の顔が好みでした。パンを買うかどうかで悩んでいた最中に自身の顔が目に入り、それどころではなくなってしまったのです。
でもそういうところもお茶目で可愛いですよね!
などと。
そう、私です。
「──おはよーございます! イレイナさん」
からん、からん、と
視線を向ければそこには私と同じく紺色のブレザーを身にまとった女子高生が一人。
笑顔を
よく行動を共にする友人の一人。
「サヤさん」
でした。
…………。
一体いつから店内に……?
私がガラスに向かってにやにやとしながら
いやいやまさか。
そんなこと、ないですよね──?
「? どうかしましたか? イレイナさん。なんか表情がこわばってますけど」
……この
「サヤさん、ひょっとして今の、見ました?」
対して彼女は「はて?」と首を傾げます。
「え? 今の、って何ですか?」
はい。見られていませんね。
「ああいえ何でもないです。見ていないならいいんです」私は心の底から
一方で私のよき友人であるサヤさんはいつもの調子で私の
ニュースで見た記事やSNSで拾ってきたおもしろ動画や画像などの
「はいはい。今日は何ですか」
「裏ルートで入手した超ヤバい画像です」
「超ヤバい画像?」
何ですか?
画面をのぞき込む私。
「これ、誰だかわかりますか?」
そこに映し出されていたのはにやけた表情を浮かべながらガラスを眺める一人の美少女。
「そう、イレイナさんです」
…………。
「わあほんとですね。すごーい」
私は
「あああああああ!! 何するんですかイレイナさん!!」
「すみません手が
やっぱり見てたんですね。
見ていた上に画像まで撮っていたんですね。
「せっかく可愛く撮れてたのに……」
しょんぼりするサヤさん。
私は
「何言ってるんですか」
「今なんか
「いえ別に」何のことやら。
まあ
私も別に常日頃から自身の顔に自惚れているわけではないのです。
「ていうかお店の前で何やってたんですか? イレイナさん」
「ちょっと髪型を直してたんですよ」
「いや普通に『私は今日も可愛い』とか言ってた気が──」
「サヤさんこそ何やってるんですか、こんなところで」
都合の悪い言葉は
彼女は「えー?」と
「パン屋で買うものといったら一つしかないでしょう」
語るサヤさんの手にはパン屋で買ったと
なるほどなるほど。
「私への
「いや普通にぼくの昼食ですけど!?」
「お昼ごはんがクロワッサンとソーセージパンとカレーパンとメロンパンですか? 一気に四つはちょっと重たくないですか」
「何で袋見ただけで中身わかるんですか……?」
「私だからです」
胸を張って見せる私でした。
ちなみにこのお店の人気メニューはクロワッサンですよ、とも教えて差し上げました。例によってしたり顔でした。
「二人とも、お店の前で何してるの?」
そして私の説明の最中、お店の扉が再び鈴の音を鳴らしました。
中から出てきたのは
よく行動を共にする友人の一人。
「アムネシアさん」
でした。
手を振りつつも「あなたもいたんですか」と尋ねる私。
朗らかな表情でアムネシアさんは言いました。
「うん。二人で買ってたのよ」
「私への貢ぎ物を……?」
「いや普通に昼食だけど!?」
なんで貢ぎ物を買わなきゃいけないの……? とたいそう
「何で袋見ただけで中身わかるの……?」
彼女はたいそう戸惑っておいででした。
何でと言われましても私だからですとしか言いようがありませんね。
「アムネシアさん、アムネシアさん」
サヤさんが隣から彼女の
「なあに?」
首を傾げるアムネシアさん。
やれやれと肩をすくめながらサヤさんは言いました。
「そのリアクション、ぼくと丸かぶりですよ」
「だから何なの……!?」
「アムネシアさんは二人目なんですから突っ込みをもう少し
「わたし別に
彼女はため息を
私とサヤさん、それからアムネシアさんの三名は示し合わせているわけではないのですが、通学路も時間帯も
お二人には妹がそれぞれいますので、時々五人になったりならなかったりしながら、私たちは平日の朝を送ります。
新たに始まるこの一週間においても同じでした。
「そろそろ行きましょうか」声をかける私。
軽く
交わり合う言葉の多くが笑い声。視線を傾ければ見慣れた顔ぶれ。背後を通り過ぎていくのは変わらぬ街並み。そこにあるのはいつもの日常。
今日は一体どんなことが起こるのでしょう? どんな出会いがあるのでしょう?
期待に胸を膨らませながら、私たちは今日も、
「ところでイレイナさん、これ誰だかわかる?」
アムネシアさんが私にスマートフォンの画面を見せてきたのはちょうど
ふむふむ。
おもしろ画像か何かですか?
「どれです?」
画面をのぞき込む私。
「…………」
そこにいたのは例によってどこからどう見ても美少女そのもの。
「わあすごーい」
そして私は問答無用で画像を消しました。
「で、どれですか?」
「いや消すの早いわよ……!」
なにやらしたり顔で『私は今日も可愛い……』みたいな意味不明なことをぬかしている女子高生が一人いたような気がしましたが、一瞬だったのでよくわかりませんでしたね。
どれのことですか?
「もー。イレイナさんの可愛い画像、せっかく撮ってあげたのに」
頰を膨らませてわかりやすく
いやはやまったく。
「アムネシアさんは二人目なのですからもう少しボケを工夫してほしいです」
「だからわたし別に漫才をしにきたわけじゃないんだけど……!?」
何はともあれ私たちは今日も穏やかな日常を歩むのです。
いつもと同じように。
