「……何よ、勝手なんだから……ンッ」

 ものの数秒で、唇がふさがれた。何もかもぶちまけた以上、恬子も躊躇するべきことが何もなくなったんだろう。

「ンチュ……ん、んっ……きょーまぁ……ちゅ……ちゅちゅっ……」

「ン、ンフッ……ちゅううっ、ちゅ……恬子……んちゅ、ちゅ……」

 ただ無心に、唇を貪り合う。何年も『お預け』を食らってきたからか、いつまででも、その甘露を堪能できた。

 下半身は一息に繋がったきり、ほとんど動かしていない。スリットからわずかに漏れ出す純潔の証以外は、金縛りにあったかのように静止している。

 それでも、唇を吸い、唾液を交換し、舌で互いの口腔を犯し合っているうちに、膣内がじんわりと潤いを増していくのが感じ取れた。

「ちゅ……何だよ恬子、キスだけで濡れてきたのか……?」

「うるさいわね……アンタとのキスだからでしょ……ちゅ、ちゅるるっ……」

 身体の芯から温まるような、気持ちのこもった軽口の応酬。

 ──と、不意に恬子が、ガバッと身体を起こした。

「しまった! ……お祓い! 忘れてた!」

「えー? お祓いのことは、もういいよぅ……」

「そうはいかないわよ! すごく弱いけど、やっぱりアンタの身体の中に妙な霊気が残ってる!」

(……ああ……そうね。まだ、この間のローラさんの霊気が残ってるよね……)

 それを恬子の霊感がちゃんと察知したのであれば、無駄に抵抗しない方がいい。俺は無駄に押しとどめず、彼女がするに任せた。

「じゃあ、いくからね……ええと、おへその下の『丹田』に意識を集中して、相手の体内に残ってる霊気を、丹田で吸い込むようなイメージで……イタッ!」

「大丈夫か?」

「あ、あはは……処女膜破れるって、痛いのねぇ……次からは気をつけよう」

「次なんかあってたまるか」

「ぃよっ……く、うぅぅ……んっ、んっ……イ、イタタ……んふっ、ん、あ、あ……」

 破瓜の傷みに顔をしかめながら、それでも恬子は腰を上下に振り始めた。

 ゆっくり腰を上げて、サッと下ろす──それを繰り返す動きは、男の俺が見てても『初体験では痛そうな動きだなあ』と思うものだったが、恬子にとっては、霊気を俺の胎内から吸い上げるために必要な手順なのだろう。

「はふ……あ、あはっ……ちょ、ちょっとずつ……霊気がっ、こっち側にきた……っ」

 最初は苦しげだったその声にも、少しずつ余裕が戻ってきた。浄化が上手くいっている実感と、痛みがようやく楽になってきたことが、恬子の表情からも見て取れる。

「も、もうちょっと……は、あン……あれっ? 何かしら、この熱いヤツ……霊気とは違う感じ……」

「ん? それって、単に気持ちいいだけじゃないか?」

「アタシが? ……わー、恥ずかしい。経真とエッチして気持ち良くなるって、何だか出来の悪い漫画みたい」

「……そこはせめて『夢みたい』とか言おうぜ? ウソでもいいから」

「フンだ。どうせアンタだって、私と似たようなこと考えるんだから、気取ったって意味ないじゃない」

「うっ……そういうのはこの先、暗黙の了解にした方が良くないか?」

「んー、考えとく……んっ……あ、あはっ……やだ、ホントに気持ち良くなってきちゃった……このままっ、全部霊気を吸い取れればっ……」

 やがて──射精よりも弱い、不思議な喪失感が下半身にじんわりと広がる。

「あ……これは……」

「う、うん……これで、経真は眷属じゃなくなったはず。処女以外で同じことしようとしても、霊気が逆流して上手くいかないらしいんだけど……」

「ホントに一度きりのやり方なんだな……ありがとな」

「ありがとな、じゃないわよ。吸い込んだ霊気をちゃんと消し去るには、もう一段階必要なんだから」

「え、そうなの?」

「そうなのっ」と、恬子は俺の胸板に貼られていた呪符を、勢いよく剥がした。すぐさま、両手の自由が戻る。なるほど、俺の動きを拘束する理由が、恬子にはなくなったんだな。

「吸い上げた霊気は、術者の胎内で燃焼する必要があるんだって。ぶっちゃけると……ちゃんとイッて、初めてお祓い完了みたい」

「それって……ハードル高くないか? ただでさえ、初体験は痛いだろうに」

「だから、このやり方でお祓いできるパターンって、滅多にないらしいのよ。最愛の男性が悪霊に取り憑かれたりした乙女が、一度だけ使えるってことだから」

「…………」

「おい、聞いてんのか、おい。もっぺん説明しようか? さ・い・あ・い・の──」

「わーかったよ! ありがとよ、そんだけ俺のことを好きでいてくれてさ!」

 たまらず白旗を揚げる勢いで礼を言いつつ、俺は自由の戻った両手を恬子の乳房に伸ばした。

「やンッ!」

「あ、痛かった?」

「ううん、乳首に触られたらピリッときちゃって……あ、お腹の中に、気持ちいいのがジワッときてる……」

 確かに、胸を触った途端、俺を締めつけてる膣肉がさらに熱を帯びた感じがする。

「これなら、何とかイケそうか?」

「たぶん……ていうか、ちゃんとイカセてよ? アタシ、必死だったんだから」

「が、頑張ります」

 俺は正面から乳房を揉みしだきつつ、自分の方から腰を突き上げ始めた。

「はひンッ! あっ、じ、自分で動くのとっ、全然違うっ! い、痛キモチいいっ!」

 痛みに眉をひそめ、快感に声を上げる。相反する反応を交互に見せる恬子を、俺は気合いを入れて責め立てる。破瓜で傷めた部位をできるだけ責めないよう、やや角度をつけた抽挿で膣壁を刺激したり、乳房や背中、尻肉を指と手の平で間断なく愛撫する。

「昔、一緒に風呂に入った時はっ……ガリガリな身体だって言ってバカにしたっけなあ……くっ……」

「はっ、あっ、ああっ……おっ、おつか掴みながらっ、意味深なコト、言わないでよぉ!」

「いや……別にバカにしてるんじゃなくて、気持ちの良い尻になったなあって……」

「ほ、褒められた気もっ、しない──あひぃっ!! そ、そこ気持ちいいっ! お尻のっ、内側あたり、もっとムニュってしてぇ!」

 時に文句を言いながら、時に言い訳しながら、ふたりで気持ち良くなる作業は、楽しい。

 いつも馬鹿なことを言い合い、たまにケンカをして、すぐに仲直りをして──そんな長年の親友が、俺の突き上げで次第に『女の顔』になっていくさまに、感慨で胸が熱くなる。

「ああっ、そろそろイクっ、イクかもっ! き、経真っ、ちゃんと一緒にイッてねッ!? そ、それがっ、最後の仕上げだからっ……はぁン! アソコの中がっ、ドロドロに溶けちゃうよぉぉっ!!

 自ら腰を振り乱し、やや赤みの残った愛液を結合部からにじませながら、恬子はあえぎ声のトーンをどんどん高めていく。

 俺もその高まり具合に呼応して、怒張を突き入れる動きをさらに強めていく。

 みそぎで浴びた水と、恬子自身の汗が一緒に飛び散って、俺の胸板に降り注ぐ。ほんのりかんきつ系の香水を思わせる体臭がふわりと広がって、俺の興奮をあおり立てた。

 やがて──俺の肛門がギュッとすぼまり、最後の瞬間が近いことを予感させる。

 もちろん、我慢する必要はない。俺は結合が解けないよう腰をしっかりと抱え、さらに大きく腰を上下させた。

「ひぃぃっ!! すごいっ! 経真っ、霊気よりスゴイのくるっ! や、アソコの中っ、燃えちゃうっ!! ホントに燃えちゃうよ、あ、あ、あ、あああああああ──」

 そして、恬子の下半身が絶頂の痙攣を始める。その細かく激しい振動に翻弄され、俺の衝動がついに限界を超え──。

「てっ、恬子っ……ぐうううぅぅぅぅぅっ!!

「経真っ! 経真、あ、あぁっ……ああああああああああああっ!!

 膨張しきった亀頭の先端から、大量の精液が子宮目がけて噴き出した。

 ただでさえ熱しきった膣内に、灼熱の白濁がどんどん注がれ、満ちていく。

「ダメえええええええっ!! アタシ、ダメになっちゃうううううぅぅぅぅっ!!

 そして、恬子との長い付き合いで、一度も聞いたことのなかった種類の悲鳴が、俺の鼓膜と心をたっぷりと震わせた──。


「そ……そりゃ、霊気も焼き尽くされるわよね……」

 全てを解き放った俺の胸にしなだれかかり、恬子は茫然としたような、それでいて妙に納得したような口振りで呟く。

「男の子の精液が……あんなに熱いなんて思わなかった……」

「俺は、恬子があんなに可愛い声でくなんて思わなかっ──(ドムッ)げほぉっ!?

「……表現が下品」

「だ、だからって……ゲホッ、ゲホッ……みぞおちに頭突きはやめろぉ……!」

「……フフッ」

 涙目の俺の顔を見上げ、幸せそうに目を細める恬子。

「でも、アンタのこと、嫌いじゃないよ……♪」

「何だよ、もぉ……ゲホッ……さっきはあんなに劇的な感じで『好き』って言ったくせにさあ──(ドムッ)ぐわぁっ!?

「大事なことは何度も言わないわよ……フフフッ」

 2発目の頭突きをかましておいて、素知らぬ顔で笑うのだった。こいつは、こういう女だよ、まったく──。

『我が眷属を浄化するとは……娘、なかなかやりおるわ』

「「…………!?」」

 大広間に突然、謎の声が響き渡ったのは、その時だった。

『しからば、その礼をタップリさせてもらわねばならぬのぅ……ククク』

「誰っ!? ……外ね!」

 次の瞬間には、恬子は跳ね上がるようにして身体を起こし、境内に面した大広間の窓を開け放つ。

「キィッ!!」「キキーッ!」

 ──そこには、どこからともなく現れた、30匹以上のコウモリの群れ。そして。

『これはこれは……ずいぶんと、色っぽい格好をしておるではないか。お楽しみ中のところを邪魔して、すまなんだのう♪』

 声は、コウモリの群れの中から聞こえてきた。人の姿はない。あるいは、テレパシーか何かで、そこから聞こえてるように思わされているだけなのか。

「アンタね……経真を眷属にした吸血鬼は! 出てきなさい!」

『やれやれ。男の味を覚えたばかりの娘は、セッカチでいかぬのう』

 溜め息交じりに恬子をからかう声。まるで、恬子の反応を見ること自体が目的であるかのように。