絶妙なタイミングで、予鈴が校内に鳴り響いた。

「おお、もうチャイムが鳴ってるし、早く教室に行こうぜ」

 俺は会話を強引に終わらせると、さり気なく先頭に立って教室へ向かった。

 ──美奈を先に行かせても、教室の場所が分からないからだ。

「あらら、逃げられた。じゃあ、続きは今度、じっくり取り調べしましょうかねー♪」

「あ〜ん、ふたりとも置いていかないでよ〜!」

 追及を諦めていない恬子と、少し遅れて『美奈』も続いた。

(さすがローラさん、この人も意識して、歩き出しを遅らせたな)

 妙なことに感心しつつ教室に入ると、ちょうどそこでホームルームのチャイムが鳴る。

「きりーつ! 礼! 着席!」

 学級委員・恬子の号令で担任に礼をし、ホームルーム開始。

 やれやれ、どうにかここまでは無事にやり過ごせたな。後は授業だけど、ローラさんって他はともかく、古文とか日本史の授業はついていけるのかな──。

「……なんか変ね……」

(ギクッ!?

 ──隣から、不穏な呟きが聞こえてきた。

「普段の美奈なら、全力で否定するか、逆に天然かまして『ありがとう〜』くらい言いそうなのに……話をごまかすってのは、普通のパターンじゃないわね……まあ、単なるアタシの、ミステリー小説の読み過ぎなんだろうけどさ……」

 恬子の呟きは、俺に向けたわけではなく、完全に独り言のようだ。ただ、その中身は、俺も聞き流すわけにはいかなかった。

(全力否定か天然リアクション……確かに、美奈の真似をするなら、どっちかだよな。そのどっちも選ばなかったのは、何かローラさんなりの考えでもあったのかな……)

 最前列の席で、担任の話を聞くフリをしている『美奈』の後ろ姿を一瞥してから、もう一度恬子の様子をうかがうようにチラリと視線を動かす。

「「…………ッ!」」

 ──目が合ってしまった。

(よそ見すんな、学級委員っ)

(アンタこそ、アタシの美貌を盗み見しないでよ、むっつりスケベ!)

(ヒドイ言われようだな、俺……)

 いつも交わす程度の、ちょっとした無駄口。

 ただ、俺はともかく、恬子もちょっと空々しかったのは、気のせいだろうか──。



「今日は体育館がふさがってるので、バレーボールは中止して体力測定をしまーす!」

「ええーっ!?

 ──女子たちのブーイングが、ちょっとだけ心地よい。

 本来この時期、体育は男女ともバレーボールの授業。普段は男子がグラウンド脇の屋外コート、女子が体育館で行うことになっている。

 だんだん寒くなっていくこの季節。外で震えながらバレーをやる男子は、風の吹かない体育館へ向かう女子にえんの声を上げるのが常なのだが。

「ちょっと男子ー、コート貸しなさいよー」

「シッシッ! 女子はあっち行って、幅跳びとかマラソンとかで地獄を見るがいい!」

「チッ……今に見てなさいよ、経真……」

 舌打ちを残して、屋外コートから離れていく恬子。もちろん、ふざけ半分なのは間違いないが──それでも、女子より男子の授業がラクチンなのは珍しい。ちょっとした優越感にも浸れようというものだ。

「とは言っても、ボールが風に流されるいつもの問題がなくなるわけじゃないけどなー」

 というわけで、俺たち男子は試合の準備運動も兼ねて、レシーブやスパイクの練習を始める。

 一方、女子は体育教師にまばらなブーイングを浴びせつつ、100メートル走のタイム測定へと向かった。

「じゃあ、持ちタイムの遅い順に、どんどん測ってー」

 教師の指示とともに、4人の女子生徒が準備をする。

 その様子をチラッと見て、俺はひとりで納得した。

(……やっぱり、美奈は最初の組に入るよなあ)

 普通の科目はどれも優秀な美奈だが、体育だけは体格差をいかんともしがたく、成績は常に下から数えた方が早かった。当然ながら、この100メートル走でも、『美奈』は一番遅い生徒として、スタートラインについている。

(ローラさんも、美奈の正確な持ちタイムなんか知らないだろうに……当たり前のように準備したな。娘さんのことをよく分かってらっしゃる)

「おーい、経真ー。スパイク練習、次はお前らのグループだぞ」

「おお、悪い悪い」

 謝りつつ、スパイク練習の列の最後尾に並ぶ俺。

 ほどなく、ピッというスタートのホイッスルが、女子の方から聞こえてきた。

(あー、でもちょうど俺の番が回ってくる。『美奈』を見れないな)

 ひとまず意識をバレーコートに引き戻し、すぐそばから上げられるトスに合わせて跳躍し、そしてスパイクをネットの向こうに思い切り打ち込む。

(バンッ!!

「えっ?」

 ──打ったはずのバレーボールは、コートのどこにも転がらなかった。

「消えた? それとも、どこか見当違いのところに打ち込んで──」

「おい、経真! 何だそりゃ!?

 トスを上げた生徒が、目を丸くして俺を指差す──正確には、スパイクを打った俺の右手を。

「……ええっ!?

 見ると、破裂してペラペラの革と化した『元バレーボール』が、俺の手の平に絡みついていたのだ。

「何だこれ!? バレーボールがスパイクで破裂するって、あるのか!?

 非常識な光景に、つい唖然と声を上げる。

 俺ってどちらかというと、バレーは苦手な部類に入るんだけど──まさか、隠れた才能が開花!?

「あー……外で使うバレーボールは、体育館のお下がりばかりだからなあ。古くて、もともと破れる寸前だったんだろ」

「さっきの派手な音が本物のスパイクの音なら、バレー部にスカウトされたかもな」

 ──俺の予感は、クラスメートの軽口であっさり否定された。

(ちぇ……まあ、そうだよな。俺のスパイクなんて、ボールの芯に当てることも珍しいっていうのに)

 俺が、短い夢からあっさり目を覚ました、その時。

「ええーっ!?

 ──女子のいるトラックから、急に歓声が沸き起こった。

13秒台!? どーなってんの、美奈!?

(………………はっ!?

 さすがに、耳を疑った。慌ててトラックに目を向けると、何だか曖昧な笑みを浮かべている『美奈』が、クラスメートに囲まれていた。

「確か美奈ちゃん、持ちタイム20秒超えてたよね!?

「どーしたの、急に!? こんなの、普通に陸上部員レベルじゃない!」

「ど、どーしたんだろうね、あはは……身体が軽いなーとは思ってたんだけど……」

 どよめきと賞賛の中、『美奈』──ローラさんは、どうしていいのか分からないといった顔をしていた。

(実際……何があったんだ、ローラさん? 中身が入れ替わったって言ったって、別に元々のローラさんだって、スポーツ万能ってタイプじゃないよね?)

 それに、当の本人が驚いている様子が、こちらまでありありと伝わってくる。

 ただでさえ、『人格が入れ替わる』という異常事態に襲われている彼女だ。それ以外にも予測不可能な事態が起きたって、不思議じゃないのは確かだけど──。

「後で……話を聞いてみるか……」



「確かに俺、人の少ない場所で話をしようとは言ったよ?」

「ならば、条件にピッタリの個室ではないか」

「いや、だけど……トイレの個室にふたりで入る必要はなくない?」

 ──放課後。

『ふたりだけで話ができる場所』として、俺が連れてこられたのは、美術室や視聴覚室のある『特別教室棟』の──男子トイレ。

「恬子とかいうたか? あの娘がいくら探し回っても見つからぬ場所といえば、トイレくらいしかあるまい」とは、『美奈』ことローラさんの主張である。

「じゃから、一番人気ひとけのないトイレにやってきたのじゃ」

「まあ、恬子を警戒する気持ちも、分からなくはないけど……そもそも、こんな場所をよく知ってたね? 校舎に入るのは初めてだっただろうに」

 感心する俺に向かって、ローラさんは得意げな表情で一言。

「昼休み中に校舎を回って、人の少なそうな場所を確認したのじゃ」

「変なところでマメだね……」

 ともあれ、確かにここでなら誰に聞かれる心配もなく、ふたりきりで話ができる。狭すぎてローラさんと密着を余儀なくされるとか、いくら洋式の便座があっても座るのは気が引けるとか、細かいツッコミどころは全部置いておいて──俺は、体育の授業のことについて話を切り出した。

「結局アレって、何だったの?」

「何だったんじゃろうなあ……走り始めたところで、バレーコートの方からデカイ音が聞こえてきて、チラッと見たらお主がボールを破裂させた音じゃった」

「ああ、アレはボールが古くて──」

「で、経真に何があったんじゃ……と驚いてる間に、気がつけばゴール地点を駆け抜けておってじゃな……」

「……やっぱりアレ、ローラさんにも予想外だったんだ?」

「当たり前じゃ! まさか手を抜いてもあんなタイムが出るなんて──」

「ん? 『手を抜いて』?」

「動かす身体が違えば、調子も狂うという話じゃ!」

 ──俺が聞きとがめた途端に、急に話を打ち切られたような気がする。

「ひょっとして……ローラさん、何か心当たりでもあるの?」

「…………」

 ローラさんは俺の質問に即答せず、しばらく目を閉じて黙り込んだ。

「ええと……ローラさん?」

「心当たりは……ある……といえば、ある……」

 再び口を開いたローラさんは、いつになく歯切れの悪い言葉を並べる。

「正直、ワシ自身が否定したい心当たりなのじゃが……今のところ、頭の片隅に浮かぶ『その可能性』を、キッチリ否定するだけの証拠がない……」

「……その心当たりって?」

「言えぬ」と、この部分だけはキッパリと断言した。

「少なくとも今、お主には、まだ言えぬ……美奈にも……まだ言えぬ。少なくとも美奈にだけは、いずれ明かさねばならぬ話なのじゃが……」

「ローラさん……」

 その様子に、俺は言葉を失った。

(こんな風に悩むローラさん……初めて見る……)

 いつもひょうひょうとしていて、どんな決断も割とあっさり下すのが、普段のローラさんだった。決断の思い切りが良すぎて、店で売る商品の仕入れや、自宅の家電の買い換えなどで何度となく失敗してきたのが、普段のローラさんだった。

 それでも『たまにはこんなこともある! どうすれば成功するかでウジウジ悩むより、さっさと失敗してやり直す方が、ワシの性分に合うておるわ!』と笑い飛ばすことができるのが、普段のローラさんだった。

 そのローラさんが、こんなにも言葉を濁す『心当たり』とは、いったいどんなものなのか。気にならないと言えば、絶対にウソになる。だけど──。

「……じゃあ、言える時に聞かせてくれれば、それでいいよ」

「経真……」

「別に、俺たちを困らせたくて、言うのを渋ってるワケじゃないんだろ? だったら、そこのところは俺、ローラさんを信用するよ。どんな秘密があるのか、おっかないのは事実だけど……本当に知らなきゃいけないことなら、知らなきゃいけない時に、ローラさんがちゃんと話してくれると思うから」

 俺は、ローラさんに向かって笑顔を作った。

 一緒に住んでる家族を信用できなくて、どうするというのか。

 美奈のお母さんを信用できなくて、どうするというのか。

 今、ローラさんが語らない──つまり、まだ俺が知る必要はないということだ。

「知らないことがあったくらいでオロオロするのは、男じゃない……なんてね」

「……お主は……妙なところで、ワシの連れ合いに似ておるのう」

「へっ?」

 ──かっこよく、それっぽい言葉で締めたら、何だか予想外の反応が返ってきた。

「その言葉はの……龍真が……美奈の父親がよく口にしておった台詞にそっくりじゃ」

「……そ、そーなの!?

 ローラさんの旦那さんで、俺にとっては父方の親戚の──龍真伯父さんにそっくり?

「あの、すげー頑固そうな人と俺が!? まさかー。俺、そんなに男らしいタイプのキャラじゃないし──」

「褒め言葉は、素直に受け止めておくものじゃぞ、経真……」

(えっ……?)

 驚く暇すらなかった。

 気がつくと──『美奈』の唇が、俺の唇に重ねられていた。

 唇をくっつけるだけの、ごく軽い口づけ。

 だけど、それは今朝のフェラチオ以上に、俺を驚かせた。

(な、何だよ、この本気度の高いキスは!? 俺、どう受け止めりゃいいんだよ!?

「……フフ……驚いておるの。若造がいっぱしに、いろいろ分かっておるではないか」

 唇を離したローラさんは、意味深げな言葉を呟きながら微笑む。

 ──とても危険な微笑みだった。同じ『美奈』の顔だから、と自己弁護するのも難しくなるくらいの──それは、本物の美奈とは別種の、それでいて同じくらい魅力的な笑顔であった。

「案ずるな。何もワシは、お主を取って喰おうなどと言うておるのではない。愛娘から彼氏を奪うような無粋もせぬ。ただのう──」

「あっ……」

 とっさに緊張する俺。ローラさんの手が、ズボンの上から俺の股間を撫でさすり始めたのだ。

「ただ、久々に雄の匂いを嗅いでしまうと、ワシも牝の顔になってしまうんじゃよ……分かるじゃろう?」

「い、いや、だから……分かっちゃうと、また、その……そういうコトになっちゃうんだろ? それはちょっと……」

 ヤバイ。魅力的すぎてヤバイ。ここで自分をしっかり保たないと、恐らく話はフェラチオだけじゃ終わらない。

 恬子のことを諦め、美奈に思いを伝え、お互いに結ばれたのは、つい昨日のことだというのに──今日一日でフェラチオに続いて、実際のエッチまでローラさんとしてしまっては、俺はふたりの女の子に、どんな顔をして会えばいいのか。

「そうひるむな」と、しかしローラさんは言い出した。

「ワシとお主がまぐわうこともまた、問題解決の一助となるのじゃ」

「……どんな理屈なのさ、それ」

「そこをすぐに説明できぬのが、もどかしいんじゃがの……ただひとつ、信じてくれぬか」

 そして、再び真剣な眼差しで、俺の瞳を見つめる。

「ワシにとって大切なのは、娘である美奈の幸せと、娘の思い人である経真……お主の幸せのみ。全ては、それらを守るためなのじゃ」

「ローラさん……」

 それは、初めて日本にやってきて、この国で暮らしたいと訴えた──あの日と同じ眼差しだった。

「……ずるいよローラさん……その目をされたら、俺は信じるしかないじゃん」

 ついに白旗を揚げる俺。少なくとも、俺とローラさんがエッチをすることで、何らかの進展を見込めるのは、間違いないのだろう。

 そこまで言われて、それでもなお拒みきれるほど、俺はこの魅力的な女性を嫌いになれない。

「分かったよ、降参……言っとくけど、俺が好きなのは美奈だからね? そこだけは譲れないよ?」

「ほほほほほほっ、分かっておる分かっておる♪(ズルッ)」

「わあっ!?

 ──あっという間に、ズボンを下着ごとずり下ろされてしまった。

 そして、正面から肩口を小さくトンと押される。ずり下ろされたズボンと下着に足を取られ、俺は何の抵抗もできず、便座に腰を下ろす羽目に。

「何じゃ、もう珍棒がビンビンにっておるではないか♪ ここに連れ込まれた時点で、ある程度の心づもりはできておったんじゃな? 可愛いのう、可愛いのう♪」

「アンタ、さっきのシリアスモードが台無しだな!?

「人間誰しも、二面性を持っておるものじゃ……これはイカン、本当は少しばかり口でしゃぶるつもりじゃったが、もうワシの方が我慢できぬ!」

 ローラさんはすごいことを叫びながら、俺の目の前でスカートをまくり上げ、ショーツを脱ぎ捨てた。

 そこは既に、真っ赤に充血して、透明な樹液でテラテラと鈍い輝きを放っている。

「……ゴクリ……」

「生唾を呑み込む音も、トイレだとよく響くのう」

「…………はっ!?

 隠しきれぬ興奮を、あっさり見咎められる。恥ずかしい話だが──このシチュエーションに酔っている部分もあるのか、俺もローラさん同様、これ以上我慢するのは難しいところまできていた。

「大丈夫じゃ。お主は美奈をこれっぽっちも裏切ってなどおらぬ。必要なこととはいえ、それを口実にワシが強引に誘ったのじゃ。お主が気に病むことなど、何ひとつありはせぬ。安心せい……」

 美奈とも、普段のローラさんとも違う、まるで催眠術師のように密やかな囁きに、俺の自制心はあっけなく麻痺していく。ローラさんにここまで『言い訳』を用意してもらっては、俺に抵抗する術などありはしない。

「……ごめん……」

「皆まで言わずとも良い。お主は、これだけ言葉を並べたワシにも申し訳なさを感じてくれる、とても優しい子じゃ……」

「う……」

 その言葉が、最後のきっかけだった。

「……ロ、ローラさん……ッ!!

 俺は、自分の意思で『美奈』の腰を掴み、天井に向けてそそり立つ男根の上に引き落とした。

「はうっ……!!

 たっぷりと潤った無毛のスリットは、俺の屹立を苦もなく呑み込んだ。

「あがっ!! ……あっ……あっ……と、飛ぶっ…………カハッ!!

 そして、ローラさんの呼吸が一瞬止まり、その小さな身体が激しく痙攣し──数秒ほどで弛緩した。

 俺は恐る恐る、呼びかける。

「……挿れただけで、イッちゃった……?」

「あぁ……ンあぁぁ……そうじゃったぁ……この感覚、久しく忘れておったわぁ……!」

 途端に、ローラさんの両目から、涙が一筋、また一筋とこぼれだした。

「ダメになりそうじゃ……全部蕩けてしまいそうじゃぁ……! お主の珍棒が、ワシの中でどんどん膨らんでおる……くはっ、あぁぁぁ……!」

 全身をブルブルと震わせ、俺との結合の感触を存分に堪能するローラさん。それは、美奈の『初めてのエッチ』とは別の、だけど様々な意味での重さを感じさせる姿だった。

 そんなローラさんの快感が伝わってきたのか、俺の肉茎も強烈な締めつけに反応して、ビンビンと恐ろしいほどの勢いで脈動を繰り返す。

「うわ……ジッとしてるだけで、もうイキそうなくらい気持ちいい……どうしよう、ローラさん……」

「そんなっ……そんなイケズなことを申すなっ……もっと動いてっ……もっとワシのを掻き回すのじゃ……ッ!」

「わ、分かった……」

 意地悪などではなく、本音で『もうイキそう』と言ったのだが──ここは、何とかしてローラさんのリクエストに応えたい。俺はローラさんの背中を両手で支え、前後に揺れるようにして彼女を貫いた。

「あはっ、あっ、あっ、たっ、たまらぬっ……頭がっ、頭の中がっ、真っ白になるぅっ!」

 ローラさんは俺の首の後ろに手を回し、大きく仰け反って悶えた。

 いつの間にブレザーの前をはだけたのか、昨夜初めて見た生の微乳が、ブラウスの間からチラチラと視界に入り、俺の興奮を否応なく高めた。

(すげえ……これ、ホントにローラさんか……ッ!?

 新鮮な快感が、俺の理性を心地よく麻痺させる。

 豪快で、ちょっと雑で、時々落ち着いた振る舞いを見せるローラさんが──俺にとっては一番身近な『大人の女性』が──俺にオマ×コを責め立てられて、正体をなくすほど乱れ、よがりまくっている。

 美奈の身体だからとか、そんなのは全く関係ない。ローラさんのような大人の女性が、この俺に『牝の顔』を見せてくれる──それこそが、俺の男根を信じられないくらい熱くたぎらせた。

「く、くそっ……このままじゃ、ホントにあっという間にイッちまう……もっとだよ、ローラさん! もっと俺に、ローラさんの『牝の顔』を見せてよ!」

「なんてっ……ああっ! なんて強欲な、小僧じゃっ……! ンヒッ、あ、あっ……こっ、これ以上ワシにっ……だらしない顔をっ、せよと申すか……ッ♪」

 俺への文句の体裁を取って、自分の言葉でさらに自分を昂ぶらせていくローラさん。昨夜は可愛らしくあえいでいた美奈の顔が、今日は俺を魔法のようにどこまでも惑わせる。同じ顔で、同じ声で、同じおっぱいやオマ×コで、だけど全く違う形で、俺の衝動を同じように掻き立てる。

「ふあ、あああっ……経真! 経真っ、お主の唇をっ……ぶちゅっ!」

 ローラさんが、俺の首にかけた腕で自分の身体を引き起こし、そのまま前に倒れ込むようにして、俺に唇をぶつけてきた。

(イテッ……)

 キスというのは、あまりに強烈な衝突。だけど、怯んだのはその一瞬だけだった。俺も金髪少女の華奢な身体を抱きしめて、むさぼるようにその唇を吸う。

「ちゅぅっ! ちゅぅっ、ンちゅうぅぅぅぅ……れう、れろ……むふぅ、ふぅ……ちゅ、ちゅちゅぅっ!!

「チュパッ、ちゅっ、ちゅちゅっ……はぁぁ……経真っ……きょーまぁ……ッ!」

 熱く火照った身体を左右に小さくよじりながら、ローラさんは俺が突き出した舌を吸引し、唇で前後にしごき、時々俺の名を口にして唾液を交換した。

 狭いはずの膣道は、しかし愛液でたっぷり濡れているからか、何の抵抗もなく陰茎の往復を許してくれた。まるで焼けただれそうなほどに熱い膣肉が、俺の敏感な器官を焼き焦がし、内側からさらに何かを吸い出そうと妖しくうごめく。

 ──と、その時。

「ああっ……イカンッ、忘れてしまってはイカンっ……」

「えっ……イテッ?」

 ローラさんの手が俺の首筋に触れたかと思うと──今朝貼ったばかりの絆創膏をいきなり剥がしたのだ。

「ど、どしたのローラさ──」

「あむぅっ!」

「うえええっ!?

 そして、昨夜の美奈と同じように、生傷の残る首筋に吸いついてきたのだ。

「きゅ、急に何を……」

「ちゅ、ちゅちゅうううううううっ!!

「イテテッ……そ、そりゃ傷口を吸われたら痛いって……ちょっと、ローラさん?」

「ちゅううううううううううっ!!

 歯を立てられることはなかったが、ローラさんは驚くほどの吸引力を発揮した。間違いなく、本物のキスマークが残るレベルだ。

 もちろん、昨日の疼痛がよみがえる。母娘揃って、この人たちはどうしてそんな吸血鬼みたいな真似をするのか。

(そういう性癖……なんて、有り得るのか?)

 女性の性的こうのことなど、童貞を卒業してたった1日の俺に分かるはずもない。

 ただ、分かるのは、

「ンンンンンン……ンフッ! ふぅぅぅぅぅぅん……うんっ、うんっ!」

 吸いつけば吸いつくほど、ローラさんが全身をビクンビクンと痙攣させること。どうも、そのままの姿勢で2、3回絶頂しているようだ。

 ひょっとして──血の味が、彼女を興奮させているってことなんだろうか。

(……ホントに吸血鬼みたいだ)

 ホラーグッズのコスプレセットを着飾った『美奈』の姿を想像して、ちょっと苦笑。

「……ンンッ!! ンうぅううううぅぅンッ!! ……ンばはぁっ!!

 唐突に、ローラさんが首筋から顔を離した。

 その目が、焦点を失っている。半分くらい、意識が飛びかけてるのかもしれない。

「らめにゃぁ……! これりょうイッたらワヒ、正気にもろれなくなりそうにゃあ……!」

「……美奈の身体に、ローラさん以外にも子猫がログインしたみたいなんですけど……」

 単に舌が回らなくなってるだけだとは思うが、それが妙に可愛らしい。

 ただ、これ以上ローラさんが『泥酔』してしまうと、後が大変そうだ。

 俺自身も、もういつでもイケる体勢になってることだし──。

「じゃあ俺、そろそろイクからね……フンッ!」

 俺は気合いを入れ直してローラさんの腰を掴み、前後に振って何度も俺の股間に叩きつけた。

「にゃあああっ!? にゃっ、にゃごり惜しいにゃあああっ!!

(……どんどん猫化が進んでるな……)

 確かに、ちょっと名残惜しい。こんなローラさんが今後見られるとは思えない。

 それでも俺は、対面座位と『駅弁スタイル』を合わせたような体位で、便器をギシギシと軋ませ、愛液でたっぷり潤った蜜壺を肉棒でたっぷり撹拌した。

 すると、個室の中に『美奈』の体臭がひときわ濃く充満し、俺に射精を催促してきた。

「あっ、熱いのにゃっ! 身体からだ中……熱くてにそうにゃっ! ……き、きょーまっ! ジャーメンにゃっ!! ジャーメンれ、女陰をしゃましてほひいのにゃあああっ!!

(……冷ませるかなあ……ザーメンも熱いよ……?)

 ちょっと笑いのツボを刺激されそうになったが、もう間に合わない。

「じゃあ、ご希望通り、イクよ…………ぐぅぅっ!!

 最後に大きく腰を引き寄せた刺激で、俺は下半身にたっぷりじゅうてんした精液を、子宮目がけて一気に放出した。

「にゃっ……にゃああああああっ!! 熱いンにゃあああああああああっ!!

 ローラさんは、案の定な悲鳴を上げながら、俺と一緒に絶頂まで昇り詰めた──。



「もうらめにゃ〜……ワシ、らめらめになっちゃうにゃ〜……ムニャ……」