【第1章】三角関係を終わらせたはずなのに
『フハハハハハハ! お前も吸血鬼にしてやろうか! フハハハハハハ……』
(ポカッ☆)
──ほうきの柄で、後頭部を小突かれた。
「イテエな! ほうきの柄はイテエよぉ!」
「いつまでも遊んでないで、真面目に作業しなさいよ経真」
「はいはい、真面目にやりますよ……あーあ、準備と違って、片づけはめんどくさいなあ」
俺はぼやきながら、吸血鬼の仮装マスクを脱いで、段ボール箱の中に放り込んだ。
文化祭が終わった、その翌日──俺たちは2年3組の出し物・お化け屋敷のセットをクラス総出で片づけていた。
教室の中に何枚も張られた暗幕を外し、墓石や生首の模型を撤去し、机や椅子を普段通りに並べ直す。
それは、数日前の準備作業を逆回しにするようなものでしかないのに、どうしても怠けがちになってしまう。やっぱり、『明日から文化祭!』と『明日から授業再開……』では、テンションが全然違うのだ。
「えーと、持って帰るレンタル小物は、これで全部か?」
段ボール箱の中身を確認しながら尋ねると、クラスメートの賀茂恬子は、さっき俺を小突いたほうきで床を掃きながら、
「だと思うー……あ、変装セットが1着分足りないはず」
「なんで?」
「だって、ほら」
と言って、教室の入り口に向かって顎をしゃくる。俺もそっちに視線を向けると。
「もういいでしょ〜? そろそろ脱がせてよぉ〜」
「待って待って! もう2、3枚画像撮らせて! 後でブログに載せるから!」
「文化祭全体でも、美奈の魔女コスプレが一番人気だったよね。ホント、可愛すぎてお人形みたい☆」
「恥ずかしいよぉ〜! 今日こんな格好してるの、私だけじゃな〜い!」
黒いマントに、先の折れた黒いとんがり帽子という格好の女子生徒が、顔を真っ赤にして悲鳴を上げていた。
「おーおー、すっかりオモチャにされちゃって、まあ……」
「そろそろ助けに行ってあげなさいよ。困ってるじゃん、あの子」
「俺が? 人に言わないで、恬子が自分で行けばいいのに……」
「いいから、アンタが行くのよ!(ヒュンッ)」
「分かったよ! 分かったから、ほうき振り回して威嚇するのはやめろっ」
段ボール箱を抱き上げると、俺はほうきに急き立てられるようにして、コスプレ女子のところへ向かう。
「おーい、美奈ー。他のレンタル品はあらかた詰め終わったから、そろそろマントと帽子も回収するぞー」
「あ、経真くん……うん、お願い」
俺の呼びかけにすぐ反応して、いそいそと帽子を脱ぐ少女。
名前を、神浦美奈という。数年前に亡くなった伯父の一人娘──つまり、俺のいとこだ。
みんなからは、クラスのマスコット的存在として、可愛がられたりからかわれたりしている。理由は、その外見にあった。
「……帽子を取ると、一気にちっちゃくなるなあ」
「それは言わないで〜っ」