「あたしね。たぶん、命を懸ければ、あなたのことを消せるよ」
「まあ、そうかもしれないわ」
意外なほど理知的に、
この二人の間で鍵となっているのは、マヤの記憶だ。さらにマヤの肉体は
つまりマヤは、
マヤの記憶を
「まぁ、そんなことされたら、赤い靴に踏み潰してもらうわよ。ここらの人はみーんな、ぺちゃんこね」
「そうでしょうね。あたし、死にたくないわ。メノウもサハラも死なせたくない」
周囲のすべてを人質にとった
いまこの時だけ、マヤと
「だからさ。いまはあなたのことを見逃してあげるから帰ってくれない?」
「とっても生意気ね。たかが小指が、何様のつもりかしら」
マヤと
本来ならば、同時に存在するはずなどない二人だ。
どちらも引くほどの理由はなく、かといって強行できる確信もないまま見つめ合う。その睨み合いの中、マヤはふと視線を
『B級映画も最後まで座って見ようぜ。グッドラック、マヤ!』
ノノからの、最後のメッセージだった。それだけ見れば、なんだこれはとなる書き残しだ。こうなることがわかっていた伝言を読んで、天啓のように言うべき
「ねえ」
「なに?」
「あなたは、エンドロールは見て帰る?」
「あたしは最後まで残らず見届けて、明かりが
「そうね」
小さく答えた
「結局、そういうことだわ。あたしとあなたは、まったくの別物ね」
『導力:生贄供犠──混沌癒着・純粋概念【魔】──召喚【空を自由に飛んでみよ】』
攻撃かと身構えたマヤの予想とは裏腹に
「あたしだって、あなたになんか、万が一にもなりたくないわ」
「それでも、覚えておくといいわ。どうせあなたも、あの人も、あたしが飲み込むよりももっと素敵な結果をもたらしてくれるもの」
空を飛び、上空にある赤い靴のつま先に座る。
「純粋概念を宿して生きている限り、
心に這い寄る一言を残して、空の亀裂の彼方に
「わかってるわよ、そんなこと」
マヤは、ぽつりと
自分も、メノウも考えなければいけないのだ。
純粋概念を使った代償を、どう支払うのか。
どうしようもないかもしれない考えを巡らせていたマヤの頭に、ぽんと手のひらが乗せられた。
「お疲れ様、マヤ」
くしゃくしゃと髪を乱して頭を
マヤは上目遣いでメノウを見た。
「……聞いてた?」
「ええ」
メノウは頷く。自分がアカリの純粋概念を使えるようになって以来、考え続けてきたことだ。
「それも含めて、どうにかするためにここまで来たのよ」
環境制御塔の上部を『絡繰り世』に送り、【星読み】の上半身はアビィが格納した。解析が終われば、『星骸』の管理権限も手に入れることができるだろう。
『星骸』が異世界送還陣であるのならば、逆算することで異世界召喚の魔導構成に触れることができる。この星の根幹、世界の【力】の源に接続できれば、純粋概念すら魂から引きはがすことができる。
マヤは、間に合うはずだ。自分で言っていた。彼女の【魔】は記憶の消費が少ない、と。
メノウとは、違うのだ。
「だから、ほら」
メノウがほほ笑んで、下を示す。
地面にはアビィとサハラがいた。戦闘の終わりを察して、二人に手を振っている。
「とりあえず、あの二人に
「そうね……うん! メノウの言う通りだわ!」
考えることは多くとも、いまの一時だけは、暗い考えを振り切ってマヤたちは地上に待つ仲間たちのもとに降り立った。