半年前。

【世界停止】により白夜の結界に穴が空いた。それまで一色かごくまれに二色までしか出ることができなかった魔導兵たちが、三原色まで脱出できるようになった。

 その時にアビィが真っ先に『絡繰からく』から外に出たのには、彼女なりに理由がある。

 一つ目は、最初に彼女が出れば他の三色は出ることができなくなるからだ。白夜の結界の穴は、定員制と言い換えてもいい。外に出られる容量が限られているのだ。

 そして二つ目、他の弟妹たちは排他的な傾向にある。彼らが審査すれば、三日で人類不要の烙印らくいんを押すだろう。そもそも方舟はこぶねに乗せるのは自分たちだけでいいと言っていたのだ。

 仲間思いに育ってくれてうれしいが、人間たちを仲間外れにするのはよろしくない。

 弟であり長兄であるギィノームに自分の役目をすべて押し付けることで他の魔導兵全員を出し抜いたアビィは、『絡繰り世』に新しく空いた穴から外の世界へと脱出した。

 とりあえずの目的は、外でできた新しい妹。自分の本体がどうなっているかも知らず、端末に意識を置いてうろうろしている彼女を確保するつもりだった。

 だが上下に並ぶ街並みで真っ先に出会ったのは、白い箱に座った少女だった。戸惑いに動きをめたアビィに、彼女は語りかける。

「ここは地下『遺跡街』です。本来は封印されていますが、とある奴の気まぐれで私は招かれました。そいつ曰く、これ以降、入り口は開きっぱなしになるそうです」

 親切な少女が場所を教えてくれる。

「私の名前はモモといいます。アビリティ・コントロール。取引をしましょう」

 なぜ自分の名前を知っているのだろうか。疑問に思うアビィに対して、モモと名乗った少女は椅子にしていた白いキャリーケースを開けた。

 中には、しゃがんだ姿勢で固まっている少女がいた。黒髪で童顔のかわいらしい少女だが、もっとも目を引いたのは胸元むなもとだ。

 白い刃が刺さっている。そこに秘められた力はアビィの興味を引くのにあまりあった。

「私は、こいつをどうあっても隠して守り通さなければいけません。そこの入り口から、お前の地区に入れて守り通すことを要求します」

 アビィは答えかねた。魔導兵にとって、自分の地区に異物を入れるのは気持ちいいものではない。モモの提案を人間の感覚に置き換えると、隠しものをするために口から飲み込んで胃に隠す程度には不快感が発生するものだ。

「利点は二つあります」

 それを知ってか知らずか、モモは指を二本立てて淡々と続ける。

「一つ。こいつの情報そのものです。異世界人であり、『塩の剣』付きです。お前の方舟に乗せるかどうか検討する対象にはなるでしょう。微細導器群体マイクロマシンレベルで情報を解析すれば、なにかしら得られるものがあるかもしれません」

 方舟のことも知っている。警戒度が上昇する。

「二つ。お前の捜している人間の居場所を教えます。笑える話、原色概念に取りかれた人間もどきです。そいつと一緒にいる人たちと一緒に行動することで、お前の望む情報は手に入るらしいですよ」

 アビィはジェスチャーで承諾の意思を伝えた。アビィにとって、同族以上に大切なものはない。自分より幼いのならば保護対象であり、自分より長く生きているなら破壊対象になる。妹の情報が手に入るなら、多少の不快感を飲み込むことに迷いはない。

「あと、これは純粋に助言なんですが」

 話を聞きながら羽を休めているアビィを見るモモの目は、なぜか微妙に戸惑っていた。

綺麗きれいだとは思いますけど……こっちにいるうちは、人の形をとったほうがいいと思いますよ」

 その助言を聞いて、モモから黒髪の少女の体を預かって以来、アビィは彼女を成長させた擬態をしている。



 地響きが、サハラの背中を打った。

 遺跡街が丸ごと揺さぶられるかのような揺れだ。肩越しに振り返ると、地下天井てんじょうにぶら下がっていたいくつかのビルが丸ごと落下していく光景が見えた。

 メノウとゲノムが戦っていたはずの場所だ。崩壊の中心部は、なにも残っていない。

 特に巨大だった『駅ビル』すらも衝撃で消え去った光景に恐怖を覚えつつも、サハラは地面をって進む。

 メノウたちのほうの戦闘は終わったのだろうか。どちらが勝利したのか。メノウの勝ちを確信できるほどゲノムは容易たやすい相手ではないことを、サハラはよく知っている。

 そもそも、人の心配をしていられる余裕など、いまのサハラにはなかった。

「いたぞ」

 サハラは追いかけ回されていた。

 シアタールームに乗り込んだゲノムとともに来ていたのだろう。映画館の周囲の建物を取り囲んでいたのならば明らかに先ほどの攻撃に仲間が巻き込まれているはずだが、そちらをかえりみる様子はない。

「いけー! そこだぞサハラ君! あ、違うって! いま【導力砲】を撃てば一網打尽にできただろー! ほらいまっ。……あー、タイミング逃したなぁー」

 この足手纏あしでまとい二号さえいなければ、とっくの昔に逃げ切れたはずだ。

 サハラによって小脇こわきに抱えられているノノは、さっきから戦闘に参加するそぶりがないのに指示だけは一人前だ。なまじ未来が見える【星】の目がついているものだから、自分の指示が正しいと確信できてしまうのだろう。

 率直に言って、大変うざったい。

「ノノさぁ」

 もはや定番の避難場所であるサハラの影から、ひょっこりとマヤが顔を出す。

「戦えないくせにヤジ飛ばすのやめたら?」

「なんだよぅ。ボクの楽しみを取り上げないでくれたまえよ。やいやと騒ぐのが一番楽しいんだぞ?」

「うざ」

 マヤが白い目でノノを酷評する。

「……やっぱり、こいつって戦えないの?」

 うるさい割には自分で動かないとは思っていたのだ。魔導兵のくせに戦えないということはないはずだが、と疑念の視線を向ける。

「少なくともあたしはノノが戦っているところ、一回も見たことないわ。実際、どうなの?」

「嫌だなぁ。天才たるボクは生まれてから十七年間、戦闘なんていう野蛮なことをしたことがないぜ?」

 この状況で役立たずですという自己紹介をしているのに、なぜか得意げに胸を張る。サハラに抱えられてそんなことをするから、ただのエビぞりの姿勢である。

「この体も演算用だから身体機能は人並み以下だ! 見た目通りのか弱い天才美少女として丁重に取り扱ってくれたまえ!」

「足手纏いっ……圧倒的ただの足手纏い……!」

「ホントにね。自信満々に言うことじゃないのに、なんで誇らしげなの?」

「マヤもボクと変わらないだろ?」

「ハァ!? サハラはあたしの下僕だからいいの! ね、サハラ?」

 足手纏い一号が足手纏い二号と一緒にするなと同意を求めてきたが、戦闘という分野だと役に立たなさはどっこいどっこいである。これが古代文明を崩壊させた四大人災ヒューマン・エラーの元凶の半分だというのだから泣けてくる。

「……ぐす。ほんっと、私はなんでこんなことしてるの……?」

【魔】と【星】。史上で最も有名な純粋概念持ちを二人連れての逃避行だ。グリザリカでだらだらしていた頃が懐かしい。そういえば、いま突然いなくなった自分はどういう扱いを受けているのだろうか。アーシュナあたりが捜してくれているといいなぁ、別に『盟主』は探してくれなくていいや、と平和だったあの頃に思いをせる。

 ちょっと涙目になりながらも、街を駆け抜ける足は一瞬たりとも止まらない。

 曲がり角を右折して、舌打ちを飛ばす。

 体の一部に導力義肢を付けた集団。ゲノム直属の部下だ。冒険者から逃げていたら、もっと悪い相手に行き当たった。

 しかもここで戦闘をすると、先ほどの冒険者たちがやってきて挟み撃ちにされてしまう。

「ほらー。さっき倒しておかないからだぞ。増えてきたじゃないか」

 イラっとしたサハラのこめかみに青筋が浮く。

 ノノの言う通りなのだが、戦えない分際がしたり顔で指示を飛ばしてくるのはあまりにも神経を逆撫さかなでされる。そもそも義肢を付けている相手ならば、最悪でもマヤの純粋概念があれば負けることはないのだ。

 ここでノノだけ放り捨てて逃げるか?

 サハラの思考が、真面目まじめにその選択肢を検討した時だ。

 周囲の男たちが、突然、立ち止まった。

 先ほどまで声をあららげてサハラを追い回していた全員が一律して震え始める。異常な挙動に、思わず足が止まる。

 サハラたちが見ている前で、義肢からの肉体侵食が始まった。かつて、サハラがバラル砂漠で自分の義肢に飲み込まれた時とほぼ同じ現象だ。

 顔に到達した時点で、べこりと顔面がへこむ。

 服の下でボコボコと肉体が変形し、体つきも顔つきも均一になる。

 絶句するサハラとは裏腹に、まったくの別人たちが同一人物になっていく光景を見たマヤが、なぜか目を輝かせる。

「うわっ、あたしこんな感じのSF映画、見たことある! 現実でお目にかかれるとは思わなかったわ」

「へぇ。ボクは知らないなぁ。どういうタイトル?」

「サメ映画と比べるのもおこがましい、超大ヒットタイトルよ」

 この異常事態を前にしてなぜか冷静な異世界人組がサハラにはさっぱりわからない映画談義を始めている。

 変形を終えた男たちが、無言のまま顔から導力銃を取り出した。

『導力:素材併呑──義腕・内部刻印魔導式──起動【スキル:中距離掃討型】』

 本能的な恐怖に駆られたサハラは、それよりも早く銀腕をガトリング砲に変えて掃射する。意外なことに避ける様子も防ぐそぶりもなく、あっさりと命中して男たちがバタバタと倒れていく。

「はあっ、はぁ……! な、なにいまの!?

 回避をするそぶりも、魔導を使って防ぐ様子もなかった。

 出来の悪い悪夢だったら、どんなによかったか。恐る恐る死体の顔を確認してみれば、やっぱり全員同じ顔をしていた。

 忘れるはずもない。かつて東部未開拓領域で出会った、ゲノム・クトゥルワだ。

 どうして別人だったはずの人間がゲノムに変わるのか。『絡繰り世』で戦った時と違いすぎる。混乱していると、背後からつんつんとほおつつかれる。

「サハラ君、サハラ君」

「なに!?

 苛立たしさを込めて振り返ると同時に、サハラの頰を銃弾がかすめた。

 たらり、と血が垂れる。硬直するサハラに、ノノがいい笑顔で親指を立てる。

「そこ危ないぞって言いたかった。よく避けたね!」

 ぷっつん、緊張の糸が切れた。

 すうっと頭の血の気が引いていく。許容量を超えたいっぱいいっぱいの状況に、サハラの表情からすべての感情が抜け落ちる。

 サハラは、狙撃の方向に顔を向ける。

 狙撃手は目視可能な範囲にいた。通路がつながっていない建物の窓から、スコープ越しにこちらを確認している。

 普通に考えれば、一方的に攻撃できる安全圏。

 だがサハラにも、この距離で攻撃する手段はあった。


「……やべぇ。あいつ、おれと相性がよくねえな」

 狙撃を外したゲノムは、相手の能力を見て困った表情を浮かべた。

 五人の自分で襲いかかったのだが、十秒としないうちに処分されてしまった。『陽炎の後継フレアート』をそこそこ追い詰めた連携が、まったく意味をなさずに崩壊したのだ。

 原因はあの銀腕だ。

 変形した銃器の威力は大したことがない。ゲノムが生産依頼をしている機関銃以下だ。普通の神官や騎士ならあっさりと避けるか防ぐかするだろう。下手をすれば、導力強化でしのがれてしまいそうだ。

 だが、ゲノムだと防げない。紋章魔導も使えない。導力強化で動くこともできない。結果として棒立ちで的になるカカシになる。

 実のところ、ゲノムにとって最大の弱点は彼自身が流通させた導力銃なのだ。

「雑に周辺制圧するのは俺のお株のはずなんだがなぁ」

 普通、神官にしろ騎士にしろ、白兵戦を重視している。導力銃は【障壁】で防いで接近戦で片付けるのが定石だ。だというのにあの修道女の戦法は、ほとんどゲノムと一緒といってもよかった。

 近接で高威力の【杭打ち】。小回りが効いて殺傷力のある導力銃化。やたらと使い勝手がよさそうな【導力砲】。多人数の弱者を蹂躙じゅうりんするためにあるかのような構成だ。

 ゲノムと、よく似ている。

 それに加えて、未来視だ。あれがいては狙撃の意味がない。複数人で多角的に狙撃をしても、事前に着弾点が読まれてしまっては命中するはずもない。残る手は数に任せて押しつぶす物量作戦だが、周辺にいる部下の数が少々心許こころもとない。

「ていうか、そもそもだ。なんで、俺の【憑依ひょうい】が通じねえんだ?」

 それが、最大の疑問だ。

 あの少女に導力義肢を付けたのは自分だ。

「俺のは【防人】の奴からだぞ。絶対にこっちが上位のはずなんだが、なにか混ざってんのか、って、あー……狙撃もできんのかよ、あの娘っこ」

 しかも、自分より腕が良さそうだ。

 いよいよ面倒だとしかめたゲノムの顔面を、一発の導力弾がはじき飛ばした。


「どっかのピンクゴリラでもなければ、当たれば死ぬのよ」

 狙撃した弾丸が相手を貫いたのを確認したサハラは、言い捨てる。

 導力強化に長けた者は生身で導力弾を弾くが、それは例外だ。たまに直感で狙撃を避ける野生の勘を持ち合わせているのは、人間かどうか怪しいレベルの例外だ。やはりあのピンク髪はゴリラの一種なのだろうとサハラは結論づけた。

 基本的に、導力銃は人体を貫通して破壊できる。

 混乱を通り越した現実逃避の末に頭を冷やしたサハラは、狙撃銃に変えていた導力義肢をもとに戻す。

 ここ数日の行動はあまりにも自分らしくなかった。真顔で振り返る。

「『遺跡街』から脱出しようと思うけど、どう?」

「いや、サハラ君」

 ノノがおずおずと手を挙げる。

「さっきも言ったけど、いまは世界の危機でね? 放置すると大変まずいことになるんだよ」

「黙れ役立たず」

 サハラは無表情のまま無根拠で罵倒ばとうした。彼女の未来視に頼るつもりは毛頭なかった。

 ノノに頼るということは、彼女にいいように扱われるに等しい。

「きっとメノウがどうにかしてくれると私は信じてるから逃げる」

 提案のフリをした決定事項だった。

 きびすを返す。このままノノも置き去りにして逃げてやると走り出した足首を、がしっとつかまれたサハラは派手に転んで顔面を強かに地面に打ちつけた。

「……ッ! ──っ!!

「サハラ」

 サハラの逃亡を防いだのは、マヤである。

 影から出てきた彼女は、声も出せずに悶絶もんぜつするサハラの側にしゃがみ込む。

「あたしは、万魔殿パンデモニウムを止めたい」

「……痛いんだけど」

「あれは、あたしの成れの果てだから。あたしの一部が問題を起こしているっていうのなら、あたしが止めないといけないと思うの」

 マヤは転倒で痛打した鼻の頭を押さえるサハラを無視して続ける。

「それが、あたしのやりたいこと。この世界で、必要とされる理由。そこを外しちゃダメなの」

「マヤ……! 立派になったなぁ! ボクは嬉しいぞ!」

「ノノに褒められてもなんにも嬉しくないから黙って」

「……悲しい。成長しすぎてボクはさびしいぞ」

 冷たい目線に迎撃されたノノが、しょんぼりと項垂うなだれる。

 サハラはじゃれている二人のうちマヤに訴える。

「とりあえず、謝ってほしい。かなり痛かった」

「うん。ごめんね、サハラ」

 マヤがさすりと撫でる。

「でもサハラは、あたしのために頑張ってくれるでしょ?」

 やりたくない。やりたいはずがない。

 ただ、この子に頼まれると断れなくなっている。

 大きく息を吐いて立ち上がる。

 サハラたちの行く先には、巨大な環境制御塔がそびえ建っていた。


「聞いた限りだと、自分が義肢を与えた人間を乗っ取ることができるんだろうね」

 天井区画で遭遇した敵、ゲノムのことを話したメノウに、アビィはそう言った。

 下の街で合流した二人は、環境制御塔へ向かう道を歩きながら情報をすり合わせていた。その結果に導き出されたのが、先ほどの言葉だ。

「最初にみんなを襲った子たちも、どっかしらに義肢を付けていたでしょ? それを装着した人間を乗っ取ってるんだろうね」

 ゲノムが売りさばくもので有名なものが、三つある。

 人間。導力銃。

 そして、導力義体だ。

 肉体の欠損を埋め合わせて稼働する義体は、現行技術では人工的に作ることはできないオーバーテクノロジーだ。『絡繰り世』にいると、人体が欠損した部分が義体となって形成される。この町の都市機能が修復機能を持つように『絡繰り世』では人体の機能を微細導器群体マイクロマシンが補うようになっているのだろう。

 だが当然、だれもが『絡繰り世』に入れるわけではない。グリザリカと和平を結んだとはいえ、あの境界線は人と魔導兵が争う最前線だった。迂闊うかつに入って無事に帰ってこられる保証などなかった。

 だというのにゲノムはどうやってか、誰にでも接続できる義体を手に入れて売り捌いていた。

「自分の魂が入った義体を他人が装着することで、徐々に接続した肉体から精神を侵食して魂を自分と同質のものに変質させて、命令に忠実な人間に仕立て上げる。最終的には、いつでも乗っ取って自分の思うようになる端末にしているっぽい」

 ゲノム直属の部隊の人間は、体の一部が導力義肢になっていた。手足でなくとも、目や胴体の一部、あるいは内臓が入れ替わっていてもおかしくない。失った部位を義体で補塡してくれたからこそ、ゲノムに心酔して彼の麾下きかにいるメンバーも多いと言われていた。

 それは一部では正しく、大部分で間違っていたのだろう。

 肉体と直接つながっていれば、魂の汚染にも対抗するのは難しい。ゲノムは洗脳に近い手段で部下の忠誠を得ていたのだ。

「提供した義体から、他人を乗っ取って自分の一部にする。ゲノムが複数人いる仕組みが、それなわけね」

「だねぇ。完全に乗っ取った時に顔に穴が開くのは、そこが遠隔操作するための導力の経路になっているからだね。あの穴、端末を操るための本体とつながっているんだと思うよ」

「となると……」

 思い起こされるのが、サハラの境遇だ。

 彼女のあの右腕は、ゲノムと戦って敗北した後、『絡繰り世』でいつの間にか導力義肢が精製されていたと言っていた。

「サハラ、大丈夫かしら」

「大丈夫だよ。あんまり嬉しくないけど、妹ちゃんの魂には原罪概念が混ざってるから。原色概念だと、どうあがいても干渉は無理」

 それなら、いい。

 上下で分断されてしまったが、サハラたちが致命的な事態におちいることはないだろう。

 おそらくゲノムは自分の端末にする部下を使い分けている。

 戦った印象として、ゲノムの個人としてのスペックはずば抜けて高いとは言えない。彼の本領は、同一思考をする複数の自分による連携だ。複数の自分が、まったくのタイムラグなしで同じ情報を共有している。この情報の伝達性が一番怖いところである。

 だからこそ個人レベルで彼より戦闘力が高い部下は自分が操作する端末にせず残しているはずだ。そしてその人員は、間違いなくメノウたちに差し向けてくる。

 なぜならば、せっかく温存している少数精鋭をいま天井区画にいるサハラたちと戦わせると、マヤの原罪魔導の一発で無力化されかねない。最初にメノウたちを襲った精鋭があっさりと無力化されたことは、ゲノムも把握しているはずだ。

 そう考えていると、アビィが不意に立ち止まった。

「そうだ、忘れてた」

 アビィは歯車が描かれた自分のおなかに手を入れて、一冊の本を取り出す。

「はい、メノウちゃんへのプレゼント」

「これって……教典?」

 意外なものを差し出されて、メノウは目を見張る。アビィが教典を模倣して造ったものかと思ったが、違った。手に取ればわかる。本物の教典だ。

「どうしたの? 地下に来てから、神官なんて一人もいなかったでしょ?」

「かわいい女の子からの贈り物だよ」

「かわいい女の子って、あのねぇ……」

 自分でかわいいなどと、なんのつもりだとジト目でにらむ。だがアビィはそんな視線はどこ吹く風と気にもしない。

 ゲノムとの戦闘で手札不足を感じていたところである。メノウは教典をフードマントの下にある、ハイソックスを吊り上げるためにお腹回りで固定してあるベルトに挟んでおいた。こうしておけば、両手を空けて教典魔導が発動できる。

 教典は複数の魔導が行使できる便利な魔導書だ。『遺跡街』に来てから、何度も教典があればと思うことはあった。これを使わない理由などないと受け取って、なにかが胸に引っかかった。

 ない、はずだ。

 ただ、教典を捨てた時、なにかあったような気がする。大事な、なにかが。

 思い出せないことに、メノウは慣れてしまいつつあった。

「まあ、手段が増えてありがたいからいいけど……」

「魔導の発動媒体の機能だけ活かしてあるから安心して。それを持っててもこっちの情報がハクアに筒抜けになったりしないよ。……お、妹ちゃん、みーっけ。頑張って戦ってる!」

 贈り物などと言いつつも自分が渡した教典には興味がないのか、天井の街並みを見ている。目を凝らしてみれば、黒い点に近い大きさの人影が立ち回っている様子が見えた。天井までは千メートル近くある距離で、よく見つけたものである。

「……ふざけてる場合じゃないでしょ」

「うん、ごめんね。確かに、ふざけている場合じゃなかったね。そろそろ結論を出さないと」

 思わぬほどに真面目な同意が返ってきて、むしろ戸惑う。

 そういえば、先ほどから不自然なほど敵の姿が見えない。上ではサハラたちがあれほどまでに追い回されているのに、だ。

「ね、メノウちゃん。どうして私が『絡繰り世』を出たのか、覚えてる?」

「……サハラに会いに来たんでしょ?」

「それはそう」

 間違っていなかったらしい。

 アビィはうんうんと力強くうなずく。サハラが聞いていたらなぞの全肯定っぷりに逆におびえそうだ。

「本当はあのまま妹ちゃんを『絡繰り世』に持って帰っておきたかったんだけどね。メノウちゃんたちもいたし、人間のフリして旅回りするのは都合がよかったから、そのまま視察していたんだ」

「視察?」

「うん。おねーさんは年長者だからね。結界に穴が空いて三原色も外に出られるようになった時に、真っ先に外に出たの」

 長らく『霧魔殿パンデモニウム』から万魔殿パンデモニウムが指一本も出せなかったように、白夜の結界に囲まれた『絡繰り世』から脱出できる魔導兵は等級が限られていた。出られて、二原色まで。知性がある魔導生命体である三原色は、『絡繰り世』こそが唯一の世界だった。

「こっちの世界には私たちと共存できる人間はいるのか? どうしても残さなきゃいけないものはあるのかな? 貴重な素材は? 文化は? 思想や社会は? 選定しなきゃいけないものは、いっぱいあったよ」

 アビィが指を順番に折っていく。

「なんで、いまさらそんなことを話してるの?」

「メノウちゃんって、『遺跡街』の空間が崩れるとヤバいって話は聞いた?」

 メノウは眉をひそめた。実のところ、メノウはまだ聞いていなかったのだが、すぐに察した。

 もしも環境制御塔と『星骸せいがい』の中心核が融合した場合、空間振動によって白濁液が弾け飛んで降りそそぐ。環境制御塔が『星骸』の中心核を貫いて破壊し、他の六つの星も墜落して北大陸全域が未曾有みぞうの大災害に襲われる。

「なら、止めないと──」

「じゃあさ」

 アビィがメノウの台詞せりふさえぎった。

「『絡繰り世』を閉じ込める白夜の結界がなくなったら、どうなると思う」

「──は」

 声を失った。

 東部未開拓領域『絡繰り世』は疑いようもなく、世界で最大面積の亜空間だ。【器】の人災ヒューマン・エラーから吐き出され続ける微細導器群体マイクロマシンを糧にして、原色で構成される空間は膨張し続けている。封印されているからこそ、ここ『遺跡街』のように内部の空間が広がり続けているのだ。

『絡繰り世』を閉鎖環境たらしめている白夜の結界が壊れたら、どうなるのか。

 答えは、すぐに出た。現象自体は『遺跡街』で起こりうることと大差ないため、おそらく正解であろう単純明快な答えがわかってしまった。

「空間交錯が、起こる……?」

「うん」

 アビィはかろやかに頷く。

 さらにはメノウが恐れるあまり口にしなかった重大事項を告げる。

「大陸規模の、ね」

 そう告げたアビィの口元は、うすく微笑ほほえんでいた。

 ぞわりとメノウの胸に不快感がい寄る。

 原色概念によって拡張された亜空間が何らかの要因で消え去り、そこに存在していた物体が元の空間にあった物体と重なることによって起こる交錯現象。二つの空間が統合される時に、ある現象が起きる。

「空間交錯の際に重なっている物体って融合するんだけど、その際に質量に応じた衝撃を発生させるのも知ってる?」

「……知ってるわ」

 ぞわり、ぞわりと悪い予感が膨らんでいく。

 白夜の結界によって空間が閉ざされた『絡繰り世』の規模は、ここ『遺跡街』とは比べ物にならない。地表をおおう形で拡大していき、千年かけて広がり続けた面積は、いまや人類が住んでいる大陸に匹敵ひってきする。

「もしも白夜の結界が壊れたら、私たちが住まう閉鎖環境は解放される。長年をかけて拡張していった『絡繰り世』はいまある大陸の地表と重なって……空間交錯の衝撃で、大陸自体が弾けちゃうんじゃないかなぁ」

 声が、詰まった。

 そんなバカなと笑い飛ばそうとして、できない。メノウたちが地下に来てから考えていたのとはまったく別の脅威を聞かされて、とっさに頭が回らない。

「待って。それは、『絡繰り世』の結界が解除されたら、よね」

「うん。そうだね」

「されない、わよね?」

 救いを求める声に、アビィは微笑むだけで返答しない。

『絡繰り世』を閉じ込める結界は、千年の間、維持された。そしてこの一年で、『霧魔殿パンデモニウム』と同じほどに軋んでゆがんだ。

 人類にとって最悪なことに、『絡繰り世』に住まう魔導兵にとって、いまアビィが並べ立てた未来は必ずしも悪いことではないのだ。

「たぶん、この方法だけなんだよ。私たち魔導兵が万魔殿パンデモニウムから始まった魔物たちを綺麗きれいさっぱり微塵みじんに消滅させられるのって」

 二つの空間が融合する衝撃は大陸を砕く規模になる。一つの世界の破滅と引き換えに、アビィたちは宿敵を滅することができるのだ。

 だからこそ、結界に穴が空いた時に真っ先に彼女自身が出てきたのだ。

 かつて結界が軋みはじめた時、アビィたちは遠くない未来にその現象が起こることを予見し、空間交錯が最小限である上空に逃げるための方舟の構築を急いだ。空間交錯の際に発生する衝撃は物体同士が重なった時に生まれる。巨大な物体がない上空は、比較的安全な地帯なのだ。

 幸い、幾度となくループを繰り返している間に、避難先となる方舟は出来上がった。

 あとは、乗せるものを決めるだけだった。

「それでね、メノウちゃん」

 後ろ手に組んで、アビィが問いかける。

「結界を軋ませた純粋概念って、なぁに?」

 わかり切った問いを、メノウに問いかける。

「……」

 じり、とメノウのかかとが後退の音を立てた。サハラの忠告が、いまさら頭をよぎる。

 人災ヒューマン・エラーを封じる結界を軋ませたのは、いまメノウもアカリを介して行使している【時】だ。

 もしもアビィが白夜の結界を壊したいと考えていた場合、どういう行動に出るか。

 逃亡も視野に入れたが、背後からも気配が現れた。

「わかっただろう、アビリティは結論を出したんだ。お前ら人類は、わざわざ救う価値がねえ、ってな」

 後ろから、ゲノムが現れた。

 そういえば、と茫然ぼうぜんとした思考が考える。

 ゲノムも長らく『絡繰り世』にいた一人だ。メノウがアビィと合流してから、一度も襲撃を仕掛けてくることがなかった。

 この二人は──どこかで、内通していたのではないか。

「これからは魔導兵の時代が来る。いや、もう魔導兵なんて呼ばれることもねえ! 世界で唯一の知性体として、覇権を握って謳歌おうかできるんだ! 人類がつくる文明なんかより、よっぽどまともな世界になるだろうよ」

 人類社会に失望しきった男は、世界の今後を左右できるアビィに自分の感情をぶつける。

「早く滅ぼそうぜ、こんな世界は。【世界回帰】と【世界停止】で、白夜の結界は緩んでいる。それこそ、あと一息で崩れそうなほどにだ」

 ゲノムがメノウを指差す。

「てめえを追い詰めて【時】の人災ヒューマン・エラーに叩き戻せば、なにもかもお終いだ。世界が原色空間に支配されるのは、俺にとってもすこぶる都合がいい。ミシェル? シラカミ・ハクア? 知ったことかよ。そんなもの、全部吹き飛ばしてやろうぜ! なあっ、アビリティ・コントロール!」

 四大人災ヒューマン・エラーを押さえつける二つの結界は、あと一度の【世界停止】に耐え切れるかどうかも怪しい。

「ぜひこの場で、俺との盟約を結んでくれよ。俺と一緒にそこの『陽炎フレア』の弟子を詰めれば、人災ヒューマン・エラーになるぜ。くだらない世界は、それで終わる」

「そうだね、ゲノム」

 ゲノムの言う通りだ。アビィの弟妹たちだけのことを考えれば、白夜の結界を壊してしまったほうがいい。

 人類の文明は負の遺産を含めて一切合切いっさいがっさいが消え去り、原色概念だけが魔導体系として残る世界ができあがる。世界の仕組みがまるきり入れ替わる。そこには人災ヒューマン・エラーも、原罪魔導もない。

 そんな理想郷を脳裏に思い描きながら、アビィは躊躇ちゅうちょなくゲノムを殴り飛ばした。

「──え?」

 予想外の行動に、メノウは立ち尽くす。

 完全に油断していたゲノムは、とんでもない速度で吹っ飛んだ。あっという間に視界から消える。アビィが、くるりと振り返ってメノウと目を合わせる。

「メノウちゃんたちと一緒に世界を回ってわかったんだけどさ」

 いままでの旅路で、誰一人殺すことがなかった魔導兵は困ったような笑顔を浮かべる。

「私はこの世界のこと、大好きみたいなんだ。なに一つ、壊したくないくらいに」

 聞かされた内容の意外さに、メノウはぱちぱちとまばたきをしてしまった。

「アビィ……あなた、ほんとにちゃんと、私たちの味方だったのね」

「うわん、まだ疑われてたんだ。謝罪と賠償を要求したいよ!」

 いつも通りの態度に、ほうっとメノウの全身から力が抜ける。

 アビィの軽い態度に、本心が見えなかった。無根拠な友好的態度に納得がいかなかった。

 けれども、なんてことはない。彼女は純粋に人類に対して好意を抱いて、まぎれもなく、ただの善意でここまでメノウたちに協力をしてくれたのだ。

「そうね……どうやってお詫びすればいいかしら」

「じゃあ、熱烈なハグして───わっ!?

 言われた通り抱きしめたら、なぜか驚かれた。してやったと笑顔を浮かべ、抱擁を解く。

「一緒に行くわよ。あの環境制御塔まで」

「うん! いまのハグで、やる気出た!」

 導力強化の燐光りんこうを残して、メノウとアビィは駆け出した。


 吹き飛ばされた先で、ゲノムが起き上がっていた。

 人を殺さないというアビィの徹底具合は、部下の肉体を端末代わりにしている彼にすら適用されるらしい。

 深く、深く息を吐く。

「そうか」

 臓腑ぞうふの底から吐き出されたのは、失望のため息だ。

 諦観ていかんではない。失意はすれども、世界を滅ぼせるチャンスを逃すほどの事態ではないからだ。

「残念だ。『絡繰り世』に救ってもらった俺が、区長の一人を壊さなくちゃならないとはな」

 ゲノムは自分の顔から、拳銃を取り出す。上空に向けて、発砲した。

 信号弾だ。

 遺跡街にいる部下に、詰めの指示を出す。お遊びは終わりだ。流通を目的としない、ゲノムが占有している攻撃手段も使用を解除する。

「こんなくだらねえ世界を滅ぼすなんて、簡単さ。お前を壊したあと、俺は区長のやつらにこう連絡すればいいんだからな」

 次はいらない。

 ここで、世界を終わらせることができるのだ。

「人類との和平を唱えたアビリティ・コントロールを、人間どもは愚かにも信用することなく討伐しちまいました、とな」


 上下に広がる遺跡街の街並みの中間部で、光がまたたいた。

 信号弾だ。メノウは少数での隠密おんみつ行動が前提の上、教典で通信できるために使わなかったが、広範囲に合図を送るのに有用な手段である。

 ゲノムがこの街にひそむ自分の部下に指示を飛ばしたのだろう。いまの状況から、内容はおおよそ予測できる。

 部下全員で、メノウたちを殺しにかかってくる合図だ。

 メノウは勢いよく地面を蹴った。

 導力強化を全開にした踏み込みに、ぐんっと体が加速する。三歩進んで、すぐに道なりに進むのがもどかしくなった。一歩で大きく跳躍。ビルの壁に着地をした反動でひざをたわめて、ぎゅぅっと足裏にまった力を解放する。

 反動で、壁面がひび割れた。

 ビルとビルの壁を跳躍し、疾風のように駆けていく。

 横には、アビィが付いてきている。

 笑みがこぼれる。不思議と解放された心持ちだ。抜け落ちたものが、ぴたりとはまった感覚すらする。

 だがこの遺跡街には多数の敵がいる。

 前方の建物の屋上に、敵影。二人だ。どちらも両腕が導力義肢になっている。

 接敵まで、あと二秒。

 メノウの動きをギリギリに引き付けて、肉薄。敵の動きは鋭かった。着地の隙をねらって、導力義肢となった両腕を振り下す。

 メノウは着地と同時に体をひねって、ふところに飛び込んだ。敵の両腕が背中の後ろを通り過ぎる。

 互いがほぼ接触している間合いで、メノウは右手を振るう。

 空中に、鮮血が飛び散った。

 殺しはしていない。だが戦闘復帰は難しいだろう。高速で移動するメノウたちに追いつくのは、もっと無理だ。

 終わった戦闘には見向きもせず、メノウは跳躍した。ゲノムの直属でも、いまのメノウの動きについて来られる人間は多くない。散発的に導力銃の発砲音が響くが、どれもメノウをとらえることなく無為に弾痕を穿うがつだけだ。

「へいへーい! 上で妹ちゃんに構っている場合じゃないよぉ!」

 アビィがやたらと楽しげに叫んだ。ゲノムは大声で叫ばれた挑発に乗った。メンツや感情的な行動ではなく、メノウたちを止めるのに純粋に戦力が足りないという判断だろう。

 天井区画で、爆発ばくはつが起こった。

 一度ではない。続け様に二度、三度と爆発音が響く。メノウたちの進行方向を狙ってビルが落下してくる。天井区画にいるゲノムが、建物を破壊して墜落させているのだ。おそらくは『遺跡街』を占拠したのと同時に、防衛用に仕掛けを作っていたのだろう。冬場に邪魔な氷柱つららでも落とすように景気よく建物が墜落する。

 雨あられと落下してくる瓦礫がれき群を避けながら駆け抜ける。背後で丸ごと一軒の平屋が墜落。とどろく地響きに追い立てられるように進む。

「……アビィ?」

「ここまでやるとは思ってなかったです……」

 天が落ちて来るような騒乱の間をって進む中、メノウがじっとりと湿った声で責めると、アビィは素直に謝った。

 そのメノウたちの上部に、影が差した。

 天井区画にあった中でも一際ひときわ大きな建造物──『駅ビル』が、落ちてきたのだ。

 この周辺にはゲノムの部下もいるだろうに、まったくの構いなしだ。短剣銃を上に向けようとしたメノウの手を、アビィがそっと押さえた。

 落下してくるビルに向け、アビィが両腕を伸ばす。

『導力:素材併呑──原色ノ理・擬似原色概念──起動【原色種:蟷螂ノ斧】』

 アビィが、カマキリによく似た形になった腕を振るった。

 その一閃は、おそらく音速を超えていた。高さにして数百メートルはある建造物が左右真っ二つに切り裂かれ、切り口から衝撃波で吹き飛ばされ、メノウたちの進路だけを譲るように地面に落下する。

 音が、轟いた。

 耳をバカにしてしまいそうな大音量。まともに立っているのも難しいほどの地響き。そのどちらにもひるまず惑わされることもなく、メノウとアビィはまっすぐに駆け抜ける。

 もうすぐ、環境制御塔に到着だ。

 だがやはり、メノウたちの目的地を知っていれば待ち伏せする知恵はあった。

 環境制御塔の均された周辺に、十数人の武装集団が集まっていた。おそらく、ゲノムの直属の中でも最精鋭。一番に襲いかかってきた者たちより弱い人間は、一人もいないだろう。