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次の水曜日、ぼくと小佐内さんはパティスリー・コギ・アネックス・ルリコに招かれた。定休日だけれどテレビの取材があるので田坂瑠璃子さんは出勤し、取材の後にぼくたちを入れてくれたのだ。
「ゆきちゃん先輩には、すっごくお世話になったから」
そう話す古城さんの笑顔には、曇りがなかった。捏造写真をどう扱ったか、クラスメートの栃野さんとは何か話したのか……そうしたことを、ぼくも小佐内さんも尋ねなかった。頼まれごとは果たしたのだ。それ以上は別に知りたくないし、話させたくもない。
田坂瑠璃子さんは制服代わりの黒いエプロンを着けて、たおやかに笑っていた。
「本当に、ありがとうございました」
古城さんと田坂さんが並んで笑うのを見て、ぼくは柄にもなく、少し嬉しかった。先週の土曜日まで、古城さんは田坂さんを憎んでさえいただろうし、田坂さんは古城さんに遠慮があった。でもいま、二人は同じ空間にいる。ぼくたちは、捏造写真を手に入れるのに田坂さんが協力してくれたことを古城さんには話さなかったけれど、二人は何かの形で言葉を交わして――少なからず、お互いの距離を縮めたようだ。
そうしたことを、たぶん、小佐内さんは見ていない。お店に一歩入るや否や小佐内さんは言葉を失い、体をふるわせ、棒立ちになってしまったから。
パティスリー・コギ・アネックス・ルリコの店内は、お菓子で彩られていた。パステルカラーのマカロン、マーブル模様のマカロン、原色に近いマカロン。ホールサイズのチーズケーキ。シュークリームを積み上げ、上からチョコレートをかけたタワー――クロカンブッシュと言います、とあとで教わった――。そして、普段ならフランス菓子店であるパティスリー・コギ・アネックス・ルリコに置かれているはずもない、ベルリーナー・プファ……なんだっけ、ええと、ベルリン
「ぜんぶ、ゆきちゃん先輩のです!」
「撮影に使ったものですからお店には出せませんし、よかったら好きなだけ楽しんでくださいね」
小佐内さんが口を開け、何か言おうとしたけれど、あわわというような変な声しか出てこなかった。
古城さんから電話で、小佐内さんにお礼をしたいのだけどどうしたらいいかと相談され、じゃあお菓子でもてなしてあげてとアドバイスした。揚げパンのことを教えたのもそのときだ。小佐内さんはきっと喜ぶだろうとは思ったけど……。こんなに舞い上がるなんて、ちょっと推理できなかったな。
「ええと、ねえ、わたし、死ぬの?」
古城さんが声を立てて笑う。時刻がちょうど六時になって、外の大時計から流れ出した「おお牧場はみどり」のメロディーが店内を満たしていった。