「私をいじめるだけならともかく、人のいいフィリスを騙していやらしいことさせるだなんて……! 許せないッ! 神様仏様が許したとしても、私が絶対許さないッ!」

 黒い金属バットを振り回して怒りまくる仁王立ちのエマちゃんと、

「わ、悪かったよぉ、ゴメン。反省してるからさあ……」

 頭のてっぺんに大きなコブをこさえ、涙目で正座しているターニャ。

 さして広くもない洞窟の中ですから、エマちゃんの声がキンキンキンキン反響します。鼓膜が破れそうなくらい耳に突き刺さってくるのに、紅髪の魔女は両手を膝に置いたまま神妙に耐えているので、一応本気で反省しているのでしょう。

「……で? この呪いの本当の解き方は?」

「え? そんなの知るわけないじゃん」

 わかってるクセにぃとでも言いたげな笑みを浮かべ、シレッと応える紅髪の魔女に、エマちゃんはグッと奥歯を噛み締めました。まあそうだろうなとは思っていたのですが、実際に知らないとわかるとけっこうショックです。

「んじゃ、どうすんのよコレ……」

 苦々しく見下ろす股間には、真っ赤なお肉棒がぶらぶらぶら。

 一度射精したことで少し柔らかくなったようですが、大きさはほとんど変わっていません。緩くねじれた肉茎や鋭くくびれたカリ首、勇ましくむくれた亀頭、猛々しく張り出したエラなど、見た目は本物のオチ×チンにそっくりですが機能や仕組みは少々違うようです。

「まあ、町に帰って専門の魔法医に診てもらうしかないんじゃない?」

「こんなのぶら下げてえっちらおっちら歩けって? 冗談じゃないわッ! だいたい、アンタが帰還チケットをなくしちゃうからこんなことに……」

「ポーチが焼失したのは私のせいじゃないだろっ!? っていうか、帰還チケットで町に帰っていたとしても、その呪いはきっと発動してたぞ。オチ×チン化したのが宿の中か洞窟の中かの違いしかねーって」

「……そうかなあ?」

「そうだよ……ってか、いつまでそんなものブラブラさせてんだ? さっさとしまえよ、みっともない!」

「好きでブラブラさせてんじゃないわよっ! フィリスが私の下着をどこかにやっちゃったから……って、あれ? フィリスは?」

 もうひとりの仲間をようやく思い出したエマちゃんが、怪訝な目で洞窟の中を見回しました。優しくおっとりとした銀髪の尼僧は争い事が苦手で、金髪の少女戦士と紅髪の魔女が喧嘩を始めるとすぐに仲裁に入ってくるのですが──と。

 狭い洞窟の中ですから、捜すまでもありません。

 ふたりとは少し離れた場所で、岩の壁に寄りかかるようにしながら、しなやかな背に垂れる長い蒼銀の髪をかすかにリズミカルに揺らしています。背に隠れていて見えませんが、肩をすぼめて身体を丸め、お腹の前でなにかをしきりにいじっているような──。

 急に静かになった洞窟に、はぁ、はぁ、と上擦った吐息が反響します。

 なんだか妙な気配です。

「……どうしたの、フィリス? お腹痛いの?」

「エマの精液呑んで、お腹壊しちゃった?」

 口々に言ったエマちゃんとターニャが、イヤな予感を抱えつつ、返事をしないフィリスの前に回り込むと。

 思ったとおりというかなんというか、やっぱり生えていました。

 紅くぬらぬらと輝く、立派すぎるオチ×チンが。

 長さも太さもエマちゃんのと同じくらい、猛々しく反り返り勇ましくエラを張って、尼僧の白くなよやかな手の中でミチチ、メキキ、と怖いくらいに怒張しています。

「あ、ああ……エマさん、ターニャさん……」

 覗き込むふたりに気づいたフィリスが、艶めかしく火照った顔を上げました。

 いつも優しくほほ笑んでいる瞳が、熱っぽく潤んでいます。

 息が上擦り、汗が噴き出し、ぷるぷる、ぴくぴく、と震えています。

 それもそのはず、銀髪の尼僧は己のスカートを押し退けて猛々しく反り返った淫棒を、なよやかな手でシコシコシコシコしごいているのです。もう片方の手はむくれた亀頭を隠すように上からそっと被せられ、尖端ににじんだ先走り汁を己の淫肉にこすりつけて、ぬちゅにちょぬちゅにちょとかすかな粘音を立てています。

「はぁ、ふぅ、うぅう……ど、どうしましょう、私のお豆さんも、オチ×チンになって、しまい、ました……はあ、ふぅ、くぅぅッ!」

「うんわかった。とりあえず手を止めよう、フィリス」

「だ、ダメです……と、止められ、ません……ふぅ、はぁ、うぅぅっ! こ、これ、気持ちよすぎて……こうすると、どんどん、どんどん、気持ちよくなって……」

 普通の状態のクリトリスさえ弄ったことのなかった尼僧は、オチ×チンが発する蕩けるような快感のとりこになっていました。エマちゃんたちと話しているあいだも淫茎を握り締めた手はシコシコシコシコ動き続け、亀頭に被せた手は熱いヌルヌルを真っ赤な淫肉にぬちゅねちょぬちょねちょ塗り広げています。

「うぅ、ああ、うぅぅ……くぅ、ンぅ……ふ……うぅうっ! お、お願いが、あります、エマさん、ターニャさん……フィリス、一生のお願い……」

「ヤダ」「イヤよ」

「ええっ!? わ、私、まだなにも言ってないのにッ!?

 お願いする前から異口同音に断られ、ショックを受けるフィリス。

 ですが、エマちゃんもターニャもわかっています。

「いくらフィリスのでも、口でなんかしないからね!」

「私も、フェラってなんか苦手なんだよねぇ」

「そ、そんなぁ……ッ! だってエマさん、私、私……私はエマさんのオチ×チンを、おしゃぶりして差し上げたでしょうっ!? ターニャさんに言われるまま、私、私……ああダメ、お、オチ×チンが、オチ×チンが……お願いです、どうか、どうか……先ッ著さきっちょだけでいいですから、しゃぶってくださぁいっ!」

 白いローブの中でしっとり汗ばんだ乳房を揺すり、すがるような目つきでふたりを見上げながら涙声で哀願するフィリスですが、エマちゃんもターニャも知らんぷり。

「っていうか、放っておいても平気だよね」

「まあ、そのうち勝手に出ちゃうよな」

「そ、そんなぁ……あっ!? う……ンぅうっ!? な、なにかへんです、私の、おち×ち……ンぅうっ!? うぅ、くぅ、ンぅぅ、ンぅ、ふぅ……ンくっ!? ン……んひぃいっ!?

 ──ぴゅるっ! びゅくっ! びゅるるっ!

 エマちゃんたちの推測どおり、自分の手で臨界点に達したフィリスはひとり勝手に射精し始めました。淫棒を駆け抜けていく突風のような快感にビクビクッ! ビクビクッ! と震えつつ、亀頭に被せた己の手のひらにびゅるるっ、びゅくくっ、と熱い白濁液をほとばしらせます。

「あ……ああ、熱い……熱いドロドロが、こ、こんなに……いっぱい……」

 よほど気持ちよかったのか、フィリスはうっとりと目を細め、そのまま失神してしまいました。身体が横様に倒れ、真っ赤なお肉棒から両手が離れて──。

 でも、それはほとんど縮まりません。

 エマちゃんのお肉棒と同じく、ペニスのように見えてペニスではないのです。

「ああもう……どうすんのよコレッ!? アンタのせいでふたりもオチ×チンが生えちゃったじゃない!」

「私かっ!? 私のせいかっ!?

「アンタが悪戯でフィリスを騙し、私の精液を呑ませたじゃない! それでフィリスにもオチ×チンが生えちゃったんでしょっ!?

「感染性の呪術だなんて知らなかったんだよっ! っていうか、悪いのは最初にエマを呪ったコランだろッ!? アイツがいなきゃ、こんなことにはならなかったんだ!」

「そのとおりッ!」

 洞窟にいきなり男の声が響き、魔法の灯りが揺らめきました。

 ハッとしたエマちゃんとターニャが振り返ると、洞窟の入り口を隠すようにしてひとりの中年男性が立っています。

 もったいつけるまでもありません。

 頭のハゲかかったデブ男、全裸にブリーフ一丁がトレードマークの、悪の魔法使いコラン・ド・ウコバクです。

「その呪いは、ボクのオリジナルだからねっ! 解き方はボクにしかわからないのさ! さあ、エマちゃん! 元の身体に戻りたかったらボクのお嫁さんに……って、アレ? ベリーショートの小生意気な魔女は?」

 袋小路になっている洞窟の入り口を塞ぎ、3匹の美少女を捕らえたつもりになっていたコランは、いつの間にかターニャがいなくなっていることに気づいて首を傾げました。

 エマちゃんは応えず、ただ静かに右打席に立ちます。

 左手で握ったバットで一度地面を前方に掃くように振ってから、反動で引き戻した腕を右肩前から頭上へ大きく回して前方へ。まっすぐ立てたバットをコランのほうにグイッと突き出して──。

 その突き出した左腕の袖を、右手でちょいっと引っぱって──。

「振り子打法? 人が違うよ……っていうか、大怪獣もその人も左打席……のうわっ!?

 魔法で背後に回り込んだターニャにいきなり尻を蹴っ飛ばされ、エマちゃんのほうへ吹き飛ぶコラン。

 軽くテイクバックしたエマちゃんは、フォークの軌道で前のめりに落ちながら迫ってくるハゲ頭を、鋭いバットスイングで力いっぱいブッ叩きます。

 たいへん危険ですので良い子は絶対に真似しないでください。

 それはともかく──。

「う、あ……うぅっ!? な、なにコレっ!? ぼ、ボクをどうするつもりなんだっ!?

 頭頂をブッ叩かれた衝撃で気を失ってしまったコランは、目覚めるとマングリ返しの姿勢で緊縛されていました。逆さになった頭の先にはターニャが立ち、仰向いた尻の向こう側にはなぜか黒い細布でしっかり目隠ししたエマちゃんが、大怪獣モデルの金属バットを青眼に構えています。

「ちょい右、もうちょっと……いや行きすぎ、半歩戻して」

 コランの頭の先でニヤニヤしながら、目隠しのエマちゃんに指示を飛ばすターニャ。

 普段はあまり仲の良くないふたりなのに、いまは呼吸がピッタリです。魔女の指示を受けた少女戦士はセキレイの尾のようにピク、ピク、とバットの先をわずかに上下させながら、前に出した右足をほんの少しずつ左右に動かします。

「ちょ……ちょっと待ってッ! なにしてるんだぁあっ!?

「スイカ割りだよ、スイカ割り。知らないの?」

 どうやら、紅髪の魔女と金髪の少女戦士は、コランの無防備に仰向いたお尻をスイカ割りの要領でブッ叩くつもりのようです。

「ロケーションに全然合ってないよ! っていうか、ボクのお尻はスイカじゃないし!」

「男のクセに小せぇなあ。スイカも胡桃くるみも同じ果物だろ」

「い、いやいや違うよ、全然違う……っていうか、え? く、胡桃ッ!? 桃じゃなくて胡桃ッ!? いったいなにを狙って……ちょ、待って、待って待って……え、え、エマちゃぁあああんッ!?

 ──バシッ!

 力いっぱい振り下ろされた黒い金属バットが、肉づきのよいコランのお尻をしたたかに打ちました。

「痛ぁいっ!」

 マングリ返しに緊縛された身体をビクビクッと震わせて、激痛に叫ぶ悪の魔法使い。

 男にしては大きく丸い、桃の実のような美尻を、バットは見事にとらえていました。

 なのにターニャは「惜しい!」と叫び、ニヤニヤ笑いを深めます。

「3センチくらい左に外れた……いや逆。そっちじゃ余計に外れるよ」

「ちょ、まっ……く、胡桃ってなんだよっ!? お尻を狙ってるんじゃないのッ!?

「胡桃は胡桃だよ。バナナの下にふたつあるだろ? あ、いまは上か」

 仰向いたコランの顔を逆さに覗き込んだ紅髪の魔女が、唇の端をニィッと吊り上げて鋭い八重歯を覗かせました。

 ふたりが割りたがっているのはコランのお尻ではなく、金玉だったのです。

「ば……バカかぁああっ!? なに考えてんだ、やめろっ! いややめて……やめてやめてお願い、や、や……やめてくださぁあぁあああいっ!」

 ──バシッ!

 再び振り下ろされたバットが、先ほどとは反対側の尻房を力いっぱい打ちました。

「ぎゃひぃいいンっ!?

 厚い肉のおかげでそれほど痛くないはずなのに、コランは大げさな悲鳴を上げ、全身からブワッと脂汗を噴き出します。

 コラン自身がかけた呪いのせいで、エマちゃんのバットは決して相手を殺傷できませんが、しかし痛みはあります。そんなバットで、無防備に仰向いた股間、男にとって最大の急所である金玉を、力いっぱいぶん殴られたら──。

 想像しただけで真っ青になります。

 噴き出す脂汗に全身がぬるぬるとして、マングリ返しにたわめられた太った身体がブルブルガクガク震え始めます。

「な、なにが望みッ!? ボクとの結婚? だったらなにも、こんなことしなくても……いやいや嘘です、冗談冗談ッ! 武器をバットに変えてしまう呪いだろ? 解くよ、解く解くッ! 解くからッ! 解くときッ!!

 恐怖のあまり錯乱したコランが唾を飛ばしながら早口に叫びましたが、目隠ししたエマちゃんはまるっきり無視。静かに呼吸を整え、再びゆっくりと黒い金属バットを大上段に振り上げていきます。

 代わりに、意地悪くほほ笑んだターニャが膝を折ってしゃがみ、コランの顔を逆さに覗き込みながらなれなれしく話しかけました。

「わかっててとぼけてるだろ、旦那? エマやフィリスのクリトリスを元に戻す方法だよ。早く言わないと胡桃をカチ割られちゃうぞ」

「あ、そっち? でもそっちはまだ、さっき発動したばかりだろ? もうちょっと愉しんでからでも……ああああ嘘、嘘嘘、冗談冗談冗談だってばぁああっ! 待って待って言います言います、ほ、本当に言うから……ひ、ひぃ、ひぃぃいッ!?

 ──バシッ!

 三度目の正直で、エマちゃんのバットが見事、コランの急所をとらえました。

「ぎゃひぃい──────ッ!?

 脳天を突き抜けていく激痛に白目を剥いて泡を吹く、悪の魔法使い。

 あまりの衝撃に死ぬかと思いましたが、死にません。

 コランがかけた呪いのせいで、エマちゃんのバットは相手を決して殺せないのです。

 どんなに力を込めても、どんな急所を狙っても、絶対に相手を殺せない武器──見方を変えればそれは、極めて使い勝手のよい拷問道具です。殺せないし傷つけられないが痛みは与えられるのだから、なおさらのこと。

「いまのとこだよ、エマ! さあ、どんどん行ってみよーっ!」

 愉しげな魔女の声に応じ、天使のような美少女戦士がまたしてもゆっくりとバットを振りかぶりました。仰向いた純白のブリーフに目隠しされた顔をまっすぐ向けて、すぅ、はぁ、すぅ、はぁ、と静かに呼吸を整えます。

 それを為す術もなく見上げるコランは、

「お……おまえら、鬼かッ!? 悪魔かぁああっ!?

 血を吐くような声で絶叫し、緊縛された身体を駄々っ子のように揺らし、脂汗と涙と鼻水で仰向いた顔をべちょべちょに濡らし──。

 ほどなくして、オチ×チン化の呪いを解く方法を一から百まで吐きました。