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 シェリーこと、みやこうそくされたのは、うすぐらくてせまいガスしつだった。

 められて、どのくらいっただろう。かべひだりくびじょうつながれたは、じょうはずそうとうではげしくさぶったが、くびきずつくだけでじょうはずれない。

 かたいきをしながら、みぎゆかについてうなだれた。

 どうせじょうはずれたところで、かぎがかかったこのからはられない。られるのは、わたししょぶんまったときだ。られたとしても、きっとすぐにころされるだろうが……。

 かくっていたあかしろのカプセルを、まえかかげた。

 どうせころされるなら、ぶんつくったくすりほうがマシだ──。

 けっしたは、カプセルをくちれてんだ。

 これでねる──そうおもったしゅんかん

 ドクン──!!

 しんぞうおおきくみゃくって、がカッとひらいた。

「んああああああ──ッ!!

 きょうれつしょうげきからだじゅうまわった。からだえるようにあつい──!!

 をよじらせそのくずちるからだから、しろけむりのぼった。さらにじょうからぶらがったひだりがピクピクとけいれんしたかとおもうと、じょじょちぢんでいき、じょうをするりとちる。

 はくしたからだちいさくなっていたは、しきをもうろうとさせながらゆかいずり、ちいさなダストシュートのをかけた。ちからめてると、とびらいた。とうにゅうぐちども一人ひとりがギリギリはいれるおおきさだ。はそのトンネルのようなあなとうじた。

 ゴミちたたてものからて、おおきくなったはくきずりながらあめなかひっはしった。

 まれてすぐにりょうしんくし、たった一人ひとりあねしきころされてしまったに、どこにもくあてはなかった。ひっはしなかかんだのは、ぶんおなじくようしたのうせいたかい、どうしんいちだった。おそらくおなじょうきょうおちいったであろうかれなら、きっとのことをかいしてくれるだろう。

 は、ぜん調ちょうおとずれたことのあるどうていまえていた。ずぶれになりながら、もんげる。すると、あまおとじってちかづいてくるあしおとこえた。おどろいてよこくと、かさしたはく姿すがたぶとりのおとこ──がさはかっていた。

「あ、あの……」

 こえをかけると、ひょうじょうっているがさはかからだがゆらりとれて、そのにドサリとくずちた。

「えっ……!?

 おもわずくちてて、あとずさりした。そのとたん、こうとうにコツンとなにかがたる。

!!

 そのかたつめたいかんしょくに、ぜんしんがぶわりとさかった。かえらなくてもわかる。じゅうこうけられているのだ。

いたかったぜ、シェリー」

 うしろをかえった。煙草たばこをくわえたジンが、ちいさくなったじゅうけている。


 パァンとかわいたじゅうせいあたまなかひびいて、はいばらました。

 てんじょうんできて、はいばらみだれたきゅうととのえながらひだりうでげた。からだゆううごくのをかくにんして、たれたのはゆめだったとようやくづく。すると、

「よかった……」

 わかじょせいかおがいきなりかいんできた。メガネをかけたはいばらはすばやくがり、かべぎわあとずさる。

「だ、だれ!?

「……こわかったよね」

 じょせいはいばらはんのうおどろきながらも、やさしくほほみかけた。そのかおに、はいばらおぼえがあった。ビートルのなかていたニュースばんぐみていたじょせい──なおだ。

「あなた、エンジニアの……」

「え? なんて?」

 りょううししばられたなおは、した。

「……いえ。ここはどこ?」

 はいばらまわりをまわした。そこはだんベッドがふたならんだせまで、はいばらだんのベッドにかされていたらしい。

ぶんせんすいかんだとおもうんだけど、わたしもわからなくて……」

 なおまわす。そのとき、はいばらあししたなにかたいものがあるのにづいた。そっとあしをどけると──たんていバッジがいてある。

だれが……」

 ったたんていバッジをげんそうにていると、したなおはいばらかおをじっとつめた。

「……なに?」

「あなた、ほんとうてる。に」

「えっ?」

 とつぜんなおくちからぶんまえてきて、はいばらおどろいた。

「や、はもう大人おとなだから、ちいさいときにってことね」

「……へぇ、そうなんだ」

 はいばらこんらんしつつもあいづちち、ベッドからりた。するといきなりドアがいて、ウォッカとキールがはいってきた。ベッドのそばでっているはいばらて、

「おいっ、なんだ! しばってねーじゃねぇか!」

 ウォッカがはいのキールにかおける。

「こんなどもひつようないわ」

ねんにはねんをだ」

 ウォッカはだんベッドのじょうだんにあったロープをった。ベッドのはしあとずさったはいばらふるえていた。あせほおつたう。

して。わたしがやるわ。あなたはこれをかくにんしたいんでしょ」

 キールはっていたタブレットをウォッカにわたすと、ったロープをひろげながらはいばらちかづいた。

あしからね」

 はいばらまえでしゃがみみ、ベッドからろしたはいばらあしをロープでしばっていく。はいばらはさりげなくかみをやると、メガネのつるのせんたんについたとうちょうはずし、キールのパーカーのフードにれた。

 いっしゅん、ロープをしばるキールのまる。が、すぐにからだこして、はいばらからだうしろにけた。

うでを…」

 りょうあししばられたはいばらはベッドにひざをつき、りょううでうしろにまわした。なかりょうくびててじゅうむ。キールははいばらくびいちべつして、ぎわよくロープをいていった。

「しっかし、しんじられねぇな」

 ウォッカのこえに、はいばらはピクリとかたげた。ウォッカはっていたタブレットをかおよこかかげて、ニヤリとわらった。

「おまえ、シェリーなんだろ?」

 タブレットには、シェリーとはいばらあいぞうならんだろうにゃくにんしょうシステムのけっめんひょうされていた。

 はいばらごんつらぬくと、ウォッカはフンとはならし、なおちかづいた。

「おい。このガキがこのおんなってことだな?」

「これって……」

 タブレットのめんせられたなおは、ぶんくびもとた。ネックレスがなくなっている。

 こたえてはいけないとちょっかんしたなおは、めんからをそらした。ウォッカがチッとしたちする。

「まぁいい。だまっていられるのもいまのうちだ」

 台詞ぜりふいて、く。キールもロープをベッドのじょうだんいて、あとつづいた。

かしたままラムにわせるしかないわね」

「ジンのあにわすのがさきだ」

 ドアがめられ二人ふたりあしおととおざかると、はいばらりつめていたゆるんで、ずるりとかべにもたれかかった。ウォッカにせられたタブレットのめんあたまかぶ。

 しょうたいがバレてしまった──!!

 シェリーがようしてきていることが、しきにバレてしまったのだ。

 はいばらは、あくてきたジンのかおおもした。じゅうきつけるジンのれいこくひとみがよみがえって、ぞわりとすじがわなないた。



 よくあさ。ホテルのロビーにあつまったどもたちは、そのからはいばらいてびょういんったとかされた。

「え! あいちゃんが!?

昨日きのうげんだったのになあ」

 げんそうなかおをすると、みつひこげた。

「それならボクたち、おいにきます!」

「うん!」

「だな! うなじゅうれようぜ!」

 はいばらしんぱいするどもたちて、そのひょうじょういっしゅんくもる。

「ダーメ! がうつっちゃうでしょ」

 そのめると、あゆあんそうなかおをした。

「……あいちゃん、そんなにわるいの?」

 どもたちうしろにいたコナンが、そのわりにこたえる。

びょういんてもらってる。だいじょうだ」

「でも……」

「クルーザーをはいしたから、みんなたくして。いいわね?」

 そのわせない調ちょうに、どもたちは「はーい」とかたなしにへんをした。すると、

もうくん

 ぐれがロビーにいるろうもとへやってきた。

けい殿どの

「すまないが、コナンくんいっしょてくれないか」

 コナンとろうは、ぐれあとについてホテルのしょうめんげんかんた。げんかんまえにはくるままっていて、とううんてんせきがわっている。

 コナンがくるまかってあるしたとき、ポケットのスマホがふるえた。

「ごめん、ちょっとって。すぐわらせる」

 ちゃくしんひょうたコナンは、ぱたぱたとけていく。かえったろうは、あきれたかおでコナンのうし姿すがたながめた。

「なーにやってんだ、アイツ。──あれ?」

 ふいにみぞおちのあたりがいたくなって、いたたたた……とさえる。そこはさくばんらんがパンチをおいしたところだった。


 ろうたちからはなれたところまでて、コナンはでんた。

「もしもし、むろさん?」

『ホテルでさらわれたしょうじょは、きみいだよね』

 けにわれて、コナンはおどろいた。

「まさか、昨日きのうでんって……」

ゆうがたにはジンがごうりゅうする』

せんすいかんむってこと?」

 コナンがたずねると、でんこうのむろすこおどろいたようだった。

ってたのか。さすがだね。やつそらからごうりゅうする。つまりそのとき──』

せんすいかんじょうせざるをない」

 コナンのさきまわりしたこたえに、むろは『ああ』とうなずく。

かのじょたすけるなら、そこしかない』

 つうったとどうに、「おい! くぞ!」とろうこえがして、コナンはくるまほうかった。

 はいばらもどすチャンスは、いちきり。

 そらからごうりゅうするジンをむかえるため、せんすいかんかいじょう姿すがたあらわすそのときだけ。

 それはぜっこうのチャンスでもあるとどうに、さいだいでもあった。


 ぐれとうれられて、コナンはろうともふたたびパシフィック・ブイにじょうりくした。コントロールルームにはいると、くろしらとりかまえていた。

かくにんしてもらいたいことがある」

 くろはそううと、まえきょだいモニターをるようにうながした。

とうだいぼうはんカメラを調しらべてみたんだが、せんすいかんうつっていなかった」

 モニターにはさくうみえいぞうさいせいされていたが、せんすいかんもコナンの姿すがたうつっていなかった。

「え……よるだからってわけじゃないよね?」

 コナンがまゆをひそめながらたずねると、

けいさつこうかいぞうカメラよ」

 とうわりにこたえる。コナンのうしろにったろうは、もうわけなさそうにあたまをかいた。

「すいません。コイツのせいでけいかけさせてしまって……」

 コナンはコンソールのまえすわっているまきはなしかけた。

「このシステムにつなげているカメラって、けいさつかんしてるものだけだったよね?」

「そうだけど……」

「ちょっといい?」

 コナンはコンソールのうえに、はちじょうじまひょうされたスマホをいた。にはベルツリーホテルからなんばらせんじょういわかいがんまでのけいが、あおいろせんひょうされている。

はんにんげたルートだよ。このみちにあるけいさつのカメラを調しらべて!」

「おい、いいかげんに……」

 ろうがコナンのくびっこをつかもうとまえると、くろしてせいした。

さくじゅういちごろです」

 くろことまきすこかんがえてうなずくと、レオンハルトのほういた。

「レオンハルト。エー─6のみちだ」

こんはガキのいなりかよ」

 レオンハルトはいやうと、キーボードをそうはじめた。まきていしたぼうはんカメラのえいぞうしんウインドウでひらいて、えいぞうじゅうさんごろまでいっはやおくりする。

 モニターをよこていたレオンハルトは、なにかにづいたようにまゆをひそめた。

「ここのカメラです」

 まきうと、いちどうきょだいモニターにうつったぼうはんカメラのえいぞうつめた。

「……へんですね。はんにんくるまうつってない」

がささんのくるまもない。どういうことだ?」

 はんにんくるまとビートルがとおったとおもわれるかんたいぼうはんカメラえいぞうには、くるまいちだいうつっていなかった。

 きょだいモニターにくぎけになったまきは、コンソールにをついてがった。

「まさか、えられてる……?」

ちがいない)

 くるまうつっていないぼうはんカメラえいぞうて、コナンはかくしんした。

 ここにつながれているカメラえいぞうは、かいざんされているのだ。


 はいばらたちせたせんすいかんは、ふかうみなかをゆっくりとこうこうしていた。

「もしかしてあなた、むすめ?」

 はいばらはんたいがわだんベッドのだんこしかけたなおがたずねると、ベッドのはしにもたれたはいばらはためいきをついた。

「だから、みやなんてらないってったでしょ」

「あ、そうよね。にこんなおおきなどもがいるはずないし……」

 ばつがわるそうにほほんだなおは、あらためてはいばらかおた。

「でも、あなたはわたしったころかのじょにそっくり」

「……った? どこで?」

 はいばらがたずねると、なおせてさびしげなひょうじょうかべた。

わたしちいさいころアメリカにいたの。とうようけいめずらしかったからか、まいにちいじめにってて……」


       


 おさなころなおは、まいあさスクールバスにるのがゆううつだった。

 そのもスクールバスにはどもたちがぎっしりっていて、いているのはいちばんおくせきだけだった。リュックをまえかかえたなおは、おどおどしながらバスのつうあるいていく。

 するととつぜんみぎがわすわっていたおとこあしつうした。ひだりがわすわっていたおとこもうわせたようにあしす。つうさえぎられたなおは、うしろをかえった。せきすわったどもたちは、みんなうすわらいをかべてなおている。

 どうしてだろう──なおはリュックをきしめて、ギュッとをつぶった。

 なんでまいにちいじめられなきゃいけないんだろう──。

 なおしそうになったとき、うしろからふくられた。かえると、あつほんったほんじんおんなっていた。

 そのおんななおかたしてあるかせると、

「ここすわって」

 ぶんすわっていたせきに、なおすわらせた。そしてなにごともなかったかのようにっていたほんひらき、せきもたれにつかまりながらはじめる。

 なおせきもたれから、そっとうしろをのぞいた。つうあしふさいだおとこたちが、なおたすけてくれたおんないまいましげにている。


       


「そのから、いじめのひょうてきわってしまって……わたしたすけられなかった。またいじめられるのがこわくて……」

 なおはなしいているうちに、はいばらはアメリカでらしていたときのことをじょじょおもした。

「だからじんしゅによってにくしみわないなかにしたい、って……あ、わからないよね?」

「だから『ろうにゃくにんしょう』をつくったの?」

 はいばらくと、なおすこおどろいてから「ええ…」とうなずいた。

「アメリカのだいがくじんるいがくエーアイまなんでいるうちに、じんしゅねんれいわずににんしょうできるプログラムをおもいついたの。そしたらインターポールからこえがかかって、『ろうにゃくにんしょう』をテストするためににっぽんぼうはんカメラにアクセスするきょをもらったの。そのとき、さいしょおもいついたのがだった。にまたいたかった。ずっとずっとあやまりたかったから……」

 なおはアメリカのしょうがっこうにいたころしゃしん──おさなうつっているしゃしんなんまいかパソコンにみ、『ろうにゃくにんしょう』にかけたという。すると、にっぽんまちなかあるせいちょうしたぞうてきて、『ろうにゃくにんしょういっ』とひょうされた。さらにおどろいたことに、おさなころにそっくりなおんなぞうてきて、こちらも『ろうにゃくにんしょういっ』とひょうされたのだ。

「なぜかあなたもヒットして、それがどういうことなのかいまでもわからないんだけど……」

 なおせつめいいて、はいばらはようやくぶんしょうたいしきにバレたけいがわかった。

 なおもうわけなさそうにかたをすくめる。

「でもきっと、わたしのせいでまれたんだとおもう」

 いいえ──はいばらこころなかでつぶやいた。

んだのは、わたしほう……)