3
警備艇が何もない広大な外海をひたすら進んでいくと、やがて海に浮かぶ巨大な建造物が見えてきた。
建造物から浮き桟橋が伸びていて、警備艇は速度を緩めて近づいた。桟橋に警備艇が横づけされて、黒田と白鳥が降りてくる。
「これはすごい……」
桟橋に立った白鳥は、目の前の巨大な建造物を見上げてつぶやいた。
「ものすごい大きさですね」
すると、前を歩いていた黒田が突然立ち止まった。
「そろそろ聞かせてもらえるかな」
「……は?」
きょとんとする白鳥の背後を、黒田がジロリとにらむ。
「なぜ、我々と一緒に来たのか──」
「!」
警備艇から降りて階段の陰に隠れていたコナンは、ビクリと肩を上げた。
気づかれていたのか──コナンは顔を隠していたライフジャケットを下げて、ハハハ……と笑った。
コナンの姿を見つけた白鳥が、ギョッと目を丸くする。
「コナン君! なんで!?」
ライフジャケットを抱えたコナンは、小走りで白鳥の元へ近寄った。
「クジラを見に行くお船と間違えて乗っちゃった」
「なんですぐ言わなかったの!」
「だって、怒られると思って……」
コナンがしょんぼりしてみせると、白鳥は慌てて上着のポケットからスマホを取り出した。
「船を呼び戻します!」
「よせ。ユーロポールを待たせたくない」
黒田はそう言うと、建造物へ歩き出した。まさかの反応に、白鳥がぽかんと立ち尽くす。コナンも、こんなにあっさり『パシフィック・ブイ』に入るのを許されるとは思いもしなかった。
黒田と白鳥について歩いていくと、桟橋の先で二人のスタッフらしき人物が待っていた。
「遠いところ、お疲れ様でした」
二人の男女は、揃って頭を下げた。
「初めまして。パシフィック・ブイ局長の牧野です」
「エンジニアの直美・アルジェントです」
コナンは牧野と直美の顔に見覚えがあった。二人は、灰原がビートルの中で見ていたニュース番組に出ていたのだ。
「警視庁の白鳥と、上司の黒田です」
「初めまして」
白鳥に紹介された黒田は、軽く一礼した。
「本日はよろしくお願いします。で……」
牧野は白鳥のそばに立つコナンを手で示した。
「この子が間違えて乗船してしまったという……」
困惑気味にコナンを見る牧野の横で、直美が身をかがめて話しかけた。
「こんにちは! お名前なんていうの?」
「ボク、江戸川コナン。よろしくね!」
「コナン君ね。よろしく」
直美はニッコリと微笑んだ。
初対面の挨拶が済むと、牧野と直美はさっそくパシフィック・ブイへ案内した。
「この先にパシフィック・ブイの入り口があるんだよ」
コナンは長い階段を上がる直美を追い越して、屋上へ一番乗りをした。
「わぁ~! 広──い!!」
巨大な正方形をした屋上にはヘリポートがあり、真ん中にはヘリポートより遥かに大きな円形のプールのような穴があった。穴には海水が溜まっている。
「大きい……穴?」
「ここが入り口なの。見てて」
直美が言うと、ザザザ……と音がして、水面が波立ち始めた。みるみるうちに水面が盛り上がったかと思うと、そこから建物がせり上がってきた。
「!」
高くせり上がった建物から海水が流れ落ち、ヘリポートに立っていたコナンたちに水しぶきがかかる。
「すっげ……」
コナンは水しぶきを受けながら、目の前に現れた円錐台形の建物を見上げた。
「これがエントランス部分です。実は施設の大半は海中にあるんです」
牧野はそう説明すると、エントランスに向かって歩き出した。
「バラストタンクで浮き沈みする仕組みで、波の力をコントロールしています。海中にあるのは、膨大な量のサーバーを冷やすためでもあります」
「まるで海に浮かぶブイだね」
コナンが言うと、直美が微笑んでうなずく。
「だから『パシフィック・ブイ』って呼ばれているのよ」
コナン達はエントランスの奥にあるエレベータに乗った。エレベータが降下すると、ガラス張りのエレベータシャフトから海中が見えてきて、
「わぁ~!」
「おお!」
コナンと白鳥はガラスの壁に顔を近づけた。
「メインルームはこの下になります」
「ねぇ、あれは?」
コナンは海中でゆっくりと回る巨大なリングを指差した。直美がコナンの後ろで腰をかがめ、コナンが指差した方を見る。
「ああ、潮の流れで発電するリングよ。この辺りは黒潮が強くてね」
金属音が鳴って、エレベータの扉が開いた。
「この階はスタッフ用の居住エリアになっています。メインルームは通路の先です」
コナン達はエレベータから降りると、牧野を先頭に縦並びで歩いた。海の中の施設とは思えないほどの空間が広がっていて、コナンは白鳥の後ろでキョロキョロと周囲を見回しながら歩く。すると突然、どこからか不気味な音が響いた。
「ん? これは?」
音に気づいた白鳥がたずねると、牧野の後ろを歩いていた直美が振り返った。
「クジラの鳴き声です。ザトウクジラは歌うクジラですから」
「ソナーが探知したの?」
帽子を取りながらコナンが言うと、直美が「えっ」と目を見開いた。
「スゴイ! コナン君って物知りなのね!」
褒められたコナンは、エヘヘと子供っぽく笑ってみせた。
パシフィック・ブイには音波によって物体を探知するソナーの設備があって、ザトウクジラの歌がソナーを通じて響いたのだ。
通路をしばらく歩いていくと、その先に大きな扉が現れた。
「ご足労おかけしました。こちらがメインルームになります」
扉が両側に静かに開く。最初に目に飛び込んできたのは、すり鉢状になった部屋の中央にある巨大モニターだった。
「おお、広い……」
眼前に広がる大空間に、白鳥が思わず声を漏らす。
天井近くまである巨大モニターを取り囲むようにコンピュータを制御するコンソールがずらりと並べられ、壁面の強化ガラスからはライトアップされた海中のパノラマが広がっている。
「では、メインスタッフを紹介させてください」
巨大モニターのそばまで階段で下りてきた牧野が言うと、一番近くのコンソールについていたスタッフが立ち上がった。
「フランス出身のグレース」
ウエーブのかかった柔らかい髪に大きなメガネをかけ、首元にスカーフを巻いた女性が「コンニチワ~」と愛想よく手を振る。
「ドイツ出身のレオンハルト」
牧野は、奥のコンソールで大きな背をかがめてキーボードを打つ男性を手で示した。レオンハルトは横目でチラリと白鳥たちを見ると、角刈りの頭を軽く下げる。
「インド出身のエド」
巨大モニターを挟んで反対側のコンソールについた男性が立ち上がった。
「よろしく」
軽く頭を下げたエドは、ぎょろりとした大きな目でコナンを訝しそうに見る。すると、直美が自分のコンソールに向かい、椅子をくるりとコナン達の方に向けて座った。
「あとは私、直美・アルジェント」
「以上のエンジニアが任務に当たっています」
牧野が全員の紹介を終えると、白鳥が「あの……」と声をかけた。
「これは日本全国にある警察の防犯カメラですか?」
白鳥が指差した巨大モニターには、無数のカメラ映像が映し出されていた。細かく分割されたモニターに映った国内の街頭映像が、目まぐるしく切り替わる。
「ええ。これに今日、ヨーロッパ中の防犯カメラが繋がれるんです。今後は世界中のカメラが接続予定です」
「さすがインターポールの施設だ」
白鳥が感心したように言うと、奥のコンソールから「そうだ!」と声がした。
「ここはインターポールだ。なのになんで日本の警察がいる!」
キーボードから顔を上げたレオンハルトは、白鳥たちをにらみつけた。
「フランクフルトで侵入事件があったからでしょ」
グレースの言葉に、レオンハルトは「ケッ!」とそっぽを向いた。グレースが軽くため息をつく。
「うちも何かあったときのために、警視庁に来てもらったんだ」
牧野が言うと、レオンハルトは不機嫌そうな顔を向けた。
「最新技術を日本の警察にだけ公開するなんて、不公平じゃないか!」
「日本はインターポールの加盟国だ。必要があれば技術を提供するのは当然だ」
レオンハルトはフンと鼻を鳴らした。
「ここのトップが日本人だから、日本びいきってわけか」
「なっ……!」
牧野が眉根を寄せると同時に、直美が立ち上がった。
「いいかげんにして。それを言うなら私の母だって日本人よ」
「どうりでいけ好かない女だと思った」
「!」
直美の顔つきが変わった。詰め寄るように一歩前に出る。
「今の言葉は撤回しなさい。人種差別よ。それにあなた──」
「あのさぁ、そろそろ時間じゃない?」
巨大モニターの時計を見たエドが言った。牧野が「あ!」と腕時計を見る。
「総員、配置につけ!」
にらみ合った直美とレオンハルトは、仕方なく互いのコンソールに向かった。グレースも自分の席に戻っていく。牧野は黒田達に歩み寄って、ばつが悪そうに頭を下げた。
「すみません。レオンハルトはここに来るまでヨーロッパ各国の警察といろいろあったらしくて」
(警察と……)
牧野の話を聞いたコナンは、巨大モニターを振り返った。
巨大モニターを取り囲むように並んだコンソールには、直美たち以外にも大勢の技術者がついていて、皆一様にキーボードを操作している。
「ファーストアクセス!」
巨大モニターの時計が10:00:00になると、ヨーロッパの警察所管の防犯カメラ映像が瞬時に集まった。そして、わずか十秒ほどで『CONNECT(接続)』の文字が表示されると、画面が切り替わり、ヨーロッパの防犯カメラ映像が次々と映し出された。
イギリスのビッグベンやフランスの凱旋門など有名な観光地をはじめ、各国の街頭映像が巨大モニターで目まぐるしく切り替わる。その光景は圧巻だった。
「……これで、ヨーロッパ中の防犯カメラが確認できるというわけですか」
白鳥がモニターを見上げながらつぶやくと、
「それも、『顔認証』付きでな」
黒田がぼそりと言った。
分割されたモニター画面に、一つの映像がクローズアップされた。どこかの国の深夜の街角で、男が若者二人に銃を突きつけている。するとその下に、若者二人の顔画像が出てきた。二人の顔にいくつものマーカーがつけられたかと思うと、瞬時に、二人の身分証明書の写真、名前、住所が表示される。
「他にも様々な技術が使えます」
白鳥達の後ろで自分の席についた牧野は、キーボードを操作した。
「その一つ、直美が作った『老若認証』をさっそくテストします」
「老若認証……?」
白鳥が眉をひそめると、コンソールについていた直美がクルリと振り返った。
「私はイタリア人の父と日本人の母の間に生まれ、アメリカで育ちました。私の子供の頃の写真でテストします」
再びコンソールに向いた直美は、キーボードを操作した。すると、巨大モニターに映る各地の防犯カメラ映像の手前に、何枚かの家族写真が表示された。一枚は、ガレージのついた一軒家の前に両親と幼い直美とレトリーバー犬がいる。レトリーバー犬に舐められている直美の顔がマーキングされたかと思うと、他の写真の直美の顔も次々とマーキングされて、画面の中央に小さな頭蓋骨が出現した。
「骨格から老化や若返りを計算し、その顔をCGで作り、それと合致する顔を『顔認証』で探す。これが『老若認証』です」
幼少期の直美の顔から計算された頭蓋骨が出てきたかと思うと、それが徐々に成人の頭蓋骨へと成長し、さらにその頭蓋骨が肉付けされていった。眼球が入って肌の色が変わると、その横に様々な角度の顔が表示されて、その下に表示されている日本の防犯カメラ映像がものすごい速さで流れていく。そのいくつかのウインドウの枠に色がついた。
「今日、警察庁からここに来るまで、防犯カメラに映った私です」
直美が言うとおり、枠に色がついたウインドウの防犯カメラ映像には、直美が映っていた。警察庁の廊下を歩く直美、官庁街を歩く直美の後ろ姿、そしてパシフィック・ブイの入り口前を牧野と歩く姿。それぞれの映像に映る直美がマーキングされて、別ウインドウにクローズアップした顔画像が出ると、『老若認証一致』という文字が現れた。そして直美の身分証明書の写真や名前、生年月日、住所などあらゆる個人情報データが表示される。
「長期の逃亡者や誘拐の被害者を、世界中で追うことができるシステムです」
牧野が誇らしい表情を浮かべて言った。
「すごい……すごいシステムだ……」
ただただ圧倒される白鳥のそばで、コナンは険しい顔で巨大モニターを見つめていた。
(確かにスゲェけど……)
幼少期の顔と成人期の顔を同一人物として照合できるという『老若認証』。確かに画期的なシステムだけれど、もしそれでコナンや灰原が調べられたら……。
「十五分の休憩のあと、引き続き各設備のテストに入る」
牧野の声で、室内に漂う緊張が解かれた。何人かの技術者は席から立ち上がり、メインルームを出て行く。
「皆さん、コーヒーはいかがですか」
直美が席から立ち上がり、後ろを振り返った。しかし、白鳥と黒田は牧野と話し込んでいて、直美の声に気づいていない。
「ボク、聞いてくるね」
コナンは白鳥達のところへ行き、コーヒーを飲むかどうかたずねた。そして直美とグレースのところへ戻ってきて、
「あ、砂糖入りをこれだけ」
と、右手の親指と人差し指を立てる。
「OK、砂糖入りコーヒーを一つね」
グレースが確認すると、直美が「二つよ」と言った。
「コナン君はジュースでいい?」
「んと、アイスコーヒーってある?」
「コーヒー好きなの? いいわよ」
「ありがとう。ボク、お手伝いするね」
コナンは、直美とグレースと共にメインルームを出て行った。
その頃。ドライスーツにタンクを背負った二人が、パシフィック・ブイに向かって海の中を泳いでいた。海中にある大きな丸い扉の前にたどり着くと、一人がスマホを取り出した。完全防水ケースに収められた青色LED光通信スマホだ。メール画面に【到着】と打ち込み、送信する。
するとややあって、丸い扉が外側に開き始めた。二人は扉の先にあるドライデッキに入っていく。
再び一人が、スマホのメール画面に【侵入】と打ち込んで送信すると、丸い扉が閉まった。すると、ドライデッキを満たしていた海水がみるみるうちに減っていく。海水が排出されると、二人はレギュレーターやダイビングマスクを外した。
ダイビングマスクの下から現れたのは、ベルモットとバーボンの顔だった。二人は濡れた髪をかき上げたり絞ったりすると、ドライデッキの前の部屋に進んだ。そして、ロッカーに入っていた清掃員の制服に着替える。
清掃員に変装したバーボンは、清掃カートを押しながら廊下を歩いた。後ろには同じく清掃員の制服に帽子を被り、マスクをしたベルモットがいる。
廊下の曲がり角から、外国人女性が四つの紙コップを載せたトレイを持って出てきた。さらに続いて、紙コップを両手に持ったコナンが出てくる。
「あれ? 直美さんは?」
「トイレよ。先に戻りましょ」
「あ、はーい」
コナンは先に進む外国人女性を追いかけた。バーボンとベルモットの横を小走りで通り過ぎていく。
二人は帽子のつばの下に半分隠れた目で、コナンの後ろ姿を追った。
(なぜここに……?)
(シルバーブレット……)
トイレの個室から出てきた直美は、洗面台で手を洗った。蛇口を閉めて、洗面台の鏡を見る。すると、背後に清掃員が映っていた。
振り返った瞬間、清掃員に扮したベルモットが直美の首に手刀を叩き込んだ。
気絶してその場に倒れる直美を、ベルモットの後ろにいたバーボンが受け止める。
メインルームでは、コナンからコーヒーを受け取った白鳥と黒田が、牧野の席で話を続けていた。
「やぁ、すごかったです、『老若認証』」
「顔の骨格から成長した顔を予測するというのは、どんな方法で?」
黒田がたずねると、牧野はモニターの方を向いてキーボードを操作した。
「確か、解剖学と統計データで計算するAIを使ってるとか……詳しくは直美に」
そう言って、周囲を見回して直美の姿を捜す。すると、コーヒーを持って自分の席に戻ろうとしていたグレースが立ち止まった。
「映像データさえあれば、AI技術で自動化が可能なんです」
「なるほど」
「すばらしい技術ですね」
説明したグレースはコーヒーを一口飲むと、紙コップについた口紅を親指で拭った。その背後では、エドが自分の椅子の背もたれに寄りかかってコーヒーを飲んでいる。
「ミスター牧野。休憩時間、とっくに終わってるよ」
「ああ、でもその前に直美は?」
牧野は椅子から立ち上がって、直美の席を見た。コンソールの上にコーヒーが置いてあるだけで、直美の姿はない。
自分の席についていたレオンハルトは「……ったく」と指を鳴らした。
「何やってんだ、あの女は」
と、キーボードを操作し、『老若認証』システムを起動する。コナンが巨大モニターの前でアイスコーヒーを飲もうとすると、
「出たぜ」
口にする前に、施設内の防犯カメラ映像が巨大モニターに表示された。トイレ前の廊下に設置された防犯カメラの映像だ。
「十二分前の映像ね」
モニターに表示された日時を見て、グレースが言った。
映像を逆再生すると、トイレから出てきた直美がマークされ、別ウインドウにクローズアップした直美が表示される。
「カメラに映った姿は、これが最後だ」
レオンハルトが言うと、さらに新たなウインドウが出てきて、トイレ前の映像が再生された。帽子を被った二人の清掃員が、カートを押してトイレに入っていくところが映る。
「清掃員が二人入っているが、五分後には出てきてる」
コナンは、清掃員が押す大きなカートに注目した。
「あのカートなら、人が乗れるね」
「ちょっとこれ見てよ!」
キーボードを操作していたエドが叫び、すぐに別の防犯カメラ映像が巨大モニターに表示された。ドライデッキの前にある部屋の映像だ。カートを押した清掃員たちが、扉が開いたドライデッキへ入っていく。
「ドライデッキに同じ奴らだ!」
「誰なんだ、コイツら……」
映像を見ながら、レオンハルトが険しい顔でつぶやいた。
白鳥と黒田は、牧野と一緒にドライデッキに向かった。コナンも後をついていく。
ドライデッキの前にある部屋には、空になったカートが倒れていた。白鳥たちはカートの横を通り、ドライデッキの扉前に来た。扉は固く閉じられている。
「ここから海へ出られるんですね?」
白鳥がたずねると、牧野は「ええ」と扉に触れた。
「部屋を海水で満たして、外と水圧を合わせたら……。でも、この先は海です。一番近い八丈小島でも五キロ以上はある。直美は一体どこへ……」
扉に触れながらうつむく牧野に、黒田がたずねる。
「この扉の制御権限は誰に?」
「このハッチは直接開けられますが、海側のハッチを開けられるのは私と……あとは先ほど紹介したエンジニア達だけです」
「だとすれば、直美さんを拉致した犯人の共犯者が、その中にいることになる」
淡々と話す黒田とは逆に、牧野の表情が険しくなる。
「ええ、ですが……」
「とにかく、警視庁に臨場要請します」
白鳥はそう言うと、床に片膝をついていたコナンの横を走り抜けていった。
コナンは床に手を伸ばした。床は濡れていて、濡れた手をぐっと握りしめる。
(あの短時間での拉致……間違いない。犯人は直美さんがトイレにいることを知っていた)
すばやく直美を拉致した犯人は、このドライデッキから海へ出て行ったのだ。
(そして、どこへ……)
コナンは目の前にある扉を見つめた。