終 章 放さない 

 頬に感じる風が湿り気を帯びてきた今日このごろ。末續 楓は校門の前で彼女が来るのを待っていた。
(待ち合わせの時間よりも早く来すぎちゃったな……)
 一秒でも早く会いたくて気がいてしまった。
 つい数か月前まで通っていたまなの昇降口を、ひたすら眺める。
 彼女が少しでも顔を出せば、すぐにわかる。視力はいいほうだし、なにより、彼女の姿を見落とすなんてことあり得ないからだ。
(あ――)
 魅藍はこちらを見るなりあわてたようすで友人に別れを告げて駆けてきた。
「すみません、お待たせしましたっ」
「ううん、私のほうが早く来すぎただけだから」
 それでも魅藍は申し訳なさそうな顔をしていた。こういうところも、可愛らしい。
 楓と魅藍は駅へ歩き、電車に乗り、同じ駅で下りる。
 進学を機に一人暮らしを始めた楓だが、魅藍が下りる駅の近くのアパートを借りたのはきっと、あわよくば彼女を部屋に連れ込みたいという下心が少なからずあったからだ。
(魅藍ちゃんのためにはよくないって……思ってたけど)
 彼女を束縛してはいけない。彼女の人生を左右するようなことをしてはいけないと思い、進学をきっかけに自粛じしゅくしようと思った。
 だが、だめだった。
 魅藍に好きだと告げられて、想いのたがが外れた。
 彼女がだれかのものになるなんて耐えられない。
 だれにも渡さない。
 私だけが、独占していたい――。
「お邪魔します」
 アパートに着くと、魅藍は毎回律儀にそう言って、靴をきちんとそろえて部屋の中へ入る。
 本来なら、なにか飲み物やお菓子を出して魅藍をもてなすべきなんだろうけど――。
「……っ! 楓、先輩……?」
 部屋に入るなり魅藍の背に抱きついた。
 それから、彼女の香りを吸い込む。
 もうずいぶん前から、胸にぬくもりを感じて不埒ふらちな感情が湧き起こる。
「もう同じ学校じゃないんだし、その『先輩』っていうの……やめない?」
「じゃあ、なんて呼べば……?」
「楓さん、かな。呼び捨てでもいいけど」
 魅藍は小さくふるふると首を横に振った。ああ、どうしてこう可愛らしい仕草ばかりするのだ。
「……楓さん」
 小さな声で呼ばれた楓は満面の笑みでゆっくりと「なぁに?」と返す。
「い、いえ……その……」
 魅藍はうつむいて口ごもる。
「んん? えっちなこと、したくなってきちゃった?」
 ――したくなったのは、自分のほうだ。
 魅藍をベッド端に座らせて、制服のリボンの端をつかむ。
 指のあいだに挟んだオレンジ色のリボンをするすると引っ張ってほどき、形を崩していく。
 瞳を潤ませてこちらを見上げる魅藍はどこか儚げで、こんな彼女をけがしてよいものかと背徳感にさいなまれることもしばしばある。
(でも、乱したい……。とても、抑えられない)
 彼女に「思い出作りをしよう」と持ち掛けたときもそうだった。
 魅藍への愛しい想いがあふれて、どうしようもなくなってあんな提案をしてしまった。彼女がそれを受け入れてくれたので、よけいに歯止めがきかなくなった。
 魅藍の瞳は光の加減で藍色にも見える。その大きな瞳が、好きだ。
 制服の裾を鎖骨のところまで引っ張り上げる。
「あ……」
 恥じらって口からこぼれ出るか細い声も、好きだ。
 このところ彼女の下着が大人っぽくなった。『こういう』ことを意識して新調しているのかもしれない。
 そうして、必死に相手に合わせようとするところも――好き。
 パッションピンクのブラジャーはフロントホックだった。プチンと弾けば、すぐに乳房が露呈ろていする。
「――んん」
 魅藍は恥ずかしそうにうなって胸元を押さえる。
 彼女は自分の胸が「小さいから恥ずかしい」となげくが、そんなことはないと思う。
ふくらみかたは控えめかもしれないけど、それが逆にいいんだよね)
 そのことを魅藍は少しもわかっていない。
「よく見せて? 私、魅藍ちゃんのおっぱい大好きなんだから」
「ふ、うぅ……」
 両手首をやんわりとつかんで左右に開かせる。
 制服には袖を通したまま、なすすべなく胸をさらしている魅藍は蠱惑的こわくてきだ。
 自分だって毎日、この制服を身に着けていたはずなのに、こうして乱してみるとずいぶんと卑猥ひわいなものに思えてならない。
 心臓と下半身がトクトクと脈を刻むのを感じながら楓は膝を折り、魅藍の胸元に顔を寄せた。
 明るいところで、間近で彼女の乳房を見るのも、大好き。
 眉根を寄せて唇を噛み、羞恥心しゅうちしんもだえる魅藍には性欲をかき立てられっぱなしだ。
「ンッ……!」
 舌先で薄桃色のつぼみつつくと、魅藍はよりいっそう高い声を出す。ふだんの声もいいけれど、こういうときにだけ聞くことのできる声もまたいい。
 楓は舌を小刻みに右へ左へと動かして魅藍の乳頭を揺さぶった。
「ぁっ、あっ……あぁ、んぅう……っ!」
 もっと、喘いで。
 私のことだけ、考えて。
 そんな願いを込めて楓は舌を蛇行だこうさせる。
 左手の人差し指で、舐めていないほうの乳首をまみ、右手の中指は紺色のスカートの中へとくぐり込ませた。
 ほんの少し舐めていじっただけなのに、魅藍の秘処はもう蜜をこぼしていた。ショーツ越しでもそのことがよくわかる。湿っている。
 湿ったショーツ生地を隔てて、中の豆粒をコリコリと押しなぶる。
「ふゎぁ、あぁあっ……!」
 魅藍の両脚が揺らめきだす。そのことを喜ばしく思いながら楓はなおも指と舌を盛んに動かす。
「か、楓せ……ぁ、じゃなくて……ぁっ、あん、んっ……!」
 魅藍は『楓先輩』と口走りそうになったものと思われる。もう『先輩』とは呼ばないでと先ほど言ったものだから、あわてている。
(ほんと、可愛いんだから)
 なんに対しても真面目だから、からかい甲斐がいがある。
 じゅっ、と大きな水音を立てながら乳頭を吸い上げ、淫芽をこすると、魅藍は「ひあぁああぁっ!」と絶叫してその身を震わせた。
 楓は微笑して顔を上げる。「はぁ、はぁ……」と息を荒げて脱力する魅藍のショーツを足先から抜けさせて、絶頂したばかりの箇所をあらわにした。
 たった一度、昇りつめただけでは、終わらせない。
 身に着けていたGパンとショーツを一緒くたに脱いで、ベッドの上に座る。
 脚を広げてみせれば、魅藍はその付け根をまじまじと見つめていた。そうして魅藍の視線を感じるだけで下腹部が潤むので、世話がない。
「楓、さん……」
 言い間違えることはせず、魅藍は躊躇ためらいがちに楓のカットソーをめくり上げる。じれったかったのか、中のブラジャーごと強引に胸の上まで持っていってしまった。
(たまに大胆なんだよね、魅藍ちゃんって)
 楓がクスッと笑うと、魅藍は不思議そうに首を傾げた。
「楓さんの乳首……尖ってます」
 指摘されて初めて気がついた。魅藍に後ろから抱きついたときから、そうなっていたと思う。
さわりやすい形でしょ?」
 冗談っぽく言うと、魅藍は人差し指でツンと乳首をつついてきた。
「ぁ、ん……」
 魅藍の指先は少し冷たい。彼女は冷え性だ。
 その細い指先を温めてあげたいと思うけれど、冷たい指で乳首をつつかれるのも心地がいいから、悩ましい。
「はぅ……ん、ふぅっ……」
 喘ぎながら大きく息を吐き、むき出しのままになっている魅藍の乳頭をそれぞれ二本の指で挟む。
 それから、脚を絡ませて互いの肉粒を突き合わせた。
「あっ――ぁ、楓さ……ん、んぅ……っ!」
 左右に腰を揺らすと、二つの花芽がこすれ合って身悶みもだえする。
 魅藍はそれが気持ちよくてたまらないのか、口を開きっぱなしにして絶え間なく喘いだ。
「気持ちぃ? 魅藍ちゃん」
「き、気持ち、いぃ、です……っう、うぁっ……!! も、おかしくなっちゃいそ……ぅ、んぅっ」
 そんな言葉を聞いたら、よけいに激しくしたくなる。
 ベッドがきしむほど豪快に腰を揺すると、魅藍はそれまで以上に高い嬌声を上げて快楽に溺れた。
「ずっと――放さないから。覚悟しておいてね?」
 絡ませた脚は当分、退けてあげない。
 そうして永久とわに、彼女を縛り続ける。


おわり