集中力の秘密は「
仕事をもらってから最初の2日間に仕事の8割を終わらせるというのは、みなさん想像がつくように簡単なことではありません。仕事期間の見積もりという名目があるとはいえ、ほとんどただ単に、仕事をものすごく頑張ってやっているわけですから。
私はこの、仕事をものすごく頑張っている2日間のことを「界王拳」を使うと呼んでいます。
界王拳とは、有名マンガ『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空の技の名前です。
孫悟空の師匠・界王に「元気玉」という技とともに伝授された必殺技で、「界王拳」を使用すると全身が赤いオーラに包まれ、戦闘力が飛躍的に上昇するのです。たとえば「3倍界王拳」を使うと戦闘力が3倍になります。ちなみに作中では2倍界王拳から20倍界王拳までが登場しています。界王拳はたいへん強力な効果を持つ代わりに、使用後は全身が激痛に襲われ、戦闘力が通常時以下に下がってしまいます。
私は最初の2日間のロケットスタートは、この悟空が界王拳を使うときの状態をイメージして仕事をしています。
最初の2日間はものすごく仕事を頑張ると言いましたが、それは言ってしまえばものすごく仕事に集中するということです。集中力を保ちたい、というのは、すべてのビジネスマンの悩みです。私もいかに仕事に集中するか、ということは常に悩んでいますが、最も手軽な方法は、悟空の界王拳をイメージすることです。界王拳を使って戦闘力を何倍にも上げ、目の前の仕事を倒すのです。
さらに私が注意していることは、「このときに何倍界王拳を使うか」という具体的な数字まで決めるということです。たとえば最初の2日間はいつも「20倍界王拳」をイメージしています。本当に通常時の20倍出ているかどうかは関係ありません。『ドラゴンボール』に登場した界王拳の中で最も強力な、20倍界王拳の発動をイメージする、ということ自体が大切なのです。
それはすなわち、自分の出せる最大の能力を、仕事のスタートダッシュで使ってしまうということです。『ドラゴンボール』に限らず、少年マンガの主人公が最大の奥義を使うのは、戦闘中にピンチに陥ったときと相場が決まっています。たしかに窮地に追い込まれたときはマンガに限らず、現実でも人は最大の力を発揮します。そうしてマンガではライバルを倒し、現実では大きな仕事を終わらせるわけです。
すでにお話ししたとおり、私はそうした「ラストスパート志向」を信じていません。仕事が終わらないことの諸悪の根源とすら思っています。ライバルに倒されそうになるとき、つまり仕事の締め切りが迫っているとき、人は必ず焦るからです。焦ると生産性は上がりません。
マンガの世界では、そこで主人公の能力が覚醒して一気に勝敗を決するわけですが、現実ではそのようなドラマチックな逆転劇は必要ありません。むしろ逆転劇ばかり起こすような仕事の仕方をしていては、上司も常に肝を冷やします。それでは上司からの評価も下がり、社会人としての信頼も失いかねません。
界王拳を使ってメールを返す必要があるか?
集中力を上げるために必要なことをもう一つお話しします。それは、マルチタスクを放棄することです。マルチタスクこそ、仕事が進まない理由の最たるものです。
みなさんはいつどんな仕事をしているときも常にメールには気を遣っていることと思います。大事な取引先や上司からのメールは、できるだけ早く返信するのが望ましいからです。そうして返答をするあなたは、きっと取引先からも上司からも重宝されることでしょう。
けれどもメールに気を取られることで、メインの仕事の効率が落ちているということを忘れてはいけません。メールの返信が早くてもメインの仕事が遅い人の評価は高くありません。単に仕事が遅い人だなあという印象を持たれます。逆にメールの返信が遅くてもメインの仕事が早い人の評価は高いです。仕事ができるのだから、多少メールの返信が遅くても気になりません。
この話が示しているのは、「あなたの仕事はメールを素早く返信することではなく、仕事を終わらせることである」ということです。こうして言葉にするとずいぶん当たり前のことのようですが、「仕事のメールには即レスしろ」といった言説に惑わされ、これに気づいていない人は多いのです。
ですから界王拳を使っているときはメールのことを気にしてはいけません。もっというと、電話も気にしてはいけません。可能な限り会議に出るのもやめましょう。同僚とのおしゃべりなんてもってのほかです。マルチタスクは仕事の効率を何倍も下げます。
メールや電話、ほかの仕事のことを気にし始めると、メインの仕事に割くリソースが減ってしまいます。2章でした認知資源の話を覚えているでしょうか。重大なタスクに没頭するためには、ほかのこまごまとした小さな仕事に悩んではいけないのです。認知資源は、最大限メインの仕事にのみ割くべきです。
ですから界王拳を使っているときは、メールにも電話にも出ないということを今日決断してしまいましょう。界王拳を使っているあいだにやることはメインの仕事のみです。それ以外のことは一切放棄して黙々と作業に取り組んでいきます。通常の20倍の能力を発揮して、メールチェックに挑む必要があるかどうか考えてみてください。界王拳使用中は、絶対にマルチタスクはしないのです。
とはいえ、人間には限界があります。私の感覚では、高い集中力を保ち続けることができるのは、6~7時間が限度です。ですから私は、次の図のように1日中界王拳を使い続けるために、限界が来たときに朝ごはんや昼ごはん、夕ごはん、そして昼寝をはさんでいます。そうした小休憩の後はシームレスに20倍界王拳を発動し、仕事に戻ります。ごはんを食べ終わり「ごちそうさま」と言った瞬間に、睡眠から覚醒し目覚ましのアラームを止めた瞬間に、全身が赤いオーラに包まれるわけです。