12  M男の恩返し



 結局、美登里さんは花野とは同じ穴のむじなだった……。

 なんだか、ガックリきてしまった。美登里さんもエイジ同様、「花野側の人間」なのだ。

 この奇妙な関係──花野と交際しながら、彼女のオカズとなるべく、エイジや美登里さんとエロいことを繰り返す──から抜け出す気も、完全になくしてしまった。

 もう、現状を理解しようとしたり、反対にそこから抜け出そうとするより、ただ流されてしまうのが、一番楽で、一番気持ちいいと、わかってしまったから。

 お昼休みには、花野とエイジと一緒に、ランチを食べる。週に一、二度はエイジがおいしい手作り弁当を持ってきてくれる。

 花野はあいかわらずかわいいし、たまらなく愛おしい。言葉を交わしていて、何度、心がとろけそうになったことか。

 そして、エイジもまた、明るく社交的で気立てがよく、おまけに容姿も麗しい。

 こいつの難点は、ただ、ずうずうしいこと。あたしと花野の間にスルリと入り込んできて、居座っていることだ。

 花野と出会うことなく、エイジと知りあっていれば、あたしが彼に好意をいだいていた可能性だって、充分にある。

 とはいえ、今はただ、エイジが邪魔。心底、邪魔。それだけだ。

 あたしは、かわいい花野のオナニーのオカズにされること自体には、喜びも感じる。

 しかし、自分とエイジ、どちらが花野にとってよりよいオカズなのかと考えると、思い悩んでしまう。

 常に、自分がエイジとくらべられていて、もし、花野が高評価を下しているのが、エイジのほうだったら……!

(そんなの、耐えられないっ! だって、あたしは花野の恋人なんだよ……!)

 オカズとしても、あたしは花野にとってナンバーワンでいたいんだよ!

 いや、オカズとしてナンバーワンであるからこそ、あたしは花野の恋人でいられるのではないか? もし、あたしよりエイジのほうがズリネタとして優れた存在だと、花野が判断したら、どうなる?

(あたし、花野に棄てられるんじゃない? で、花野はエイジとつきあうようになるんじゃない? そんなの、いやだ! 耐えられない! ああっ……!)

 美登里さんの存在は、べつに脅威でもなんでもない。社会人である彼女は、エイジほど、花野と密に交流しているわけではない。

 それに、美登里さんはレズビアン。花野に協力しているとはいえ、バイセクシュアルであるあたしのほうに近い人だ。

 だから、先日のことがあっても、美登里さんから誘われたときには、あたしの心臓は期待で高鳴った。

「よかったらまた、うちにいらっしゃいよ。このまえは結局、あなた、例のぐい呑みを使わずに帰っちゃったでしょ?」

「それって、また、クローゼットに花野が隠れているとかいう展開じゃないでしょうね?」

「違うわ。私、もっと刺激的なこと、したいの。あなたと二人きりで」

 美登里さんの美しい声は、あたしの耳にねっとりと侵入し、脳をしびれさせる。

 たぶん、今、美登里さん、欲情してる。なんとなく、声でわかる。

 そう気づいたとたん、あたしの性の花も熱を帯びはじめた。

 そして、あたしは、美登里さんに告げた。

「今週の土曜か日曜ですね。今、スケジュール帳を確認します」

 あたしは、机の上にあったスケジュール帳を開く。

 土曜日は夕方から、日曜は一日中、空いていた。



 土曜日の夕方。

 自宅玄関で出迎えてくれた美登里さんに、あたしは訊いた。

「夕ご飯、どうします? どこかに食べに行きます?」

「まだ、早いわ。あとで、近くのお店で、ゆっくり食べましょう。それよりも──」

 抱き寄せられ、耳に舌を わせられる。

「あっ……」

 ねっとりと温かく濡れたエロティックな感触に、つい、声が洩れてしまう。

「私がタチなのは、わかってるわよね?」

「は、はい」

「今日は、百パーセント、私に体をゆだねてみない?」

「えっ?」

「私、今日は拘束具であなたの自由を奪って、とことん乱してみたい気分なの。あなたのきれいな体、どこまでも味わいたいの」

「…………」

 その情熱的かつ刺激的な申し出に、あたしはゴクリと唾を呑み込んだ。

「うんと気持ちよくしてあげる。あなたが恥ずかしくなっちゃうほど、乱してあげる。そのときだけは、なにもかも忘れさせてあげる。だから──いいわよね?」

 情欲に潤んだ瞳に見つめられ、妖術に操られるかのような気分で、あたしはうなずいた。それはもちろん、あたしの好奇心と欲望がさせたことだった。

 しかし──。

「その前に、ちょっと待ってください」

 あたしは、洗面所と浴室とトイレに花野がひそんでいないことを確認した。加えて、彼女が先日、ひそんでいたクローゼットの中も。

 窓を開けてベランダを確認し、ベッドの下までのぞき込んだあたしに、美登里さんは笑いながら言った。

「ずいぶんと念を入れて確認するのね」

「あたし、もう、あんな形で花野のオナニーのオカズにされるの、いやなんです」

「あら。怒ってるの?」

「怒ってないとでも思います?」

「そうねぇ。『怒ってたけど、花野ちゃんの願いを完全に拒絶できなくて、そんな自分に一番怒ってる』っていうのが、妥当な線かしら?」

「妥当どころか、ズバリ、そんな状態ですよ」

 美登里さんは「んふふ」と笑うと、言った。

「素直な人は、とっても好きよ。さあ、今日は自分で脱いで。あなたの意志をちゃんと確認しておきたいの」

 そうして、あたしとの間に、共犯めいた絆を結ぶつもりなのだろう。どこまでもろうかい な人だ。

 ベッドへといざなわれ、体の前で両手首を黒革の枷でひとまとめにされた。

 口にボールギャグを嚙まされる。

 口中にこのようなSMグッズを含まされてしまったという、それだけのことで、あたしの興奮は高まってしまう。

 あおむけに横たえられ、両手を頭の上にかかげた格好で、ベッドヘッドに革紐で固定された。

 両膝にも黒革の枷をはめられ、それぞれ、ベッドヘッドの左右の支柱に、同様に革紐で連結される。

 脚をM字の形に固定されてしまった恥辱に、あたしは小さな悲鳴をあげた。

 そのときには、すでに、性の花は大いに潤っていた。

 今まで、エイジを縛り、嬲ってやってはいたが、自分がこんなふうに裸で自由を奪われて、あれこれされようというのは、初めてだ。

 相手にすべてをゆだねてしまったスリルに、性感が高まる。

 これが、マゾヒスティックな欲望というものなの……?

「いいながめ」

 腕組みをし、美登里さんはあたしを見おろす。

「きれいな女の子が自由を奪われて、恥ずかしい部分まで晒している姿、最高にそそられるわ。痛々しくて、エロティックで……。早速、おいしくいただいちゃいたいところだけど、ちょっと待ってね。ここにお呼びする約束をしてる人がいるから」

 美登里さんが携帯電話を手にしたとき、あたしは全身から血の気が引いてゆくのを感じた。

「あっ。花野ちゃん? 私、美登里よ」

(しまったぁっ!)

 今度は、花野をあとから呼び寄せる作戦だったか!

 またしても、あたしは、美登里さんと花野にはめられたんだ!

 そして、あたしは、美登里さんとの密会に応じたことを、花野に知られてしまったわけで……。

 もしや、花野に不実な女だと思われただろうか?

(でも、元々、悪いのは花野なんだからっ! あたしに指一本触れさせてくれないどころか、美登里さんとあたしにセックスさせて、それをオナニーのネタにしたりしてっ。花野があんなことさえ、しなければ……!)

 ついつい、心の中、一人で言い訳をこねまわしてしまう。

「……ええ。そうよ。準備できたから、すぐにいらして」

 美登里さんは電話を切ると、あたしに言った。

「だましたのは、ごめんなさい。でも、こういう展開って、刺激的で素敵でしょ?」

「うーっ!」

 あたしは抗議のうめきをあげ、首を横に振った。

 数分後には、玄関のチャイムが鳴った。花野だ。

 ドアが開く音に続き──。

「いらっしゃい」

「おじゃましまーす!」

 と、元気な花野の声。

 そして──。

「は、はじめまして。今日はよろしくお願いします」

(えっ?)

 あたしは一瞬、自分の耳を疑った。

(なんでっ? なんで、エイジまで来るのっ?)

 そう。ちょっと遠慮がちに美登里さんに挨拶したのは、エイジの声だったのだ。

 三人分の足音が近づいてくる。

(ちょっと……! やだっ! こんなところ、エイジに見られるなんてっ……!)

 けれど、あたしには、もう、どうすることもできなかった。

「うわー! 紗絵ったら、すっごいエッチな姿! でも、きれいっ! すごく、いいっ!」

 花野が陽気な声で、あたしの惨めな姿を絶賛する。

 続けて部屋に入ってきたエイジは、あたしと目が合うと、頰を染めてペコリと頭を下げた。

 それだけで、あたしの全身は屈辱に震えた。

「どう? エイジ君? 紗絵ちゃんの姿、すごくセクシーでいいと思わない?」

 美登里さんに問われ、エイジは床を見つめてもじもじとこたえる。

「しょ、正直、ぼくには、かなり刺激的です」

 ──って、なに、勝手に欲情してるんだよ! M男のくせに!

 どうせ、すでに勃起してるんだろっ?

 ああ、いまいましいっ! 雄々しくそそり立つそれを、ピンヒールでグリグリしてやりたいぐらいだ!

「紗絵ってば、本当にすっごい格好!」

 恋人がこんなに屈辱的な目に遭ってるのに、喜んでるんじゃないよ、花野! 薄情な奴だな!

 興奮にうわずった声で、花野は美登里さんに訊く。

「あ、あたし、オナニー始めてもいいですかっ?」

「もちろんよ」

「わーい!」

 花野はベッドのすぐ横の床に膝をつくと、早速、右手をスカートの下に、左手をシャツの下にもぐり込ませる。かぶりつきのポジションだ。

 わが恋人ながら、猿並みのオナニー欲である。

 こんな情けない姿、花野にならまだしもマゾのエイジに見られるなんて、我慢できない!──と、屈辱に震えるあたしに、美登里さんは残酷に告げた。

「これから、エイジ君にあなたを犯させようと思うの」

(な、なにぃっ?)

「でも、まったくの合意なしなんて、いくらなんでも気の毒だから、もし、あなたがエイジ君の前戯に感じなかったら、許してあげるわ。……さあ、エイジ君。あなたも脱いで」

「は、はい」

 頰を染め、恥じらいを見せながらも、エイジは一枚ずつサクサク脱いでは、きちんとたたんで床に重ねてゆく。

 そして、全裸になったエイジの股間に、美登里さんは「あらっ」と言って目を留めた。

 すでに勃起していたからではなく、そこにあるべき茂みが、ほとんど刈られていたからだろう。

 横から、花野が解説する。

「エイジ君のヘア、紗絵が っちゃったの」

 そして、エイジも現在の所感を述べる。

「まだ、生えはじめで、チクチクしてます」

「まっ。紗絵ちゃんにずいぶんと素敵なことをされちゃったのね。だったら、今日は、しっかりご恩をお返ししたいところよね?」

 エイジと目が合った。

 あたしがキッとにらみつけると、エイジはちょっとおびえの色を表情ににじませつつ、言った。

「さ、紗絵さん、だまして、ごめんなさい……。でも、ぼく、紗絵さんが気持ちよくなれるように、がんばるから」

 がんばらんで、いいっ! たのむからっ!

「彼、紗絵ちゃんとの関係はネコでマゾだったって言うじゃない?」

 にんまりと微笑んで、美登里さんはあたしに言う。

「だったら、いくらなんでも、こんな状態で、彼にあっちこっち好きなようにさわられるのは、いやでしょう? だから──」

 と、美登里さんはエイジに、後ろ手に手錠をかけた。

「これで、彼は口でしかできなくなったわ。紗絵ちゃんも、安心よねっ」

「うーっ!」

 あたしは激しくイヤイヤをした。

 好きにさわられるのはいやだけど、口でなら大丈夫──なんてわけ、ないでしょっ!

 エイジは股間のものを完全にそそり立たせている。やる気満々ではないか! どこまでもずうずうしい奴だ!

 エイジはベッドの上、あたしの前に正座した。

 もう、あたしの濡れた部分は奴に確認されてしまったことだろう。

 なんという屈辱……!

 股間のたけだけ しさとは対照的に、乙女のように頰を染めた恥じらいの表情で、エイジは言う。

「ぼく、紗絵さんのこと、崇拝してるから。さわれなくても、口でさせてもらえるだけで、本当にうれしいんだ。だから、遠慮しないで」

(遠慮じゃないっ! あたしが本心ではおまえを求めているかのような表現をするなっ!)

「むうぅーっ!」

 あたしは首を横に振り、否定する。

 すると、エイジは「わかった」といった調子でうなずき、言い直した。

「そんな、恥ずかしがらないで。ぼくのことなんて、単なる奴隷だと思ってくれればいいから。それどころか、なにかの道具だと思ってくれていいよ」

 遠慮してるわけじゃない! 恥ずかしがってるわけでもない!

 これは嫌悪だっ!

 だが、エイジにはまったく伝わってない。

「では、ご奉仕させていただきますっ」

 かしこまって宣言すると、彼は祈るように頭を下げた。

「んーっ! ウウーッ!」

(だめだっ! やめろーっ!)

 しかし、エイジのきれいな唇は、あたしのエロティックな部分に近づいてきて──。

「むぅーっ!」

 あたしはのけぞった。

 敏感な部分に妖しく濡れた感触。エイジの舌だ。

(やめろーっ!)

 あたしは心でエイジをどやしつけ、抗議のうめきをあげる。

 エイジの舌先が二枚の花弁の合わせ目を探り当て、侵入してくる。

「ンンーッ!」

 花弁の内側の粘膜を、ねっとりと舐められる。

 刺激に呼応して、快感が湧いてきてしまう。

 エイジはあたしにとっては、愛しい花野を狙ってるこいがたき だ。なのに、なんで、こんな奴に!

 しかも、あたし、感じちゃってるし……!

「美登里さんも、ご一緒にいかがです? 生オカズでオナニー」

 性的な高揚に息をはずませて花野が提案し、美登里さんも応じる。

「いいわねぇ。男女の営みをオカズにするというのも、なかなか興奮できそうねっ」

 そして、美登里さんもまた、花野の横に座ると、パンツのジッパーを下げ、右手を下着の中に突っ込む。一方、左手はシャツの下に。

 ──花野とまったく同じオナニーポーズだ。

「うくっ!」

 エイジの舌先が、花弁の間に秘められた洞窟の入り口を突いた。

 嫌悪感と快感と屈辱に、あたしの心は乱れる。

(やだ、気持ちいいっ。やめろっ!)

 あたしの体は意志に反して期待を示し、蜜を湧かせ、エイジの舌を中に導こうとする。

 スルリと、エイジの舌が洞窟に侵入してきた。

「くぅーっ!」

(バカ! そんなところに舌を入れるなっ!)

 恥辱のあまり、頭がクラクラする。

 ねっとりとした舌の動きを、内側で感じる。そして、快感も。

「ねえ、美登里さん。紗絵、ちゃんと感じてますよね?」

「そうねぇ……。絶対、感じてるわね、これは」

(やばいっ。これ以上、反応しちゃ、だめだっ!)

「どれぐらい感じたら、エイジ君にセックスを許すんですか?」

「たっぷり濡れたら、ってことでいいかしら」

(──って、ちゃんと根回ししておいてよ! そんな、行き当たりばったりじゃなくて! こっちだって、どこまで感じていいのか、判断に困るじゃないか!)

 ああ、だけど──。

(もし、濡れちゃっても、エイジの唾液と混ざっちゃえば、判断がつかなくなるんじゃない?)

 そう思ったとたん、油断したせいか、性感がグッと高まってしまった。

(ああっ。やばい、やばい、やばいっ)

 クリトリスは、完全に芽吹いてしまっている。

 濡れているかどうか確認されなくたって、もう、反応だけで、感じてるってバレてるはずだ。

 あたしの中から、舌が出て行った。

 と思ったら、今度は、舌先がクリトリスに触れる。

「ウッ……! くうぅーっ!」

 衝撃に近い快感がそこから生まれ、全身に波及する。

(このバカ、もう、やめろっ! しつこいんだよっ!)

 小突きまわすように、舌先は刺激を与えてくる。そのたびに、脳は快感に揺さぶられ、全身がビクンビクンと反応してしまう。

 もう、感じてるのを隠すことなんて、できない。

「うっ! ンンッ! うーっ!」

 あたしは、ボールギャグを嚙まされた口で悲鳴をあげ、イヤイヤをした。

(こんなの、いやだっ! あたしは花野と愛しあいたいのに! あたしが本当に愛してるのは、花野なのに! なんで、エイジなんかに、こんなっ……!)

 なによりも、感じてしまう自分自身が腹立たしかった。

「これは、紗絵ちゃん、完全に感じてるわよねぇ?」

 オナニーしつつ美登里さんが問い、同様にオナニーしつつ、花野がこたえる。

「感じてますよねっ。完全に!」

 美登里さんはオナニーを中断し、濡れた右手をティッシュでぬぐい、着衣の乱れを簡単に直すと、こちらに寄ってきた。

「んっ! むぅっ! ううーっ!」

 こんな感じまくってる声、美登里さんに聞かせたくないのに、エイジの舌はあたしの感じやすい器官をねぶりつづける。

「乳首もかわいく勃っちゃってるわね」

「ンンッ!」

 美登里さんに両乳首をつままれ、その甘い刺激に、あたしはのけぞってしまう。

 続けて、エイジにはクリトリスをキューッと吸われてしまい……もう、反応を抑えることなんて不可能だった。

「くうぅーっ!」

 感じまくってるあたしを楽しげにながめつつ、美登里さんはエイジに声をかける。

「エイジ君、そろそろいいわよ」

 エイジは顔を上げた。なめらかな頰が、美しい薔薇色に染まっている。

「合格よ、エイジ君。紗絵ちゃんを感じさせることができたから──」

 一度、言葉を切り、そこで「ふふっ」と笑ってから続ける。

「紗絵ちゃんと、ひとつになるといいわ」

「は、はいっ」

 エイジはパッと顔を輝かせる。

(フル勃起しながら、いい笑顔見せてるんじゃないよっ!)

 美登里さんはエイジの手錠を外すと、コンドームのパッケージを破り、中身をエイジに渡す。

「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 恥ずかしげに、エイジはおのれの器官に避妊具を装着すると、あたしをまっすぐに見つめて、誠実そうな口調で言った。

「ぼく、いつも、紗絵さんにリードしてもらって感じまくってるから、今日は、ぼくが紗絵さんにご奉仕するよ。ご恩返しのつもりで」

「んんーっ!」

 最後の抵抗とばかり、あたしはイヤイヤをした。

 そりゃ、何度かエイジとはエロいことをしてる。だからと言って、こんな形でセックスするなんて、不本意だ!

 あまりにも不本意だ!

「失礼します」

 妙に礼儀正しく言い、エイジはあたしの二枚の花弁を左右に開く。

「うっ……んっ……」

 触れられた刺激だけで、あたしの体は期待に震えてしまう。

 彼のペニスの先端が、あたしの性の中心にあてがわれた。逃れることはできない。

 グッと押しつけられると、あたしの洞窟はそれを迎え入れてしまう。しかも、蜜をたっぷりと湧かせて、大歓迎だ。

「ううーっ!」

 内側から押し広げられる。そこには、確かに快感も生じていた。

「あ……あ……」

 エイジの唇から、熱い息が洩れる。

「すごく、気持ちいいっ。紗絵さんの中っ……」

 根元まで、咥え込まされてしまった。

 どこまでもずうずうしい男だ!

「紗絵さん、すごくきれいだ……」

 突然、エイジの両手に胸を包まれ、やわやわと揉まれた。

「ンッ! くぅっ!」

 切ないような快感が生まれ、あたしは咥え込まされている器官をキューッと締めつけてしまう。

 とたんに、エイジが戸惑ったような声をあげる。

「あっ。だ、だめだよ、紗絵さんっ。そんなに締めつけちゃ、ぼく、よけいに気持ちよくなっちゃうっ……」

(だったら、あたしの胸を揉むのをやめろっ! アホがっ!)

 しかし、エイジは手を止めない。

 しつこく揉みしだいて、あたしの洞窟の内壁が反応するのを、楽しんでいるようだ。まったくもって、腹立たしい!

「そろそろ、ぼく、動くからね」

 エイジはあたしに告げたが、こう必要以上に紳士的にふるまわれるのが、また、かえって腹にすえかねる。

 彼は、両手をあたしの胸から離し、ベッドの上につくと、腰をゆっくりと動かしはじめた。ジワジワと引いてゆき、そしてまた、奥へ──。

 内側がこすれ、妖しい感覚が生まれる。

(やだっ。気持ちいいっ)

 エイジに無理やりされて、こんなによがりまくってるところを、花野と美登里さんに見られてしまっているなんて! それどころか、二人の視線に肌を舐めまわされているかのような感覚さえ生じて、ますます感じてしまう。

 つまり、エイジからは即物的な快感を、花野と美登里さんからはエロティックな精神的刺激を与えられ、あたしは感じまくっているのだった。

 花野は両手を服の下でモゾモゾ動かしながら、熱を帯びた声で美登里さんに問う。

「いかがですか? 他人のセックスをオカズにしてオナニーというのも、なかなか素敵だと思いませんか?」

 すると、美登里さんもまた、服の中でモゾモゾゴソゴソやりながら、うわずった声でこたえる。

「ええ。私、花野ちゃんのおかげで、新しい快楽に目覚めてしまったわ……!」

 あたしはもう、快楽の園の一歩手前まで追い立てられていた。

 エイジが腰を動かすごとに、あたしの中では快感が蓄積されて、すでに破裂寸前だった。

(もう、限界!)

「ウッ! むぅ!」

 全身がグッとそり、こわばる。

 そのままガクガク震え出し、続いて、あたしの奥深くで快感が爆発した。

「うううーっ!」

 エクスタシーの激しい快感に、あたしはのけぞったまま、くぐもった悲鳴をあげてしまう。

(やだっ。もう、気持ちよすぎる……!)

 快感が、全身の細胞を揺さぶる。

 あたしは頭の隅で、ぼんやりと考える。

 なんで、こんなことになったのか?

 ただ、あたしは、春に花野という魅力的な女の子に出会い、そして、恋人になりたいと願い、思いを告白しただけなのに……。

 完全に、あたしは、花野が作った特異な世界に巻き込まれてしまった。

 おそらく、あたしと花野との関係そのものが、SMプレイだったのだ。

 花野がサディストで、あたしがマゾヒストで。

 そして、わかったこと──その関係は、あたしに、震えがくるほどの快楽を与えるのだった。