6 彼のはじめてのセックス



 あたしは花野のリクエストにお応えして、エイジに一方的にエロいことをしてやり、あの場ではエイジも快感を得てしまっていたわけだが。

 あとで一人になって、あたしは冷静に考えた。つら の皮の厚いエイジもさすがに正気に戻って、気まずさを感じ、今後はあたしと花野から距離をおくようになるのではないか、と。

 しかし──。

 昼休みの学食のテーブルで、エイジはニコニコしながら、風呂敷で包んだ釜めしの容器四個を取り出しつつ、言ったのである。

「今までは、新聞紙で包んで持ってきてたけど、お弁当用の風呂敷を買ってみたんだ。この二つが花野さんので、こっちが紗絵さんの」

 と、桜柄の風呂敷に包まれた釜めし容器二個を花野の前に、千鳥柄のをあたしの前に置いた。エイジのは、唐草模様だ。

「わあ! エイジ君、ありがとう!」

 花野がうれしそうに礼を言い、あたしも短く「ありがとう」と言った。

 エイジの奴、またしても、心憎い気遣いを。しかも、花野とあたしの分の風呂敷をわざわざ用意したということは、これからも三人分の弁当を作ってくるという宣言にも等しい。

 裸にして縛って、さんざんいじめてやったのに、懲りてないどころか、あの扱いがお気に召したのだろうか。

「今日は、茶めしの上に、おかずをいろいろ載せてみたんだ」

 蓋を取るなり、花野が子供のような歓声をあげる。

「うわー、おいしそう!」

「ちょっと峠の釜めしっぽいでしょ?」

 花野に喜ばれ、エイジもうれしそうだ。

 鶏の唐揚げ、ゆで卵、かまぼこ、きんぴらごぼう、いんげんのゴマあえ。敷きつめられたおかずの下は、茶めしというわけか。

「そして、こっちはポテトサラダ。野菜がちょっと少ないと思って」

 言いながら、エイジは保冷バッグから、タッパーを取り出す。

 はっきり言って、手作り弁当はうれしい。エイジの料理の腕は、確かだし。

 それに、エイジが示してくれる好意もまた、なんとなく、うれしかった。

い奴よ)

 ひそかに心の中でつぶやき、しかし、油断してはならないと思い直す。

  すると、花野がエイジに惚れてしまうなんて事態にもなりかねない!

 確かに、花野はオナニストであり、エイジと性交に及ぶことは、まず、ないであろう。しかし、だからと言って、あたしの心配が消えるわけでは断じてない!

 エイジが見せる細やかな気遣いに加え、さらには、オナニーの生オカズとしての彼も、花野が極めて高く評価するようになってしまったら、あたしが花野の恋人としてのお役ご免ということにも、なりかねない!

 エイジには、用心しなくては。

 彼を必要以上に花野に接近させないようにしなくては! そして、あたし自身、彼とは一定の距離を保たなくては!

 そして、そんなあたしの心配は、ここでさらに深まった。

 食事中、エイジは頰を染めつつ、きれいな微笑みを浮かべて、花野とあたしに言ったのである。

「なんか、ぼく、今朝は、恋人にお弁当を作ってあげてるような気分になっちゃって……。二人とは、あんなことがあったから……」

「材料費、払うよ」

 あたしにさえぎられ、エイジは驚いたように口をつぐむ。

「えっ?」

「せめて、お弁当の材料費、払うから」

「あ。いいよ。高い食材は全然、使ってないし」

「あたし、あんたとつきあってるわけじゃないから。ここまでしてもらって、心苦しいんだよね」

「心苦しいだなんて、そんな……。紗絵さんがそんなふうに思ってくれることなんてないよ。ぼくが好きでやってることだし……」

 って、なんで、そこでまた、頰を染めるんだっ?

 すると、花野が言う。

「じゃあ、あたし、エイジ君に時々、おごるよ。缶ジュースとか、コーヒーとか、お昼ご飯とか」

「あ、あたしも」

 あわてて、あたしもこたえたが、これではまるで、どちらがよりエイジに尽くすか、花野と競争しているような図式ではないか。不快だ!

 エイジはちょっと遠慮がちに、しかし笑顔でこたえた。

「じゃあ、お言葉に甘えて。時々、よろしくお願いします」

 ──なんか、ますますエイジとあたしたちのきずな が深まった感じもしないか?

 ああ、あたしにとって、ますます面白くない方向に……。



 心が狭いところも、セコセコしたところも、花野に見せたくない。

 けど、あたしはその懸念を口にせずにはいられなかった。

 だいたい、あたしは花野の恋人なのだから、これぐらい言ってもいいじゃないか!

 ということで、その日の夕方、喫茶店〈来夢来人〉にて、あたしは花野に訊いたのである。

「なんかさ、エイジの奴、ますます れしくなってない?」

 あたしはついに、不安というか不満というか、とにかく「面白くない」と感じていることを、花野に告げたのだった。

 案の定、花野の反応は薄かった。ココアを手に、小首をかしげ、短く言ったのだ。

「馴れ馴れしくなってる? エイジ君が?」

 あたしは説明を加える。

「要するに、彼さぁ、なんとなく、花野の恋人気取りじゃない?」

「そんなことないよ。それよりも、エイジ君、紗絵のことが好きになってる感じがするけど……」

「ないない。絶対、それは、ない」

「でも、紗絵だって、このまえから、エイジ君のこと、呼び捨てにしてるし……。なんか、ちょっと、いい感じになってるみたいな……」

「べつに、あれは、親しみを感じてのことじゃないからねっ。邪険に扱ってやってるだけのことだから!」

「それって、ツンデレ?」

「違うっ!」

 っていうか、なんで、これがツンデレ?

 エキサイティングしてるあたしとは対照的に、花野は落ち着いた声で言う。

「紗絵、あたしに気を遣って、無理しなくてもいいんだよ」

「えっ? べ、べつに気を遣ってなんかいないからっ。無理してないからっ!」

 あたしは力を込めて否定したが、花野はココアが入ったカップで両手を温めるようにしながら、伏し目がちに言う。

「紗絵とエイジ君って、美男美女でお似合いだし……」

「そ、それを言えば、花野とエイジのほうが、お似合いなんですけどっ」

 それこそ、かわいらしいひな 人形みたいに!

「でも、エイジ君も紗絵も、セックスする人でしょ。その点でも、気が合ってるよね」

 セックスする人? またしても、そのような珍妙な表現を……。

 だが、確かに、一切セックスしない花野から見れば、あたしもエイジも「セックスする人」だ。

「あたしの知らないところで、紗絵とエイジ君がセックスしてたら、悲しい。あたし、落ち込んで、立ち直れなくなると思う」

 花野の寂しげな様子に、思わず、あたしは身を乗り出して言った。

「そんなこと、絶対にないから! あたしが好きなのは、エイジじゃなくて花野だから! あたしは、花野の恋人なんだよ!」

「ああ、紗絵……」

 花野の叙情的な瞳が、たちまち涙で潤み、キラキラ光る。

「あたしも、紗絵の恋人だよ。ずっと、ずっと……」

「花野っ」

「紗絵……あたしのこと、本当に本当に、愛してくれてる?」

「もちろんだよ!」

「あたし、オナニストなのに……。セックスしない人なのに……」

「そんなの、愛の前には関係ない!」

 すると、花野はひしとあたしを見つめ、すがりつくような口調で言った。

「じゃあ、今度は、エイジ君とセックスして」

「へっ?」

 なんで、そうなる?

 全っ然、わからないんですけど!

「あたしの目の前で、エイジ君と紗絵とでセックスして、あたしのオナニーのオカズになって。今度は手でするんじゃなくて、男女の性器結合というものを、あたしに見せて!」

 男女の性器結合、って……おい……。

 なんなんだ、その即物的かつ客観的すぎる表現は?

 動揺し、身をこわばらせるあたしに、花野はさらにたたみかけるように言う。

「紗絵はあたしの恋人で、あたしのこと、愛してくれてるんだよね?」

「もちろんだよ!」

 思わず、反射的にこたえてしまう。

「じゃあ、オナニストであるあたしのために、エイジ君とセックスしてくれるよね? 紗絵はべつに、セックスは嫌いじゃないもんね?」

 確かに、嫌いじゃないけど……。

 むしろ、好きだけど。

 あたしがセックスしたい相手は、エイジなんぞではなく、花野であって……。

 しかし、オナニストである花野にセックスを強要するなど、はっきり言って、鬼畜の所業である!

 だったら、あたしのほうが妥協して、エイジとセックスすることで、花野に性的な悦びをもたらすべきではないか?

 そうすれば、また、花野の愛らしくもエロティックな姿をおがめるわけで。

 そもそも、エイジも男にしては、外見も中身もなかなか上出来な奴で、いざセックスとなったら、あたしの性欲を大いにそそってくれることは、間違いなく……。

 けど、それって、また、エイジにいい思いをさせてやることにならないか? 奴はあたしの体を味わい、同時に、花野が愛らしく乱れる姿も楽しむことになるわけで。

 それは、面白くない。

 大いに面白くないぞ!

 あたしは、なんとかその計画に乗るまいと、もごもごと抵抗する。

「あ、あたしは、べつにいいけど、エイジはなんて言うか……」

「じゃあ、あたし、エイジ君に訊いておいてあげるね。エイジ君がいいって言ってくれたら、紗絵はしてくれるんだよね?」

「あ……。う、うん」

 しくじった……。「あたしは、べつにいいけど」と言った舌の根も乾かぬうちに「いやだ」などと言えようか。

 きっと、ずうずうしいエイジのことだ。花野の申し出に、遠慮なく応じることだろう。

 乙女のように頰を染めながらも、期待に股間をふくらませ、「えっ? ぼ、ぼくが、紗絵さんと……?」などとたい を示しつつ、きっぱり応じるにちがいないのだ!

 あたしは、追いつめられた思いで、ブラックのキリマンジャロを一気に飲み干した。



 花野と別れ、帰宅してから、あたしはすぐさま、エイジに電話をかけた。

 彼が電話に出るなり、一気に告げる。

「いい? 花野がおまえに、あたしとセックスするようにってたのんでくると思うけど、おまえはキッパリ断るんだよっ!」

「えっ? もう、応じちゃったよ。さっき、花野さんから電話があって」

 は、早いよ、花野!

「お、おまえ、なんで、そう簡単に応じるんだよっ!」

「だって、紗絵さんはもうOKしてるって、花野さんに言われたし……」

 確かに、OKしたよ。けど、あれはその場しのぎの言葉であってだな……!

「それに、ぼく、紗絵さんが相手をしてくれるのならうれしいな、って思って……」

 伏し目がちになって頰を染めているのが目に浮かぶような口調で言う。

「初めての相手が紗絵さんだっていうのも、素敵だし……」

「ちょっとっ……。おまえ、童貞なのっ?」

「うん」

 こんな美少年が、よくぞ童貞のまま十八年も生き残ってきたものだ。まあ、確かに、雄としての魅力があるか否かと言えば、はっきり言って「否」であり、そのあたりで、女の子たちも手を出しかねていたのかもしれないが。

 と、そこまで考え、あたしの心の中に、ちょっとこいつを軽くいじめてみたいという気持ちが湧いてきたのである。

 初めてのセックスで、SM的なことをしてやったらどうだろう、と。

 結果、彼がびびってセックス恐怖症になるのもよし。反対に、感じまくって、いたぶられないと感じない体になってしまうのもよし。

 あたしはエイジに告げた。

「わかった。たっぷりかわいがってやるよ。覚悟しておきな」



 そして、決行の日。

 あたしとエイジを自宅に迎え入れると、花野は「お茶、淹れるね」とキッチンに立った。

 ソファーベッドはベッドにトランスフォームしていて、花野の「やる気」が伝わってくる。まあ、それは「セックスする気」ではなく「セックスをさせる気」であるわけだが。

 緊張しているのか、エイジは直立不動のままベッドを見つめ、同じようにバカみたいに突っ立っているあたしに言った。

「ぼく、もう、シャワーは浴びてきたよ……」

 いつでも始められる、ということか。だったら、こっちも遠慮なく、サクサク進めさせていただこう。

 あたしは無言のまま、ベッドの上にエイジを突き飛ばした。

「あっ!」

 小さな悲鳴をあげてベッドに倒れた彼を見おろし、威圧的に言ってやる。

「さっさと全裸になりな。セックスしてほしいなら!」

「は、はい」

 表情におびえをにじませながらも、エイジは従う。

「紗絵、まだ、いいよ。今、紅茶淹れてるから」

「ありがとう。でも、エイジの分は、いらないから。彼、奴隷だから」

「えっ? もう、プレイは始まってるの?」

「そういうこと」

 エイジが全裸になると、あたしは持参したロープで、彼を後ろ手に縛った。腕を交互に重ねる形で、きっちりと。

 目隠しをしようとしたところで、花野に止められた。

「あたし、エイジ君が感じてるときにどんな目をしてるのか、見たいの」

(なんだってっ?)

 彼女がエイジの反応に興味津々なのは、個人的に大変面白くないし、そもそも、彼に目隠しをしないと、花野の痴態を彼が目にする羽目になるわけで──。

「いいの? 花野がオナニーしてるところ、エイジに見られちゃうよ」

「いいよ。あたしのオナニーを見て、エイジ君がどんな反応をしてくれるのかも、興味あるし」

 花野の返事は、さらに面白くないものだったが、彼女の望みであれば、しかたがない。望みをかなえてあげればあげるほど、彼女の中でのあたしの評価は高まるのだから。

 あたしは、エイジに目隠しをするつもりで持参した手ぬぐいを、さるぐつわ にして彼に嚙ませる。

 肩を突いて、彼をベッドにあおむけに転がしてから、両足首も交差させてロープで縛り、ゆるくあぐらをかいたような形で固定してやる。

 これで一丁あがり、と。

 しかも、エイジの奴、ビンビンに勃起しているではないか。

 あたしと花野は、紅茶が入った耐熱グラスを手に、惨めな姿で固定されたエイジを見物する。

「エイジ君、もう、感じちゃってるよ」

「裸にされて縛られて勃起しちゃうなんて、もう、完全にマゾだね、こりゃ」

 エイジは恥ずかしそうに、顔をそむけている。

「エイジ君、セックスは初めてなんだって」

「うん。知ってる」

「もうちょっと、優しくしてあげてもいいんじゃない?」

「いや。こういうのは、最初が肝腎なんだ」

 あたしは無責任に断言する。

 それに、美貌の少年が全裸で縛られているのも、なかなかそそられはしないか? 悔しいことに、あたしは、大いにそそられているのだが……。

 次に、あたしは、なめらかな流線形のディルドを取り出した。

「これ、あたしがよく、オナニーで使ってるグッズ」

「へえー。紗絵、こんなの使ってるんだ! 今度、使ってるところ、見せてよ!」

「いいよ。ただし、二人きりのときにね。エイジには見せないよ」

 あたしは愛用のディルドにコンドームをかぶせ、すっぽりと包み、口を結ぶ。それに、たっぷりとローションをからめてから、エイジに言った。

「今日は、これをおまえに貸してあげるから、ちゃんと楽しむんだよ」

 そして、ロープでひとつにくく られているエイジの足首をつかみ、持ちあげる。

「ううーっ!」

 なにをされるか覚ったエイジは、おびえの混じったうめき声をあげ、首を横に振った。

 あたしの手を振り切ろうと、不自由な脚を動かす彼に、厳しく言ってやる。

「抵抗するんじゃないよ。どんなに抵抗したって、あたしはこれを、おまえの中に入れるからね。それに、あまり反抗するなら、おしおきだよ。おまえの尻の穴にこれを突っ込んだあとに、おまえの口に入れて舐めさせてやってもいいんだよ」

 そのとたん、エイジは小さな悲鳴をあげ、抵抗をやめた。

「なんか、赤ちゃんがおむつを取り替えてもらうときのポーズみたいだな」

 あたしは言葉でエイジの屈辱をあおりつつ、ディルドの先端を彼のアヌスに突き立てた。

「うっ……ううっ!」

 ちょっと先端が触れただけだというのに、エイジはおびえ、猿轡の奥でうめく。

 もちろん、そんな反応は、あたしのサディスティックな欲望をさらにあおるわけで──。

「んぅーっ!」

 グッと圧力を加えると、小さなつぼみ はディルドを呑み込んでしまう。

 エイジの悲鳴にはかまわず、ゆっくりと奥まで入れてやる。

「ウッ……ウッ……」

 なめらかなけん しわ を刻み、ギュッと目を閉じて、エイジは早くもすすり泣いている。

「今日は初めてだから、動かさないでおいてあげる。その代わり、最後までしっかり咥え込んでおくんだよ」

「ねえねえ、紗絵。エイジ君の、すっかり小さくなっちゃってるよ」

 花野の指摘通り、エイジのペニスは完全に勢いをなくしてしまっていた。

「うーん……しょうがないなぁ。これじゃあ、エイジの筆下ろし、してあげられないよ」

「じゃあ、ディルド、取ってあげたら?」

「やだよ。せっかく、愛用のお宝を彼に味わってもらって、絆を深めようって思ってたのに。この遊び心を理解できない無粋な男となんかとは、セックスしたくないね」

「えーっ? つまんなーい」

 心底がっかりした声を出した花野に続き、あたしはエイジに言う。

「そりゃあ、童貞を失う前に、お尻の処女を奪われちゃったんだもんね。お尻で感じるのに忙しくて、勃起どころじゃないよね? なんなら、筆下ろしはなしにして、お尻のほうを開発してあげようか?」

「それも面白いかも!」

 無責任に応じた花野に、あたしは言う。

「じゃあ、花野とあたしとで、寄ってたかって、エイジをアナル開発しちゃおうか?」

「それ、いいっ! ……あれっ? エイジ君の、また、大きくなってきてるよ」

 花野の指摘通り、エイジのペニスは力を取り戻しつつあった。

「なんだ? 言葉責めに反応したのか? それとも、お尻で感じはじめたのか?」

「男の子の体って、おもしろーい」

 花野が無邪気な笑い声を立てたときには、エイジの武器はすでに臨戦態勢だった。

 なんでまた、いきなり? 半端にマゾの気がある奴は、反応を読むのが難しいな……。

「紗絵っ。早くっ。また、しぼまないうちに、エイジ君の使っちゃって!」

 花野は、おのれのスカートの下に手を突っ込み、ショーツを脱ぎながら早口で言う。

「わ、わかった」

(──って、なんで、こっちが、エイジの都合に合わせて、あわてなくちゃならないんだよ!)

 大いに不満に思いながらも、あたしは、花野と同じように、スカートの下のショーツを脱いだ。

 実は、もう、さっきから、エイジの痴態に反応して、あたしはすっかり濡れてしまっていたのだ。下着まで。

 しかし、ベッドの上のエイジを見おろして、あたしはあえてせせら笑ってやる。

「いい格好だねぇ」

「う……うっ……」

 エイジの目に涙が盛りあがり、こめかみを伝って、落ちてゆく。

 彼はおびえながらも、性的な昂りに支配されていた。そして、そんな自分の反応にまた、おびえているようだった。

「おまえが全裸で縛られて勃起しちゃうような変態だってことは知ってたけど、お尻におもちゃを入れられても興奮しちゃうとはね。きれいな顔して、ずいぶんといんらん な変態性欲者だよねぇ」

 言いながら、あたしは彼の器官にコンドームをかぶせる。

「お尻をおもちゃで犯されながら童貞を失うなんて、なかなかない経験じゃない?」

 あたしは彼にまたがり、片手でペニスを支え、ゆっくりと腰を落としてゆく。

 二枚の襞に、彼の先端が触れた。

 刺激はたちまち、甘い快感へと変化する。

「ああ……」

 つい、声を洩らしてしまう。

 彼の器官が、二枚の襞を割る。

 感じているところ、エイジに見せたくない。

 そう思う一方で──。

(でも、感じたほうが、花野が喜んでくれるんじゃない?)

 そう考えたら、もう、声を抑えられなかった。

「んっ……アアッ……」

 濡れた洞窟の中に、彼が入ってくる。というか、あたしの濡れた部分が、彼を奥深くへ咥え込んでゆく。

(ああ、ほしい! 奥まで、ほしい!)

 マグマのように熱い欲望を押し隠し、あたしは軽く笑い、エイジに言ってやる。

「やだ。固い。お尻になにか突っ込まれただけで、こんなに固くなっちゃうんだ? だったら、毎回、なにかを突っ込んであげてもいいよね?」

「ンンーッ!」

 エイジはうめき、首を横に振った。

 あたしは体を上下に動かしてみた。洞窟の内壁と、襞の内側が、同時にこすられ、快感を生み出す。

 ああ、たまらなく、いいっ!

「ねえ。お尻で感じられるなら、一度、ゲイの男におまえを犯させてみようか? あたしと花野が見ている前で。それって、興奮しない?」

「んんっ! うーっ!」

 猿轡の奥で悲鳴をあげ、エイジは激しくイヤイヤをする。

 そんな、嫌悪感を含む反応すら、あたしの胸を締めつけ、甘い感情を生み出す。

 異なる刺激がほしくて、あたしは体を前後に動かす。それに合わせて、彼の器官があたしの内壁をこする。

「んぅっ! むぅっ……」

 エイジは不自由な体で切なげにもだ える。

「まだ、出すんじゃないよっ。あたしが満足する前に出したら、ゲイに依頼してアナル責めだよ」

「ううっ! クーッ……!」

 エイジは恐怖に身震いし、悲鳴をあげる。

 もちろん、そんな反応は、あたしの官能をあおるだけ。あたしをちゅうちょ させたりはしない。

「すっごい……。紗絵、すごく、いいっ……」

 花野がベッドの脇で、うわずった声をあげる。右手はスカートの中、左手はシャツの下で自分の胸を揉みしだいている。

「紗絵もエイジ君も、すごくきれい……!」

 花野の美しく上気した頰も、快感に潤んだ目も、大いにあたしを惹きつけるものであったが、あたしは自分に与えられた役を演じきるため、エイジに言った。

「ほら、エイジ。花野がおまえの惨めな姿を喜んでくれているよ。全裸で縛られて、お尻に異物を突っ込まれてよがりまくるだけで、かわいい花野に喜んでもらえるんだから、楽なものだよねぇ?」

「ううっ……んっ……」

 エイジは首を横に振る。

 これは「いや」ではなく、「あまり刺激的なことを言われると、出しちゃうから、やめて」という意思表示だろう。

 しかし、あたしのほうもまた、エクスタシーが目前だった。

 きれいな男の子を縛って犯すということが、こんなに刺激的だとは……。

 できたら、エイジのほうを先にいかせて、「早い」と文句つけて、尻を責めてやりたいので、先に達したくはないのだが。

 あたしは動きを弱めた。

 だが、そのとき、突然、エイジが動き出したのである。

 不自由な身をくねらせ、腰を何度も突き出し──。

 それは明らかに、あたしの快感を引き出すためではなく、自分の欲望を満たすための動きだった。

 だけど、彼の器官の先端が、あたしのいいところにグッと押しつけられると、内側で一気に快感が高まった。

 その一点への刺激をずらし、快感をやり過ごそうと思いながらも、悦楽に引きずられ、自由に動くことができない。それどころか、意志に反して、あたしの下半身は刺激を高める動きをしてしまい──。

「あっ……!」

 腰の奥でふくれあがった快感が、はじけた。

「ああーっ!」

 波動と化した激しい快美感が、全身に伝わる。爪先にも、頭蓋の中にも。

 あたしは深々とエイジを咥え込んだまま、のけぞり、全身を震わせた。

 ちつ がキューッと収縮し、さらに彼を強く締めつける。

「ううーっ!」

 エイジもまた、達したようだ。

 あたしは搾り尽くそうとするかのように、さらに彼を締めあげてしまう。

 今はただ、彼を離したくなかった。

「くぅーっ!」

 絞り出すような、花野の声が聞こえた。

 彼女もまた、ベッドの脇で、エクスタシーに達していた。

 あたしに触れることも、あたしに触れられることもなく。

 もちろん、エイジに触れることも、エイジに触れられることもなく。