5 美少年いじり



 あたしの脳内のシナリオでは、オナニーの生オカズになってくれないかとエイジに申し出た花野は、彼にどん引きされ、拒絶されることになっていた。

 しかも、おびえたエイジは、清らかな花野に、無情にも「 せろ、この変態!」などと言い捨て、走り去るのだ。

 そして、花野は涙を浮かべあたしに訴える。

 エイジ君は全然わかってくれなかった、と。

 そうだよ。花野の一番の理解者は、このあたし!

 エイジのおかげで、あたしの株は一気に上がり、連日ストップ高というわけだ!

 ところが、実際には──。

 土曜日の午後、花野に呼び出され、彼女の家に行ったところ、そこにはエイジもいて、彼は乙女のように頰を染めてもじもじと言ったのである。

「ぼく、実は、花野さんのことが好きで……」

「知ってるよ。で?」

 あたしはソファーに座り、脚を組み、腕組みをし、目の前に突っ立っているエイジをうながした。

 そんなあたしに威圧されたように、彼はつっかえつっかえ、続ける。

「こ、このあいだ、ぼく、あの……思い切って、花野さんに告白して……」

「それも知ってる」

「そしたら、すでに紗絵さんと交際してるって花野さんに言われて……。でも、花野さん、ぼくをオナニーのオカズにしてくれるって……」

「で、おまえはのこのこやって来たのか?」

「あ……。は、はいっ」

 いきなりのおまえ呼ばわりに、エイジはビクッと身を震わせた。

 なんだよ、その小動物のような、かよわげな風情は!

 いら つきながら、あたしはエイジを軽く言葉でなぶ る。

「あたしが花野の恋人だって知ってるくせに?」

「は、はい……。でも、花野さんが、紗絵さんとぼくとでエッチなことをして楽しませてくれたら、うれしい、って……」

「はぁ?」

 あたしが不穏な声で応じ、エイジが恐怖に身をこわばらせたところで、花野が割って入った。

「エイジ君、そんなにビクビクしなくていいよ。異常だとか、アブノーマルだとか、普通じゃないとか、そんなことで、紗絵は絶対、他人を批判したりしないから。そういうの、紗絵が一番嫌うことだもんね」

 最後の言葉は、あたしへの確認だった。

「ま、まあ、そうだけどさ……」

 あたしがモゴモゴとこたえると、花野はにっこりと笑ってエイジに言った。

「紗絵に怒られても、単なるプレイだと思って、前向きにとらえて楽しんでね」

 ──って、それ、いくらなんでも、前向きすぎだろっ!

 花野の言葉にエイジがあん したようにうなずいたのも、実に気に食わない!

 これで、あたしがいくらいじめようと、エイジは前向きにプレイとして楽しんでしまうってわけで……。

(だったら、いっそ、とことん性的にいじめてやろうか?)

 そうだ。

 エイジを存分にののし り、侮辱し、徹底的にいじめることすら、「プレイ」のひとことで容認されるのだ!

 だったら……。

(だったら、やってやろうじゃないかっ!)

 あたしはエイジに言う。

「服を脱ぎな」

「え?」

 とっさに従うことができなかったエイジを、あたしはどやしつける。

「服を脱ぎなっ! 二度も言わせるんじゃないよっ!」

「は、はい」

 どこで脱ごうかとあたりをキョロキョロ見まわすエイジに、あたしは鋭く言う。

「ここで脱ぐんだよっ! あたしと花野が見てる前で!」

「は……はいっ」

 背中を見せてシャツのボタンを外しはじめたエイジを、あたしはさらにしかる。

「こっちに向けっ! なに、偉そうに恥じらってるんだよ、オナニーのオカズが!」

「す、すみませんっ」

 エイジはこちらを向いて脱ぎはじめたが、緊張のせいか手が震え、手早く脱げない。

「ったく、モタモタ、モタモタと……。いいかげん、やる気見せなよっ! やる気!」

 あたしがどやしつけたときには、エイジは最後の一枚、トランクスを脱ごうとしていた。

 そして、トランクスの下から現れたものは──。

「わー。やる気満々だー」

 花野がソファーの上で、無邪気な声をあげた。

 すでに彼の「男の武器」は臨戦態勢に入っていたのである。

「男の子のって、こんなに大きくなるものなんだー」

 花野にまじまじと見つめられ、あわてて股間を隠したエイジに、あたしは言ってやる。

「べつに花野はおまえのものが大きいって言ってるわけじゃないからな。清らかな花野は、今日初めて、そのしょうもない器官のぜんぼう を目にしたんだ。比較対象がほかにないんだから、粗末なものでも大きく見えてしまうという可能性を、念頭に置いておくことだな」

「あ、あのっ……ぼくのって、粗末かな?」

 本当は決して粗末なわけではなく、特に、上反りで使い心地が大変よさそうな点は大いに評価できるものであったが、正直にこたえてやるのも腹立たしいので、あたしは彼をしかりつけた。

「おのれの一物が粗末か否かなど、単なるオカズが気にすることではないっ! どうせ、おまえのものなど、花野には指一本触れてはもらえないのだからな!」

「す、すみません」

「ほら、いつまでもボーッと突っ立ってないで、そこに正座しな!」

 エイジは従い、床に正座する。

「股間を隠すなっ。手を後ろにまわせっ」

 あたしは、エイジが脱いだジーンズから革ベルトを引き抜くと、彼の両腕を背中で重ねて、ベルトをきっちりと巻きつけ、バックルを留めた。

 後ろ手に拘束されたエイジは、もう、かんじん の部分を隠すことはできず、すべてをさら していた。

「あ、あのっ、紗絵さんっ」

 おずおずと切り出したエイジに、あたしは訊く。

「ん? なんだ?」

「あ、あまり乱暴しないで……」

「はぁ? オナニーの生オカズがいっちょうまえの口をきいてるんじゃないよっ。おまえは、こういう状況を望んでいたんだろっ?」

「ち、違うよっ。これって、ぼくが望んでいた状況とは、かなり違うよっ」

「なら、これはなんだ?」

 あたしは爪先で、きつりつ している器官をツンツンしてやる。

「なんで、おまえのここは、こんな状態になってるんだ?」

 すると、エイジはうわずった声をあげる。

「あっ。あっ。だめっ。ぼく、ちょっと足フェチの があるんでっ……。刺激、強すぎるっ」

 あたしはあわてて足を引っ込めた。

 いたぶってやるつもりが、エイジの劣情をいたずらに刺激していたとは。

 もう、こやつを必要以上に楽しませてなるものか! これは花野に楽しんでいただくためのプレイなのだから!

 あたしは花野に言う。

「大きめのハンカチか手ぬぐい、ない? エイジに目隠ししたいんで」

「手ぬぐいなら、あるよ」

 花野は、日頃から、手ぬぐいをきっちりとたたんで、ハンカチ代わりにしているのだ。

 彼女は、豆絞り風の模様がプリントされた手ぬぐいを出してきた。

 あたしはそれで、エイジに目隠しをする。

「ま、まわりが見えないと、なんか、怖いよ……紗絵さん……」

 おびえた声を出すエイジに、あたしは告げる。

「言っておくが、おまえの期待を高めるために視界をおおったわけではないからな。エロティックな気分になっている花野の愛らしい姿を、おまえのいやらしい視線から守るためだ」

「…………」

「返事はっ?」

 あたしが鋭く問うと、エイジはびびったように「はいっ」とこたえた。

「さて、と」

 あたしは、エイジの背後につくと、彼の耳に息を吹きかけるようにして告げる。

「男というものがどんなにいやらしい生物なのか、おまえが男を代表して、清らかな花野に見せてさしあげるんだよ」

 あたしはエイジを抱くようにして両手を前にまわし、左右の乳首をつまんでやる。

「あっ……」

 エイジが切なげな声をあげる。

 そのエロティックな響きは、あたしの心臓にズキッと響く。

(くそっ。不必要なほど、エロい声を出しやがって、この男……。あたしは流されんぞ! 断じて、流されんぞっ!)

 すでに体の芯に官能の火がともっていたが、あたしはそれを無視した。

「ンッ……。ああっ……。だ、だめっ……」

 甘い声をあげるエイジに、あたしはわざとのんびりとした口調で訊いてやる。

「んー? なにが、だめなんだ?」

「そ、そこ、じれったいからっ……」

「はぁ? 乳首で感じるわけ? 男のくせに? いやらしい奴だな」

 男性にも乳首で感じる者がいることは、過去の経験から承知しているが、あたしはすっとぼけて彼を言葉で嬲り、さらに、花野に告げる。

「ちょっと、花野、見て。エイジったら、全裸にされて自由を奪われたうえ、乳首を刺激されて、感じちゃってるの。すっごい変態。もう、フル勃起!」

「わぁ! なんか、透明な汁が出てるよ!」

 花野はエイジの股間をまじまじと見つめ、楽しげに言う。

「ねえ。これって、カウパー腺液ってやつだよねっ?」

「そう。俗に言う、我慢汁とか、先走りってやつ」

 あたしと花野の会話に、エイジが割り込む。

「や、やめて……。恥ずかしいから……」

「なにが『恥ずかしいから』だよ。恥ずかしいことをされて興奮するドMが! おまえは、存在自体が恥ずかしいんだよっ」

「ぼく、ドMなんかじゃないっ……」

「サラッと噓をつくな!」

 あたしがエイジをどやしつけている間にも、花野は彼のペニスの観察に余念がない。

「すっごい。カウパー腺液、タラタラたれてるよ」

「あっ。床がよごれちゃうから、なんか敷いて。汁が手につかないように、気をつけてね」

 あたしの指示に従い、花野はエイジの股間の下あたりの床にティッシュを重ねて敷いた。

 あたしは、エイジに訊く。

「これからどうしてほしい? 乳首だけでもいっちゃいそうだけど、どうなの? そんなに乳首をクリクリされるのが、好きなの?」

「あ、あのっ……。下半身にもさわってほしいです」

「下半身? 下半身のどこに?」

「えっと……あのっ……性器、です……」

「はぁ? ずいぶんと、ずうずうしいことを言うね、この奴隷は」

「ど、奴隷っ?」

 明らかに動揺して、エイジはその言葉を復唱する。

「ぼくって、紗絵さんの奴隷だったのっ?」

「奴隷以外のだれが、全裸で自由を奪われて、乳首をいじられて、フル勃起するんだよ? そんな奴が奴隷以外にいたら、お教えいただきたいものだよ! 逆にね!」

 すると、花野があたしに報告する。

「ねえ、紗絵。あたし、なんか、オナニーしたくなってきちゃった」

「うん、いいよ。エイジには見えないから、思い切りどうぞ」

「じゃあ、あたし、するね。エイジ君をオカズに」

 花野は少しもためらわず、スカートの下に手を突っ込むと、下着をスルリと脱ぎ捨てた。そして、右手で性の部分に刺激を与えはじめる。

「あっ……。ああっ……」

 花野の甘い声に、エイジがビクッと身を震わせる。

(くそ! 耳栓も用意して、耳をふさいでやるべきだった! これでは、花野の愛らしい声が、エイジに丸聞こえじゃないか!)

 しかし、もう、遅い。このまま、盛りあげて、花野をとことん楽しませてあげるしかない。

 あたしはエイジに告げる。

「これから、おまえの面白おかしい器官に触れてやるが、それはおまえのためではないからな。おまえにさらなる痴態を演じさせることで、花野のオナニーライフを充実させてあげようという意図のもとに、あたしは手コキに及んでやるんだからなっ」

「ああっ!」

 あたしがいきなりギュッと握ってやったら、エイジは大仰なほど身を震わせた。

「あっ……あっ……。気持ちいいっ……。紗絵さんっ……」

(くそ。色っぽい声、出しやがって)

 あたしの性の部分も、エイジの反応に呼応するように、ズキンと脈打つ。

 せめて、こいつがブサメンだったら、あたしも感じずに済んだものを。

 いまいましいことに、エイジは美少年だ。しかも、かなりの。

 もっといい反応を引き出すために、あたしは彼の張りつめた器官をキュッキュッとリズミカルにしごいた。

「んっ……。あっ……。そんな、しないでっ……。出ちゃう……」

「はぁ? もう、出しちゃうの? なに、それ? 早すぎない?」

 あたしは意地悪に言い、嘲笑してやる。

「だって、紗絵さん、うまいから……」

 なんだよ。妙にかわいいこと、言ってくれるじゃないか。

 なんとなく、いい気分になってしまったけど、エイジのペースに巻き込まれないよう、言ってやる。

「ここで出したら、おしおきだよっ」

「おしおきって……?」

 おびえながら訊いたエイジに、あたしはこたえる。

「そうだな……。タバスコを浣腸して、アナルプラグでふさいでやろうか? そのあとは、花野が見ている前で、強制排泄だ。その様子を動画に撮って、ネットに放流してやるのも、いいな。おまえの名前やら住所やら電話番号やらの個人情報も晒したうえでな」

「や、やだよ、そんなのっ……。絶対、やだっ!」

 エイジは泣きそうな声で言う。まったくもって、いい反応をしてくれる。

 だが、それと同時に、彼のムスコも、シュルルッと力を失ってしまったのである。

 すかさず、あたしはしかりつけてやる。

「ちょっと、なに、これ! なんで、小さくしてるのっ? だれが、小さくしろって言ったっ?」

「だって……紗絵さんが怖いこと言うから……」

「ったく、世話の焼ける男だな!」

 あたしは柔らかくなりかけたそれを握り、やわやわと刺激する。

「ああ……」

 エイジの唇から、甘い吐息が洩れる。

 花野はと言えば、ソファーの上で、右手では性の部分をいじり、左手は服の上から胸を揉んでいる。

 ああ、どうせなら、エイジじゃなくて花野のお手伝いをしてあげたいよ!

 目が合うと、花野はうれしそうに微笑んだ。

 満足してくれているんだ──そうと覚り、あたしの心は優しい気持ちに満たされる。単純なことに。

(よしっ! がんばろうっ!)

 そうだ。

 あたしは今、花野が与えてくれた役目を全うすべきなのだ。エイジと共に生オカズになるという役目を!

 ぜん 、やる気が出てきて、あたしの心には、エイジのペニスをもう少し丁寧に扱ってやろうという慈悲深い気持ちさえ生まれた。

 全体を握りながら、指先でこすりあげるように、裏筋をたどり。

 透明な蜜を湧かせた先端のあな を、指先で軽くえぐるような動きで刺激し。

 亀頭全体に蜜を延ばし、てのひらで包むようにして摩擦し、それから、すっかり固くなったところで、全体をしごいてやり──。

「んっ……。アアッ……。また、気持ちよくなっちゃうよぉ……」

「情けない声を出すなっ。まだ、だぞ。まだ、出すなよ」

 あたしの声も、興奮にうわずっていた。

 エイジの奴が色っぽい声を出すから、こっちまで変な気分になってきたじゃないか。

 さっきから、あたしのふともも の間の柔らかな器官は、熱を帯び、脈打ち、濡れはじめているし。もう、下着まで、濡れちゃってるよ。

 あたしとしたことが、こんなことでっ……!

「ああ……紗絵の責め方って、すごくいい。胸にズキズキ響くっ」

 花野は、いつの間にか、自分のシャツの下に手をさし入れ(おそらく、ブラジャーのホックも外しているのだろう)、胸を揉んでいる。

 自分の体をかわいがりながら、彼女は熱っぽい声で言う。

「エイジ君も、感じてる姿が、とってもかわいいし……。二人とも、すごく色っぽくて素敵。あたし、見てるだけで感じちゃって、感じちゃって……。ンッ……あっ……」

 うおおっ!

 花野、なんてかわいいんだ!

 ピンク色に染まった頰も、潤んだ瞳も、ポワンと半開きになった唇も、悩ましく濡れた声も、なにもかもが、かわいらしくエロティックで!

 エイジに目隠ししておいて、本当によかった。あたしの判断は正しかった。

 こんなに愛らしい彼女の姿を、エイジなんぞに見せられるものか。

 花野に懸想しているこやつのことだから、見たが最後、あまりの刺激の強さにたちまち射精し、あとは使い物にならなくなるのが関の山。この場が大いにしらけて、あたしまで花野の不興を買っていたことであろう。

 あたしは花野のオカズをさらに充実させるべく、エイジをいじめる。

「出すなよっ。絶対、出すなよっ」

 厳しく言いながら、ペニスへの刺激を続けると、エイジは泣きそうな声でこたえる。

「だめっ……。もう、限界だよぉ!」

「って、早すぎるだろっ? なに、それ? 早漏?」

「だって……だってっ……紗絵さんがしつこく刺激するからっ……」

「それは、あくまでもおまえの主観だ。客観的に見れば、おまえは充分、早漏なんだよっ!」

「い、意地悪言わないでっ。なんか、よけいに感じちゃうよぉっ……」

「なにぃ? おまえ、マゾなのかっ?」

「違うっ……。違うはずなんだけど……」

「マゾじゃないなら、全裸で縛られて、ペニスをおもちゃにされて、勃起したりはしないよな? ましてや、射精など!」

「あっ。そ、そんな、精神的プレッシャーかけないでっ。ほ、本当に、もう、出しちゃいそうでっ……」

「だから、マゾじゃないなら、出すなって言ってるんだよっ」

 言いながら、さらに激しくこすりあげてやる。

「あっ……あっ……。だめぇ……」

 やけにかわいらしい声を出しながら、ついにエイジは放ってしまった。

 器官の先端から放たれた白濁は、弧を描き、むな しく床に散る。

 あたしはうながすように、彼の器官を手の中で優しく刺激する。

「うわぁ! すっごい!」

 またしても、花野が感嘆の声をあげる。

「男の子のって、こんなに飛ぶんだ!」

「あ……ああ……」

 いっちょうまえに屈辱を感じているのか、エイジは泣きそうな声をあげた。

 欲望を吐き出した彼の器官は、あたしの中で弱々しくしぼみ、柔らかさを取り戻す。

「あーあ。あたしの手にまで、ついちゃったよ」

 あたしは、彼の精液がついた自分の右手の指を花野に見せてから、それをエイジの口の中に突っ込んでやった。

「んんっ! ううっ!」

 くぐもった悲鳴をあげた彼に、言ってやる。

「きれいに舐めな。自分が出したものだろ」

 エイジのうめき声には、泣き声が混じっていた。

 けれど、すぐに彼は観念して、あたしの指に舌をからませ、丁寧に舐めはじめる。

 その柔らかく濡れた粘膜のエロティックな感覚に、あたしの性の部分は、さらなる蜜を湧かせてしまう。

(なんで、あたし、エイジなんぞに欲情してるんだ……?)

 そう思いながらも、反応を抑えられない。

 ただし、感じていることは、エイジに覚られないよう、細心の注意を払っていた。あたしが実は楽しんでいたなんて、エイジの奴が知ったら、絶対、調子づくだろうからだ。

「紗絵っ……すごいっ……。すごいっ……。すごくいいっ……!」

 花野は「すごい」を繰り返しながら、エクスタシーに達した。

 一輪のガーベラのように愛らしくほっそりとした全身が、こわばったまま小刻みに震える。小さな唇から、「あ……あ……」と悩ましい声が洩れる。

 やがて、その全身から力が抜けた。

「ふぅ……。いいオナニーだった……」

 満足そうに言った花野に、あたしは、ティッシュボックスを渡す。

「ありがとう」

 花野は性の花の蜜をティッシュでぬぐい、ゴミ箱に捨てた。あたしとしては、もっと色っぽく後始末をしてほしかったのだが……。

 あたしも同じように、濡れた部分をティッシュでぬぐう。エイジの目隠しを外す前に。

 あたしがエイジの痴態にあおられて欲情していたなんて、本人には絶対に知られてはならない。

 花野が着衣を整えるのを待ち、あたしはエイジの目隠しを外した。

 彼の目は、涙で潤んでいた。

「なんだ? 泣いてたのか?」

 エイジはこくりとうなずき、言った。

「怖くて、なのに、気持ちよすぎて……ぼく……」

 そのかよわげな風情に、また、あたしの性の器官はズキンと脈打つ。

 意図せずして、こっちのサディスティックな欲望をあおるとは、油断ならない奴……!

 ここは、さらに踏みつけにしてやらねば!

 あたしは、エイジに鋭く命じる。

「床に出したものも、きれいに舐めな」

「え?」

 あたしは床に散った白濁を指さしながら、ふたたび命じる。

「おまえが出したものを、おまえが舌できれいにしろって言ってるんだよっ」

「そ、そんな……」

「ほらっ! さっさと従うっ! ぼやぼやしてると、タバスコ浣腸だよっ!」

 エイジはビクッと身を震わせ、ギクシャクした動きで膝立ちになりつつ、頭を下げた。

 涙をこぼしながら、エイジは床に放った自分の体液を舐める。

 すべて舐め取ったときには、彼は完全にすすり泣いていた。

「よくやったな」

 あたしは彼をねぎらい、頭を でてやった。

「泣くことないだろ。自分が出したものなんだし」

 そして、花野も言う。

「エイジ君も、紗絵も、ありがとね。二人のおかげで、あたし、すごくいい経験ができた。本当は、二人とも、こんなのは趣味じゃないのに、あたしのためにここまでやってくれたんだよね。ありがとう。あたしのわがままにつきあってくれて」

 いい思い出作りができた、とでも言いたげな口調に、思わず、あたしは「違う!」と声を張りあげた。

「こ、こういうのって、あたし、べつに趣味じゃないわけじゃないよ。実は、あたしだって、結構楽しんでたんだ」

 そして、エイジも言う。

「ぼくも、本当に楽しかった。紗絵さん、うまいし、すごくドキドキさせてくれたし……。縛られて、目隠しされて、二人にすべて見られちゃって、なんか、感じちゃって……」

「って、なに、また、はん ちになってるんだよ?」

「あっ……。ご、ごめんなさいっ」

 ほぼ反射的に謝ってから、エイジは抗議するような口調で言う。

「は、早く、ぼくを自由にしてよ。ベルト、外して。服も着たい」

「ったく、余韻を味わう余裕もない、せっかちなマゾだなっ」

 あたしは、彼を後ろ手に縛っているベルトを外しにかかる。

「だいたい、マゾならマゾだって、最初からそう自己申告しろっ! ノーマルぶるんじゃないよっ」

「でも、ぼく、今まで全然、自分にそんなところがあるって、気がついてなくて……。今日、紗絵さんにいじめられて、興奮しちゃって、初めて『そうなのかな』って思えて……」

 すると、花野が感動したように言う。

「すごーい! 紗絵がエイジ君を目覚めさせちゃったんだ! あたしも、その瞬間に立ち合うことができたんだねっ。すごいっ!」

 花野にそう喜ばれてしまうと、あたしまで、なんだか心がほっこりしてしまう。

 ……って、これでいいのかっ? いいわけ、ないだろっ?

「あ、あの、花野さん、シャワー、お借りしてもいい?」

「うん。どうぞ」

 エイジは脱がされた服をまとめて手にし、花野に案内されて、ユニットバスへと向かう。

 ったく、一人でさっさとシャワー浴びてるんじゃないよっ。

 それにしても、エイジの奴、気持ちよさそうに飛ばしてたなぁ……。

(結局、あたしは風俗まがいのサービスをしてやっただけなのか?)

 でも、まあ、花野が喜んでいるから、よしとするか……。

 あたしはティッシュを水で濡らし、エイジの唾液がついた床を、きれいに拭く。

 清らかな花野の部屋に、男の体液の痕跡があるなんて、あたし自身が許せないのである。

 顔を上げると、花野と目が合った。

「紗絵、今日はありがとね」

「あ……。う、うん」

 なんだか急に気恥ずかしくなり、あたしはモゴモゴとこたえる。

 そして、花野もまた、頰を染め、視線をそらして言ったのである。

「あたし、ますます紗絵のことが好きになっちゃった」