長かった夏休みが明け、大学が始まったある日。久々に授業に出た藤倉は、教室で冴木を見つけた。後ろの席で一人、本を開いて講義が始まるのを待っている。以前と変わらぬ無表情だった。
何となく声をかけるのが躊躇われた。視線の端でその姿をとらえながらも、藤倉は無関心を装い友人たちと共に過ごした。
夜、ナンパした女を泡状のものに食わせながら、藤倉は思った。冴木をこいつに食わせたら、冴木を食ったこいつと交わったら、どんな絶頂が得られるのだろう。それに。藤倉は自分の顔を撫ぜた。あの時俺を振った冴木に、今の俺を見せつけたい。
見せつけ、犯し、食わせたい。
藤倉の心が暗く染まる。目の前で食われていく女の顔が冴木と重なった。女は下半身まで飲み込まれながらも、うっとりとした目で藤倉を見ると、喘ぎ声を上げた。口端から涎を垂らし、自分で乳房を揉みしだく。
藤倉の肉棒が鼓動した。薄暗い感情に欲情していた。冴木が食われたら、その姿は、その表情は? どんな声を上げ食われていくのだろうか。
藤倉はいきり立った肉棒に手を添えると、ゆっくりと扱きはじめた。目の前では女が顔の半分まで飲み込まれていた。虚ろな目が藤倉をとらえる。
「ああ、冴木、冴木ぃ……っ」
藤倉は肉棒を激しく扱いた。先端からは先走り液が溢れ、軌跡を描いた。その先には泡状のものがおり、藤倉の体液を嬉しそうに浴びる。
「イ、クッ!」
藤倉が大きく腰を突き出した。強く握った肉棒が大きく膨らみ、精液を吐き出した。粘度の高い白濁液はねっとりと泡状のものに降りかかり、糸を引いた。
「はぁ……はぁ……」
ゆっくりと扱き、最後の一滴まで絞り出す。精液のすべてを受け止めた泡状のものが、ふるふると震えた。藤倉は表面に触れると、ゆっくりと撫ぜた。ほんのりと温かく、柔らかい。ここに肉棒を突っ込んだらどんな気分だろう。途端に肉棒が鼓動する。いくら吐き出しても吐き出し足りない肉欲。藤倉は苦笑した。
「お前にもっと美味い肉を食わせてやる。待ってろ」
藤倉がそう言うと、泡状のものは嬉しそうにぶるりと震えた。



「お久しぶりね、藤倉くん。何か御用?」
翌日、教室で講義を待つ冴木に声をかけると、彼女は相変わらずの調子だった。
「冷たいなぁ、冴木チャン」
藤倉はにこにこと微笑むと、座る冴木の肩を抱いた。顔を寄せると耳元に話しかける。誰にでもこの調子の藤倉はあまり人目を気にしないし、周りもいつものことかと気にしない。
「ねぇ、冴木さ。今晩、俺んちで飲まない? 久しぶりに」
「それ、別れた女に言う台詞かしら」
「大丈夫大丈夫、なーんにもしないからさ。俺のお勧めのワインが手に入ったんだ。冴木、ワイン好きだろ? 冴木チャンにだけ教えるんだぜ?」
冴木はぴくりと眉を動かした。藤倉はある程度なら冴木の好みを知っている。以前無理やり飲み会に連れて行ったことがある。そこで彼女は高級なワインしか飲まなかった。本物が好きなのだ。
冴木はちらりと藤倉を見ると、上から下まで眺めた。藤倉と目が合う。藤倉はにっこりと笑い、「何にもしないよ?」と目で訴える。冴木は視線を戻すと、本を読み始めた。
「いいわよ」
「よっしゃ! じゃあ今夜俺ん家で」
藤倉は冴木の両肩をぽんぽんと叩き、去り際に尻を撫でた。ぴくりと反応する冴木の顔を横目で見ると、眉が下がり、目が泳いでいる。まんざらでもない雰囲気に、藤倉はほくそ笑んだ。期待で下半身が疼いた。

夜、藤倉の部屋を訪れた冴木は、別れた時に着ていたのと同じ白のワンピースに、黒のコルセットと黒のガーターベルト姿で現れた。ワンピースから透ける黒い下着がいやらしさを助長する。出迎えた藤倉はごくりと生唾を飲み込んだ。
「上がれよ、冴木。ワイン用意してあるぜ」
「失礼します」
冴木はヒールを脱ぐと、さっさと玄関を上がった。相変わらずの無表情だ。だがこれがセックスする段階になると豹変し、嗜虐されるのを好みねだるのだから、たまらない。
「ワインに合いそうなものをいくつか買ってきたわ」
「お、ありがとう冴木。気がきくな」
藤倉はダイニングテーブルに冴木を座らせると、ワインを開けた。先日、冴木を呼ぶ口実にと購入した、年代物の赤だ。栓を抜いた瞬間、芳醇な香りが部屋に漂う。冴木は顔を蕩けさせた。
「今夜は飲もうぜ、冴木」
藤倉はにこりと微笑むと、二つのグラスに注いだ。血のように赤い色が美しく輝く。グラスを手渡すと、冴木は目をうっとりとさせた。藤倉の読みは当たった。
「冴木チャンとの久しぶりの再会に、かんぱーい!」
「つい昨日も会ったばかりだけど」
「あれ、そうだっけ? まあいいじゃない、飲も飲も、冴木チャン」
「そうね、いただくわ」
冴木がワインを口に含んだ。藤倉も口に含む。瞬間、深く濃厚な味が咥内にふわっと広がる。少し苦みがある。だがそれがいいアクセントとなり癖となった。酒が進んで止まらない。
冴木の顔がみるみる蕩けていく。セックスをしているときのような顔だ。藤倉は内心ほくそ笑みながら、冴木のグラスに何度もワインを注いだ。
数時間後。ワインは三本ほど空になっていた。あまりの美味しさにハイペースで飲んだ冴木は酔っぱらっていた。ダイニングテーブルでふらふらと頭を揺らしながら、それでもワインを飲んでいる。目は虚ろだ。
「ねぇ、冴木。俺、どう? 前よりかっこよくなったと思わない?」
藤倉は冴木の隣に座ると、肩を抱いた。顔を寄せ、真正面で目を合わせる。
「そうね……あの時よりもいいわね」
やや舌足らずな口調で冴木が返す。
藤倉の鼓動が高鳴った。男としてのプライドが熱く滾る。俺を振った女が、俺をいいと言った。それでいい。藤倉は満足げに微笑む。
「な、冴木。俺とよりを戻さないか? やっぱりお前がいいんだ」
藤倉は真剣な顔で冴木に告げた。
「いいわよ」
冴木はあっさりと答えた。ワインを一口飲むと、美味しそうに、ほう、と息を吐いた。甘い香りが藤倉の鼻孔をくすぐる。
藤倉はとびあがらんばかりに喜んだ。俺は振られた。だが今こうしてまた付き合うことになった。振られたわけじゃない、ただ一時的に離れていただけだ。俺は振られたわけじゃない。藤倉の脳内で都合よく記憶が書き換えられていく。俺は振られてはいない、今まで一度も――。
「ああ、冴木、冴木っ!」
藤倉は冴木を抱きしめると唇に吸い付いた。自分の中の獣を抑えきれず、衣服の上から身体を弄った。冴木は藤倉の頭を撫ぜると、唇を離す。藤倉が押し倒そうとすると、静かに寝室を指差した。
「ねぇ、あっちでしましょう?」
「わかったよ、冴木」
藤倉は冴木を抱きかかえると、寝室のドアを開けた。ベッドに冴木を放り投げ、ワンピースを脱がしにかかる。冴木は藤倉の下からするりと身体を抜くと、藤倉の上にのしかかった。
「どうした冴木?」
藤倉が問うと、冴木がにこりと微笑んだ。
「今日は私が藤倉くんを気持ちよくさせてあげるわ」
そう言い、冴木が藤倉の衣服を脱がしはじめた。
冴木の白い手が藤倉のTシャツの裾から忍び込んでくる。指先が藤倉の乳首に触れた。爪の先でかりかりとひっかく。布越しに手が蠢いているのがわかる。
「ん、冴木」
藤倉が微かに身体を揺らした。冴木はくすくすと笑いながら、固く尖り始めた乳首を軽くつねった。
「藤倉くん、敏感ね」
「冴木ほどじゃないと思うけど?」
藤倉がにやりと笑うと、冴木は舌を出した。唇から赤い舌が伸びる。見せつけるようにちろちろと動かすと、藤倉の胸の下から下腹部へとゆっくりと這わせる。
「ん、んんっ、冴木っ」
藤倉は負けじと、上にのしかかる冴木の胸元に手を差し入れた。ワンピースの肩をはだけさせると、コルセットをずり下げ、乳房を露わにさせた。コルセットによって強調された乳房が、重そうに垂れ下がっている。
「ふうんっ」
「うわ、やらしいおっぱいだな、冴木チャン」
藤倉が乳首を摘まむ。くりくりとこねながら上下にひっぱり、乳房の形を歪める。藤倉の臍を舐めていた冴木がたまらず声を上げのけ反った。
「ひあっ、あああんっ」
「気持ちいいのかな、冴木チャン」
藤倉は尚も乳首をこりこりと弄りながら冴木の反応を見ている。
上半身を起き上がらせた冴木は、顔を藤倉の下半身へと向けた。ジーンズのチャックを下ろし、藤倉の肉棒を引き出す。固くそそり立つ肉棒をうっとりと眺めると、おもむろに口に含んだ。先端の敏感な部分が上あごにこりこりと擦れ、痺れるような快感が走る。
「うはぁ、冴木、気持ちいいよ」
「ん、ぶうぅ」
「じゃあ俺も冴木チャンの舐めちゃおうかな」
そういうと藤倉は冴木の下半身を引き寄せた。膝立ちにさせ、自分の顔の上へ跨らせる。ワンピースをまくり上げると、うっすらと染みを作り始めた白いショーツが現れた。むせ返りそうなほどに濃い女の匂いが鼻孔を刺激した。
「あれぇ、冴木チャンのここ、なんか濡れてない?」
藤倉は指先で筋をなぞる。温かくしっとりとした感触が伝わってくる。小さく固い突起に突き当たると、藤倉は指先で強く押した。
「んぶうっ」
肉棒にしゃぶりつきながら冴木が喘いだ。口いっぱいにほおばっているため、声が出ないようだ。
「気持ちいいの?」
「うふぅ」
「じゃあ、もっと気持ちよくしてあげるよ」
「ぶふうっ」
藤倉はショーツをずらすと、ひくつく秘所を外気にさらした。ぱっくりと開いた割れ目が目の前に見える。襞を開きそっと指を差し入れると、途端に吸い付いてきた。
「うわぁ、いやらしい動きするなぁ、冴木チャンのココ」
「んぐうっ」
冴木は喘ぎながらも、しゃぶるのを止めなかった。左手で竿を扱きながら激しく吸い付いている。
「そんなに吸い付いたらイッちゃうよ」
尚も激しく吸い付く冴木に、藤倉は差し込んだ指をゆっくり動かしながら意地悪そうに言った。
「じゃあ俺も」
藤倉は、冴木のまだ皮を被ったままの女芯に吸い付いた。口に含むと唇で皮を剥き、固くなりはじめた先端を舌先でちろちろと執拗に舐める。ぷるぷるとした感触が伝わってくる。藤倉は軽く歯を立てた。
「んくうっ!」
冴木がびくりと大きく震えた。中に差し込んでいた指がぎゅっと締め付けられる。藤倉は中の膨らんだ部分を強く擦りながら、舌の動きを早めた。
「んぶう、んふうっ!」
「いいねぇ、冴木チャン。イキそうならイッていいんだぜ?」
「ふぐぅ! ふぐうううっ!」
女芯を口に含みながら藤倉がしゃべる。冴木の手に力がこもった。必死で肉棒を擦り上げ、吸い付いた。
「いいぜぇ冴木ぃ、イキそうだ」
藤倉の眼前で開かれた冴木の腰が震えた。ぱっくりと開いた割れ目がぴくぴくと鼓動するたびに、ねっとりとした愛液が指を伝って溢れてくる。藤倉の舌に弄ばれていた女芯が固く大きくなった。冴木は肉棒を喉奥まで押し込むと、全身を痙攣させた。
「んんんーっ!」
びゅびゅっと潮が吹き、藤倉の顔を濡らした。膣に差し込んでいた指が痛いほど締め付けられる。
「潮吹いちゃって、気持ちよさそうだねぇ、冴木チャン」
「んぶ、んぶぅ」
冴木がイッたのを確認すると、肉棒を咥えたまま喘ぐ冴木に向かって、藤倉は腰を打ち付けた。
「ぐうっ!?
ばちゅん、と音が響く。藤倉が冴木の喉奥へと突き込むと、先端が何かに当たった。唾液が一気に溢れ肉棒がびっしょりと濡れた。冴木の口がぎゅうと閉じられる。
「冴木の口はオ○ンコみたいだなぁ、たっぷり犯してやるよ」
藤倉は狭まる咥内に尚も激しく突き込んだ。嗚咽が聞こえてくるが気にしない。女芯から口を離すと、中に入れたままの指でぐりぐりと中を弄くった。女芯を擦ると冴木が再び声を上げ、腰を震わせた。
「うぶぅっ! うぶううううっ!」
「冴木っ! でるっ!」
「んぐうううううううっ!」
藤倉は冴木の咥内へぐいと押し込んだ。瞬間、精液が吐き出された。冴木の咥内に溢れたそれは、口端から漏れこぼれた。
「おおっと、冴木ぃ、全部飲み込めよ?」
びゅくびゅくと精液を吐き出しながら藤倉が言った。冴木は苦しそうに痙攣すると、やがてゆっくりと飲み込み始めた。ごくり、ごくりと嚥下していく音が聞こえる。藤倉の心が征服感で満たされる。
「んぐ、うぐう、ごくん」
冴木は吐き出された精液のすべてを飲み込み終わると、肉棒から唇を離した。だが柔らかく萎んでいるはずの肉棒は、なおそそり立ち、鼓動していた。冴木が甘いため息を漏らした。
「上に乗れよ」
藤倉は仰向けのまま、冴木に指示をだした。
冴木は藤倉の腰に跨ると、そそり立つ肉棒に指を添えながら、ゆっくりと腰を落とした。先ほどまで藤倉の指を咥えこんでいた穴に肉棒を当てがうと、入り口を擦った。ぷちゅぷちゅと音が漏れる。粘度の高い液体の音だった。
「俺のチ○コでオナニーしてんの?」
「ち、違うわよ」
藤倉はにやにやと笑う。冴木は藤倉の言葉に頬を赤らめながらも、ゆっくりと腰を落とした。
肉棒が熱く滑った穴に吸い込まれていく。狭い穴を押し開く感覚に肉棒が痺れた。
「あはあああああああ」
冴木が声を上げのけ反った。下からのぞく喉が白い。大きな乳房が微かに震え、柔らかく新鮮な果物のように見える。
「んっ、ふううん」
冴木が腰をすべて落としきり、藤倉と冴木はぴったりとくっついた。粘膜同士が擦れる音が響く。肉棒の先端が冴木の子宮を押し上げている。藤倉が腰を左右に揺らすと、冴木が高く声を上げた。
「ひううっ!」
「お、すげぇ、くにくにしてるとこ擦るとなんか吹き出してくるよ、冴木チャン。なぁにこれ?」
「んふっ、んんんっ」
「あれ、しゃべれないかな、冴木チャン」
「うっ、ううっ、うふうんっ」
「今どんなかんじ?」
「んっ、んんんっ」
「ねぇってば」
「き、きもち、いいっ!」
「よくできましたー」
「……っ!」
藤倉は冴木の腰を掴むと、下から激しく突き上げた。冴木の身体がのけ反るが、耐え切れないのか前にかがんでしまう。藤倉がくすりと笑った。
「駄目だよ冴木ぃ、もっと身体反らさないと気持ちよくならないよ?」
「だめ……だめぇ」
下から突き上げられるたびに冴木の乳房が上下に揺れ、たぷたぷと音を鳴らす。
藤倉は冴木の腰を掴むと、前後に動かした。ずりずりと腰が動き、肉棒が冴木の敏感な部分を擦り上げる。
「気持ち、いいっ」
冴木が声を漏らした。腰が動き肉棒が擦れるたびに、膣が強く収縮を繰り返す。
「あ、いく、いっちゃう!」
「イケよ、ほらっ!」
藤倉が激しく腰を突きあげた。冴木の乳房が揺れ、腰ががくと震えた。
「ヒッ!」
空気を切るような声が漏れ、冴木が硬直した。藤倉の肉棒を全身で締め付ける。藤倉もたまらず、二回目の射精へと駆け上がる。
「中に出すぞ!」
「ンクウッ!」
藤倉はためらうことなく腰を突き上げると、冴木の中にたっぷりと吐き出した。絶頂の余韻に浸っていた冴木は、うっとりとした顔で藤倉に微笑んだ。
「んふう……」
冴木は小刻みに震えながら、藤倉の上でまた腰を動かし始めた。ゆっくりとまるで軟体動物のように蠢かし、ねっとりとした液体を吐き出した。
「あれ? 冴木チャン、どうしたの?」
藤倉は不思議に思い声をかけた。いつもは藤倉より先に果て、時には気絶してしまう冴木なのに、今は果ててなお結合したまま妖しく微笑んでいる。しかも自分から腰を振っている。
従順だったはずの冴木が、今日は貪欲に責めてくる。肉食獣のように藤倉をむさぼりつくそうとしているようだ。
冴木の中に入ったままの肉棒が強制的に勃起させられた。早速射精を促されている。まるで種付け馬のように、藤倉は無理やり射精させられた。冴木は恍惚の表情ですべてを受け取ると、また腰を振り始めた。
「ちょ……っ、まてよ、冴木っ」
強制的なその行為に、藤倉が待ったを入れる。だが冴木は聞こえているのかいないのか、まったく返事をしない。そればかりか腰の動きが早さを増した。妙な焦りで全身の毛孔が開き、ぶわっと汗が吹き出した。
「痛ッ」
ふいに痛みが走った。見ると、冴木が藤倉の胸に爪を立てている。長く美しい爪が、藤倉の皮膚に食い込み、血を滲ませていた。やめさせようと冴木を注意しようとしたとき。
冴木が笑った。満面の笑みだった。
藤倉はその笑顔になぜか全身の毛が逆立った。藤倉は焦った。額に汗が流れる。
いつもなら最初の一回で相手が気絶するのだ。そうでなくても二回目くらいには確実に気絶していた。だが今回に限っては、冴木は気絶するどころかむしろ精力を増していた。別の方法を考えなければ。藤倉は考えた。冴木を生きたまま泡状のものに食わせるために。
四回目の射精を終えたとき、藤倉は冴木を突き飛ばした。
「ちょっと、まて、タンマ、きゅーけー!」
藤倉は大きく息を吐いた。もうへとへとだというジェスチャーを混ぜながら、冴木に訴える。
「喉が渇いて仕方ねぇよ。何か飲ませろよ。冴木、お前もなんか飲むか?」
冴木が少し考え込んだ。
「そうね、お水でいいわ」
そういうと、冴木はベッドに横になった。
「じゃあちょっと待ってろ」
藤倉はキッチンに行こうとベッドから降りた。冴木のコップに睡眠薬を混ぜ、飲ませて眠らせてしまおうと考えたのだ。
藤倉が足を踏み出した時だった。ふと、何かが右足に触れた。ねっとりと生暖かいものが足に絡み付く。あ、これはあの泡状の……、そう気づいた瞬間、全身を電気が走り、射精した。いや、射精させられた。一気に意識が遠くなる。藤倉はその場に倒れ、気絶した。

藤倉は目を覚ました。そこはいつもの夢の中だった。薄暗く生ぬるい、白く滑った女が現れる世界だ。今回も藤倉の傍には滑った女が立っていた。だが何か様子がおかしい。いつもは足を開き藤倉を誘う女が、藤倉を押し倒そうとのしかかってくる。
まるで金縛りにあったように藤倉の身体は動かなかった。ねっとりと滑った女の身体が、ゆっくりと重なってくる。顔なき顔が近づいてきた。白髪の隙間から星空のような昏い宇宙が見える。思わずごくりと唾を呑んだ。
藤倉の頭の中に、声のようなものが響いた。
(今宵はお前を喰らおうぞ)
藤倉は驚いた。のしかかってくる女の身体を押しのけようともがいた。
「俺は約束は守っているぞ!?  害は与えてないだろう  それにお前に毎日餌をやってたのは誰だ!?  この俺だぞ!!
藤倉が胸を張って答えるが、女は動じることなくぶるりと震えた。さらにのしかかってくる。いつもは心地よいその滑りが、今は酷く気色悪い。また頭の中に声が響く。
(お前は生まれ変わるのだ)
「俺は生まれ変わりなんて信じちゃいない!」
藤倉が女に手を掛ける。力づくで押し返そうとするが、滑って力が入らない。
(快楽の中、我に喰われよ)
「よ、寄るな!」
藤倉の上にのしかかる女。下半身が滑る身体に押しつぶされる。
(我の仔として再構築する)
「俺は俺だ! どけよ! どけっ!」
女の顔が真正面に据えられる。藤倉の身体が金縛りにあったように動けなくなる。
ただ肉棒だけが硬直し、まるで別の生き物のようにそこだけが鼓動しそそり立った。
(黒い仔山羊となるがよい)
「いやだ! よるな! うわああああああ!」
藤倉が叫んだ。身体の上で滑っていた女の身体がどろりと溶け、二つに分裂した。 四本の腕が藤倉に絡まる。とらえる。這いまわる。そして――
「うわああああ!!
藤倉の叫びとともに、女の姿が再びぐずりと崩れた。

「ああ、はあ、あうっ!」
喘ぎ声とともに、肉棒が大きく震えた。半透明の女の身体が妖しくも揺れ、肉棒を責めたてる。
あれから何度絶頂を迎え、精液を吐き出したのだろう。いつもなら数回射精をすれば夢から覚めるのに、今回に限っては夢が終わる気配がない。時間の感覚がないこの世界では、何時間経ったのかもわからなかった。
藤倉は尚も腰を振り続けていた。身体をふたりの女に挟まれ、全身を粘液で濡らしていた。吐き出し続ける精液はすべて女の中に吸い込まれ、半透明の身体の中で白く濁った液体がたゆたうのが見て取れた。
「あ、ああ……あうう」
藤倉はまた射精した。それでも腰は自分の意志とは関係なしに、止まらない。意識が朦朧としてくる。時折気絶していたが、女たちが藤倉を刺激し、解放してはくれなかった。まるでただ腰を振り精を吐き出すだけの存在だった。
「うああああ……」
藤倉の肉棒がまたも女に飲み込まれる。うすぼんやりとした意識の中で、いつの間にか女の身体が形を崩していた。巨大なスライムのようなものが藤倉の下半身すべてを包み込んでいた。それは藤倉が動くたびにぶるぶると震えた。
「ひい、ひいい、ひいいい」
最早藤倉の口からは嬌声しか上がらない。また絶頂を迎えた藤倉は、スライムの中に射精した。スライムは歓喜の声を上げるように、ほんのりと赤く色を染めると、ぶるぶると震えた。藤倉の意識が遠のく。それでもスライムは動きをやめない。何度となく絶頂を迎え、果てる。またも藤倉の意識が遠のき始めた。
「ひぐぅ、うううっ、うっ」
取り込まれている。飲み込まれる。気持ちがいい。あの泡状のものに飲み込まれるのはこんなにも気持ちよかったのか。藤倉の目から光が消えかかる。
俺が、飲み込まれる――。

藤倉は身体すべてをその女たちに飲み込まれた。