あとがき



 幽霊をたことはないのですが、怖いというか、ファンキーな人にはたまに出会うことがあります。中学生のころ、家族の間で「むわよおばさん」という女性がよく話題に挙がっていました。

 飼っていた犬を散歩させるのに、当時はよく近所の山のハイキングコースを利用していて。夕方の決まった時間に訪れると、同じように散歩で犬を連れた化粧の濃い女性とはち合わせることがありました。その女性が、通り過ぎるときに「噛むわよ」と言ってくるんです。

 必ず言ってくるんです。目を見て言ってくるんです。通り過ぎるたびに言ってくるんです。化粧が濃すぎて、連れている犬の犬種が思い出せないんです。

 そもそも誰が何に対して噛むのか、状況的に考えると、いくつかのパターンに分けられると思うんです。


①:おばさんの犬が、私の連れている犬に対して「噛むわよ」と警告してきたパターン

②:おばさんの飼っている犬が、私に対して「噛むわよ」と警告してきたパターン

③:おばさん本体が私の犬に対して「噛むわよ」と警告してきたパターン

④:おばさん本体が私に対して「噛むわよ」と警告してきたパターン


 私が一番勘弁してほしいと思っていたのが④だったので、山を散歩コースに選ぶ時はいつも時間をずらすようにしていました。それ以来、家族の間では「噛むわよおばさん」と呼ばれるようになりました。いまはお元気でしょうか。誰かをお噛みになられていないことを祈ります。


 謝辞にうつります。

 今回、執筆・出版のご縁をいただきましたLINEノベル(LINE文庫)様、株式会社ストレートエッジ様。出版社の枠組みを超えた小説プラットフォームのお話を始めて伺ったとき、とてもわくわくしたのを覚えています。いちユーザーとしても、今後もたくさんの「新しい」を楽しみにしています。

 それからプロット段階、執筆、出版にあたって一年以上共に歩んでくださいました、担当編集の松浦様。感謝してもしきれません。ありがとうございます。

 美麗なイラストでキャラクターを描いてくださいました、碧風羽様。ラフを拝見させていただいたときは、これだ、と自分のなかのはなかざりのイメージが確かに固まった瞬間でもありました。

 お買い上げいただきました読者の皆様。ありがとうございます。

 書店で手に取って、とりあえずあとがきだけ読んでみている方も、どうぞレジへ。買わないと、噛むわよおばさんが噛んできます。さあ早く。


 それでは、ご縁があれば、またどこかで。



二〇一九年 八月 半田畔