あとがき
本書『小説 すずめの戸締まり』は、僕が監督をして二〇二二年に公開予定のアニメーション映画『すずめの戸締まり』の小説版である。映画制作と同時に小説も書くという経験は『君の名は。』『天気の子』に続けて三度目となるが、毎回書き始める前はやや気が重く(そんなにたくさん働けないと思う)、書き始めるとだんだんと楽しくなってきて、書き終える頃には絶対に必要な仕事だったという気持ちになる。今回もそうだった。ヒロインである
以下、物語の根幹に少々触れる。
小説や映画を先入観なしに楽しみたいという方は、どうか本文から読んで(あるいは映画から観て)いただきたい。
僕にとっては三十八歳の時に、東日本で震災が起きた。自分が直接被災したわけではなく、しかしそれは四十代を通じての通奏低音となった。アニメーションを作りながら、小説を書きながら、子供を育てながら、ずっと頭にあったのはあの時感じた思いだった。なぜ。どうして。なぜあの人が。なぜ自分ではなく。このままですむのか。このまま逃げ切れるのか。知らないふりをし続けていたのか。どうすれば。どうしていれば。──そんなことを際限なく考え続けてしまうことと、アニメーション映画を作ることが、いつの間にかほとんど同じ作業になっていた。あの後も世界が書き換わってしまうような瞬間を何度か目にしてきたけれど、自分の底に流れる音は、二〇一一年に固着してしまったような気がしている。
その音を今も聞きながら、僕はこの物語を書いた。そしてたぶんこれからも、ぐるぐると同じようなことを考えながら、あまり代わり映えのしない話を(代わり映えさせようと努力はしているんですが)今度こそもうすこし
今回の映画も小説も、あなたに楽しんでいただけることを願っています。
二〇二二年六月 新海 誠