探求の気持ちを持って心の入口に立とう

 最近、引っ越しのため8社同時に見積もりをお願いしました。

 

 皆さん、ポジティブハローでした。

 

 わりと高額な、一回限りの取引ですからね。

 

 営業マンとしては、ハズしたくない勝負の場になります。

 

 

 家の中を値踏みかのごとく見回されるなか、たまたま玄関口を通りかかると、ただ一人、皆さんの靴を並べる方がおられました。

 

 そうね、8社が一気に訪れ、8人の男性が脱がれたわけで、私は、黒い革靴が、巨大なカブトムシが蠢いているように思えて、ギョッとしたものでした。

 

 白髪の、線の細い、営業マンにしては弱々しい雰囲気の方でしたが、下心はあったにせよ、見てはもらえないかも知れないところで気遣いをされている姿は、正直、おお! と思わせてくれました。

 

 

 私は、サービス業のプロだったので、人様が考えて行っていることはだいたい理解できます。

 

 そんなふうに感じた自分にも少々驚いたのですが、やはり心遣いは嬉しいものですね。

 

 誰もがやりそうのに、やっていなかったからか、新鮮でした。

 

 そこから、自己分析してわかったことがありました。

 

 

 ●人と話すのが苦手

 

 ●アピールするのが苦手

 

 ●沈黙が苦手

 

 ●勝負の場が苦手

 

 ●人を蹴落とすのが苦手

 

 

 以上、5大苦手にカテゴライズされる方は、簡単なことで、人のやっていないところに目を付ける。

 

 

 新鮮に映ることを意識して振る舞いましょう。

 

 これだって十分にポジティブハローの手段です。

 

 輝けると思いますよ。

 

 ポジティブな性格じゃないから、ポジティブに行けないなんてことはありません。

 

 やろうと思えば、何かは、必ずデキる! 見つかる!

 

 

常に、不安が付きまとう

 さて、コミュニケーションの醍醐味はここからです。

 

 ネガティブハローをしている方の攻略法を見てまいりましょう。

 

 すでに書かせていただいた通り、こちらのほうが素直な性格をしているとも言えるのです。

 

 

 そもそも人間は、ネガティブに考えがちな生き物であり、必ず不安に襲われるようにできています。

 

 常に、不安が付きまとうのは、自分が弱いからではないのです。

 

 

 サンプルとして、ネガティブ人間のトオルくんのケース別思考法を見ていきましょう。

 

 

 ●将来を考え、学校選びをする。行きたい学校に出会えた!

 

 ↓

 

 次の瞬間から、合格できるかなと考え、モヤモヤし始める。

 

 進学塾に行くと、周りはもっと勉強ができそうに見えたりする。

 

 心が騒つく。

 

 

 ●そんななかで、模試で、合格ラインに到達した!

 

 ↓

 

 喜んだのも束の間。

 

 「模試は模試。本番はまったく別ものだ。合格できるとは限らない」

 

 と、考え出す。

 

 

 ●いよいよ、数日後に、試験日となった。

 

 ↓

 

 「風邪引かないかな」

 

 「大雪で試験試験会場に行けなかったらどうしよう」

 

 「浪人とかしたら、どうなるだろう」

 

 などと、妄想でビビる。

 

 

 ●志望校に合格した!

 

 ↓

 

 めでたい気分も束の間。

 

 「入学して、付いていけるかな」

 

 「留年しないかな」

 

 「卒業できるのかな」

 

 と、不安を山盛りにする。

 

 

 ●無事、卒業し、思い通りの会社に就職が決まった!

 

 ↓

 

 「自分に仕事がきちんとできるだろうか」

 

 「リストラ対象にならないだろうか」

 

 「同期に負けないだろうか」

 

 と、根拠のない不安要素で、頭がいっぱいになってしまう。

 

 

 トオルくんの人生は基本的に順調に行っているはずなのですが、常に、心配が付きまとっています。

 

 彼だけじゃない。

 

 子どもを持つ母だって、まず、妊娠できるかどうかを(しちゃった場合も)心配して、お腹のなかで順調に育つかを心配して、無事に産まれてくるかを心配して、健やかに成長していくかを心配して、人生そのものが幸せで包まれていくことを、祈るような気持ちで見守ることをやめられない。

 

 

 老後になれば、ポックリ死にたいのが多くの老人の願望になります。

 

 自分の死に方がどんなものであるのか。

 

 それまでに、動けなくなったりしないだろうか。

 

 トイレに行けなくなったら?

 

 お金は足りるのだろうか。

 

 

 長生きすることにさえも、不安はつきまとう。

 

 良いことも悪いことも起こるのが人生であり、不安=危機管理のうちということで、私も日々、不安と向き合い、対策を練ろうとするところがあります。

 

 

 けれど、私は、以前1週間くらい悩みがないことがありました。

 

 そのとき、思ったのです。

 

 

 「このままで良いのかな?」

 

 

 と。贅沢な悩みですよね。

 

 不安がないことにさえも、人間は不安になるのです。

 

 不安を克服していくことが課題であり、それは「成長の証」と刷り込まれているようなところもあるのかも知れませんね。

 

 それでも、みんな、平然を装って生きているわけです。

 

 

ネガティブハロー人の攻略法

 そんななかで、ネガティブハローをする方の場合は、建前さえ繕えない心理状況にあるわけです。

 

 

 では、攻略法を、具体的にご紹介してまいりましょう。

 

 取り扱い困難なネガティブハロー人(人種にすることにしました)を目の前にしてしまったとする。

 

 

 「わっ、厄介なのを相手にしちゃった! 困る~。ヤメて~」

 

 

 という感情が湧くと思いますが、直ちに!

 

 

 「わっ、コイツ。どんだけ、不幸なでき事があったのか? 今も、その不安を抱えたままでいるのというのかい?」

 

 

 と、変換しましょう。

 

 

 ネガティブハロー人になった理由は、大きく2パターン考えられます。

 

 

 (1)ポジティブハローなんかしていられない人生で(状況に)あった(ある)

 

 (2)自らネガティブハロー人を装うべき、という結論に至り、そうしている

 

 

 圧倒的に(1)のケースが多いはずですが、(2)の場合も、多かれ少なかれ(1)の過去を経ている。

 

 いずれにしても、「ツラかった(いんだ)ね」というレンズを通して見てみることは、あなた(受け手側)の態度に温かみを持たせ、度量の大きい雰囲気を醸し出すことになります。

 

 実際に、心に壁を造る時間も緩やかにしてくれるでしょう。

 

 

 悩みも苦しみも、基本、その人の感じ方ですから、「どうせ小さい悩みっぽい」とか、はたまた「悩みなんて吹き飛ばすのが人生」とか、自分の基準を持ち出したり、見下したりしないようにしてくださいね。

 

 その人がツラいと感じているならば、とにかくツラい。

 

 それで良いのです。

 

 

 「何があった?」

 

 

 という探求の気持ちを持つことによって、まずは、その人の心の入り口に立とうとしてみてください。

 

 その人のイメージがガラリと変わる瞬間が訪れる時がくる。

 

 それは、小説の世界にはまり込むのと似ているのですが、リアルなだけに、衝撃も大きい。

 

 

 人間のさまざまな心の痛みを知ることは、楽しい時間を過ごすよりも、むしろ価値があることのように思える時も、やってきます。

 

 自分の人生をも色濃くしてくれるような生き様を、垣間知れるかもしれないのです。

 

 

 とはいえ、始まりはたんに嫌な奴なわけですからね。

 

 イメージがつかみにくいかもしれませんね。

 

 

感じの悪いお客様に、サラリーマンの宿命を見る

 私の、人を見る目が変わった体験談をひとつ、紹介させてください。

 

 

 銀座のお客さまの話です。

 

 誰もが知っている大企業の、常務取締役だった武田さん(仮名)。

 

 小柄で、クシャおじさん(知ってます?)のような風貌なのですが、毎晩のように、5人以上の部下をひき連れて、夜も早めの時間から来店される。

 

 接待ともなると10人以上になることもしょっちゅうで、そこに、クラブの接待形式として、ホステスが同人数以上付いて、おもてなしをするのです。

 

 

 とても賑やかな席になり、ボトルもたくさん空きますから、私が居たクラブの上得意でした。

 

 武田さんは、落ち着いたムードのホステスを安全に感じていたのでしょう。

 

 私ともう一人、常に人気ナンバー3くらいだった和服美人の葵ちゃんという子を必ず付けるようにと、オーナーママに伝えました。

 

 お店(オーナーママ)のお客さまという扱いだったので、私も葵も、自分の売り上げにはなりません。

 

 

 葵は、武田さんがお店に入ってくると、いつもげんなりとした表情をしました。

 

 武田さんは、葵をもネガティブハロー人にしてしまうほどに、感じが悪いお方なのです。

 

 もちろん、標準装備で口も悪いときています。

 

 

 「あなた、何歳?」

 

 

 が初対面の挨拶。

 

 ホステスが年齢を答えると、

 

 

 「なんだ、ババァか」

 

 

 で、明後日の方をむく。

 

 声が小さいお方なので、何やらブツブツ喋っているな、と思い、耳を近づけると、

 

 

 「れみと葵は突出してババァだから、誰からも呼ばれないとクビになるだろ。だから、呼んであげてるの。ボランティア。それにしても、いつ見てもババァだな」

 

 

 とか言っている。

 

 でも、大事な接待の時だけは、武田さんも普通に穏やかな笑顔を浮かべて、私たちにも普通の態度でいてくれる。

 

 当たり前か。

 

 

 けれど、接待が終わり、飲み直しの席では少しだけ、労いの気持ちを見せることがありました。

 

 

 「君たちは、ババァだけあって、やっぱりキチンと接待するから、安心できたよ。まぁ、この日のために日頃から、ババァを呼んでいるんだけどさ。ママ、ありがとう(お礼はママにだけ言う)」

 

 

 ひねくれた言い回しだけれどね。

 

 でも、なぜかまた、同伴をしてくれるのでした。

 

 クリスマス・イヴ。

 

 家庭があり仕事が早く終えられるのだったら、家族と過ごすでしょう普通! という日を、クラブはあえて強制同伴日に充てている。

 

 

 その前の週はクリスマスパーティで、お客様に散々無理を聞いてもらった後のことなので、ホステスにはキツいんです。

 

 そのことを武田さんは知っていました。

 

 部下も付き合わせて(部下は可哀想)、「24日、メシ行こう」とポツリと言い、私たちを助けてくれるようなところがありました。

 

 

 「武田さんて、本当は優しいよね」

 

 

 そうと言うと、「ババァへのボランティア」としか返ってこない。

 

 いつの間にか、私たちは、「青い着物のババァ」とか、「ピンクの着物のババァ」など、その日の着物の色と、ババァの呼び名でしか呼ばれなくなった。

 

 

 美貌で売っている葵は、本当に屈辱だったようで、怒りを通り越して、具合が悪くなる日もあった。

 

 

 「どうして、来るんだろうね?」

 

 「顔も見たくない」

 

 「ママの為にがんばってきたけれど耐えられない」

 

 「何で、私、呼ばれるの?」

 

 「ねぇ、れみちゃん、私、そんなのババァに見える?」

 

 

 楽屋裏で、悔し涙を流しながら私に訴えてくることが、頻繁になっていました。

 

 

 「どうせ、あと、もう少しで寝ちゃうんだから、我慢して、葵。ほら、戻って戻って」

 

 

 などと言って、何とかなだめて席に戻す。

 

 このやり取りがほぼ毎晩。

 

 私もツライのですが、何とか続いたのは、私は葵より3歳ほど、本当にババァだったので、忍耐力があった

 

 そして、接待ではない時の武田さんは、1時間くらい毒を吐くと、いつも眠ってしまうのでした。

 

 8時頃来店して、9時前には寝てしまい、零時に部下に起こされて帰る。

 

 アフターに行っても、そこでまた寝る。

 

 寝ない日はないくらい。

 

 

 「クラブに眠りに来るなんて、ずいぶんとお高い睡眠代ね~」

 

 

 とも言われていました。

 

 

 そんな彼が、ある日、嫌味も言わない、眠りもしない夜があったのです。

 

 そして、焼酎をストレートでグッと飲む。

 

 様子がおかしいと思い、隣に座った私は、

 

 

 「武田さん、何かあったの? 今日はババァって言わないけれど、具合でも悪いの?」

 

 

 と、静かに聞いてみた。

 

 

 「明日、昇進か左遷かが、決まる日なの」

 

 「えっ」

 

 

 絶句してしまう私。

 

 

 「昇進なら、社長室に呼ばれる。左遷なら、副社長から呼ばれるんだけどね。れみ、僕は、長く続いた派閥争いに負けたよ」

 

 

 こんなふうに、私に話してくれるのは初めてのことで、ピアノの音色や賑やかな声がはるか遠くに聞こえ、時が止まったかのようでした。

 

 

 武田さんは、家に帰れる状況でもない、と言いました。

 

 自分の苛立ちやストレスに家族を巻き込んでしまうのも嫌だし、実際いい顔もできず、気づいたら家族関係が冷え切ってしまった、と。

 

 それ以上に、弱いところを見せて、妻や子どもたちを不安にさせたくない。

 

 それが、本当の気持ちなのだと思います。

 

 だから、家族が寝静まった頃に帰りたいのでした。

 

 

 彼は、昇進は完全に諦めているようでした。

 

 しかも、彼の会社の左遷は、事実上、クビの宣告に近いそうです。

 

 

 「大学を卒業して、何十年も会社の為に尽くしてきたのに、昇進じゃなかったらクビなんて……」

 

 

 私は彼に、やるせない気持ちをぶつけましたが、どうにもならない、これがサラリーマンの宿命だよ、と目を伏せる。

 

 しかも、もうクラブに来れるような立場でもなくなるから、先週、小さなアパートを借りたのだとか。

 

 

 「朝ごはんとか、どうしているの?」

 

 「エースコックの〈スープはるさめ〉という商品をたまたまコンビニで手に取ってね、すごく美味しかった」

 

 

 と言って、武田さんは少し笑いました。

 

 

 その夜が、最後になりました。

 

 黒服が「いらっしゃいませ!」という度に、武田さんが入ってくるような気がして、「ババァ」と散々呼んだ後に、ぐぅぐぅと眠ってしまう彼の姿がいきなりなくなってしまったことで、私は、心にポッカリと穴が空いたようになりました。

 

 

 スープ春雨が、アパートの周りのコンビニになく、会社の周りでたくさん買うわけにはいかない、というので、私は「ネットで買って送るから」といって、住所を聞いていました。

 

 返送されないから、届いているのよね、と何度も心配になりましたが、彼から連絡が来ることはありませんでした。

 

 

 夜の銀座には、毎晩訪れ、アフターにも行き、朝までホステスを付き合わせるお客さんがいっぱいいます。

 

 言いたい放題、わがまま放題、しょうがない人がたくさんいる。

 

 私は、武田さんの存在によって、そんな男性たちの見え方が一変に変わりました。

 

 

 心が、帰れるところが、ないのです。

 

 私は、夜のクラブという存在が、その場しのぎかもしれないけれど、そんな人たちの心の拠り所となれることを、祈るようになりました。

 

 

 私自身が、ホステスとして、生まれ変わったでき事でした。

 

 ネガティブハロー人を攻略することで、人間の真髄とも言える深い部分に迫ることができます。

 

 

 多かれ少なかれ、みんな不安を抱えています。

 

 常にハッピーな気持ちで、自然体でポジティブハローできる人の方が、じつは圧倒的に少ないのです。

 

 自分も、ベースはそこにあるのかもしれない。

 

 だからこそ、目指してみるのは、ポジティブハロー人なのだけれど、相手にするのは、まだまだネガティブハロー人が多くて当たり前なのです。

 

 

すべての出会いは糧になる

 彼は、ずっと不安だったし、寂しかった。

 

 一番は家族に心配をかけたくなかったのでしょうね。

 

 

 思い出すと切なくなります。

 

 日々、いろいろなことを受け止めていくうちに、自分の心のキャパシティを超えてしまうと、素直ではいられなくなる。

 

 とんがったり、塞ぎこんだり、現実逃避をしすぎたりして、なかなか元の自分に戻りづらい。

 

 

 このこと以来、私にはネガティブセンサーが搭載されました。

 

 扱いづらそうな人に会ってしまったら、すかさず「さまよっている人」の観察用眼鏡をかける。

 

 そして、丁寧に、しっかりと、その瞬間だけは、相手と向き合ってみるのです。

 

 

 最初は、物凄く疲れます。

 

 一人だけに、狙いを定めて、練習をするくらいで良い。

 

 

 正直、私には逃げられないという状況というのもありました。

 

 銀座のクラブには夜な夜な猛者が集まってくる。

 

 皆さん、日々、何かと闘い、何らかの方法で勝ち抜いてきているだけに、病み方も濃かったりする。

 

 チラ見して、ヤバそうと思ったら離れる、逃げるなんてしていたら、商売上がったりなんです。

 

 

 また、クラブのなかでは、セクハラ、パワハラの線引きもあってないようなもの。

 

 ホステスの給料が高いのは、ガマン代と言ったお客さまがいたけれど、ある意味、まぁ、そうね。

 

 新人は、まず次の日来るか? 3日続くか? 3ヶ月続いたら根性あるな! と初めて認められる目安があります。

 

 

 そんなことから、私はがんばれていたのかも知れません。

 

 どうせ同じ時間を過ごすのだから、乗り越えたいと。

 

 人間はやはり、常に成長を望む生き物なのでしょう。

 

 皆さんもまた、自分の心のキャパシティを考えながら、チャレンジしてみてくださいね。

 

 

 出会いはすべて経験値になります。

 

 徐々に、感覚をつかめますよ。

 

 

苦手な相手を観察するためのポイント

 それでは、観察用眼鏡をかけたらどうするか。

 

 いちいち、気分を害さないで済む心構えが整えば、向き合い(実践する)方は、シンプルです。

 

 

 ●実技編

 

 (1)相手の話に、なるべくゆっくりと、「はい」、「はい」と、相槌を打つ

 

 (2)相手としっかりと目を合わせる瞬間を持つ

 

 (3)「そういう意見はうかがうのは初めてで、新鮮です。学びです」といったふうに瞳を輝かせる(瞬きを少なくして、目をいつもより大きめに開き、鼻から息を吸い込んで止めると、瞳は輝きます)

 

 (4)「ほぅ」「おおっ」「なるほど」等、あくまで上品なトーンで、感嘆詞を挟んでも良い

 

 (5)視線をやや上向きにするなどして外し、うかがった話を、熟考する姿勢を作る

 

 

 これらを繰り返すことで、〝アナタの話に聞き入っています〟という姿勢を作ります。

 

 人は、「丁寧に話を聞いてくれる人=自分の気持ちを理解してくれる人」を、探し求めているのです。

 

 

 心の準備をして、しっかりと相手に向き合うことを心掛けていると、自然に、「この人なら話しても良いかな?」といった大らかな空気をまとえるみたいです。

 

 くだらないことから深い話まで、話しかけてくる人が多くなる。

 

 

 私は夜の銀座で、お客さんだけでなく、ホステスからも相談にのってもらいたいと言われることが多くなりました。

 

 深夜のお悩み相談室として、アフターに行かない日はなくなりました。

 

 

 ●注意点

 

 先ほど、心のキャパシティについて、少し触れました。

 

 いくら私が人生経験豊富なババァ・ホステスだとしても、みんなのお悩み解決ができるわけがないのです。

 

 他人のツラい話にいちいち落ち込んでいたら、私自身が現実逃避してしまうでしょう。

 

 「この人、可哀想……」と同情するのは、じつは違う。

 

 人間は、基本的にプライドの高い生き物です。

 

 何かとクレームが多いのはその証拠でしょう。

 

 同情は、無意識のうちに上から目線になり、意図せずに相手を見下したことになります。

 

 すると、

 

 

 「いやいや、あなたなんかに同情されるほど、私、終わってないから!」

 

 

 と、じわじわと反発が生まれるかもしれない。

 

 「同情するなら金をくれ!」とドラマ『家なき子』のすずも言ったように、本当は同情なんかいらない。

 

 されたくない。

 

 さらなる怒りや悲しみを生み出してしまうのです。

 

 

 ●鉄則

 

 ではどういう態度で接すれば良いのか?

 

 それは、共感するのです。

 

 あなたと私は違う人間であり、受け止め方もそれぞれなわけだから、あなたがどう感じたのか教えてもらいたいわ、として、ガイド役を努める。

 

 

 「そんなことが、起こっていたのね」

 

 「そこで、そんなふうに、感じるのね」

 

 「なるほど」

 

 「そうだよね」

 

 「なんだか、わかる気がするわ」

 

 「もっと、聞かせて」

 

 「もしかして、こういうことなのかな?」

 

 「悔しかったようで、悲しかったのかな?」

 

 「ツラいようで、今、話している表情は明るいから、もう乗り越えたことなのかな」

 

 

 その人の抱えている問題に一緒に向き合うのではなく、問題と向き合っているその人(心)に向き合うのです。

 

 静かに、温かく、一緒に探求してあげる。

 

 

 相手は、自分自身を掘り下げていきます。

 

 自分に関心のない人はいませんし、悩みの原因は、じつは、自分自身にあると、どこかで感じているからです。

 

 そして、自分の力で、立ち上がりたいものなんですよね。

 

 そのお手伝いをしてあげることが、人の為になるのです。

 

 

 ●注意点(2)

 

 共感する行為がザツになると、同感止まりになることがあります。

 

 そうならないように、お気をつけください。

 

 

 「うん、うん」とか、「わかるわかる」など、頷きが早かったり、理解が早すぎると、軽薄な空気がただよい、話し手は素早く察知します。

 

 

 「俺(私)の気持ち(悩み)が、そんなにサッサとわかるわけがないダロ! 頭悪いよ、コイツ! 話して損した!」

 

 

 と、イラつかれることになりそう。

 

 実際に、いろんな人に会っていると、ほぼパターン化されてくるし、メンタリティもタイプ別のように思えてきます。

 

 人間は人間でしかないのですから、似ていて当たり前なのです。

 

 だからこそ、丁寧に観察をして、違いに気づいてあげることが、コミュニケーションの醍醐味となる。

 

 人間の手には指が5本あるけれど、指の指紋は一人一人違うんだよね、みたいな見方をしてあげるのが大切なのです。

 

 

 ●鉄則(2)

 

 同情が良くない理由が、もう一つあります。

 

 同情の後には、アドバイスのようなものが付きがちなのです。

 

 

 「だったらこうしようよ」

 

 「変わらなきゃ、ダメよ」

 

 「やめちゃうべきよ」

 

 

 組織には、「より良くなるために変わりたい」と本気で思い、実行できるのは、全体の2割だと言われています。

 

 あとは、そう思わなくもないけれど、現状維持することに安心感をおぼえるのが6割、変わろうなんて発想もないのが残りの2割です。

 

 「2:6:2」の法則と言って、人間以外の生物でも、組織はこのようなバランスを築いていくそうです。

 

 ご興味のある方は、調べてみてね。

 

 

 そもそも私の本をお読みくださった方は、より良く変わろうとしている方が多いのだと思います。

 

 だから、相手も同じ考えだと、疑わないようなところがあるかもしれませんが、変わりたくない人がじつは8割を占めている!? そんな人たちに「変わろうよ!」と言ってしまうのは、共感とは真逆な行為ですよねぇ。

 

 

 また、心から変わりたい人は、ジッとなんかしていられません。

 

 

 「悩みはあっても、凹んでなんかいられない!」

 

 

 といった強さを感じさせますし、他人には促されない。

 

 いずれにしても、他人の背中は、押さないほうが安全なのです。

 

 

 ●鉄則(3)

 

 そんな私こそ、皆さんにアドバイスしまくりなわけですが、それを「良し」とした人が、私の文章をお読みくださっているということで、どうかお許しください。

 

 

自分を見失ってはいけない

 そして、最後にもう一つ、とても大切なことを言わせてください。

 

 前にも、言った気がしますが、常に忘れてはならないことです。

 

 

 「自分を守る」です。

 

 

 最初のほうに、「その瞬間だけは、相手と向き合ってみる」と書きましたが、一時のこと、と線を必ず引くように。

 

 

 人の心を旅するのです。

 

 ずっと、その人と旅を続けてはなりません。

 

 自分を見失います。

 

 

 相手も本来、道連れなんかには、したくないはず。

 

 常に「その瞬間だけ」をご一緒するのです。

 

 

 コミュニケーションはコンディションにかかっています。

 

 疲れたら、休む。

 

 調子が出ない自分も良しとする。

 

 下手にいっても、そんなこともある。

 

 

 自分にこそ、優しく、温かく向き合ってくださいね。