撮れたもの
このたびのコロナ禍により外出を自粛していた折、知人からショートメールが入った。
『当方の取り越し苦労ならよいですが』
この一文から始まる短いメッセージは、たった今奇妙なものを見たという報告であった。
しかも、防犯用のカメラにも撮れているとのこと。
このような話に映像証拠が出ることはめったにない。
報告が撮影時期から近ければ近いほどよいと判断し、急遽、本書にこの話を挿し込むことにした次第である。
知人の経営する会社の事務所内でのこと。
新型コロナの影響で全業務を停止していたが、溜まっていた事務仕事を消化できるいい機会だと一人会社に来て書類作業をしていた。
一時間ほど仕事をして、一息つこうとコーヒーを淹れてテレビをつける。
その時にデスクの角にぶつかって山積みの要確認書類がバランスを崩し、机上で大
書類が机から落ちる音、報道番組の音声、すべての音がこの世から消えた。
知人は身の危険を感じ、椅子に座った。
すると向かって左手の壁から、赤い光が現れた。
それは、すうっと事務所の真ん中を通っていき、向かいの壁に吸い込まれた。
その間、わずか数秒。
呆然と赤い玉の消えた壁を見ていると、すべての音が戻ってきた。
防犯用に設置しているカメラを確認すると、壁から現れて壁に消える赤い光がしっかり映っている。
日中の明るい照明の中で見る赤い光は異様であった。
見れば見るほど厭なものに思える。
ただの赤い光の玉が、なぜこんなに不快なのだろう。
繰り返し、再生して見るうちに、厭な理由がわかった。
赤い光が、成人の頭部と同じくらいのサイズだからだ。
人の頭部と同じ大きさのものが事務所の中を通り過ぎるのは厭である。
赤には警告の意味もある。
これはもしかして……すごくよくない映像なのではないか。
そうだ、彼に連絡してみよう。
――そして、私にショートメールが送られてきたという次第だ。
動画を見せてもらうことになったが、録画映像をショートメールで送る方法がわからないとのこと。後日、別の方法で送っていただくことになった。
それからしばらく連絡はなく、十二日後の午前六時十二分。ショートメールが届く。
要件は映像のことではなく、入院をしたという報告であった。
前回の私とのやりとりの後、まもなく下血したのだという。
本稿を執筆している今現在も知人は入院中である。
後に進展があれば、別の機会に記すつもりである。