横浜市のタクシー運転手・木浦さんから聞いた。


 ここ一年ほど、よく金縛りに遭うという。

「はじめは怖かったものですが、慣れって怖いですね。それが当たり前になっちゃうから、たまになかったりすると自分の身体が心配になったりするんですよ」

 だが、そうも言っていられなくなっているという。

 一カ月ほど前から、金縛りの質が変わってきたそうなのだ。

「それまでは意識はあるけど動けないという程度でしたが」

 今は全身を石膏で塗り固められるような拘束感を覚えるのだという。

 そして、その金縛りに遭っている間は、じっと凝視されているのだそうだ。

「数日前にもあって――」

 いつもは、いちいち報告などはしないのだが、視線が日増しに殺伐としてくるのを感じるので、金縛りのことを妻に話したのだという。すると――。

「それ、たぶん、お母さんだよ」

 妻にはここ一カ月ほど前から、気になることがあったという。

 寝室にある義母の写真の入ったフォトフレームの位置が、いつも動いているらしく、

「最近はお母さん、あんたのほうばかり向いてるんだよね」

 三年前に亡くなった義母は、フォトフレームの中で優しい笑顔を浮かべている。

 その笑顔の裏で、自分がどんな感情を抱かれているのかと思うと、不安でならないという。

「心当たりがないだけに、その感情が計り知れないんです。お義母さんの勘違いだといいのですが」

 ミラー越しに疲れた笑みを浮かべた。