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 富井さんは中学生の頃、自転車で派手に転んで左腕を骨折した。

 腕を吊った状態ではゲームのコントローラーもろくに持てない。家にいても暇なので同級生の佐久間の家へ遊びに行った。

 佐久間は団地に住んでいた。

 漫画やゲームの話をしていたら、気がつくと夕方になっている。「泊まっていけよ」と佐久間が言うので、そうすることにした。

 その日はなぜか疲れていて、話している途中でもうろうとする。

「先に寝ようかな」

「ベッド使えよ。腕がそれじゃ床はきついだろ」

「じゃ、お言葉に甘えて」

 富井さんがベッドに入ると、佐久間はドラクエをはじめた。

 目を閉じるがゲームのピロピロという音が気になって眠れない。

 すっかり眠気も飛んでしまって、ぼんやり天井を見ていた。

 ん?

 なにか、ある。

 窓側の天井に一段下がったような低い箇所がある。下がり天井といわれる部分だ。そこの横面にポストカードサイズのものが貼られている。モノクロ加工の写真でジャケットを着た男性が写っていた。

 全身写真で全体が小さい。寝た姿勢からでは顔がよく見えない。

 佐久間ではない。歌手か俳優だろうか。誰かのファンだという話は聞いたことがない。別にファンでもいいが、貼るならせめて女の子のアイドルとかにすればいいのにと思った。

 そんなことを考えているうちに眠ったようで夢を見た。

 夢の中でも佐久間の部屋だった。

 ベッドの中でゲームをしている佐久間の背中を見ている。

 テレビの横には、写真に写っていた男が立っている。

 男が佐久間を殺そうとしているのがわかった。


 目が覚めると、まだ眠ってから五分ほどしか経っていない。

 佐久間はゲームをしている。

 まだ夢と現実の間をふわふわしていた。

 あの写真が気になったまま眠ったから、あんな変な夢を見たのだろう。

 で、結局あれはだれの写真だったんだと天井の写真に目をやるが、やはり全体が小さくて見えない。

 近くで見ようと起き上がると、写真の横幅がきゅうっ、きゅうっと狭くなっていく。

 これはなんだと見ていると、写真は横幅がどんどんなくなって、棒のように細くなって消えた。

 写真が縮んで消えた――というより、小さい窓が閉まったように見えた。

 写真サイズの窓の向こうにジャケット姿の小さい人がいて、きゅうっと窓が閉まって壁から消えてしまった、そう見えたのだ。

 もちろんそんな窓は天井にない。写真があった場所は壁紙が破れ、めくれて舌のように垂れている。あれを写真と見間違えたとも思えない。

 ベッドの上に立って近くでよく見てみるが、とくに変なところもない。

「おまえなにやってんだよ」

 佐久間が声をかけてきた。

 小さい人が小さい窓から覗いていた――なんて真顔で話しても笑われるだけなので、さっき見た夢の内容を話した。

「なにそいつ。おれのことを殺すって言ったの? なにその夢」

 あきれたように笑う佐久間の表情がすっと真顔になる。

「おまえ、見たの?」

 佐久間は天井の低い箇所を目でさした。

 彼もたまに、そこで変なものを見るという。

「あれ、なんなの?」

「さあ、わかんない」

 見たから何かあるというわけではないから安心しろよと言われた。

 ところがその数時間後、佐久間の家のトイレを血尿で真っ赤に染めて、富井さんは病院へ担ぎ込まれる羽目となった。