楽屋で見たものは
元・地域密着型アイドルのエル子さんの体験である。
三年前、ある商業施設で催されるライブイベントにゲストで呼ばれた。
芸人やアーティストなども出演し、テレビのカメラも入る久しぶりの大仕事である。
出番まで時間があるので緊張しながら楽屋で一人待っていると、ちらちらとテーブルの上のお菓子に目が行く。デパートで売っていそうな菓子が大きなバスケットに山盛りになっている。他の出演者の関係者やスタッフからの差し入れだ。エル子さんはこういった差し入れがなによりの楽しみだった。
基本、楽屋にある食べ物は食べても持ち帰ってもよいので、どれにしようかなと鼻歌交じりで物色していたら、バスケットの底からプリントショップの袋が出てきた。
忘れ物かな。でもなんでこんなところに?
テープで封はされていないので中身を確認する。
家で撮られた家族写真のようなものが数枚。おもしろいものはない。
一枚、失敗している写真があった。
中高年っぽい服装の男女二人が顔を寄せ合っている。
光が反射したのか顔が真っ白になっている。白塗りの顔みたいで、表情もぼんやりとして、見ているとゾクリとした。
写真を袋に戻し、目につきやすいようにテーブルの真ん中に置いておいた。
男性マネージャーが戻ってきたので写真のことを話した。
「ちょっと怖い感じの写真があって引いちゃった」
するとマネージャーも見たいといって写真の入った袋に手を伸ばす。
バチッとなって、マネージャーが手を引っ込める。静電気である。
「おれ、拒否されてる?」
マネージャーは笑いながら再度手を伸ばし、写真を見た。
一枚一枚見ながら、首を傾げる。
「どれ? 二人で写ってるやつ?」
「そうそう、こっち見せないでくださいね」
「これかなぁ。なにが怖いの?」
写真をエル子さんに見せる。
先ほどの写真だったが顔は白くない。
「あれ? それじゃないですね。それと同じ写真で顔が真っ白になってるのがあるんです。死人みたいな感じの顔で」
「死人、死人……うーん、おんなじような写真はないけど」
楽屋の照明の反射ではないかとマネージャーは言う。
「ここのオーナーだね、こっちの人。一緒にいるのは奥さんかな。後で渡しておくよ」
イベントは盛況のうちに終わり、サイン会ではエル子さんのCDもたくさん売れた。
これまで出演したライブイベントの中で、もっとも思い出に残るような素敵な会場だった。またここで歌える日が来るといいなと心からその日が来ることを願った。
ちょうど一週間後、オーナー夫妻が亡くなったことをマネージャーから聞かされた。
急すぎて、はじめはなにを言われているのか理解ができなかった。
夫婦で亡くなったのなら病気ではないだろう。
なにがあったのかと聞いても、マネージャーは
その理由が、あの日に楽屋で見た写真と関係がある気がしてならないそうだ。