亡祭
昨年、ある神社の火伏せ行事を取材しに行った。
火の粉が盛大に舞う、豪快で躍動的な神事である。二十名ほどの代表者が火を扱った派手なパフォーマンスを見せるのだが、高齢の方から子供まで参加するため、危険のないように消防隊員が数人待機している。そのため、神社内は物々しい雰囲気であった。
二人のお孫さんと見に来ていた女性から、次のような話を聞いた。
「この行事は毎年見に来ているんですけど――」
猛暑で体調を崩してしまい、行けない年があった。
その日はずっと布団の中にいた。寝て起きてを繰り返すたびに夢を見るのだが、すべて火伏せ行事に行っている夢であった。
といっても、火の粉舞う神事を見るわけではなく、神事の前に行われる、宮司による
これは神事で火を扱う代表者だけが参加する儀で、参加者は男のみのはず。
なぜ、自分がここにいるのだろうと不思議であった。
隣には、よく話す近所の女性もいる。後ろには裏の家の奥さん。
他にもよく見る顔がいくつもあった。
皆、真剣な表情で宮司の祝詞を聞いているが、どうしてそうなったのか、両腕がぐにゃりと曲がっている。関節を無視して
隣の女性も、裏の家の人も、腕がぐにゃぐにゃだった。
自分だけ両腕がまともなので、どうにも居心地が悪い。
すると誰かが「てつだおうか」と腕をつかんで、雑巾のように絞ってくる。
あいたた、いたい、いたい。
どんなに痛みを訴えても、腕をはなしてはくれず、ぎゅうぎゅうと
夢から目覚めると、外はもう暗くなっていた。
腕にひりひりした痛みがある。
たった今まで誰かが掴んでいたように赤くなっている。
こわくなった。
夢の中で、だれが自分の腕を捩じっていたのか。
夢で見た顔を思い返していく。隣にいた女性は、その年の春に亡くなっている。裏の家の奥さんは昨年に亡くなっていた。
祝詞の儀に参加していた他の人たちも何人か思い出せたが、皆、ここ一年から五年のあいだに亡くなっている人ばかりであった。
「来年もこうして孫と見に来れるといいんですけど……」
今でもたまに、目覚めると腕がひりひりと痛む時があるのだという。