弟たち



 戦後、間もないころの話である。

 親からお使いを頼まれた昭仁さんは、三人の弟を連れて親戚の家へと向かった。

 まだ空は明るかった。

 家のまわりに舗装された道はなく、基本、どこもでこぼこしている。リヤカーの車輪がはまらないようにするためか、あちこちにトタンが敷かれており、その上を歩くとぼこん、ぼこんと音がした。

 たまに近所の子供がその上で飛び跳ねているのを見つけ、大人が激しく叱っていた。

 重みでへこむからトタンを避けて歩けと、昭仁さんも普段から親に口酸っぱく言われていたが、音がするのがどうしても面白くて、無駄に足踏みしたり跳ねたりしていた。

 この時はだれが言い出したか、『トタンの上だけを歩かなければならない』というルールができた。

「トタンからはずれたヤツは負けだ」

 昭仁さんを先頭に一列で行進する。

 ぼこん、ぼこんと音が連なる。

 昭仁さんがトタンからトタンへジャンプすると、弟たちもそれに続いた。

 途中から、なにかへんだなと思った。

 さっきよりも音がうるさく感じる。

 弟たちがなにかをしているのか。行進を止めて振り返る。

「おまえたち」そう言いかけて、言葉を失う。

 一人、多い。

 昭仁さんの後ろに四人いる。

 目で数えなおす。やはり多い。

 トタンを踏む音が増えて、うるさいと感じたのだ。

 だが不思議なことに、だれが弟ではないのかがわからない。

 そこには余計な顔もなければ同じ顔もない。

 みんな弟のはずなのだが、それでは数がおかしい。

 言えばきっと怖がるので、弟たちには言わなかった。

 親戚の家へ着く前に、トタンの音の数は元に戻り、弟も三人に戻っていた。