平日の昼下がり、日本の片かた田舎いなかに存在する図書館。

 特別混雑している訳でもないが完全に無人という訳でもない、そんな中ちゆう途と半はん端ぱな時間帯。

 本ほん棚だなで囲まれた読書スペースに、大量の本を積み上げて黙もく読どくする女子高生が一人いた。

 平日の昼間だというのに女子高生が学校に行っていない時点で問題があるはずなのに、誰だれもそこに女子高生がいる事に気付いていない。

 いや、もっと言えば、そこに人がいる事に誰もが気付いていなかった。

 気が付く者がいたなら、その女子高生の異様な光景に目を疑うはずだ。

 机に積まれた本には統一性が無い。文学だったり、画集だったり、絵本だったり、経済学だったり、ジャンルが多た岐きにわたっていた。

 だが、異様なのはそんな事ではなく少女の〝読み方〟の方であった。

 1ページずつ読み進めるのではなく、1ページ目から最後のページに飛んだり、また前のページに戻もどったりと忙せわしない読み方をしていた。

 もちろん誰もが前後を読み返す事はあるだろうが、彼女の読み方はそうではない。本文を読んでいたかと思えばいきなりあとがきに飛び、索さく引いんを調べたかと思えば裏表紙を見る。さらにそこから違ちがう本の表紙と、どう見ても文字を読んでいるようには見えない。

 文字ではない何かを読んでいるようだった。

 一連の奇き妙みような行動を終えると女子高生は小さな溜ため息いきを吐ついた。

「序章で燃え上がるはずの『後こう悔かいの火種』は四つ。うち三つは消されてしまいましたか……。なかなかやるようですね。でも今度はどうでしょう?」

 ぼそりと呟つぶやいた少女は机の上に鉛えん筆ぴつで円を描えがくと、その中心に縦に一本の線を引く。

 まるで、元は一つの物を二つに割るように。

 二つに分かれた円を眺ながめて、少女はニヤリと笑った。

「すでに起こってしまった諍いさかいに対して、はたしてどのように立ち振ふる舞まうおつもりですか? 『救世主』サマ」