男はだれしも一本の剣を持っている。

 それはの塊。獲物を探してギラつく獣性の凶器。

 勇気と憤怒にそそり立つあかがね

 いかなる苦難においても、剣をもって奮い立つのが男というものだ。

「平たく言うとチンポの話なんだが」

「そういう話は小声でするか地獄の底でお願いね?」

 給仕娘が氷竜のぶきもかくやの冷たいコメントを吐き捨てた。その背には翼がある。足にはかぎづめ。有翼人である。通りすがりに翼が気流を乱し、冷たい空気まで運ぶ。

 スタンクにしてみれば慣れきった冷感だ。

 余裕しゃくしゃくで木の杯をあおり、無精ヒゲをエールでらす。後ろめたさはない。どこにでもいる人間種の男として、当たり前の信念を語っただけだ。

「だがな、メイドリー。男は剣を持ってるが、女だって小さなナイフを持ってるだろ」

「そりゃたまにアンタたち刺したくなるけど」

「いや、そういう話じゃなくてな。具体的に言うとクリト……」

「地獄に落とす」

 給仕娘メイドリーのトレイ攻撃がスタンクの頭部に大きなこぶを作った。

 周囲が気の毒そうな目とあきれた目をくれる。ある者は左右一対の目。またある者は顔の中心に大きくひとつ。あるいは耳がとがっていたり丸かったり、全身獣毛に覆われていたり。

 ここは食酒亭。

 多種族のつどう異種混街の酒場である。

「いいかげん懲りましょうよ、スタンクさん……」

 たしなめるのは金髪へきがんれんな給仕娘、否、給仕少年。

 芸術家が舌なめずりでモデルにしたがる中性的美少年、天使クリムヴェール。

 光の翼でふよふよ浮かんで仕事にいそしむ姿は各方面の男女から好評だ。

「人前でそういう、その……あっちの剣の話は、せめて控えめな声でやってください」

「言っとくが一番ドデカいグレートソード持ってるのおまえだからな?」

「そ、それは関係ないでしょ!」

「正直、男としてあこがれすら抱くよ……そのグレートソードでいったい何人のサキュ嬢をアヘらせてきた? デカすぎて痛がられたりしないか? 何人ぐらい治療院送りにした?」

「してませんよ! 入らないひとは最初から入らないって言いますし、入るひとはみんなすごく良かったとか、お仕事忘れちゃうとか言ってくれて……」

 クリムは少々早口にまくしたてた言葉を、ふいに区切った。

 興味津々というまわりの目に、赤面。メイドリーの「ゴミが増えた」と言わんばかりの冷たい視線にぶるりと震える。

「う、ううぅ……スタンクさんのバカ!」

 純粋な美少年(非童貞)はふくれっ面で飛び去った。

「男なら巨根は誇れよ! あとエールおかわり!」

「うけたまわりましたッ!」

 返事はヤケクソめいた大声だった。

「あんまりクリムくんイジメないでよ。仕事が荒れたら困るし」

 メイドリーは半眼でスタンクをひとにらみ。

 水で満たした革袋をスタンクと同卓のきやしやな男に突き出した。

「ゼル、氷お願い。あとでり豆多めに盛ってあげるから」

「あいよ、ひようのうな」

 ゼルは尖った耳が特徴のエルフで、魔法を得手としている。

 じゆもんを唱えると革袋の水があっという間に氷に変わった。

 メイドリーは革袋を踏みつけて氷を砕くと、スタンクの頭に載せてきた。れあがったタンコブに冷感が染み渡る。

「これに懲りたらセクハラ全般控えるように」

「心配するな、相手を見てやってる」

「その基準がガバガバだから頭がそうなってんでしょ」

 スタンクにデコピンをして業務に戻る給仕娘メイドリー。

 彼女の残した氷嚢が心地よい。セクハラに暴力でこたえる武闘派給仕だが、相手の負傷をしっかり気遣える。いい女だ。だからこそ気軽にわいだんを持ちかけられる。

 もちろんメイドリーとて終始不機嫌なわけではない。むしろ普段はあいきようたっぷりの仕事ぶりで常連客に愛されている。明るい金髪と奔放に育ったバストも好評だが、後者は口に出すと殺意が返ってくる。そういったわかりやすい気質もスタンクは嫌いではない。

 気分のいい給仕。そこそこうまい飯。

 そして気の合う馬鹿が集まる食酒亭は気楽な憩いの場である。

「でまあ、かんの剣の話だが」

「懲りないな、スタンク」

「メイドリーに聞こえないようもうちょっと声落とそうよ」

 同卓のふたりが半笑いでたしなめてくる。エルフのゼルと、もうひとり。

 獣毛に覆われた耳に子どもじみたしよう──ハーフリングの成人男性、カンチャル。

 どちらも趣味をおなじくする同好の剣士である。この場合の剣士とは当然アッチの剣を持つ者であることは言うまでもない。

「でもな話、ぼつすると、こう、うおおおお! って感じの衝動がいてくるだろ? ほら、ちんちんがイライラするってやつ。凶暴性というか、オラッやったるぜって」

「その凶暴性が剣ってわけか。凶暴とまで言うとピンとこないが、思考が熱っぽくはなるな」

「ボクはちょっとわかるかな。女の子を家畜みたいにおとしめたくなる感じでしょ?」

「いやおまえはちょっとSっ気強すぎるんだよ」

 他愛ない雑談に花を咲かせる男一同。

 メイドリーが近くを通りすがるたびに冷たい空気が漂うが、気にしない。

 酒場で下品な与太話をしないで、いったいどこでするというのか。

「問題は──男の逸物は剣として、女のほうはどう表現するべきかだが」

 スタンクの問題提起にゼルとカンチャルは深く考えこむ。

「そうだな……剣をハメるんだからさやじゃないか?」

「でも鞘だと収まるのが普通すぎるというか、プレミア感がなくてグッとこないよ」

「攻撃性を向ける相手としてふさわしい表現が俺はほしいんだ」

 三人はしばし言葉を封じて思考にふけった。

 酒場のけんそうが右耳から左耳にするりするりと抜けていく。真剣だった。

 どうでもいいことほど真剣になるのが人生を楽しむコツだ、とは二○○歳のエルフの言。

 沈黙を破ったのは、人間基準では若者にしか見えない二○○歳のゼル。

「──怪物Monster

 長命種の一言に短命なる人間とハーフリングは目を見開いた。

「それだよ、ゼル! 怪物、モンスター!」

「女はその身に怪物を宿してる……! たしかに女ってそういうとこあるよね!」

「言いにくいことだが、メイドリーを見て思いついた」

 なるほど。たしかに彼女は暴力という名の怪物をこぶしに宿す女である。

「あいつの攻撃、殺意が強すぎるよな。まだタンコブいてぇ」

「でも激情家はあっちも情熱的って言うよね」

「目つきは氷属性だが、ベッドに入ると火属性……いや、ある意味水属性で濡れ濡れか」

「へへっ、ずいぶんと可愛かわいらしいモンスターちゃんだな、メイドリーめ」

「ボク的には前のモンスターより後ろのモンスターのほうが弱いタイプだと思う」

「有翼人は無精卵をちょくちょくひり出すから母性が強いって話もあるぞ」

「モンスターにだって情はあるってことだな」

「ふうん。だれがモンスターですって?」

「そりゃおまえ、食酒亭のアイドルであらせられるメイ……」

 スタンクは言葉を飲みこんだ。

 背後に世界の終末じみたおぞましい気配が立ちこめている。

 目配せで仲間たちと示しあう。おまえが言い訳しろ、いやおまえが、いやいやおまえが。

 やがて意を決し、作り笑いで振り向くのはスタンクだった。

「メイドリーのまたは怪物的に可愛らしいだろうなって話してた」

 怪物は狂乱した。


 スタンクが肌をさらせば、見事に鍛えあげた肉体にきずあとがいくつも刻まれている。

 大半は冒険で得た名誉の負傷だが、残りは女という名の怪物につけられた勲章である。具体的にはメイドリーの仕業。

「この傷、痛かった?」

 女はハチミツのように甘い声で問いかけてきた。

 ベッドであおけのスタンクにしなだれかかり、優しい指遣いでほおの擦り傷をでてくる。

「いぢッ……ああ、痛かった。いまもまだ痛い」

「ごめんなさい……ひどいことしちゃって」

 いたわりの指先が動くたび、背中の翼も連動して震える。

 けれど、目が笑っていた。心配するというよりも、男の痛がる姿をたのしむ表情。

 たわわな乳房を厚い胸板に擦りつけてくるのは、男を怒るに怒れなくするこうかつさか。

「ここも痛そうに赤くなってるわよ?」

 次いで指先がねらうのは胸板の端。男の小粒な乳首を爪で軽く引っかく。

「くっ……!

「痛い? やめたほうがいい? ねえ、どうなの、スタンク?」

「い、いや、そのままつづけてくれ」

「はぁい、乳首ちゃんかわいがってあげるね」

 まぶたをなかば降ろした悪戯いたずらな表情に、スタンクはぞくりと心地よい鳥肌を立てた。

(男の扱いに慣れてやがるな)

 乳首を引っかいて充血させると、今度は指の腹で優しくさする。胸の先に甘ったるい熱が生じて体が震えた。男であっても乳首は性感帯なのだ。

「うふふ……男のひとが気持ちよくなって、快感に支配されてる感じって、かわいくて好きなの。だから、ね? もっとよがってくれるとうれしいなぁ……ちゅっ」

 女は乳首に吸いついた。快美なるしびれがスタンクの胸からせきついへ駆け抜け、背筋が反る。

 止まらない。ちゅうちゅうと吸ってくる。

 吸引しながら舌先でくすぐり、時に歯であまみ。

 指でもうひとつの乳首を責めるのも忘れない。

「ふぅ、効くぅ……! いつもこれぐらいスケベに奉仕してくれたらいいのになぁ」

 やはりメイド服にはご奉仕が似合う。

 スタンクは彼女の頭を撫で、明るめの金髪をかきあげた。

 そこにはいつものはつらつ笑顔も、冷淡なけいべつ顔も、憤怒の形相もない。

 あるのは、男とのむつみあいに頬を赤らめて執心するメスの顔。

「本当はエロいこと大好きないんらんのくせに……なあ、そうだろ、メイドリー?」

「んちゅうぅう……ぷはっ、うふふ、バレちゃった?」

 有翼人の給仕娘は口と乳首をつなぐえきの糸を舌なめずりで巻き取った。

 酒場では絶対に見せることのないいんとうな目つきで小さく笑む。

「食酒亭の看板娘メイドリーはぁ、男だぁいすきなスケベ女なのでしたぁ、うふふ……そっちこそ、すっごくスケベな形してるじゃないの……」

 彼女の見下ろす先で、性戯の剣がたくましくそそり立っていた。

「ああ、それなりに自慢の業物だ」

「反り返ってて、エラが張ってて……ごくっ」

「そんなに気になるなら触ってみろよ」

 彼女の手首をつかみ、肉の剣に誘導した。

 さんざんスタンクを殴ってきた手が、おっかなびっくり剣身に触れてくる。

 ビクンッと剣が跳ねた。

「うわぁ、元気すぎ……女殺しの妖刀的な?」

 酒場では絶対に言わないような軽口をたたいて、メイドリーは妖刀を握りしめた。

 ちゅこ、ちゅこ、と柔らかにしごき、先端から垂れ落ちてきた先走りを塗り広げる。

「球体関節に砂んだ人形みたいにビクビクしてる……ちょっと怖いぐらい」

「息がどんどん荒くなってるぞ? そんなに怖いのか? ん?」

 メイドリーの呼吸は乱れ、小さなあえぎをともなっていた。肉剣をしごく手もテンポをあげていく。奉仕のためというよりも、触り心地を確かめたくてたまらないといった手つきだ。

「ねぇ、スタンク……もっとしてほしいことない?」

 男を惑わす悪戯な表情も薄れ、いつしか物欲しげな切ない表情になっている。

 海綿体に響く表情だ。股の剣がグッと持ちあがる──が。

「そうだなぁ。まずはそのデカパイで俺の剣を研いでもらおうか」

「ええー? べつにいいけどぉ……」

 メイドリーは物足りなげに唇をとがらせるが、手つきにちゆうちよはすこしもない。

 ブラウスのボタンを外していくと、

 ばるんっ!

 飛び出した乳房が肉剣を押しつぶした。

「おっ、いい重さ」

 少々ひんやりしているが、ワクワクするような重量感だった。

 と思っていたら、冷たい粘液が柔乳にぶちまけられた。

「無菌培養スライムから採取して加工した特製ローションでーす」

 おっぱいに粘液がみこまれ、満遍なく行き渡る。その作業は同時に、男の逸物を谷間に迎え入れる準備でもあった。

 重たくて柔らかくて粘つく峡谷で肉剣は快楽に打ち震える。

「くうーッ、やっぱデカ乳は挟むためのもんだよな……!」

「ふーん、スタンクって私の胸そんな目で見てたんだ?」

「見ないと失礼だと思ってる」

「やっぱりスタンクって最低よね」

 メイドリーは半眼になるも、その視線は冷たいどころか熱をはらんでいた。

 口元には悪戯な笑みまで浮かんでいる。

「さいてー男のさいてーなガチガチ棒……はぁ、さいこーにステキ」

 胸に手を添え、ゆっさゆっさと揺らす。

 雄肉は摩擦を受けるたびに硬度を増すが、相手は不定形の双球。斬れども突けども傷つくことはない。ただただ摩擦感に愉悦が高まっていくばかりだ。

「おッ、おッ、いきなり攻めてくるな……!」

 縦横無尽に弾む乳肉の脅威に、スタンクは腰を持ちあげて胴震いをした。

 初戦なので気合いが持たない。震えは胴から股に広がっていく。

 だがそれは同時に、密着した女にも刺激を与えるもろの剣である。

「んっ、はぁ、あぁ、ビクビクンッてしてる……出しちゃうの? びゅーびゅーしちゃう?」

 出してほしくてたまらない、というとろけ顔だった。

 乳揺れが小刻みになっていく。敏感な剣先を集中してこする動き。

 彼女も望んでいるのだ。スタンクの最後の一撃を。

「ふぅ、ふぅ、出すぞッ、メイドリー! おまえがヘンタイと見下して散々殴ってきた男のお下劣汁で汚れちまえ! らえいッ!」

 股にこめていた忍耐力を一息に解き放つ。

 鋭い絶頂がスタンク自身を貫いた。

 たまらない充実感とともに放つ、しやくねつの男剣汁。それは谷間を瞬時に満たす。

「あんッ、熱いッ……! えっ、うそっ、すっごい勢い……!」

 柔らか地獄からびゅるると飛び出す白濁色。

 男の憤怒と尊厳と、あと助平心を濃縮した攻撃は、彼女の口元をたしかにとらえた。

「はぁ、粘っこい……ぜんぜん切れないし……」

 彼女の口元と乳房を粘液が橋渡ししている。途切れる様子はない。タフな種汁だ。

「男汁の似合う顔しやがって……! うっ、こりゃまだ出るわ、おふッ」

 スタンクはこうよう冷めやらぬまま、肉剣の快感をたっぷり味わった。

 噴出が収まっても快感の余韻はつづく。精神的な充実感はどこまでも大きい。

 ──あのメイドリーを汚してやった!

 しかも彼女はますます物欲しげに顔をゆるめている。

「ねえ、スタンク……まだまだ硬いよね、これ」

「してほしいことがあるなら礼儀正しくおねだりしてみろよ、メイドリー」

 彼女の金髪を乱暴に撫でる。酒場でこんなことをすれば殴られてもおかしくない。

 だがいまの彼女はしおらしくうなずく。

 胸を開いて男剣を取り出し、汁汚れもいとわずに、ちゅっ、とキスをした。

「スタンク……して?」

「なにをしてほしいのか、もっとわかりやすく」

「あぁん、意地悪ぅ」

 鼻にかかった甘える声。男剣に舌をわせ、まとわりついた液をすすり取る。

 口内に取りこんだ白濁をわざわざ見せつけてきた。

「これぇ……このどろどろのやつ、メイドリーのなかにちょうだい……?」

「もう一声!」

「ワガママですねお客さん」

「素に戻らないでくれ。頼む、ここは乗ってくれ」

「でしたら──こほんッ」

 せきばらいひとつ。

「ねぇん、スタンクぅ~」

 トロトロあまあまなび声。扇情的な上目遣い。

 柔らかなしりをよじりながら、背中の翼をふりふりする。

「おねがぁい、スタンクぅ……この硬くて熱くてたくましい立派な剣で、メイドリーのお股のドスケベ怪物モンスターをめちゃくちゃに退治してぇんっ」

「よっしゃッ! その依頼は俺に任せろォ!」

 スタンクは勢いづいてメイドリーを押し倒した。

 男のが全身の血潮を熱くする。

 彼女がみずから股を開いて怪物をあらわにすれば、もはや闘志は爆発寸前。

 スタンクの戦いはまだこれからだ!


 スタンクの戦いは終わった。

 えいやえいやと必殺の腰遣いで三回も退治してやった。

 心地よい気だるさに身を委ね、となりに寝そべるメイドリーの尻を揉む。

「ふぅ……思った以上に燃えたな」

 男女の関係ではない顔見知りを剣のさびにした。その感覚に酔いしれる。

 背徳感はときに性衝動を何倍も激しく燃えあがらせる。

 酒場でメイドリーの顔を見るのが楽しみだ。「澄ました顔してとんでもないドスケベ怪物飼ってやがるぜグヘヘ」と心で下卑たい。

 隣の彼女はやおら身を起こし、自分の股に手を伸ばした。

「そろそろお時間ですね……ちょっと待っててください」

「なにしてんの?」

「当店のサービスです」

 ずぽん、と筒状の物体がまたから取り外された。どろりとスタンクの必殺汁がこぼれ落ちる。

 うねうねとうごめく芋虫じみた代物を、彼女はみずおけで丹念に洗浄した。

 水気をタオルでくと、スタンクに手渡してくる。

「どうぞ、今回使用したマジホはお持ち帰りください」

「……そりゃどうも」

 マジホとはマジカルホールの略称である。

 軟質素材に伸縮吸引などの単純動作を魔法で仕込んだ魔法生物の一種。

(まあ、中古マジホを次の客に使うわけにもいかないだろうしな)

 かんのマジホにかぎらず、彼女のしんたいパーツはすべて仮初めのものにすぎない。

 みだらに振る舞った女の魂は、取り替え可能な核にだけ宿っている。

 男が思うままに作り物のパーツを組みあわせ、自分好みの女体を作りあげる──そして個室で男女の戦いに挑む。そんな趣向が存在するのだ。

 かおみにうりふたつの彼女は、服を着ると深くお辞儀をした。

「ドール・パペット・ゴーレム専門店、性のマリオネットを今後ともごひいきに」





 酒場の壁に貼り出された紙に男性客が群がった。

 食酒亭名物、サキュバス店レビュー。

 淫魔サキユバスの血を引く(と自称する)女性が合法的に交歓を提供する大人の社交場。多種族入り乱れるこの世界においては、そういった店も多種多様である。

 店に興味はあるけど自分と相性の悪い種族だったら怖いから参考にしたい、などという気後れボーイはもちろん、単なるエロ話として愉しむ者もいる。

 写しが売れればレビュアーに報酬が入る。

 スタンクたちは趣味のサキュバス店通いと小銭稼ぎを両立しているのだ。

 エロ話で稼いだ金で今日もうまい酒を飲めた。

「さすがにメイドリーのそっくりさんを作ったとは書けなかったな」

 声量を最小限に絞って言う。

 ゼルとカンチャルもメイドリーの動向を横目に確認して声を潜めた。

「知られたら鈍器じゃすまないぞ。まず間違いなく刃物が出る」

「ベッドではヒィヒィ言ってたくせにね」

 三人でゲヘヘと笑う。

 店に向かった四人は全員、メイドリーそっくりの人形と一戦ぶちかました。

 今回の大殊勲はカンチャル。人形のカスタマイズは自由度が高すぎる反面、組みあわせが非常に難しい。メイドリーの外見を再現できたのは小器用な彼のおかげだ。

 なお、一度作ったボディはデフォルト人形として店に並ぶ。自分では組み立てられないので有りものを選ぶ客も多いのだという。

「今後もあいつそっくりの人形がいろんな男に抱かれると思うと……」

「申し訳ないが変なテンションになるな」

「あの人形抱いた客がここに来たらビックリするよね」

 ゲヘヘ、ゲヘヘ──と、笑っていられるのは、その瞬間までだった。

 肉をつぶし骨を砕く物騒な音が酒場の一角から聞こえる。

 そこに倒れ伏すのは光の翼を背負ったれんなる天使の少年、クリムヴェール。彼もまた《性のマリオネット》に同行した仲間である。

 かたわらに立つのは、メイド服の怪物モンスター

 狭い酒場で翼を全開にするのは威嚇のためか。

 殺意に見開かれた目が、ゲヘゲヘ三人組を捉える。

「おい……何作ったのかちょっと詳しく聞かせろ……お前ら……」

 両手に持った包丁がけんのんに輝いた。


 この物語は股間に正直な男たちが剣一本で怪物と戦う冒険たんである。

 なお、怒りのメイドリー(本物)には三人そろって完敗した。