エピローグ


 大魔王との決戦から、三日──

 やっと、魔除けの結界が再構築された。

 ガルフォードは勝利宣言を出し、街は歓声に沸き返る。

 日が沈んでも、興奮は覚めやらぬ様子だった。この調子だと、本当に一ヵ月くらいは、祝宴をしているのではないか?

 それも納得できるほど、大変な戦だった。犠牲者も、少なからず出た。

 生き残った者は、死んだ者のぶんまで生きなければならない、と云われている。

 ディアヴロは〝死んだ者たちのぶんまでダラダラしよう〟と心に決めた。

《安心亭・隠れ家店》

 今日も一日、ディアヴロはベッドの上でゴロゴロしていた。

 もうHP生命力MP精神力まで回復し、疲労感も抜けている。

 ただ、なんとなく、ダラッと過ごしていた。

 ──ああ、怠惰な日々、さいこぉぉぉ!

 何もしない無為な一日は至福。

 この為に生きてるな、とさえ思った。

 サイドテーブルに置かれたいちごをつまみ、ティーカップに残った紅茶を飲み干し、またベッドに横になる。

 目を閉じると、ぼんやりとした眠気が降りてきて……


「ディアヴロ」

 名前を呼ばれた。

 んん?

 既視感。前にも同じことがあったような気がする。

「……起きてください、ディアヴロ」

 レムの声だ。

 目を開く。

 視界に飛びこんできたのは──

「なあああっ!?

 間違いなくレムだった。

 ただし、その服装は、目のやり場に困るような大胆なもので。

 ウェディングドレスのように白い。ただし、普通の下着よりも肌が透けていた。全裸よりは隠れているのだが、むしろ全裸よりも視線を引きつけて離さない。

 寄り添うように、シェラもいた。

 こちらは、胸のボリュームのぶんだけ、さらに凶悪だ。

 透けた服装の内側で、ゆさりゆさり、と巨大なふくらみが揺れる。

 ベッドの上で膝立ちになって、ぐぐっと迫ってくる。

「ディアヴロ♡」

「な、なにしてる!?

 ──これは夢ではないのか!?

 シェラの手が、ディアヴロの膝に乗せられた。

 その感触のリアルさに、夢などではない、と確信する。幻覚でも、妄想でもない。

「レムも、お嫁さんにしたんだって、ディアヴロ?」

「うっ……!?

 本当はもうすこし段取りをつけたり、タイミングを計ったりする予定だった。

 先にシェラに相談するとか。

 モディナラームのせいで、あの状況で渡すしかなくなってしまったのだ。

 だから、俺は悪くない。

 レムがつぶやく。

「……重婚は、リフェリア王国では認められていません」

「うっ!?

 考えてみると、MMORPGクロスレヴェリでも、重婚はできないシステムだった。

「しかし、ディアヴロはグリーンウッド王です。あちらの国では、許されているのでしょうか?」

 その疑問に、シェラが首をかしげた。

「どうかなー? 誰もやってないから、わかんないや」

「むしろ、ディアヴロが決めることができるのでは? 国王ですから」

 レムの言葉に、シェラがうなずく。

「そうだねー。国王だし」

 ディアヴロは不安になる。

 ──国王になって最初の政策が〝重婚の許可〟って、暗愚すぎませんかね?

 内政を任せている大臣ドュランゴや、シェラの母親(おうたいごう)が、何と言うか。

 シェラが金色の髪をかきあげる。

「ま、法律とかどうでもいいや」

 いいのか!?

 レムまで同調する。

「……そうですね。どうでもいいことです。ディアヴロ、聞けば、あなたはシェラと……その、アレを……ちゃんと済ませていないそうですね?」

「あー、えー」

 ディアヴロは視線が泳いでしまう。

 シェラがほおを膨らませた。

「任せておけって言ったのに」

 正直、すまんかった。

 レムが頰だけでなく首筋まであかくする。

「……そこで、わ、わたしも含め……いっぺんに、その……既成事実を……いえ、正しく関係を築いておくべきではないか、という結論に至りました」

 至ってしまったのか。

 思考の過程が気になるところだった。

 シェラが前に出てくる。

「まぁ、難しいことはいいから、しよ? ちゃんと、しよ? なに、するの?」

「……はじめは、キスです」

「詳しいね、レム?」

「……言っておきますが、実践経験はありませんよ?」

 レムの手が、ディアヴロの肩に置かれた。

 やんわりとだが、二人の手により、身体の自由が奪われる。

 彼女が耳元でささやく。

「……ディアヴロがいけないんです……待っていたのに、この三日間、部屋にも来てくれないなんて」

 シェラがうなずいた。

「そうだよ、ディアヴロがいけないんだよ。ちゃんとしてなかったって、あたし知らなかったんだから」

「わ、我は……忙しかったゆえにな!」

 ベッドでゴロゴロするのが忙しかったのだ。

 決して、人間関係が面倒くさくて避けていたわけでは……

 左に視線を向けると、レムと目が合う。ひようみみがピピピっと動いた。

 右に視線を向けると、シェラのおっぱいが視界を塞ぐ。

 ──これは、もうダメかもしれない。

 理性が。

 ディアヴロの口元へと、二人の少女たちが唇を寄せてくる。

 レムもシェラも、いつもより呼吸が荒くなっていた。

 二人の唇が……


つづく