アムロは、店の奥の席で硬いパンと水だけの食事をとっている。そこにジオン兵が入口から入ってくる。緊張するアムロ。そこでアムロの目に映ったのがハモンだ。屋外の強い光でホワイトアウトした背景に、スカーフを脱ぎながらハモンが入ってくる。このとき、ハモンはちらと進行方向とは違うほうに視線を送ったように見える。
 カメラを切り返して、カメラはアムロにT.U.(トラックアップ、被写体に接近するカメラワーク)していく。これは〝ハモンの見た目(ハモン自身の視線)〟の表現で、実時間以上に長いT.U.の間が、ハモンがアムロに注視している印象を与える。そこでさらに切り返して、ハモンのアップになると、ここで彼女は目を細め、少し笑ったように描かれる。
 ハモンは、自分たちが食事するのに合わせ、アムロにもおごろうとする。これに対しアムロは、ハモンたちの座るテーブルの近くまで移動して、自分は乞食ではないので理由もなくおごられるいわれはない、と断る。この時のアムロは、ハモンと視線の見交わしで生まれた〝線〟に導かれるように、店奥の自分の空間を出て、ハモンたちのいるテーブルの空間へと足を踏み入れたのである。
 しかしその度胸がかえってラルに気にいられ「俺からもおごらせてもらうよ」といわれてしまう。このとき画面は、ハモンの後頭部を画面左側にナメて(後頭部越しに)アムロを捉え、画面右側にはラルが立っている。アムロは画面の中で、ハモンとラルに挟まれた形となり、アムロがこのテーブル周辺の空間から出るのが難しくなっていることが視覚化されている。

 この膠着状態に変化を与える存在が、食堂の入口から新たに入ってくる。脱走したアムロを探しにきたフラウ・ボゥだ。ジオン兵に捕らえられたフラウが入口に姿を見せたことで、新たにテーブル近辺の空間と入口の間に線が生まれ、今度は、こちらの線上でドラマが発生する。
 フラウをよく見るため、入口まで移動するラル。緊張するアムロ。ハモンのほうを振り返ったラルの視線とアムロの視線が正面でぶつかり合う。ここから、それまでの「囚われた状態」ではなく「アムロ対ラル」を印象づけるカットが続く。
 アムロの困った様子に気がついてハモンが助け舟を出す。「その子、この子のガールフレンドですって」。それを聞いて、ラルは入口からテーブル近くのアムロの前まで戻ってくる。ラルがマントをめくりあげると、アムロはそこで拳銃を握っている。この緊張感がもっとも高まるくだりは終始ラルの視線とアムロの視線がぶつかり合う状況で進行している。この視線のぶつかり合いは、テーブルと入口を結ぶ線上で発生している。
 拳銃を見たラルは「いい度胸だ。ますます気に入った」といい、「しかし、戦場で会ったらこうはいかんぞ」とアムロを送り出す。こうしてアムロは、フラウと一緒に入口から出ていく。