その町で、百歳を超える長寿者がでたのは、はじめてのことであった。新聞記者が、それを記念した記事を作るため、老人の元へ取材に赴いた。

「あなたがこれほど長生きできた秘訣は何ですか? これまでに病気などで、命の危機に直面したことはなかったのですか?」

 老人は、遠い過去の記憶を掘り起こしながら答えた。

「大きな病気は、生まれてから一度もしたことがないのぉ。

 ただ、命の危機と言えば、一度あったなぁ……もう八十年も前のことになるが、この町で、連続殺人事件が起きたのは知っているか?」

 その事件は、この町の最も忌まわしい歴史で、十人以上の尊い命が犠牲となり、また、命は奪われなかったが重傷を負った、という者もいた。

「もちろんです。結局、犯人は捕まらなかったんでしたよね。まさか、おじいさんは、あの事件で重傷を負った……」

 老人は、さえぎるように言った。

「逆じゃよ。一度、容疑者リストに名前が挙げられたみたいで、警察に調べられたことがあったんじゃが、なんとかごまかしたんじゃ。

 ワシが犯人だったのにな。

 あそこで逮捕されていたら、間違いなく死刑だったじゃろうな。ポンコツな警察で命拾いしたわ。イヒヒヒヒ」