怒号と花瓶が割れるような音が、同時にパーティ会場に響いた。

 広間の中央には、腰を抜かした男と、立ち尽くす男、そして、バラバラに砕け散ったつぼの破片。使用人が、すばやく壺の破片を片付ける。

 事件は、腰を抜かした男が、パーティの主催者である富豪を罵倒したことがきっかけで起こった。

 ──数十分前、酒に酔った男が、富豪にからんでいた。

「あんたは、貧乏人から金を巻き上げる泥棒だ! この家に飾ってある美術品も、その高価そうな壺だって、全部、他人から盗んだんだ!」

 それを聞いた、富豪が思わずかっとなって、「高価そうな壺」を振り上げ、酔った男の頭に、叩きつけたのである。

 酔った男が後ずさってつまずいたことで、壺は、男の頭ではなく、床に当たって、粉々に砕け散った。

 富豪は、自分がかんしゃくを起こしたことを深くびた。すっかり酔いのさめた男も、自分の暴言を反省した。


 パーティが終わったあと、富豪は後悔した。

 あの男が、自分のことを泥棒呼ばわりしたのは、たとえ話であって、本当に泥棒だと思ったわけでは──自分の正体に気づいたわけではなかったのだ。

 うっかり飾ったままにしてしまっていた盗品の壺を指さして、「盗んだものだ」などと言うから、急いで証拠隠滅のために、壺を叩き割ってしまった。

 今度、あの男の家から、壺と同額の宝石でも盗んでやらないと気がすまない。