[スケッチ]大切な人形
五歳の誕生日に、両親からプレゼントされたのは、
母は笑顔でわたしに言った。
「妹だと思って、この人形を大事にしてね!」
わたしは、その人形が気に入って、いつも、その人形と遊んだ。ただ、力の加減のわからない子どもだったから、人形の身体の一部が傷んだり、ドレスがほつれたりすることはしょっちゅうで、そのたびに母に修繕してもらっていた。
母は、少し怒りながらも、人形を直してくれた。
ある日、人形を乱暴に振り回したせいで、人形の首の部分がとれてしまった。
わたしは、泣きながら母に、人形を直してくれるよう、お願いした。
一時間後、庭で何かをしていた母が、わたしを呼んだ。落ち葉を集めて、たき火をしていたようだ。
母が、手に持った箱をわたしに渡し、悲しそうに言った。
「お人形さんに、お別れを言いなさい」
箱を開けてみると、そこには、まだ首がとれたままの人形が収められていた。
意味がわからず呆然としていると、母が、奪うようにして、わたしから箱をとり、そのまま、たき火の中に箱を入れ、燃やしてしまった。
わたしは、突然のことにわけがわからず、泣きながら母に抗議した。母は言った。
「妹だと思って大事にしなさいって言ったわよね。腕や足が、少し傷ついても、人間は死なないけど、首がとれてしまったら、人間は死んでしまうの。これは、お人形さんのお葬式よ」