あなたは、うす暗い闇の中に立っています。

 おぼろげながら見える道は直線で、あなたの身体程度の幅しかなく、その道は、高いところにあるようにも感じます。

 時折、いくつかの道がまじわり、あなたは進む方向を選ぶことができます。

 つまり、建築中の高層ビルの、むきだしの鉄骨の上をあなたは歩いているとイメージしてもらえればよいかもしれません。

 あなたがゆっくりと進んでいると、一人の男が、その鉄骨の上に座り込んでいます。それはまるで、あなたが進むのを邪魔しているようにも見えます。


「で、その鉄骨と俺に、何の関係があるの?」

 歩道に大きなスーツケースを置いた男は、不満げにそう言った。

 紳士は、やわらかい口調で男に言った。

「鉄骨とキミの間には、何の関係もないさ。でも、ちょっとだけ想像してほしいんだ。向こうから歩いてくる、白い杖をついたあの人にとって、点字ブロックの上に大きな荷物を置いているキミは、さっきの話の中の、鉄骨の上に座り込む男に思えるんじゃないかってね」