皇都到着
無事に
俺以外の冒険者たちは
やはり救国の英雄というネームバリューがあるのは大きい。それに冒険者とはいえ、ルネット帝国では侯爵という上級貴族でもあるので、冒険者ギルド職員も商業ギルドの面々も文句を言うことはない。
それどころか、今回の妨害について、商業ギルド本部、冒険者ギルド皇国本部にも苦情を言うと息巻いていた。
下手をすれば、ジェネレート王国から冒険者ギルド自体を撤退する可能性さえ匂わせるほど、ギルド職員は怒っている。
まぁ、傭兵団にあれだけ言われ、斬られたのだからその言い分はよくわかる。
回復魔法があったから事なきを得たが、場合によってはそのまま命を失う可能性さえあったのだから。
「それにしても、傭兵契約を簡単に破棄して大丈夫なの?」
俺の質問に四人は少し悩んでいたが、アオイが大きく
「えぇ、それに関しては問題ないかと。ただ……今回のことは他の傭兵団にも少なからず情報は回るはずです。私たちの傭兵団は四人だけでやっていたので、今後、他の傭兵団からの助っ人要請は見込めないかと……」
「そっか……。よければ四人で帝国に来てもいいんじゃないかな? 傭兵ギルドはないけど、冒険者ギルドは充実しているし、四人で活動しても問題ないはずだよ。国が変わるし、冒険者ギルドでも最低ランクからのスタートになるとは思うけど……」
「それは問題ありません。四人で活動できるならどの国でもいいですし。護衛や戦闘なら他には負けませんから」
「そうそう。私たち四人でも他の大人数の傭兵団とやり合えるくらい強いしね! トウヤさんにはレベルで勝てる見込みもないけど……」
アオイの言葉にサキも口を挟んでくる。
さすがにPWOについての細かい話はルミーナもいるし、ここではできない。
当たり障りのない会話をしているうちに、皇都が見えてきた。
門での検査もすぐに通り、俺たちは商業ギルド本部の前で片道分の護衛任務の完了印をもらう。
しかし、すぐに解散にはならなかった。
「トウヤさん、あとハイスクール傭兵団の皆さん、少し話を聞かせてもらっていいですか」
商業ギルドの受付嬢に声を掛けられて、俺たち五人は応接室へと通される。ルミーナには先に宿をとってもらうように頼んでおいた。
応接室といっても、二〇名ほどが会議を開けるくらい広く、その一角に俺たちは座る。
「すみません、すぐに人が集まりますので、それまでこちらでゆっくりとしていてください」
数分待つと、会議室にぞろぞろと人が入ってきた。中には皇国まで同行したギルド職員に商人までいる。
全員が着席したのを確認した、中央に座る男性が一人立つと、上座に座っている数人が立ち上がる。
「まず、今回の護衛任務において、代表者であるキサラギ侯爵に謝罪したい。申し訳なかった」
謝罪をした男性に合わせて全員が頭を下げる。
「……謝罪は受け入れます。しかし今回の件について説明していただかないと、同行した冒険者たちにも説明がつきません」
「あぁ、そうだな。まずは自己紹介しよう。わしは皇都の商業ギルドをまとめている。ジッパーニという。端から冒険者ギルドグランドマスター、傭兵ギルドグランドマスター、そして他国との外交を担当している枢機卿様だ」
このシファンシー皇国の政治体制については帝国にいた時に事前に聞いている。王族などはおらず、代わりに教皇がおり、その片腕として数名の枢機卿、司教や司祭などがおり国を運営している。また、国の体制としては自由度が高いため、各国にある商業ギルドや冒険者ギルドの総本部が置かれている国でもある。
ということは、ここにいるのは商業ギルド、冒険者ギルド、傭兵ギルドのトップということか……。
各自の紹介を聞いた隣に座っている四人組は緊張した表情を浮かべている。
俺は前世も含めて社会人を経験しているし、この世界に来てから皇族含めて相手をしてきたから問題はないが、元高校生にはこの面々を相手にするのは
あれだけ馬車で元気だったサキなど、一番縮こまっている。その中でまとめ役だけあるのか、アオイはしっかりとしている。
同行した冒険者ギルド職員が今までの経緯を説明していく。
特に間違ったことを言っていないので、口を挟まずに説明を聞いた。
「……そうか。わかった。それで傭兵ギルドからは何かあるか?」
「はい、大まかに聞いている中ではあっているかと。しかし依頼者からは皇国では非合法と言われるものを秘密裏に運び入れるのを阻止するようにと依頼されたと聞いております。まぁ、ジェネレート王国の貴族から直接依頼を受けたことに舞い上がった傭兵クランがやらかしたことです。それ相応の処罰はするつもりです。……それで君たち四人は傭兵クランと直接契約を交わしている。なぜ、簡単に破棄し、キサラギ侯爵のもとに下ったのだ? 君たちはここ一、二年で、皇国でも少人数精鋭の実力派と言われるクランになったはず」
傭兵ギルドのグランドマスターは元傭兵なのか、鍛え上げられた身体に鋭い眼光で四人を
グランドマスターからしても、初対面の
「そ、それは……」
アオイも言葉を詰まらせる。
ここは助け船を出さないといけないな。
「それについては、ここの四人は俺と同郷なのです。直接の面識はありませんが、俺の武器を見て気づいたみたいですね。同郷の結束は固いですから」
「えぇ、そうです。それに私たちはトウヤさんの名前も知っております。ど、同郷でもかなり有名でしたから」
アオイはチラッとこちらを見て俺に合わせるように言葉を
「……そうか、どこかはわからんが、仕方ないか……」
何を言っても今回に関しては傭兵ギルドに非があるのは明白だ。傭兵ギルドを通してでなく、直接クランに持ちかけられた話とはいえ、冒険者ギルド、商業ギルドを敵に回しては運営できるものではない。
しかも今回、冒険者ギルドの職員が傭兵に斬られたのだ。
最悪、ルネット帝国に戦争を仕掛けていると言われても仕方ないのだ。
「枢機卿様、何かご意見がございますか?」
商業ギルドグランドマスターのジッパーニが尋ねると、軽く頷いた。
「お初にお目にかかる、キサラギ侯爵。ジェネレート王国とルネット帝国の戦争における第一功績者である救国の英雄殿とお会いできて光栄です」
枢機卿の言葉にジッパーを含め、冒険者ギルドグランドマスター、傭兵ギルドグランドマスターも驚いたように目を見開いた。
それにしても教会の情報網はさすがとしか言いようがないな。
「今回の護衛任務に関しても、ジェネレート王国とルネット帝国の覚書の運搬です。大きな金額が動くことになったことが原因でしょう。傭兵ギルドは監督不行き届きとして、商業ギルドと冒険者ギルド、今回ルネット帝国から訪れた人に見舞金を出しなさい。そして教会、冒険者ギルド、商業ギルドは連盟でジェネレート王国に抗議の書面を送ります。キサラギ侯爵、これでどうでしょうか」
傭兵たちと戦ったのは俺とルミーナだけだが、道中、他の冒険者たちも魔物寄せの香で集まった魔物を倒した。それなりに実入りがあれば問題ないだろう。
「えぇ、それで構いません。ただし、今回の件は王国に対して厳しい対応をお願いします」
「それはもちろん、この枢機卿の名において行うことを保証します」
「あと、ここまでの道中に、王国からの妨害で、魔物寄せの香を使われ、数多くの魔物を倒してきました。それの引き取りもしてもられば」
「それは、冒険者ギルドで引き取ることにしよう。それなりに上乗せはさせてもらう。その分はきっちりとジェネレート王国に請求するがな」
冒険者ギルドグランドマスターの言葉に俺は頷く。
かなりの数を倒しているし、同行したメンバーにある程度の分配ができれば、見舞金を含めてそれなりの金額になると思う。
「ありがとうございます。他は……あ、この四人については今回のことが
俺の言葉に傭兵ギルドグランドマスターの表情は渋る。
やはりそれなりに有能なのだろう。実績があれば指名依頼や名声はそれなりにあると考えられる。
「……それはうちとしては困るが……四人の希望には応えざるをえないな。四人はどうするつもりだ?」
「私たちはこのまま拠点を引き払ってルネット帝国に身を寄せる考えです」
「ならば仕方あるまい」
渋々ながら傭兵ギルドグランドマスターも認めてくれた。逆に冒険者ギルドグランドマスターは
「ルネット帝国は冒険者ギルドしかないから、皇都で登録していくといいだろう。私からも便宜を図るように手配しておく」
四人の名声は知っているようで、他国であろうが優秀な冒険者が増えるのは
そういえば、俺も一応冒険者だったな……。
少しの雑談を行ったあと、俺たちは皆で冒険者ギルドへ向かうことになった。
四人の冒険者への登録と、俺の
グランドマスターも同行してもらうことになり、商業ギルド会館から少し歩いた先の冒険者ギルドへと
しかし冒険者ギルドの本部なのだが、ルネット帝国帝都にあるギルド会館のほうが大きい。
不思議そうな表情をしていたのがバレたのか、ギルドマスターは笑い始めた。
「冒険者ギルドの元締めがこんな小さな会館だと思って不思議なのだろう? まぁそれは仕方ない。皇国には傭兵ギルドもあるし、冒険者の数はそこまで多くない。冒険者を相手にするだけならこの建物の大きさで十分なのだ。本部の仕事はその裏に見える、ほら、あの建物だ」
グランドマスターが指さす先にはギルド会館よりも立派な建物が見える。あそこで各国の管理をしているということか……。
俺の納得した表情に満足したのか、グランドマスターの先導でギルド会館へと入っていった。
受付嬢は突然現れたグランドマスターに直立不動になった。
「すまんが、マスターはいるかい? それと四人の新規登録だ。傭兵ギルドでも十分な実績を残している。それなりのランクにつけるように手配してくれ」
「は、はいっ!」
受付嬢の一人は、奥へと駆けていき、もう一人は新規登録の書類の用意を始めた。
ほどなくして奥に行った受付嬢が戻ってきて、会議室の用意ができたことを知らせてきた。
俺たちは受付嬢の案内で奥にある会議室に入る。
グランドマスターに促され、席に座っていると焦ったように一人の中年が入ってきた。
「グランドマスター! 来るなら教えてくれないと職員が驚くじゃないですか!」
書類を持った受付嬢も後を追ってくる。
「すまんの。ほれ、優秀な新人をスカウトしてきたぞ」
「そんな……ん? まだ皆、若いじゃないですか……」
「説明が足りんかったな。そこにおる二人はすでに冒険者として登録しておる。そこの四人が新人だ」
「はぁ、わかりました……。その四人に登録用紙を配ってもらえるか」
「はい」
受付嬢はアオイたち四人に登録用紙と筆記用具を手渡した。
「それで……キサラギ侯爵はこの後、魔物の引き取りでよかったのだな」
「えぇ、それで構いません」
「えっ……き、キサラギ侯爵……?」
俺とギルドマスターの会話に男性は反応した。
「お主も知っておろう。帝国をあの状態から勝利へ導いた救国の英雄殿だ」
「あの、王国の勇者にも勝ったという……?」
「あぁ、その通りだ。なぁキサラギ侯爵?」
俺は驚いた表情をしている中年の男性をちらりと見て素直に頷いた。
それにしてもここまで情報が広まっているとは……。まぁここはギルド総本部だし情報が早いのは仕方ないか……。
しかしアオイたちは俺のことをそこまで知らないので不思議そうに首を
「もしかしてトウヤさんって相当な有名人……?」
隣に座っていたアオイが尋ねてきた。
「もともとはサランディール王国で冒険者をしていたんだが、いろいろあって今はルネット帝国でお世話になっているんだ」
「いろいろですか……」
「いろいろって簡単に言うが、一国を救ったことは確かだしの。そうだ、わしの権限でランク上げておくからカードを出せ」
今はAランクだからその上って……Sランク?
この世界に片手ほどしかいない最高峰と聞いているが、そんな簡単に上げていいのか?
「何、不思議そうな顔をしてるのだ? 一〇〇人を超える傭兵団でも相手にならん、占領されていた国は救う。勇者より強い。Sランクに
言われるがままグランドマスターにカードを渡すと、そのカードを受付嬢に手渡し指示を出していた。
「嬢ちゃんたちも書き終えたようだな。おい、この嬢ちゃんたちは全員Cランクにしておいてくれ」
「えっ。そんな簡単に……」
グランドマスターの言葉に男は顔を
「この嬢ちゃんたちは、傭兵ギルドのハイスクール傭兵団の四人だぞ。確か傭兵ギルドでもCランクだったはずだ」
「あの有名なハイスクール傭兵団ですかっ!? そんな……冒険者ギルドに引き抜いたりしたら……傭兵ギルドと
「いや、今回のいざこざで四人は冒険者ギルドに引き取ることになった。まぁ、拠点はここじゃなくて、ルネット帝国になるだろうがな。そうだろう?」
「「「「はいっ」」」」
元気よく返事したアオイたちにグランドマスターは頬を緩ませる。
「そうですか……。わかりました。私のほうで指示してきます」
男は四人から用紙を受け取って退出していった。
「これでいいだろう。あとは……ルネット帝国のギルドマスターは……グルシアだったかの。あいつにも手紙を書いて渡しておく。帝国のギルドで渡せば優遇してくれるはずだ」
酒飲みのグルシアか……。顔を見ると俺の手持ちの酒をねだられるからな。
そう思っていると、グランドマスターは思い出したかのように手を
「そういえばキサラギ侯爵……グルシアから聞いたのだが、何か
こいつも酒飲みか!
まぁ、ここまで優遇してもらって「ないです」と言うわけにもいかないか。
仕方なしに
「これですね。いろいろとしてもらいましたし、一本くらい贈呈しますよ」
「おぉ、すまんの。後でゆっくりと楽しませてもらおう。それでは先に魔物を倉庫に出してもらおうか」
ギルドマスターと一緒に部屋を出て、魔物を受け渡す場所へと移動した。
四人も気になるようで、ルミーナと一緒についてくる。
移動した大きな倉庫では、何人かが魔物の素材を解体していた。
「おい、魔物の引き取りだ。準備してくれ」
グランドマスターの言葉に、作業していた手を止めて三人ほど集まってきた。
「グランドマスター直々にですかい。魔物の素材ならこっちに出してくれれば精査して受付に伝えておくよ」
指示された場所にダブランの街で納入した以外の魔物を次々と出していく。
大量の魔物の死骸の山ができあがった。
「これで全部ですね。すっきりした」
すっきりとした
「「「「「「…………」」」」」」
俺以外に誰も口を開いていない。しかも口をぽかんと開けて
横を見るとルミーナでも
「……お主、これだけの量が
ギルドマスターに言われたが、俺と同じならアオイたち四人も同等の容量なはずだ。
思わず四人に視線を向けるが、全員に目を
「……な、何か問題でも……」
思わず言葉を返してしまう。しかし解体していた職員からの冷たい視線をヒシヒシと感じる。
「まぁ一度言葉にしてしまったから仕方ない。お前ら、増員して手分けして査定だけするのだ。アイテムボックスをいくつか持ってきて、解体できないのはそこに保管だ。さっさとあたれ」
ギルドマスターの一言で職員があわただしく動き出す。
「それにしてもこれだけの量だとすぐに査定は終わらんぞ。数日はこっちにいると聞いている。受け取りは後日にしてくれ」
今回、いろいろな事件があって皇都に五日ほど滞在することになっている。
ジェネレート王国が関与していることもあり、滞在しているジェネレート王国の大使を呼びつけて苦情を入れ通達を出すらしい。
これは各ギルドの本部名義でやるので俺たちに関係はないが、見舞金の算出をするのに滞在しているように言われていた。
「まぁ、疲れたしゆっくりできるからいいか。せっかくだから観光もしたいしな」
「あぁ、皇都にも美味い酒があるだろうし、トウヤ、楽しみにしているぞ」
やはりルミーナは酒が一番らしい。
「あの、よろしければ皇都を案内しますわ。この街で生活していたのである程度わかりますし」
「そうそう。できればいろいろと聞きたいこともあるし」
アオイたちからの提案に素直に頷く。初めて来た街だし、教えてくれるのはありがたい。
できれば
「カードもできているだろうから受付で受け取って帰るようにな。わしはここで指示しておるからの」
ギルドマスターに挨拶をし、俺たちは受付で更新したギルドカードを受け取った。
四人も新しいカードに興味津々なようだが、傭兵ギルドの時のカードと大差がないらしく少しだけがっかりしていた。
ギルドを後にする。今回、護衛任務にあたっていた冒険者全員を商業ギルドが招待してくれるとのことで、指定されていた店に向かった。
なぜか、四人も一緒に同行することになったのはよくわからないが、俺への
四人とは会ったばかりではあったが、同郷──一緒に召喚された者同士として強い絆がある。召喚されてから各々の生活はあるだろうが、やはりPWOからの召喚者同士として共感せざるを得ない。
しかもこれからルネット帝国に戻るにあたり、四人も同行することになるので他のメンバーとの親交を図るにはいい機会だろう。
指定されたお店は大きな会場で、貸し切りになっていた。大きなテーブルがいくつか並びすでに半分くらいが埋まっている。
俺たちはスタッフに案内されるまま空いている六人掛けのテーブルにルミーナ、アオイたちと座った。
時間となり宴会が始まることになった。
商業ギルドのグランドマスターが司会をするために立ち上がる。
「この度、いろいろな妨害を受けながらも無事に皇都まで辿り着いたことを感謝する。この後については私たちに任せてほしい。悪いようにするつもりはないし、問題があるジェネレート王国には厳重に抗議をし、それなりの賠償金を請求するつもりだ。もちろん、それについては後で君たちにも配分される。まぁこんな話をしていても仕方ないな。では、無事を祝って乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」
ビュッフェ方式になっており、各自、皿を持って好きな料理をよそって自分のテーブルで食べ始めた。
しかし俺は今回の活躍もあり、各グランドマスターたちが入れ替わり酒を注ぎに来て会話をしてくるので、四人と話があまりできない。
四人は気にした様子もなく、テーブルに並んだ料理に舌鼓をうっていた。
ルミーナも同じように酒をガバガバと飲みながら肉に食らいついているので、放置だな……。
まぁ仕方ないかと思いつつ、グランドマスターたちと会話をすることにする。
それにしてもシファンシー皇国でも、ルネット帝国の帝都奪還作戦については有名みたいだ。
俺が行った計画について詳細を聞こうとしてくるが、さすがに秘密裏に動いたこともあるから、言葉を濁すようにしていた。
それに合わせてジェネレート王国の勇者との闘いについても聞かれた。
正直、勇者というステータス補正があったとしても、
もしかしたらアオイたち四人でも勝てるんじゃないだろうか?
もちろん高校生に殺し合いなどさせたくはないが……。
そんなことを考えながらワインに口をつける。
楽しい宴は時間があっという間に過ぎていく。
アオイたちとは翌日に冒険者ギルドで話をすることにして、酔いつぶれたルミーナを背負って宿へと戻った。

翌日待ち合わせしていた時間に冒険者ギルドに向かうことにした。
ルミーナは前日飲みすぎたようで部屋からまだ出てこなかったので、受付に言付けだけして出てきた。
すでにギルドの酒場では四人がテーブルを囲んで食事をしているところだった。
「あ、トウヤさんこんにちは。先に食事をしています」
「こんにちは、構わないよ。俺も食べるつもりだし」
ウエイトレスに声を掛け、ランチとドリンクを頼む。
育ち盛りなのか、アオイ以外の三人は黙々と食事を進めている。
特にサキの食事の勢いはすごい。すでにお替わりを頼んでいるようで、空いた皿が積み重なっていた。
俺も目の前に置かれた食事を済ませ、ドリンクを一口飲んでから話を進めることにする。
「……それで四人の話を聞きたいんだが大丈夫か?」
「えぇ、私もトウヤさんの話を聞きたいと思っています」
「できれば他の人がいないほうがいいだろう? 受付で個室が借りられるか聞いてくるよ」
大体、ギルドには打ち合わせを行える個室がいくつかある。
基本的な造りが一緒の冒険者ギルドなら問題なくあるだろう。
俺は受付でギルドカードを提示して個室を借りたい旨を伝える。
俺のギルドカードを見た受付嬢が目を大きく見開き、すぐに手配してくれることになった。
一般的には有料で時間貸しをしてくれることになっているのだが、俺がSランクということもあり、無料で貸してもらえることになった。
個室に移り、全員席に座ってから話を始める。
「まずは俺からだな……」
ジェネレート王国で勇者として召喚されたが、送還によって知らない土地に飛ばされて、サランディール王国で冒険者として生活したのちにルネット帝国に移ったことなどを説明していく。
「……トウヤさん、苦労されたんですね……」
「皇女様と一緒なんて物語みたい。それで、もしかして……いい仲になったりとか?」
心配してくれるアオイとは裏腹にアユミは違うところで興味津々のようだ。
「それより四人は?」
俺は召喚されたからわかっているが、四人はどうやって召喚されたんだろうか?
「私たちは……PWOをしていて酒場で話している時に急に画面が真っ白になって気づいた時は草原に四人でいました」
「そうそう、最初どうしたらいいのかわからなかったけど、アオイがまとめてくれたからなんとか」
「アオイ姉ちゃんがいたからよかったよね」
一番しっかりしているアオイがいたからよかったのか。
「それに……私たちはこの世界では強いですから」
レベル1で召喚された俺と違い、四人は二次職のメインキャラクターで召喚されていた。
それならこの世界で負けることなどほとんどないはず。
なんせレベル
を超える概念すらなかったのだから。
「確かにこの世界には二次職という概念がなかったし、そのレベルに到達する人もいないみたいだからね」
「そうでござる。だから敵はいないでござる」
それから四人のこれまでの傭兵としての経歴を聞いていった。やはり盗賊との
日本人としてやはり殺人はやりたくないはず。
それでもレベル差だけで余裕で依頼をこなしていけたのには感心する。
「それにしてもトウヤさんって、
「それについては──」
自分の召喚された時のことを説明していく。
「レベル1からなんて……しかも
「あぁ、それはイベントアイテムで経験値増幅の指輪があったから何とかなったかな。武器も持っていたし」
「そういえばありましたね。私たちはもう使えませんけど……」
「それよりもトウヤさん! 帝国のこと教えてください! このまま移住しても住むところとか決めないといけないし」
サキの言葉に頷くと、帝国での生活について説明する。
「基本はこの皇都と変わらないけど、住む場所は貴族街と平民街に分かれているかな。とりあえず部屋は余っているから、しばらくは帝都にある俺の屋敷に住んでも構わないし」
「それって、貴族のお屋敷ですかっ!? あのヨーロッパみたいな洋館に住んでるんですかっ!? あと、あと……メイドさんもいるんですか!? リアルメイド!」
サキはそちらのほうが気になるみたいだ。
確かに住んでいるところはヨーロッパにあるような洋館と言っていいだろう。しかもここに来る前に陛下から屋敷をもう一つ褒賞としてもらっているし。
──
「メイドについては一応いる。執事というか、家令みたいなのもね。俺が冒険者として帝都を離れる時もあるから、屋敷の管理もしてもらわないといけないし」
「「うおおおおお! リアル執事! リアルメイド!」」
なぜかサキと一緒にアユミも興奮した様子だった。確かに俺たちからしたらリアルな執事やメイドなんてお目にかかることなどないもんな……。
「当面の住居に関しては面倒見るつもりだから心配しなくていいよ。四人で別に住むなら紹介もできるし」
「そうしてもらえると助かります。何せこの世界をまだよく知らないし、他国に移り住むとも思っていなかったので」
「俺も強い四人が仲間になってくれると心強い。養護施設も経営しているから時間がある時、一緒に遊んでもらえると助かるかな」
この世界は命が軽い。親が亡くなることなど多々ある。だから養護施設の数もそれなりにある。
「子供は好きですし、ぜひ参加させてください」
アオイは子供が好きで、もともと将来保育士になるのが夢だったと教えてくれた。
今はサヤ一人で養護施設を運営しているが、手伝ってくれるなら心強い。
アオイに養護施設のことを説明すると、やる気を出していた。
その後、雑談を行い、ギルドを出て街の案内をしてくれた。家で留守番している人たちや養護施設の子供たちのお土産などを購入する。
帰りの食事に関しては、泊まっている宿に多めに金銭を渡して作ってもらっているので問題はない。
数日が経過し、シファンシー皇国を出発する日を迎えた。