◆再会
『こんにちは、クレープのお姉さんです! 覚えてますか?』
そんなメッセージが、裏アカのほうに届いた。
クレープお姉さんって自称しているってことは……この前学校をサボって、クレープを食べた時に話したお姉さんなんだろう。
どうやってこのアカウントを特定したのかは分からないけど……なんだか懐かしくなって、つい返信してしまった。
『覚えてますよ。急にどうしたんですか?』
『いや、新作のクレープがめっっっっっちゃ
そんなことで連絡してきたのかと思いつつ、そこまで美味しいクレープってなんの味なんだろうとちょっと疑問に思った。
『何味なんですか?』
『デラックスミックス』
『なんですかそれ……』
『ちょっと説明が難しい!』
何味だか全然分からなかった。説明が難しい味って、何なのか全然分からないし。
だからか、美味しいと言われてもちょっと不安になってしまう。
前回が前回だったし……。
『お姉さんのおごりだったら食べます!』
だからしばらく悩んだ末に、そういう風にメッセージを送った。
これならきっと、本当に美味しくて食べさせたいとかじゃない限りは奢ったりしないだろう、多分……。
『う、そうきたか!』
『お姉さんなんだから、おごってください』
お姉さんもお小遣いをやりくりしているのか、それともほとんど会ったことない子におごるなんてことが嫌なのか、しばらく返信がなかった。
『いいよ』
『いいんですか!?』
まさかいいよと言われるとは思っておらず、私は驚く。
『いいんですよ』
『わーいやったー!』
『もうすでに喜んでくれてると
そこでメッセージは途切れた。
そこで気がついた。わざわざクレープをおごってもらうために、またあそこまで行かなきゃいけないのかと……!
でもまぁ、プラマイゼロみたいなものだと納得させて行くことにした。クレープが
どちらにせよちょっと楽しみだと思いながら、眠りについた。
○
次の日。
「こーんにちはー」
クレープ屋さんのある駅で降りて改札を出てから、すぐに声をかけられた。
ちょっと見覚えのある格好をしているので、きっとこの人がクレープお姉さんなんだろう。
「本当に来てくれるなんて思ってなかったよ」
「た、確かに……」
素直に来てしまった私も私だけど、お姉さんが来ないという可能性も充分にあった。
SNS上の口約束なんて信頼するものじゃないという投稿を見たことがあるのに、
まぁ今回は、無事に約束が果たされたから良かったのかな……?
「さ、デラックスミックスクレープを食べよう」
お姉さんはいそいそと駅を出てクレープ屋に向かう。私はおごってもらう身なので、おずおずとしながらついていった。
そうして頼んだクレープは、デラックスの名の通り大きかった。
「た、食べられるかな……?」
「これは美味しいから、ぺろっといけちゃうよ!」
そう言うお姉さんを信じて食べようとするけど、お姉さんにちょっと待ってと止められる。
なんだろう?
「無事に出会えた事実に、乾杯!」
そう言ってクレープを、ちょんっと突き合わせた。
「……そんなキャラでしたっけ?」
その行動よりもまず先に、そんな疑問が浮かんだ。
そんなことするキャラだったとは、到底思えないんだけど……。
「んー、ある意味吹っ切れたっていうのかな? だから今回、誘ってみたのもある。昔の私だったら、裏アカの人なんて怖くて誘えないもん」
「そうなんだ……」
吹っ切れたっていうのは羨ましいなと思いながら、買ってもらったクレープを今度こそ食べる。
口いっぱいに甘さ控えめのクリームと新鮮そうな果物の風味が広がって、とても
「美味しいですね、これ!」
「でしょ!」
大きいと思っていたけど、こんなに美味しいならずっと食べていたいかもしれない。
それくらい、美味しい。
「誰かと共有したかったんだー。
「そ、そうですか?」
「うん、だってすごく笑顔だから!」
言われて、ハッとした。
スマホの撮影画面を起動させてインカメラで自分を見てみると、確かにものすごく笑顔だった。
「そ、そんなに見ないでください!」
「どうして? 笑顔、とっても
「うう……」
単純にもほどがあるけど、こんなに笑顔になれたのは久しぶりで、なんだかドキドキしてしまう。
こんなに笑顔になっていいのかなっていうか……。こんなにクレープって人を笑顔に出来るんだっていうか……そんな感じ。
そして症候群の解決には、吹っ切れることも大事なことなのかな……?
あんまり参考にはならないだろうけど、心の隅に留めておこうと思った。
「また
「またお姉さんのおごりならいいですよ」
「ぐ、そう来たかー」
次があるかは分からないけど、とりあえずデラックスミックス味のクレープはリピりたいなと思いながら食べ終わってしまうのであった。