◆髪の毛の長さで気分も変わる



 いつものお昼休み。

 お弁当の入ったランチトートを持って、空いている教室にあいざわさんとなかさんと行く。

 教室に入って机をちょっと寄せて、そこにお弁当を広げた。

「何回も言ってる気がするんだけど……髪が短いルルちゃんって新鮮だね」

 田中さんが卵焼きを食べながらそう言った。

 本当に何回も言われていることなので、そんなに慣れないのかなとちょっと不安になったりする。

「もちろん可愛かわいくて素敵なんだけど、長い髪に慣れてたからまだ慣れないや」

「……本当に可愛いと思ってる?」

 はじめて、そう問い返してしまった。

 答えられない問題を先生に当てられてちょっとなじられて、ちょっと気が立っていたからかもしれない。

「思ってるよ! ルルちゃん自体が可愛いから、何しても似合うと思う。まる!」

「まるって、どういう感情なわけ……」

なかさんは、可愛かわいいと思ってる?」

「えっ、なんで私も?」

 髪を切ったことに対してこれまで一度も何も言わなかった田中さんにも、この機会だから聞いてみる。

「今まで、髪を切ったことに対して何も言われてないから、どう思ってるのか気になって」

「人並みに可愛いとは思ってるよ、そりゃあ……」

「本当に?」

「本当に……あんまり聞かれると恥ずかしいから、この話はこれで終わり。テストの話でもしようじゃないか」

「いや、テストの話のほうが私はしたくないんだけど……」

 そう言ってこの前あったテストの話を始めた二人を横目に、短くなっている髪を改めて確認する。

 結局髪の毛を短くしても、症候群はそのままだった。

 ただちょっと首元が涼しくなっただけだ。

 これから暑くなってくるからちょうどいいのかもしれないけど……持っている服にショートヘアが似合わない。

 ショートヘアだから似合わないんじゃなくって、なんだろう、私の感情と合ってないっていうんだろうか。

 なんだか違うと思ってしまう。

 それもあって似合っているか、可愛いか聞いたんだけど……二人に可愛いって言われても、イマイチピンとこなかった。

 やっぱり、人の意見を当てにするべきじゃないんだろう。自分がこうあろうって決めた姿が、一番いいはずだ。

「……やっぱり決めた」

「え? 何を?」

 私の突然の言葉に、あいざわさんは驚いているようだった。

「私、また髪の毛長くする」

「そうなの? それならそれで、応援するよ」

 てっきりそのままがいいよと言われると思ったから、その言葉には私の方が驚かされた。

 それに、応援って……。

「お、応援されることなのかな……?」

「だって、れいに伸ばさないとそれはそれで大変でしょ?」

「ああ……」

「だから、応援」

「なるほど……?」

 相変わらず独特な感性を持っているなと思ったけど、今はその応援がなんだか心強く感じた。

 ……ただ、言って欲しかったことを言われたから、喜んでいるだけかもしれないけどね?


 ○


「髪、伸びてきたね」

 切る前の三分の二くらいまで伸びてきたと私も思っていたところで、学校に行く途中ですれ違って一緒に行くことになったあいざわさんにそう言われた。

 なかさんは委員会かなにかで先に行っているらしい。

「うん。そうなんだよね」

「私の応援、ちょっとは効いた?」

「う、うん。効いたかも、しれない……」

 実際に頑張ったのは私なのにと思いながらも、にするわけにもいかなくてそう言った。

「それなら良かった。田中も応援してたから、それも効いてるとうれしいな」

「え。田中さんも応援を?」

「そうそう」

 田中さんって、なんだかんだ私のことを気にかけてくれるなぁ。

 嬉しいような、嬉しくないような。

 ……いや、気にかけてくれること自体は嬉しいから、素直に嬉しいって言った方がいいだろう。

「二人が気にかけてくれるの、嬉しいよ」

「そう? それなら良かった!」

 それから学校まで、相沢さんが私をどれだけ心配しているかを話してくれた。

 気にかけてくれるのは嬉しいって言ったけど、そこまで心配されるのは違う気がする!

 そう思っていたのに、意図しない形で学校をサボることになってしまったので、余計に心配される羽目になってしまったのであった……。