◆ルルのまくあい



 謎の遭遇みたいなイベントが起きてからのエリムはどこかぼんやりとしていて、ずっと外を眺めていた。

 外では絶え間なく誰かしらの人が動いているけれど、エリムはそのどれをも見ていない気がする。

 さっきの人は、いったい何だったんだろう?

 深く帽子をかぶっていたし、私の角度からはあんまりどういうことか分からなかったんだけど……。

 なにかとても大事なことが起きたような気がしたけど、それも気のせいなのかもしれない。

 とにかく、私が気にかけるようなことじゃないんだろう。

 心配はしてしまうけど、そこまで気にしているほど余裕はないし……。

 でも、改めてここは本当にすごいな。

 ナナの言っていることの半分も理解は出来ていないような気がするけど、それでもいいということだけは充分に分かった。

 私にお金があったら、本当に毎日っていうくらいに通っていたかもしれない。

 お金がないから、そんなこと出来ないけど……。

 いっぱい通っているナナが羨ましいな。

 もちろん、自分でお金を稼いでるっていうのもあるだろうけど、それだって羨ましいことには変わらない……。

 私には読者モデルだなんて大役、出来そうにもない。

 体型とか顔とかもそうだけど、あんなにも堂々としていられる自信はないもん。

 そもそも私なんかが応募してもきっと選ばれないだろうし……。

 ああいうのって、やっぱりそれなりの基準があると思う。

 それに、仮に選ばれたとしても私は絶対に行きたくない。恥ずかしいし……。

「そろそろ帰ろうか」

 ケーキを食べてしばらくってから、ナナがそう切り出した。エリムは無言で立ち上がって、早く帰ろうとしている。私も立ち上がって、リュックの中から財布を取り出した。

「そうだ、これ」

「はい?」

 レジで会計をしていると、ミレイさんが私たちに小さな袋を渡してきた。中には焼き菓子が入っているみたいだ。

「えっと……これは」

「サービスだよ。今日来てくださった記念ということでね」

「そんな! 悪いですよ……」

 慌てて首を横に振ると、ミレイさんが小さく笑みを浮かべる。

「こういうものは、受け取ってくれるとうれしいかな。そして次もまた来てくれると、尚のこと嬉しいよ」

「はい! もちろん来ます!」

「機会があればまた……」

 ちゃんと言葉に出しているナナとエリムと違って圧倒されてしまって何も言い出せなかったけど、また来ようと決意してしまった。


 焼き菓子は二つあったからお母さんと一緒に食べたけど、すごくしくてやっぱりもう一度行こうと思うのであった。