敵武装船の発見

幸運なことにここからレニウムまで直線で進める。

途中に小惑星も、隕石群もなさそうなのだ。

あ……ここが、探していた航路の一部だ!


俺は無線が通じるエリアまで来たらすぐに殿下のクルーザーを呼び出して殿下に連絡を取った。

殿下は今レニウムで貴族外交中とのことで不在だったが、捜査室長がいたので、応援を頼んだ。

無線から三時間後に返信があった。

ここから十五時間の位置にあるスペースコロニーで落ち合うというのだ。

そのスペースコロニーの座標を送ってきた。

そこは小惑星帯で資源回収を行う業者向けに緊急避難および、中継拠点として使われている非常に小さなコロニーだということだ。

これなら俺らが寄港しても目立たない。

何よりエンジンが全く使えない船でも宇宙空間なので、係留できるのが最大のメリットだ。

逆に言うと殿下の警護などについて明らかに不都合が出る場所でもある。

少々心配になるが、殿下からの指示ということでそこに急ぐ。

急ぐといっても曳航中なので、巡航速度まで出せずに四宇宙速度で航行中だ。

四宇宙速度は殿下の高速クルーザーの巡航速度と同程度なのだから贅沢は言えない。

十五時間後に目的のスペースコロニーに到着した。

ここには既に殿下より応援の要請が出されていたので、俺らが到着するや否や、コロニー内の医者が機材をもってやってきた。

子供たちの保護に五時間ばかり使って作業していると、殿下のクルーザーがやっとコロニーに到着した。

クルーザー単独での航行だったので、少々心配になったのだが、このクルーザーに殿下は乗っていない。

殿下はちょうど貴族外交中だったこともあり、今はレニウム内の貴族の館に滞在中だとのことだった。

殿下のクルーザーが到着する少し前に子供たち全員の搬出は終わっていた。

フォード船長はクルーザーに捜査室長を始め捜査員二十三名と機動隊員を乗せていた。

早速やってきたトムソン捜査室長とアイス機動隊長は俺のところにやってきて今後について協議する。

艦長室で、俺が今まで掴んだ情報を提示しながら話し合う。

どうも敵の拠点が俺の発見した航路の先にありそうだということで、敵が逃げ出す前に補足調査するということになった。

敵の拠点の規模が不明だが、相手がシシリーファミリー関係だということで軍に応援を依頼することで、集まった面々の意見がそろった。

フォード船長から殿下に状況の説明と軍への応援の依頼をすぐに出してもらう。

俺らはその敵拠点の発見と規模の調査のために応援が来る前に出港することにした。

ここでの捜査は捜査室長が連れて来た捜査員だけでも大丈夫ということなので、今度は機動隊員も同行してもらう。

三時間かかって、漂流船の切り離しと簡単な点検後にこのスペースコロニーを出航した。

来る時に十五時間かかった距離を速度を上げて八時間で漂流船を発見したポイントに到着した。

ここからは俺らにとって未知の領域だ。

奇襲攻撃など受けないように警戒のために艦載機を出しながら進んでいく。

艦載機にはパイロット希望の就学隊員を後部席に乗せ、周りの監視に使う。

通常一人で行っている周りの監視を希望者に手伝わせるためだ。

本来なら絶対にやらない配置だが、正直今は猫の手も借りたい状況だ。

できる人ならだれでも使う。

希望者ということもあり、就学隊員にとっても実際の業務を体験できる貴重な機会なので、案外良策なのかもしれないと自画自賛。

保険は当然かけてある。

『シュンミン』艦橋内でも艦載機からのデータをリアルタイムで監視していく。

と同時に、就学隊員の監督も行う。

艦載機は二機搭載しているが、警戒は一機ずつ交代で行っているので、手隙のパイロットや整備員などが搭乗中の就学隊員の面倒を無線で見ている。

このおかげで操縦中のパイロットには負担が少なくなっている筈だ。

捜査を始めて五時間後に敵の拠点らしき人工物を見つけた。

第一発見者は先輩だった。

ただ今度ばかりは不用意には近づけない。

俺は一旦艦載機を戻して、対応を考える。

まだ『シュンミン』のセンサーからは見つけにくい。

艦載機を収納後に『シュンミン』をもう少し近づけて艦内センサーでの監視に変える。

「流石にここからではこの艦のセンサーでも点にしか見えませんね」

「ああ、でも俺らだけで突っ込む訳にはいかないからここで応援を待つ」

「本当に応援は来るのでしょうか」

副長のメーリカ姉さんは心配そうに聞いてくる。

「一応殿下直々に知り合いのお偉いさんに掛け合うと言っていたからお茶を濁す程度には来るのだろう。まあ、ここで航宙フリゲート艦の一隻でも来てくれれば向こうの状況によっては強行するけどな」

「まあそうなりますかね。でも安心しました」

「安心?」

「艦長単独でも行きそうだったもので。きちんと応援を待つと言って下さり安心できました」

「オイオイ、そこまで俺は無鉄砲でもないぞ」

流石にまだ俺には分別が残っている。

俺一人ならそれも妙案かもしれないが、この船には前以上に部下たちが乗り込んでいるのだ。

まだまだ未来ある就学隊員や殿下からお預かりしている保安員、それに家族持ちも多くいると聞いている機動隊員を巻き込んでまで死にたいとは思わない。

俺の理想はかっこよく彼らを助けながら死にゆくことだ。

しかし、どうしたものかな。

ただ点にしか見えないものの監視など退屈極まりない。

ここでただ待つというのも艦内の士気は下がるだけだし、どうしたものか。

こんな場所での訓練などできようもないしな。

俺は思案に更けていると、カリン先輩から提案があった。

「艦長、ここからでは敵の状況までは分かりかねます。敵の規模などの特定をされてはどうでしょうか」

「カリン少尉、具体的にどのように考えているのか」

「ハイ、艦載機を使ってもう少し傍まで行き、監視をされてはいかがでしょうか。私は艦載機二機を監視業務に出すことを具申します」

確かにカリン先輩からの具申には考えるものがある。

敵の戦力を知らなければ応援が来てもすぐには動けない。

今俺らにできることは偵察だけだが、それでも具申に従えば艦載機が見つかる恐れもあり、かなりの危険がある任務になる。

俺は少しの間考えてから、具申に従うことにした。

「カリン少尉の具申を受け入れよう。ただし、今度ばかりは乗員は一人として就学隊員の乗機を認めない」

「具申を認めて頂きありがとうございます。今度は今までと違い監視する対象が一点ですので、それほどパイロットの負担にはならないでしょう。こちらでもモニターで付近を注意しておきます」

「ああ、とにかく乗員の安全を最優先で作戦に当たってくれ」

俺の許可を貰ったカリン先輩はすぐに艦橋から後部格納庫に向かった。

パイロットや整備士たちと直接打ち合わせをするためだ。

それから二時間後に作戦が開始された。

今回の作戦では敵の戦力調査を目的として、敵の艦船が分かる場所まで艦載機を近づける。

情報を得られた時点で、それ以上の前進を認めずに帰還させるという極めてシンプルなものだ。

訓練以外では二機での作戦行動は初めてのことかもしれない。

今回は艦載機の指揮を執るパイロットが付近の警戒に当たりもう一機のパイロットが操縦する艦載機で情報を収集することになっている。

カリン先輩は艦載機が発進後それこそまばたきも忘れたかのようにモニターを監視している。

奇襲攻撃などあってはならない。

また敵拠点防衛のための罠にも注意しているようだ。

とにかく艦橋内がやたらに緊張する時間が三時間にも及んで、作戦は終了した。

艦載機二機が無事に帰還した時にはやたらに疲れた。

俺は何もしていなかったのだが、情けない。

カリン先輩は、艦載機が戻るとすぐに後部格納庫に向かって情報の収集に走った。

こっちのセンサーに映る画像では軍艦だということだけしか分からなかった。

小型の軍艦が二隻、できれば艦種だけでも特定しておきたい。

艦載機に搭載されているカメラの情報をダウンロードするために格納庫に向かったようだった。

なにせリアルタイムで上げられる情報は送信データが圧縮される関係上、ある程度の劣化は覚悟しないといけない。

特に遠方の情報などではしばしばこのようなことが行われる。

尤も俺も知らなかったことなのだが、軍の艦載機運用では本当に稀ではあるがこういった手法も取られると先輩は言っていた。

ダウンロードされた画像情報を、これまた画像処理ソフトを使い処理して問題の画像を拡大していく。

この作業はかなりの時間を要するが、安全に敵の武装勢力の実力を見極められる。

今先輩は整備士とともに情報を処理している。