魚雷には各々違う自爆シーケンスが登録されており、個別に艦橋から自爆させることができる。

しかし、そのシーケンスを知らなければ自爆命令を魚雷に送れない。

ケイトは魚雷発射管制室に今発射された魚雷のシーケンスを問合せしている。

しかし、その管制室でも、初めての実践だ。

一々管理していなかったので、誰もそのシーケンスを知らなかった。

「あ、魚雷命中を確認しました。敵は多分完全に破壊された模様。レーダーでの解析ではデブリしか見つけられません」

いくら艦橋から自爆させられる機能を持っていても自爆シーケンスを知らなければ、自爆させられない。

当然発射されたすべての魚雷は目標に向かって進む。

最初のレーザー砲の攻撃で、目標の応戦能力は奪われていたようで、回避もされないので、全て命中となった。

しかも運の悪いことに、朝顔の弾丸で二つに割れた船体の前後にそれぞれ二発ずつ魚雷が命中して、目標は船の体をなしていない。

は~~、デブリとなった敵の身元が分かればいいが、どうしよう。

「艦長、敵の撃破を確認しました。どうしますか」

「どうするって、どうしよう」

「艦長、間もなくスクリーンに敵を確認できます。メインスクリーンに投影します」

カスミは淡々と自分の仕事をしている。

それで、メインスクリーンに映し出された映像には、完全にデブリとなった船の成れの果て。

分子レベルで破壊されてはいないので、何らかの痕跡はあるだろう。

「現場まで行って、デブリをできる限り回収だな。とにかく相手の素性が分からないと報告もできない。ということで、副長現場までだ」

「は、進路変更、目標座標……」

メーリカ姉さんはかつて敵がいた場所の座標を読み上げている。

普通の業務なら、何ら問題なくこなすようになっている我がクルーだが、肝心なところでいろいろとポカをやらかす。

まだ臨機応変に行動ができないので、奇襲された時など完全にお手上げなので、逃げ出してから態勢を整えたのだが、今回の場合、これも結果から言うと失敗と言えるだろう。

逃げ出す前に敵の場所をある程度捉えていたので、異次元航行に入る前に、艦内の全ての武装にすぐに発射できる準備をさせていたのが失敗の原因だ。

ケイトの奴、何も考えずに全ての武装に一斉に攻撃命令を発したのだ。

流石に意味のない護衛用の側面パルサー砲には攻撃命令を出していなかったようだが……出していたの。

ただ相手に届かなかっただけ、ああそう。

もういいわ。

事前準備も考え物だということね。

というよりも、そもそも攻撃前に相手の場所が特定できるのなんて固定目標くらいだろう。

今回が幸運だっただけの話だ。

後部格納庫に待機しているアイス機動隊長を艦橋に呼んで、事情を話した。

「早速で申し訳ありませんが、あのデブリに対して調査をお願いできますか。とにかく相手を特定できるものを探してください」

「了解しました。しかし、艦長は手加減ないですね。完膚なきまでに壊しましたね」

アイス隊長にも呆れられてしまった。

今後に課題を沢山残した初陣だったが、とにかく一人の怪我人も出なく、ある意味幸運だった。

『シュンミン』は敵のいた場所で、停船して、周りにあるデブリの回収を始めた。

アイス隊長率いる機動隊は五人ごとに分かれて周りに散っていった。

遠くのデブリから調査するというので、艦の周りについては俺らも手伝う。

「副長、就学隊員全員にパワースーツを着用させて船外に集合だ。各々のセクションリーダーに引率を命じてくれ」

「何をなさるので」

「船外活動の訓練だ。周りにあるデブリを集めさせる」

「え、でもパーソナルムーバーの数が」

「大丈夫だ。ワイヤーを本艦に繋げさせて、自分の力で目標に向かう訓練にはもってこいの環境だろう」

「そうですね」

「講師は自分たちのセクションリーダーにさせる。絶対に、宇宙では迷子にさせるな。船外に出る前にリーダーとワイヤーで繋げておけよ」

「大丈夫ですよ、艦長。みんな臨検小隊の出身ですよ。宇宙空間での経験は誰よりも積んでいますから。ルーキーだったリョウコやニーナだって十分に私が鍛えてありますから、先の訓練のような失敗はないでしょう。まあ今回は初めてですので、ラーニやカオリのような経験のある者たちを付けておきます」

「助かるよ。よろしくな。後悪いが、カスミ。付近の警戒と同時に、あいつらも注意してくれ。もし飛ばされるようなことがあればアイス隊長に頼んで保護をお願いするから」

「了解しました……が、艦長はどちらへ」

「艦橋にも就学隊員はいるだろう。そいつらの引率だ」

「え、艦長が自ら」

「お気を付けて」

艦橋にいる部下たちは俺が船外活動に行くのを気に入らないのか文句を言われる中で唯一副長のメーリカ姉さんだけが快く送り出してくれた。

「ありがとう副長、艦橋を頼むな」

俺は艦橋にいた就学隊員を連れて一つ下のロビー脇のエアロックエリアに向かった。

当然ではあるがそれぞれ全員にパワースーツに着替えることを命じてここに集合させた。