もう諦めるしかない。
それにしても、会いたくないやつに会うとは俺の運命の神様は本当に仕事をしない。
「ああ、久しぶりだなジャイーン。三年ぶりか」
「ああ、それよりもなぜおまえが。軍に入ったと聞いたが」
「ああ、俺は今でも軍人さ。でも今は出向の身の上だ」
そこから部屋の隅で話をした。
こいつは俺からテッちゃんを寝取ったやつだ。
彼は憎きブルジョワジーで、プロレタリアートである俺の敵だが、正直彼を憎みきれていない。
理由は分からないが、こいつは本当に良い奴で、俺もそれを知っている。
こいつには学生時代にいろいろと良くしてもらっていたし、何よりテッちゃんのことがなければ俺の数少ない友人にもなっただろうと思えるのだから。
しかも、こいつの実家はこの星で一番大きな財閥でもあり、俺の育った孤児院もその財閥からの援助でかなり助けられてもいた。
いわば俺たちの恩人でもある。
テッちゃんもその辺りに惹かれたのか……いや違うな。
こいつは性格も良い、ルックスも良い、とにかくとんでもないスペックを持つ物語の主人公補正が働くような奴なのだから、良い女なら誰でも無制限に引き付ける『良い女ホイホイ』のような奴だ。
テッちゃんも簡単にそれに捕まっただけなのだろう。
やっぱり爆ぜろ。
「ところで、お前は何でここにいるんだ。まだ学生だろう」
「ああ、四年生だ。今は校外実習で、俺は故郷のキャスベル
奴はそう切り出してから簡単に状況を説明してくれた。
何でもケイリン大学の例のコースは最終学年で王国内の有力企業に一から二か月の校外実習に出す。
学生の内から実際のビジネス現場の空気だけでも感じてもらう配慮だ。
ジャイーンは地元に戻れば愛人が沢山いるし、とにかく地元で実習を受けたかったのだろう。
しかし、親元への実習だととにかく格好が悪い。
そこで親同士で付き合いのあった地元の大手企業でもあるキャスベル工廠に実習に来ていたそうだ。
その実習中に、この星のハイソな人たちにはちょっとした事件が起こる。
第三王女殿下がこの星に行幸してくるというのだ。
この星を預かる公爵は早速地元の有力者を集めてパーティーを開く。
いわば貴族政治という奴だ。
当然ジャイーンの親も招待されるが、まだ学生の身分であるジャイーンには参加資格が無い。
そこで、彼と彼の一族に恩でも売るつもりで、キャスベル工廠の社長が随行員として彼を連れてきたというのだ。
公爵も彼の事情は知っているので、特例として会場に入る許可は出したという話だった。
そういう訳で彼はここで大人しくしている。
でないと、こいつはアイスさんとここにいる女性を二分していたかもしれない。
そういう意味ではアイスさんも主人公補正を持っているのかもしれない。
ちょっと違うような気もするが……。