俺の胃が急にキリキリと痛みだす。
だいたい孤児だった俺に、何で声なんか掛けるんだよ。
せめて誰か本艦に艦長がいればそいつの役目なのに。
俺は、封印をしていた艦長室の隣にある部屋に殿下を案内した。
本艦で一番豪華な造りとなっているあの部屋だ。
俺は豪華な扉を開けて、殿下を中に通した。
まあ、俺が扉を開けると、誰よりも先に王室警護隊がなだれ込んで、中の様子を確認後、みんなで中に入ったのだが、どうにも絵にならない。
しかし、殿下はそんな様子を全く気にもせずに中に入っていった。
こんなことは日常茶飯事なのだろう。
とにかく国の要人である王族とは面倒な人種だと感じたが、ここは俺の知る限りの丁寧な対応を全力でするしかない。
ぎこちなくなるが、それもやむを得まい。
「殿下、中にどうぞ」
「まあ~、凄い部屋ね。軍艦だからもっと武骨なイメージを持っていましたのよ。まるで、王室専用のクルーザーか、王国きっての豪華客船のスイートルームのようね。飾り付けがシンプルな分だけこちらの方が好感を持てますわね」
「お褒め頂き、ありがたく存じます。せっかく殿下にお褒め頂いたのですが、ここはその豪華客船のロイヤルスイートから部品を調達しましてサイズを合わせております。流石に調度品の類はありませんが、その船と同様な造りになるかと。しかし、全ては廃船となりました豪華客船からの流用ですので、正直申しますと、中古品で作られた部屋に殿下をお通ししてもいいものかと思っております。尤も、本艦の全てがその流用品で賄われておりますが……」
「艦長代理、お気になさらないで下さい。存じておりますわよ。私も、この船については報告を頂いておりますの。今日来た目的も、この船の出来栄えの確認と、艦長代理たちのスカウトですから」
「へ? スカウト……ですか?」
「まあ、お話の前にお茶でも飲みましょうか」
「あの……殿下。誠に申し上げにくいのですが、本艦にはそういった類の品は……」
「ああ、そうでしたね。フェルマン。お願いできますか」
「ハイ、すぐにでも」
殿下に声を掛けられた初老に近い男性が、今度は俺の方に向き直り許可を求めてきた。
「艦長代理。ここのギャレーをお借りしても構いませんか」
「ギャレー??」
するといつのまにか俺の後ろにいたメーリカ姉さんがそっと教えてくれた。
「艦長代理。ギャレーとは、ここのキッチンですよ」
「おお、そうか。ありがとうな」
俺は小声でメーリカ姉さんに礼を言ってから、フェルマンさんに答えた。
「ええ、構いません。そこなら使えるようにはなっている筈です。もし使用できないようでしたら、隣にある私の部屋のをお使いください」
「では、お茶が来るまでゆっくりしましょうか。私が言うのも変な話ですが、座ってお話しませんか、艦長代理」
「あ、すみませんでした。是非、そこのソファーにでも座ってください」
「では、艦長代理もお座りくださいな。あ、そこの……確かメーリカ少尉でしたっけ。少尉もお座りください。これからお話しすることにはあなた方全員の話ですから、ぜひご一緒ください」
「ハイ、殿下。それではお言葉に甘えてご一緒させて頂きます」