「そうです。今回は偶然、クリーナやサマンサがいましたが、最悪護衛が誰もいない状況だったかもしれません。今回にしたって、前衛の私やリーアでなく、魔術師である2人でバランスが悪かったでしょう?」
「……それはなあ」
「あの時の私の気持ちが分かりますか? ユキやみんなが連れ去られそうになる中、そこで待機を命じられたあの時の気持ちが」
「……すまん」
「いえ、責めるわけではないのです。が、あんなことは二度とごめんです。私の本来の仕事を
「あー、落ち着け。本当に俺が悪かったから」
横で腕は組んではいないものの、密着に近い状態のジェシカはそう言いながら声を震わせている。
「ジェシカなんてまだいい方ですよ? 私や他の皆なんて、気が付けばいなくなった、ですから。私なんてもう何が何だか状態だったし」
そう、もう何も考えられなかった。
気が付けば2日ぐらい経ってたし。
一応、みんな曰く、食事やお風呂は入ってたらしいけど、全然覚えてない。
「で、なんで昨日の今日で、バイデの領主のところに顔を出す必要があるんですか?」
「そうですね。もう少し休むべきだと思いますが」
「……これ以上休んでたら俺が干からびる気がする」
「大丈夫ですよ。ルナさんから精力を回復できる薬もらってますから」
「はい。その点でユキを危険にさらすわけがありません。昨日から約半日だけですから、みんな、まだ満足はしてないでしょう」
うん。
ユキさんとの再会の熱い夜が一日だけとか少なすぎる。
ウィードに取り残されたメンバーはもちろん、バイデに召喚されたメンバーも状況が状況だけにイチャイチャする暇もなかったみたいだし。
これは、あともう一週間ぐらい愛に満ちた休みの日々が必要だと思う。
あ、ちゃんと子供たちの面倒とかも含めてだよ?
ほったらかしとかしないよ?
そういう意味でも、ユキさんとの
「子供たちとの時間も必要だしなー。まあ、あと少し話を詰めれば少しは休めるだろうから、今日は我慢してくれ」
「約束ですよ?」
「……まあ、予定通りではありますから仕方ありませんね」
「他の皆も休めって言うよなー。説得が大変だった」
「「当然です」」
他のみんなだって、同じ意見ですとも。
結局、昨日言っていた、二日間のお休みはとれぬまま今日お仕事となっています。
だから、私たちがこうやってユキさんに道中も
ちなみに、他のメンバーは今回ついてきていません。
目下、バイデダンジョンの大改装中だからです。
なんだかんだ言っても、忙しいのは私たちも一緒というわけです。
なので、ユキさんが休むと言わない限り、私たちも休めないので、そういう意味でもこうやって休みを
ふふふ……。
すでにこのバイデ程度の文明レベルでは突破できない、武装交易都市として、邪魔者が来ても即時粉砕できる程度には配備は済んでいる。
あとは、ユキさんが「みんなとイチャイチャしよう!!」と言ってくれるだけでOKなんだ。
邪魔者は死体になっていいよ? あー、後始末も面倒だから、灰がいいかな? 風で吹けばなくなるし。
「どうした、リーア? なんか、険しい顔になってるけど」
「いえ、何でもないですよ。って違いますね。よくも迷惑をかけてくれたなーって思っただけです」
「そうか。まあ、しつこいかもしれんが、我慢してくれよ。暴れても関係のない人が傷つくだけだからな」
「はい。分かってます」
……セーフ。
今、ユキさんの愛が下がる可能性があった。
それはダメ。絶対にダメ。
いや、愛うんぬん以前に物騒な考えな私が悪い。
デリーユにさんざん叱られたんだから、しっかりしないと。
私は、勇者なんだから!!
あれ? でも、私が勇者なのは秘密だし、あんまり勇者らしく振る舞わなくてよくない?
ああ、ただの殺戮者になるなって話だから勇者は関係ないか。
正直、私自身勇者っていうのは全然自覚なくて、ユキさんの奥さんで護衛ぐらいにしか認識がないもんね。
「なんか話がずれたが、バイデの領主と話をするのは、今後の予定を詰めるためだ」
「予定ですか。確か、幽閉されているハイデンの王妃を救い出して、現王家派という武闘派と旧王家派で対立させる話でしたね」
「なんでそんな面倒なことするんですか? ダンジョンをぎゅーんと延ばして、一気に制圧すればいいじゃないですか」
私たちのユキさんやみんなを攫った原因を作ったクソ共は、私たちの手で全員縛り首にしてつるせばいいんですよ。
「ま、ただ仕返しするならそれでいいんだけどな。そうなると、ハイデンの領地は荒れるだろうからな」
「……確かに。一瞬で終わるのは私たちの実力のおかげですが、その荒唐無稽で理解を超える力を持つ相手を信じるわけもないですね。なにより、ハイデンに愛国心がある人は反発するでしょう」
むー。
なんか難しい話になってきた。
「他国からの侵略を受ける可能性もあるからな。俺たちの恨み晴らしで、リーアやミリー、ラッツがいた村や街で起こった同じような悲劇が起こるかもしれない。そんなのは必要ないだろう?」
「……はい。ごめんなさい。短絡的でした」
そうか、私やみんなのような悲しいことが起こるきっかけになりかねないんだ。
だから、こうしてるんだ。
やっぱり、ユキさんは優しい。
「正直な話。そんなことしたら、ハイデンを世話するのが俺たちになるからな。仕事がさらに増えるだけだ。自分の尻ぐらい自分で拭いてもらうって話だよ」
「なるほど。当然ですね」
「うん。当然ですね」
「それで、旧王家派を復権させた暁には、俺たちにはハイデンでの自由が確約されるわけだ。ハイデンの統治はしなくていいし、煩わしい許可も必要なくなると。ウィードの後ろ盾も増えて、万々歳。これを目指す」
「そもそも、ユキの使命は国家の運営ではないですからね」
「そうだね。それよりも、すっごいことをしているんだから。ユキさんは!!」
そう、私の勇者様はスケールが全然違うの!!
王様だろうが、魔王だろうが、神様だろうが、ビシッと筋を通して、和解で済ませる凄い人!!
もう、とっても大きくて、優しい人!!
だからこそ、ユキさんを召喚、誘拐したクソ共への怒りが
「普通なら暗殺とかを心配するんですが……」
「すでに、ウィードからドッペルは連れてきたしな。遠距離になると分からんが、同じバイデ内なら今のところ問題はない。今回は話し合いに加えて、そういう検証実験でもある」
そう、すでに生身じゃない。
そんなの当然!!
ユキさんが傷つくとか、世界の危機!!
ユキさんをねらう奴は死を以って
と、そこは当然だからいいとして、そういうわけで、みんなドッペルを揃えたから、行動範囲は広がるし、護衛も少なくていいってことになってるの。
ちなみに、ヴィリア、ヒイロ、ドレッサはドッペルに慣れてないから当分待機。
でも、今までよく頑張ってたから、本当に家族になってしまえばいいと、セラリアは言うつもりみたい。
私もいいと思う。ヴィリアとかはもう本当にユキさんに尽くしているからね。
ヒイロもまあユキさんのこと好いてるしいいと思う。
ドレッサは素直じゃないけど、バイデに来たのが原因か、なんかデレデレしてることが多い。
私としては、ドレッサが自分から告白するまで待っていたいってのが本音。
見てると微笑ましいよね。
「と、あそこが領主館だ。転移で移動してもよかったけど、護衛としてはバイデの街を見たかっただろ?」
「はい。参考になりました。とても低レベルでした。色々な意味で」
「ですねー。ある意味、ユキさんやみんなが安全って分かって安心しました」
この程度じゃ、ユキさんはおろか、新人のヴィリアやヒイロ、ドレッサに有効打をいれることも厳しいね。
「そう言うな。こっちにはこっちの進み方があるし、レベルが高いとか低いとかは決めつけるもんでもない。怒りもあると思うが、誰だって悪く言われるのは気持ちよくない。そういうのは注意しろ。それを言うなら、2人だって俺からすれば野蛮人だぞ?」
「失言でした。だからそんなこと言わないでください」
「ごめんなさい。ユキさんにそんなこと言われたら泣きそうです」
いやー、ユキさんから見て私が野蛮人とか、離婚の危機に思えてきていやすぎる。
うん。言葉には気をつけよう。
これは戦争になりかねない。
そんなことを話しつつ、普通に領主館に入って、執務室への前に立つ。
「中に、キャサリン殿はいるか?」
「はっ!! ただいまカミシロ様と会談中です」
「じゃ、時間を空けた方がいいか?」
「いえ、到着次第通すようにと言われています」
そう言って扉が開かれるんだけど……。
カミシロ? なんか、聞き覚えが……。
その疑問は、横にいたジェシカが呟いていた。
「……カミシロ。カグラ・カミシロ。日本人の祖先をもつ、私たちの夫を誘拐した張本人の一人!!」
ああ、なるほど……。
ソウイウコトカ。
「よくいらしてくれました、ユキ様。今カグラと手紙の内容が……」
中には女性が2人。
大人な雰囲気の色黒の女性と、憎らしいほど、ユキさんやタイキさん、タイゾウさんを思い出させる綺麗な黒髪の私と同じ年ぐらいの少女……。
コイツカ。
私とジェシカは無言でカグラに歩み寄り。
「ひっ!? な、なんなのあなたたち!? ユ、ユキ!? なんなのこ……」
あろうことか、ユキさんを呼び捨てにしやがった。
なので遠慮なく……。
バチンッ!!
「あぐっ!?」
ビンタをかましてやった。
ありがたく思ってよね?
ずいぶん手加減してるんだから。
で、反対側から、ジェシカがさらに追撃。
バッチンッ!!
ドテッ!!
「……いたっ、いたい。な、なんなのよ!! あんたたちは!! こんなことをして……」
「この程度で済んだことを喜びなさい。ユキからの言葉がなければすでに首から上がなくなってますよ」
「そうだねー。誘拐犯に対しては、軽すぎる罰な気がするな」
「え、え? 誘拐犯って、ユキ、この人たちって……」
「ウィードのメンバーで、召喚に巻き込まれなかった俺の嫁さんたち」
「ご、ごめんなさい!! 本当に申し訳ございませんでした!! ですから、なにとぞ、ハイデンとは穏便にお願いいたします!! 最後には私の首を差し上げても構いません。ですから!! どうか、どうかっ……!!」
カグラは私たちの立場を知ってすぐに謝罪をする。
……うーん。これじゃ私たちが悪者みたいじゃないかな?
この子も、必死に手段を求めた結果だし……。
そんなことを考えていると、領主のキャサリンさんだったかな?
彼女が口を開く。
「ようこそ。ユキ様の奥様方。歓迎いたします。しかし、ウィードに残っているはずの奥様方が来られたということは、つながったのですね?」
「はっ!? そうよ!! なんでうぃーどとかいう異世界にいるはずのユキの奥さんがここにいるのよ!?」
「カグラ。簡単に考えればいい。キャサリンの言葉そのまま」
「……つまり、うぃーどと繋がったって言いたいわけ?」
「そうそう」
「そんなのあり得るわけないでしょー!!」
ああ、この子もある意味、ユキさんに引っ掻き回されているんだね。
まあ、これぐらいは仕方ないよね。
私としてはビンタしてスッキリしたし、これでいいかな?