「久しぶりだな。で、この面子めんつが揃うのはどういった話だ? 魔剣使いの合同演習でもやるのか?」

 俺はそう言いつつ、奥のソファーに座る。

「合同演習は今度って話だな。と、それはいい。ジェシカ。元気そうだな」

「はい。無事にユキの妻を務めております」

「仲がよさそうでよかったよ。お前がないがしろにされてたらどう抗議するべきか悩んでたところだ」

 ジェシカは重宝しておりますとも。

 実務もしっかりできるからな。

 残った副官のヒヴィーアがマーリィに振り回されて死んでないといいけどな。

 あとで安否確認しておくか。

 ジェシカの友達だし。

「お2人のお話はあとでお願いしますわ」

「はい。今はお姉様の言う通り、ユキさんとのお話が先です」

 姉妹も相変わらずのようだが、どうやら、感動の再会という話ではないらしい。

 マーリィの雑談を姉妹が止めたあと、プリズムの方が口を開く。

「炎水姉妹の言う通り。今は、ユキ殿に話が聞きたいのです」

「どういうことだ?」

 特に報告することはないぞ。

 ベータンの進捗はホーストとかに任せてるしな。

「えーっと、ちょっとややこしいから、僕が説明するよ。と、その前に、学府では色々助かったよ」

 エージルとは、ランサー魔術学府まで一緒に行って、学府にいた時は仲良くやってたからな。

 そのあとは、魔剣うんぬんでエナーリアに戻ったりで大変だったが。

 しかし、相も変わらず、お子様体型だな。

「ちゃんとご飯は食べてるのか?」

「いやー、研究に専念できるようになったからね。最近はあんまり……」

「エージル、話がずれている」

「おっと、ごめんよプリズム。説明だったね。まず、ユキが疑問に思っている、僕たちがなぜ一緒にというのは、偶然じゃない。お互い情報交換した結果なんだよ」

「情報交換?」

「そう。今、ユキたちがどこにいるのかって話でね。今、どこの国もって言うのは違うか、主に、ジルバとエナーリアの上層部が君を探している」

「俺個人ってことか?」

「そうだね。まあ、ユキをといえば、芋づる式に部下の彼女たちもついてくるだろう?」

「まあ、そうだな。で、なんでまた?」

「それを聞くかい? 今、ジルバ、エナーリアはちょっとした混乱に見舞われているのにさ」

「はい? 初耳だぞ? というか、ジルバ、エナーリアにいたわけじゃないからな」

「それはそうなんだけど、ちょっとやってきたことが大きいからねー」

「話が分からん。いったい何が大きいって話なんだ?」

「なるほど。そこからか、今、ジルバ、エナーリア両国はずいぶんユキの扱いに困っている状態なんだよ」

「それは、王位継承権なしの王族みたいなところで落ち着いただろう?」

 そう、そんな話になったはずだ。

 それで動きやすくしたんだからな。

「そこから発展してるんだよ。僕と学府で別れた後、そこのサマンサ嬢やクリーナ嬢を奥さんにしただけでもある種の問題だったんだけど、まあそこは国交の正常化につながりそうだからいいとして、ユキたちは、あの犯罪者集団をとっちめるのに一役買ったんだったね?」

「あ、そうだな。とっちめるのに一役買ったな」

 一役どころか、主役で脚本家だけどな。

「そこで、エクス王国から、しかもノーブル陛下から直々に感謝状が両国に送られてきたんだよ」

 あー、確かに所属はジルバ、エナーリアの傭兵だからな。

「それだけではありませんわ。アグウストからもヒフィー神聖国との軍事衝突を回避したとかも話が来ていますわ」

「ローデイからも、内部の反乱を押さえてくれたと感謝状が届いている」

 オリーヴとプリズムの話にも聞き覚えがある。

 うん。やったわ。

「極め付きには、ユキ殿のおかげで、犯罪組織を壊滅でき、そのユキ殿を派遣した両国に押収したゲート機能を有効利用して欲しいと言ってきました。まあ自国で犯罪組織をのさばらせていた罪滅ぼしというのが本音でしょうが、他の国より優先的に配備してくれるとのことです」

 ミストの細かい説明で色々分かってきた。

 あー、なるほど、そういう建前でゲートを開通しようとしているのな。

 ノーブルの奴、俺の名前を使うなら話を通せよ……。

「さて、それで問題が出てきたわけだ。結局のところ、ゲート自体はありがたいけど、それはユキの功績だ。ジルバ、エナーリアとしては、何も褒章もなく、ユキのおかげで得たゲートを使うのは大問題になっているわけだよ」

「……そういうことか」

「そういうこと。で、揉めているのは君の立場。君としては色々動き回るための方便の地位だったんだろうけど、今回の功績でそうはいかなくなった。ユキ、君に正式に王位継承権を与えるべきという意見が挙がって、それに反対する勢力もでて来たってことだよ」

「あちゃー」

「本当に、あちゃーだよ。そもそもこれ以上の褒章が思い浮かばないってのが実状かな? ゲートの使用料は当然の権利だし、これ以上の領土割譲は国としては認められない。金銭にしても、これ以上ベータンにお金が集中するのはよくないと考えているみたいだしね。というか、払えるわけないけどね。ゲートをお金換算とか、法外な値段にしかならないよ。いや、下手に額をつけるともめるだろうねー」

 エージル、すまん。ゲートは1万DPで結構簡単に作れるんだ。

「つまり、俺の取り扱いでもめているというわけだ」

「そういうこと。今、君を手放すのは、これから盛んに始まるであろう国と国の交流で悪手極まりない。そもそも大功績をあげたのだから、褒章は当然。でも、見合う褒章がないと来たもんだ。そこで、君の意見を聞いて、望み通りにしたと、各国に宣言して欲しいそうだよ。それで、ある程度まとまるからね。そういうことで、君の捜索を頼まれたのが……」

「エージルたちというわけか」

「そうそう。でもいざ探してみたらどこにもいない。いつの間にか、スティーブやルルアたちも姿を消している。じゃあ、どこにいるんだってことで、知っていそうなホーストさんというか、領土のベータンを訪ねたわけだよ」

 あー、ちょっと用事で空けるってことでウィードに戻していたからな。

 今は復帰しているだろうが。

「で、俺がいたと」

「そう。助かったよ。これで見つからなければ、学府まで戻って、ポープリ学長に聞いてくるか、竜騎士アマンダに手を貸してもらうことになっただろうね」

 そっちはそっちで当たりだが。ホーストと違って常駐じゃないからな。

 ポープリは駆り出していたし、ララがいるから連絡は付くだろうが。

「話は分かった。いったん、ジルバとエナーリアに顔を出せって話か」

「そうそう。今や君を邪険に扱うと、さらに立場が悪くなるからね。身の心配はしなくていいと思うよ。まあ、利権関係で言い寄ってくるのは多くなると思うけど、君には余計な心配だしねー。学府でのやり取りは驚いたもんさ」

 あれはポープリの対応が悪かった。

 サマンサをおとりにしようとしたからな。

「ああ、女性関係は分からないかな? サマンサ嬢やクリーナ嬢がいることだし」

「「「あり得ません」」」

 エージルは心配したつもりだったが、すぐに否定されて驚いている。

「あ、うん。みんながいるなら、ユキは大丈夫そうだね」

 というか、あまりの迫力にそれ以上は何も言えず、肯定の言葉しか出てこなかったみたいだ。

「ユキに、女性関係の心配は無用です」

「ええ。ユキ様はこう見えても身持ちが堅いんですわ」

「ん。そもそもクソ女は近づけない」

 そう言ってはくれるが、魔剣使いのみんなはこれだけはべらせといてという目をしている。

 うん。分かるよー。その気持ちは分かるよー。

 俺だって、なんでこうなったか分からねーから。

「ま、まあ、そういうことだから、近々訪問してくれると助かる」

「分かった」

 マーリィは何か言ってもやぶへびにしかならないだろうと察して話を切った。

 正解だと思う。

 まあ、おかげでのんびりお茶を飲む時間ができた。

 これからは、ちょっとした世間話かなーと思っていたが、オリーヴが口にした言葉がちょっとしたきっかけだった。

「そういえば、あれだけのことをしておいて、報告にも来ないで、今まで何をしていたのですか?」

「お姉様の言う通りですね。何か他に問題があったのですか?」

「あー、ありそうだね。隠しているとためにならないよ? ついでだから、この際全部話した方がいいんじゃないかい?」

「そうですね。今のユキ殿の意見なら各国も無視できないでしょう」

 オリーヴの疑問に賛成するように、ミストやエージル、プリズムも口を開く。

 そこでピンときた。

 そもそも、今回、ベータンに来たのは、あっちの義理の親父などを連れてくるためだ。

 新大陸の紹介として、ならば逆もまたしなければいけないのは当然。

 ちょうど目の前には、そこまで偉くなく、戦闘能力もあり、こっちの言うことならある程度は聞いてくれる奴がいる。

 被験者じゃなく、モルモットでもなく、モニターとしては最適だろう。

 で、俺の考えに気が付いたのか、ジェシカたちの顔がこわばる。

「ユキ。まさか……」

「……ジェシカさん。あきらめた方がいいですわ。結局は通る道ですから」

「ん。サマンサの言う通り。そしてユキの考えの通り、この5人は都合がいい」

「じゃ、私、連絡してきますねー」

 ジェシカは自身がパンクしかけたことを思い出し、サマンサは仕方ないと言い、クリーナは俺と同じように都合がいいと言う。

 リーアはすでに受け入れ準備に動いた。

「え? え? 何か話が進んでないかい? 都合がいいってどういうことだい?」

 エージルたちは首を傾げているが、もう動き出したのだから仕方ない。

「ホーストもついてきてくれ。ベータンの代表だし、いい機会だ」

「本当ですか!! ついにウィードを見せてもらえるのですか!! すぐに準備してまいります!!

 そこまで、気合い入れるようなもんでもないけどなー。

「「「ウィード?」」」

 まだ現状を理解できていない、魔剣使いたちは幸福なのか不幸なのか。俺には分からない。

 が、これで、予定がある程度前倒しになったのは間違いない。